食品ロス(フードロス)について

M O T T A I N A I


『もったいない』は世界共通語

日本には、世界に通じる『MOTTAINAI(もったいない)』という言葉があります。Wikipediaによると「もったいないとは、物の本来あるべき姿がなくなるのを惜しむ、日本語の単語」とあります。


環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイさんが『MOTTAINAI』を世界共通の言葉として広める活動を推進したのはよく知られています。 もったいないという言葉には、モノに対する尊敬(Respect)の念も込められているとして、マータイさんは「これは外国語にない言葉だ」と感銘を受けたそうです。


しかし戦後の日本経済の成長が大量生産・大量消費に突き進んだ結果、いつからか私たちの周りはモノで溢れかえり、捨てることへの抵抗感が少なくなってしまいました。


昨今、シェアリングエコノミーが広がりを見せ、またSDGs(Sustainable Development Goals)への意識が高まってきました。世界は今、大量生産・大量消費について(否定しているわけではなく)、良い面ばかりではないと気づき始めています。

今こそ私たちは、『もったいない』という言葉に込められた日本発の美学を、見直すべきでしょう。

日本の食品ロスの現状と、
世界に与える影響


日本の食品ロスの現状

食品ロス(フードロス)とは、本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品を指します。 農林水産省推計によると日本の食品廃棄物等は約2,510万トン(前年度約2,531万トン)(※1)、うち食品ロスは約523万トン(前年度約522万トン)です。(※2)


ちなみに世界の食料廃棄量は、年間13億トン。生産量の約1/3に達しており、世界的な問題となっています。

※1 農林水産省及び環境省「令和元年度推計」

※2 農林水産省及び環境省「令和3年度推計」


参考ブログ:【2023年最新】令和3年度の食品ロス量が発表!

523万トンとはどのくらいの量?

世界の栄養不足人口は2020年で8億人2800万人と言われ、9人に1人が飢えに苦しんでいます。


日本の食品ロスは、飢餓に苦しむ人々への世界の食料援助量が年間約420万トンであるのに比べて、約1.3倍の数字となっています。

※ 2015年の国連世界食糧計画(WFP)発表。


またこの523万トンという数字は、「日本国民1人あたり毎日113g、つまりお茶碗1杯のご飯を毎日捨てている」とも言い換えられます。

日本の食料自給率と食品ロスの関係

1965年には70%以上あった日本の食料自給率ですが、食生活の変化により2018年には37%に低下しました(農水省発表)。これは先進国の中でも最低水準となっています。

233%のカナダ、169%のオーストラリア、131%のフランス、121%のアメリカと100%をこえる国も多々あり、その他でもドイツが84%、イギリスが70%、イタリアが58%です。


自給率が37%ということは、消費している食品のうち63%を輸入に頼っています。食品ロスの側面から見れば、6割もの食料を輸入しているにも関わらず大量の食品ロスを生んでいるということになるのです。


わざわざ外国の水と材料・エネルギーを使って生産し、さらに輸送エネルギーもかけて輸入しているのですから、日本の食品自給率低下は国内だけの問題ではなく世界の環境問題にもつながっています。今後急激に人口が増えていく世界において、日本の食環境のあり方は大きな見直しを図られることでしょう。

どこから発生している?食品ロス


食品関連事業が53%、一方家庭での食品ロスも

私たちが食品ロスと聞いて思い浮かべるイメージといえば、家庭で発生するもの(食品の買い込み過ぎ・食べ残し・賞味期限切れなど)かもしれません。

しかし実際は、家庭で手に取る前のフードサプライチェーン(製造→卸→小売等の過程)のほか、外食など「食品に関わる全ての事業者」において食品ロスが発生しています。

発生の内訳は、家庭が約47%、食品関連事業者が約53%です。

食品ロスが発生しやすい原因

日本は世界に比べ、食品ロスの発生量もさることながら、発生「率」が高いのも特徴です。その原因をいくつか挙げてみます。

1.見た目重視


生活者は規格が揃っているもの・美しいものを選ぶ傾向にあるため、多少のキズ、型崩れ、割れた食材などは「規格外」となってしまいます。規格外品を出荷したところで、結局のところ生活者に選ばれないため市場価値はとても低いか、ゼロとなります。

2.出荷効率重視


形が不揃いのものは、農家が箱に詰める際に隙間ができやすく出荷の効率を低下させてしまいます。過度の競争社会の中では誰もが価格に敏感にならざるを得ず、形が揃ったものを箱にきっちり詰めて効率よく出荷しています。

3.需要予測ミス


食品事業者は「出荷が足りなくて商機を逃すより、余ったほうがいい」「陳列棚に食品が足りないより、たくさん積まれたほうが見栄えがいい」と考える傾向があります。需要予測にズレが出ないように季節などの不確定要素を鑑みつつ各事業者は努力しているものの、やはり多少ズレが発生します。

4.商慣習


日本には独特の3分の1ルールというものがあり、製造・卸・小売にそれぞれ納品期限を設けているために各段階で在庫を抱えやすく、賞味期限が近づいたものがそのまま食品ロスに直結しています。

5.現代人の生活スタイルの変化


男女共働きが当たり前の社会になり、多忙な生活の中で無駄なく食材を使いきることが難しいことがあります。冷蔵庫の食材をチェックせずについ買い込みすぎたり、期限までに使い切れなかったり、また皮をむきすぎる、安易に食べ残す、など私たちは食品ロスを意識しない生活に慣れきっています。

6.過度の鮮度志向


元々日本には生食文化が根付いており、私たちは鮮度が落ちることに対してとても敏感です。もちろん肉・魚・生鮮食品などのように“消費”期限を過ぎたものは安全上問題があるものの、風味等が落ちていく目安となる“賞味”期限に関して「即、廃棄!」と捉えるのは厳格すぎるとも言えます。

解決に向けて


過程1つずつ、1人ずつの意識を変えて見直すことが大切です。

食品関連事業者なら、型崩れなどは規格外品として販売、余剰在庫や期限の近いものはフードバンクを活用する、3分の1ルールを見直す、家庭内なら、買い物を調整したり「買ったら使い切る」ことを意識するだけでも削減ができます。


日本語から生まれた「もったいない」の気持ちで、今一度食品と向き合ってみるべきではないでしょうか。