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日本のジェンダー問題:伝統と現代の挑戦

公開日: 更新日:2024.01.05
日本のジェンダー問題:伝統と現代の挑戦


日本のジェンダーは、時と共に独自の道を歩んできました。ジェンダーに関する深い伝統と、現代のグローバルな風が生み出す新たな挑戦。両方の葛藤が、日本のジェンダーの現在を形成しています。

ジェンダーとは何なのか、その核心に触れ、一緒に新しい理解と視点を探求します。


ジェンダーと持続可能性

男女平等

ジェンダーとは

ジェンダーとは、生物学的な性別(男性・女性)に基づくものではなく、社会や文化によって形成される性に関する役割や態度、期待値を指します。これは、社会や文化における男性や女性としての「ふさわしい」とされる行動や役割、価値観などを包含します。
ジェンダーの概念は、単に生物学的な性別に基づく差異ではなく、社会構造や文化的要因によって生じる差異や不平等を理解し、分析するための枠組みとして用いられます。

ジェンダーとSDGsの関係

SDGs(持続可能な開発目標)は、国際的に合意された17の目標からなる開発アジェンダであり、ジェンダー平等もその中の重要なテーマとして取り上げられています。
目標5:ジェンダー平等 - この目標は、全ての女性と女の子の権利の実現とジェンダーの平等を促進することを明確に掲げています。この目標は、女性や女の子に対するあらゆる形の差別を撤廃し、暴力や搾取を終わらせること、公共、経済、政治の意思決定のすべてのレベルでの女性の完全かつ効果的な参加と平等なリーダーシップの機会を確保することなどを含みます。
さらに、ジェンダーの観点は他のSDGsの目標や指標にも影響を与えています。たとえば、教育(目標4)、健康(目標3)、経済成長(目標8)など、多くの分野での取り組みは、ジェンダーの視点からの分析や評価が不可欠です。
総じて、SDGsは単にジェンダー平等を一つの目標として捉えるだけでなく、全ての目標の達成に向けてジェンダーの視点の統合が必要であると強調しています。これは、真の持続可能性を実現するためには、ジェンダーに関する問題や不平等を解消し、全ての人々が権利を享受し、能力を最大限に発揮できる社会を実現することが不可欠だからです。

日本におけるジェンダーの歴史

こぶし

女性の権利運動と近代化(19世紀〜20世紀初頭)

日本におけるジェンダーの歴史は、19世紀から20世紀初頭にかけての社会変革とともに進展してきました。明治維新後、近代化が進む中で、女性の教育機会が拡大し、初等教育の普及が始まりました。しかし、社会的制約により、女性の多くは家庭や農村地域での労働に従事することが多く、政治的・経済的な参加は限られていました。
女性たちは、戦前から大正時代にかけて、女性解放や参政権獲得を求める運動を展開しました。女性の参政権は1922年に実現しましたが、男女平等の概念は未だ浸透しておらず、家族制度や社会的なジェンダー役割が強く残存していました。

戦後のジェンダー平等への歩み(戦後〜20世紀後半)

第二次世界大戦後、日本は連合国の占領下に入り、新たな憲法が施行されました。新憲法は男女平等の基本原則を採用し、女性の社会的な地位向上への道を開きました。1950年代には、女性の就業機会が増加し、高度経済成長期には女性の労働力が重要な要素となりました。
一方で、伝統的なジェンダー観念や家族制度の影響は根強く、女性の職業選択や昇進においては制約が存在しました。性差別やセクシャルハラスメントといった問題も存在しましたが、1970年代以降、ジェンダー平等への意識が高まるとともに、社会的な変化が進展していきました。

21世紀の挑戦と変革(2000年代〜現代)

21世紀に入り、日本では女性の社会進出やジェンダー平等に対する意識が高まっています。政府はジェンダー平等推進基本法を制定し、女性の経済的・社会的な地位向上を促進する政策を推進しています。女性の管理職登用やワーク・ライフ・バランスの尊重などが重要なテーマとなっています。
しかし、依然として男女間の賃金格差や女性のリーダーシップ不足といった問題が残り、性別による社会的な期待や制約も存在します。ジェンダー平等への取り組みは進行中であり、日本社会全体での意識改革と政策の継続的な強化が求められています。

