おにぎりは日本の代表的な食べ物の一つで、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで手軽に購入できます。
しかし、おにぎりを作る過程でどれくらいのCO2が排出されているのでしょうか?
また、その排出量は環境にどのような影響を与えているのでしょうか?
コンビニエンスストアのおにぎりに関するライフサイクルアセスメント(LCA)分析の結果をもとに、おにぎりを1個つくるのに発生するCO2排出量とその環境への影響について考えてみたいと思います。
おにぎりを1個つくるのに発生するCO2排出量
ライフサイクルアセスメント(LCA)
LCAは、製品やサービスのライフサイクル全体にわたる環境影響を評価する手法です。この手法では、製品やサービスの原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄に至るまでのすべての段階で発生するCO2排出量を評価します。LCAは、製品やサービスのCO2排出量を削減するための有効な手法です。
おにぎりに関するLCA
おにぎりを1個つくるのに発生するCO2排出量は、原材料調達、製造、配送、販売の各工程でどれくらい排出されるかを合計したものです。
コンビニエンスストアのおにぎりに関するLC-CO2分析は、日本LCA学会が2007年に行ったものがあります。
この分析では、米(白米)、海苔、塩、醤油などの原材料と包装材料を含めたおにぎり1個あたりのCO2排出量は63.7gと算定されています。工程別の内訳は以下の表の通りです。
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原材料調達では、米の生産・精米が最も多く、約30g/個となっています。
製造では、ガスを使用した炊飯が最も多く、約16g/個となっています。配送と販売では、冷蔵車や冷蔵庫などで電気を使用していますが、その電気は再生可能エネルギー源から供給されていると仮定しているため、CO2排出量はゼロとなっています。
おにぎりのCO2排出量が環境に与える影響
おにぎりを1個つくるのに発生するCO2排出量が63.7gということは、どれくらい環境に影響を与えているのでしょうか? ここでは、地球温暖化への影響と森林面積換算の二つの観点から考えてみます。地球温暖化への影響
CO2は温室効果ガスの一種であり、大気中に放出されると地球表面から反射された熱を吸収して温度を上昇させます。この現象は地球温暖化と呼ばれ、気候変動や海面上昇などの深刻な問題を引き起こしています。地球温暖化の原因の約80%はCO2によるものとされています。
地球温暖化を食い止めるためには、CO2の排出量を削減することが必要です。国際的には、パリ協定という合意があり、日本は2030年までに2013年比で26%、2050年までに80%以上のCO2排出量削減を目指すとしています。
日本のCO2排出量は、2019年度に約1.2億トンでした。おにぎり1個あたりのCO2排出量が63.7gとすると、これは日本全体のCO2排出量の約5.3億分の1に相当します。
一見小さく見えますが、おにぎりは日本人にとって身近な食べ物であり、年間約40億個が消費されています。これは日本全体のCO2排出量の約0.21%に相当します。おにぎりだけでなく、他の食品や製品も含めれば、フードサプライチェーン全体でのCO2排出量はかなり大きな割合を占めていると考えられます。
森林面積換算
もう一つの観点として、おにぎりを1個つくるのに発生するCO2排出量を森林面積に換算してみます。
森林はCO2を吸収して酸素を放出することで、地球の環境を保全する役割を果たしています。森林がどれくらいのCO2を吸収できるかは、樹種や成長段階などによって異なりますが、一般的には1haあたり年間10トン程度とされています。
おにぎり1個あたりのCO2排出量が63.7gとすると、これを吸収するために必要な森林面積は約0.006m2です。これはA4用紙の約1/14程度の大きさです。しかし、おにぎりが年間約40億個消費されていることを考えると、これを吸収するために必要な森林面積は約240haとなります。これは東京ドーム約50個分に相当します。
おにぎりのCO2排出量を削減する方法
おにぎりを1個つくるのに発生するCO2排出量が環境に与える影響を考えてみましたが、ではどうすればその排出量を削減することができるのでしょうか?ここでは、原材料、製造、消費の三つの観点から考えてみます。原材料
おにぎりの原材料調達では、米の生産・精米が最も多くのCO2を排出しています。この排出量を削減する方法としては、以下のようなものが考えられます。環境負荷の低い農法(有機栽培や減農薬栽培など)や品種(低肥料・低水稲など)を選択する 。
地産地消を促進することで、輸送によるCO2排出量を減らす。
精米の際に発生する米ぬかや米糠を有効活用することで、CO2の回収や再利用が可能になる 。
海苔や塩などの他の原材料についても、同様に環境負荷の低い生産方法や輸送方法を選択することが望ましいです。
また、包装材料については、以下のような方法が考えられます。プラスチックの使用量を減らすか、再生可能な素材に切り替える 。
包装材料に環境ラベルを表示することで、消費者に情報提供する 。
製造
おにぎりの製造では、ガスを使用した炊飯が最も多くのCO2を排出しています。この排出量を削減する方法としては、以下のようなものが考えられます。エネルギー効率の高い炊飯器や調理器具を使用する 。
炊飯時に必要な水量や火力を最適化する 。
炊飯後に余った米やおにぎりを廃棄せず、保存や再利用する 。
消費
おにぎりの消費では、冷蔵車や冷蔵庫などで電気を使用しています。この電気は再生可能エネルギー源から供給されていると仮定していますが、実際にはそうでない場合も多いでしょう。この電気使用量を削減する方法としては、以下のようなものが考えられます。
冷蔵車や冷蔵庫のエネルギー効率を向上させる 。
冷蔵庫の設定温度を適切に調整する 。
冷蔵庫の扉を開け閉めする回数や時間を減らす 。
また、消費者側でも以下のような行動が望ましいです。
おにぎりを購入する際には、必要な分だけ買う 。
おにぎりを食べる際には、包装材料を正しく分別して捨てる 。
おにぎりを自分で作ることで、原材料や製造工程の選択肢が増える 。
まとめ
この記事では、おにぎりを1個つくるのに発生するCO2排出量とその環境への影響について考えてみました。
おにぎり1個あたりのCO2排出量は63.7gであり、これは日本全体のCO2排出量の約5.3億分の1に相当します。しかし、おにぎりは日本人にとって身近な食べ物であり、年間約40億個が消費されています。これは日本全体のCO2排出量の約0.21%に相当します。おにぎりのCO2排出量は、地球温暖化や森林面積にも影響を与えています。
おにぎりは一見小さな食べ物ですが、それを食品ロスにしてしまうことは、焼却時のCO2排出量のみならず、生産・流通過程で発生したエネルギーも無駄になってしまいます。
みんなで残さず食べて、おいしく食品ロスを削減しましょう!