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サーキュラーエコノミーって何?

公開日: 更新日:2025.09.21
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私たちの暮らしは「作って、使って、捨てる」という一方通行の経済に支えられてきました。しかし資源の枯渇や環境問題が深刻化する今、持続可能な仕組みが求められています。

そこで注目されているのが「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」です。

近年、SDGsやサステナビリティなどと並んで、頻繁に耳にするようになりました。しかし、「具体的にどういうこと?」と感じる方も少なくないかもしれません。

なぜ今、この考え方が重要なのか、その原則や既存の取り組みとの違いを分かりやすく解説していきます。

 

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは

経済産業省CEページ

 

サーキュラーエコノミー(Circular Economy)は、日本語で「循環経済」と訳される、新しい経済のあり方です。

これまでの経済は、天然資源を「取って」、製品を「作って」、「使って」、そして「捨てる」という、一方通行の「直線経済(リニアエコノミー)」でした。このモデルは、資源の枯渇や大量の廃棄物、環境汚染といった問題を引き起こしています。

これに対し、サーキュラーエコノミーは、廃棄物をなくすことを前提に、製品や資源の価値をできるだけ長く保ち、繰り返し利用することで、環境への負荷を減らしながら経済成長を目指すシステムです。つまり、資源をぐるぐる回して、ムダを最小限に抑える経済の仕組みです。

 

経済産業省:サーキュラーエコノミーをわかりやすく、行動しやすくするサイト

 

三つの原則

三つの原則のイメージ

 

サーキュラーエコノミーには、以下の三つの原則があるとされています。

1. 廃棄物と汚染を出さないように設計する Design out waste and pollution

  • 製品の設計段階から「廃棄物になる原因」をなくす
  • プラスチックや有害物質の使用を避ける
  • モジュール化・分解可能なデザインで、修理や再利用を前提とする

2. 製品と原材料を使い続ける Keep products and materials in use

  • モノを長く使う・再利用する・修理する
  • 廃棄せず、部品・原料として再投入する(再資源化)
  • シェアリング、アップサイクル、リファービッシュ(再整備)なども含む

3. 自然のシステムを再生する Regenerate natural systems

  • 自然の力を活かして、土壌・水・生態系を回復させる
  • 食品廃棄物は堆肥化して農業に循環
  • 持続可能な農業や林業との連携

 

サーキュラーエコノミーの三原則は、単なる環境保護のための取り組みにとどまらず、持続可能で競争力のあるビジネスチャンスを生み出す新しい経済モデルとして設計されています。

特にその特徴として、第一に脱炭素社会の実現(カーボンニュートラル)に向けた取り組みと高い親和性があり、企業活動における温室効果ガス排出の削減を促進します。
第二に、ESG投資やグリーン成長戦略との整合性が高く、環境・社会・ガバナンスに配慮した経営を目指す企業にとっては、資金調達や企業価値向上の面でも大きな利点があります。
さらに、第三の特徴として、地域循環共生圏やアップサイクルといったローカルな資源循環との連携が可能であり、地域社会と共に持続可能な発展を目指す動きとも強く結びついています。

このように、サーキュラーエコノミーは環境と経済の両立を図りながら、企業・自治体・市民に新たな価値を提供する仕組みとなっています。

 

サーキュラーエコノミーと3Rとの違い

サーキュラーエコノミーと3Rのイメージ

 

サーキュラーエコノミーと「3R(リデュース、リユース、リサイクル)」は、どちらも資源を無駄にしないための考え方ですが、その根本が異なります。

3Rはごみの発生そのものを減らす(リディース)、繰り返し使う(リユース)、資源として再利用する(リサイクル)のことで、廃棄物が発生することを前提としつつも、その発生量をできるだけ減らし、再使用・再資源化によって資源の有効利用を図るための行動指針です。つまり、「出てしまうごみをどう減らすか・活かすか」という視点が中心です。