日本における労働市場とジェンダー

パソコンを使っている女性

ジェンダーペイギャップ

日本は先進国中でジェンダーペイギャップ(男女間の賃金格差)が大きい国の一つであり、OECD国の中でも上位に位置しています。
男女間の賃金格差は、業種や企業の大きさ、雇用形態などによるものの、これは単なる賃金の問題だけでなく、女性のキャリアアップの機会の不足や、上位の役職に女性が少ないという現状も反映しています。日本企業の文化や慣行、また長時間労働などが、この格差の背後にある要因とされます。

非正規雇用の女性

日本の女性労働者の中で非正規雇用の割合は高く、多くの女性がパートタイムや契約社員として働いています。結婚や出産を機に正規雇用から非正規雇用へ移行するケースも少なくありません。
非正規の女性労働者は、正規雇用の男性や女性に比べて低賃金であり、キャリアの途中での中断やスキルの低下、キャリアの展望の不確実性など、さまざまな課題が伴います。

育児とキャリア

日本の女性は出産や育児を理由にキャリアを一時中断することが一般的です。一方、男性の育児休暇の取得率はまだ低く、これは、企業文化や社会の期待、また経済的な理由などが影響しています。
女性がキャリアを持続するためには、育児との両立支援や男性の家庭参加の促進、企業の柔軟な働き方の導入などが求められます。

日本における教育とジェンダー

女性の教育

教育機会の平等

過去数十年の間に、日本の女性の高等教育へのアクセスは大きく向上しました。しかし、特定の分野、特にSTEM(科学、技術、工学、数学)関連の学部や大学院プログラムでは、女性の割合はまだ低いままです。
これは、社会的な期待やステレオタイプ、さらには教育機関内の文化や環境が影響していると考えられます。

学校教育におけるジェンダー意識

日本の学校教育においてもジェンダーに関する意識や取り組みが進行中です。教科書や授業内容の見直し、性別にとらわれないキャリア教育の推進などが行われています。
しかし、古いステレオタイプや性別役割に関する先入観は根強く、これを変えるための継続的な努力が必要です。

教職とジェンダー

教育現場においても、特に高等教育機関での男女の役職や地位に偏りが見られます。
多くの教職員や学校のリーダーシップポジションは、男性に占められています。この背景には、女性のキャリアの中断、組織の文化、そして長時間労働や役職に関する期待値などが影響しています。
女性の教育リーダーの育成や彼女たちのキャリア支援が早急に必要となっています。

日本における政治参加とジェンダー

国会議事堂

女性議員の割合

日本の国会や地方議会における女性議員の割合は、国際的な基準に比べて低い水準にあります。国会の場合、特に参議院よりも衆議院の方が女性の割合が低い傾向が見られます。
この背景には、選挙戦のハードルの高さ、政治家としてのキャリアを志向する女性が少ないこと、また党内の枠組みや選挙システムが影響しているとされています。

女性の政治参加の促進

近年、女性の政治参加を促進するためのさまざまな取り組みが行われています。
例としては、女性の候補者を増やすための研修や支援、地方自治体での女性活躍推進の方針の策定、そして政治への参加を意識的に促すキャンペーンや啓発活動が挙げられます。これらの取り組みは、女性が政治に参加しやすい環境を整えることを目指しています。

女性のリーダーシップ

政界における女性のリーダーシップは、意思決定のプロセスや政策形成に多様性をもたらす要因となると考えられています。
しかし、日本の政界では、女性がトップのポジションに就くケースはまだ少ない状況です。一方、地方自治体の首長や部門のトップとして女性が活躍するケースも増えてきており、その経験や実績を基に、国政の舞台での女性のリーダーシップが期待されています。

世界の中での日本のジェンダー

世界の女性

日本のジェンダーパリティの全体的な状況

2023年の世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数によると、日本のジェンダーパリティ(ジェンダー公正)は2023年に64.7%と報告され、146か国中125位という順位に位置しています。
これは、前年の2022年と比較しても65%から0.3%減少していることが確認されています。さらに、順位でも前年の116位から9ランク下がり、国際的な視点から見ると、日本のジェンダーパリティの進捗が停滞し、さらに後退していることが明確となりました。
このような状況は、多くの先進国やアジア諸国と比較しても、日本がジェンダー平等の実現において大きな課題を抱えていることを示唆しています。

政治分野におけるジェンダーギャップ

「政治への参加」のカテゴリーでのジェンダーパリティ指数が5.7%と、世界で最も低いレベルであることは非常に注目すべき点です。
具体的な数値として、国会議員の10%と閣僚の8.3%しか女性がいないことが挙げられます。また、女性の国家元首は今のところ誕生していないという事実も、日本の政治分野におけるジェンダーギャップの深刻さを物語っています。
これは、政策決定や国の方針に女性の意見や視点が不足していることを示し、その結果として社会全体のジェンダーパリティの向上が阻害されている可能性があります。

教育・医療と経済における状況

一方、日本は「教育」および「医療へのアクセス」のサブインデックスにおいては、ほぼ完全なパリティを達成しています。これは、教育や医療サービスへのアクセス権において、男女間に大きな格差は存在しないことを示しています。
しかしながら、経済面では依然として課題が残っているようで、推定所得のパリティ指数はわずかに1.1%改善した程度であり、経済的な機会における男女の格差は依然として大きいと言えるでしょう。

低迷の要因

日本のジェンダーギャップ指数が低い原因は、いくつか考えられます。
一つは、女性の労働参加率が低いことが挙げられます。日本の女性の労働参加率は72.1%と、OECD加盟国平均の78.0%を下回っています。また、女性の管理職比率も低く、日本の女性管理職比率は14.2%と、OECD加盟国平均の29.8%を下回っています。
もう一つの原因は、女性の政治参加が低いことが挙げられます。日本の国会議員の女性比率は9.9%と、OECD加盟国平均の26.9%を下回っています。また、地方議会議員の女性比率も低く、日本の地方議会議員の女性比率は22.3%と、OECD加盟国平均の37.5%を下回っています。
日本のジェンダーギャップ指数を改善するためには、女性の労働参加率を高め、女性の管理職比率を上げ、女性の政治参加を促進する必要があります。
また、女性に対する暴力や差別をなくすための取り組みも必要です。

日本のジェンダー意識の変化

職場

男性の家庭参加

過去数十年で日本の男性の家庭での役割が徐々に変わりつつあります。
伝統的には、「男は外で働き、女は家庭を守る」という役割分担が強かった日本ですが、男性の育児参加や家事の取り組みが増えてきたことは明らかです。政府のデータや調査によると、男性の家事・育児時間は年々増加しており、これはジェンダー意識の変化の一例として挙げられます。

ダイバーシティの尊重

企業や組織におけるダイバーシティの尊重や取り組みが進んできました。女性だけでなく、LGBTQ+のコミュニティーや多様な背景を持つ人々の受容が増えてきています。
特に大手企業や若い世代を中心に、多様性の尊重という意識が浸透してきており、それが働き方や生き方にも影響を与えています。

女性のキャリア意識の変化

女性自身のキャリアに対する意識や期待が変わってきています。
長い間、結婚や出産を機にキャリアを中断するという流れが一般的でしたが、今日の日本の女性は継続的なキャリア形成やリーダーシップを目指す人が増えてきています。
また、女性専用のキャリア支援セミナーやネットワーキングの場が増え、女性のキャリア形成をサポートする動きも活発になっています。

日本がこれからとるべきステップ

子どもを膝にしてパソコンを使う女性

女性のリーダーシップの強化

日本では、多くの分野で女性のリーダーシップがまだ不足しています。特に政治やビジネスのトップレベルでの女性の代表性を高める必要があります。
これを実現するためには、女性に対するメンターシップの提供、リーダーシップの研修や教育の機会を増やすこと、そして組織文化や制度を見直し、女性がリーダーとしての役割を果たしやすい環境を整えることが求められます。

ワークライフバランスの実現

多くの女性が家庭と仕事の間でバランスを取ることに苦労しています。男性もまた、家庭の役割を果たすために柔軟な働き方を求めるケースが増えています。
このような背景から、柔軟な働き方やテレワークの普及、育児や介護のためのサポート体制の拡充など、真のワークライフバランスを実現する取り組みが必要です。

ジェンダーエデュケーションの強化

ジェンダーの概念や多様性に対する理解は、若い世代から育てていくことが重要です
教育の現場でのジェンダー教育の導入や強化は、次世代が健全なジェンダー意識を持つための基盤を築く鍵となります。学校での授業だけでなく、家庭やコミュニティでの啓発活動も合わせて行うことで、ジェンダー平等の意識を社会全体に広げることができるでしょう。


日本のジェンダー問題はまだ終わっていませんが、歩む過程自体が希望の種となります。新しい時代が、新しい価値観や機会をもたらす中、私たちは前向きにその変化を受け入れ、次世代へとつなぐ橋を築く役割を持っています。

そして、その未来は私たち全員でつくっていくものです。明日への一歩が、希望の明るい光を灯すことでしょう。

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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。