一方、サーキュラーエコノミーは、設計段階から廃棄物を出さないことを前提に、流通、消費、回収に至るまで、資源・製品・エネルギーの流れ全体を循環させる経済モデルです。
例えば、製品を修理しやすいように設計したり、製品そのものではなく「サービス」として提供する(レンタルやサブスクリプションなど)ことで、資源の利用効率を高めることもサーキュラーエコノミーの一環です。

 

「リデュース・リユース・リサイクル(3R)」は環境活動の一部ですが、サーキュラーエコノミーは経済活動そのものを循環型に変えるという、もっと広い視点の取り組みです。
つまり、3Rはサーキュラーエコノミーという大きな概念を実現するための、具体的な手段や活動のひとつとして位置づけることができるのではないでしょうか。

 

サーキュラーエコノミーの循環構造

サーキュラーエコノミーの循環のイメージ

 

サーキュラーエコノミーは、「資源をできるだけ長く、価値ある形で循環させる」ことを目的とした経済モデルです。
その中には、さまざまな循環手段やビジネスモデルが組み込まれています。

 

自然の資源の利用(できるだけ再生可能な資源)

木材、植物、太陽エネルギーなどの持続可能な資源を使い、化石燃料や有限資源への依存を減らします。

 

製品の設計段階での工夫

・製品が長持ちするように設計
・修理しやすく、分解・再利用が前提の「循環設計(Design for Circularity)」
・最終的に廃棄しても、土に還るような生分解性の素材を使う

 

使用段階での「循環型モデル」

【シェアリングエコノミー】
・製品やサービスを「共有」するモデル → 使用効率を高め、製品数や廃棄を削減。
例:カーシェア、自転車シェア、レンタル家具

【PaaS(Product as a Service)】
・製品を「所有」ではなく「使う権利」を提供する → 回収し、修理・再提供・再生産へ
例:家電や空調のサブスクリプション、インク付きプリンター契約

 

使用後の資源循環(3R + α)

【リデュース(Reduce)】
・ごみの発生をそもそも減らす
例:詰替えパッケージ、簡易包装、無駄な購買の見直し

【リユース(Reuse)】
・製品を繰り返し使用する
・中古品として別の人が使う
・部品だけ取り出して再利用する
例:中古販売、ボトルの再利用、フリマアプリ

【リサイクル(Recycle)】
・使用済み製品を原材料レベルに戻して再利用
例:ペットボトル → 繊維素材へ/古紙 → 再生紙へ

【アップサイクル】
・廃棄物を元より価値のある形で再生産
例:廃棄布 → バッグやポーチ/食品残渣 → 新商品

【修理・再生(リファービッシュ/リマニュファクチャリング)】
・壊れた製品を修理して再販 ・工場で再組立して新品のように再販売
例:PC・スマホ → 初期不良や返品品を検査・修理・クリーニングして再販売/家電製品(冷蔵庫・洗濯機など)→ 展示品や使用済み製品を整備し、再販売

 

サーキュラーエコノミーは、3Rやアップサイクルを「手段」とし、シェアリングやPaaSといった「仕組み」も組み込むことで、製品と資源の価値を最大限に引き出し続ける持続可能な経済モデルです。
単なるリサイクルではなく、設計・使用・再資源化すべての段階が有機的に循環することで、「廃棄ゼロ」と「経済成長」の両立を目指します。

 

なぜ今注目されているの?

ESG投資を検討している

資源制約と環境問題の深刻化

世界的な人口増加と新興国の経済成長により、資源の需要は増大し続けています。しかし、石油・鉱物・レアメタルなど、地球上の天然資源は有限であり、特に日本は多くの資源を輸入に頼っているため、資源価格の変動や供給停止のリスクに常に直面しています。

また、大量生産・大量消費・大量廃棄の「リニア型経済」は、CO₂排出・海洋プラスチック問題・生態系破壊を深刻化させおり、資源を捨てずに循環させる仕組みが不可欠になっています。

サーキュラーエコノミーは、国内で資源を循環させることで、このリスクを低減し、経済の自立性を高める手段として期待されています

 

環境問題の深刻化

大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とする従来の経済システムは、気候変動(温暖化)や廃棄物の増加、海洋プラスチック問題といった深刻な環境問題を引き起こしています。

サーキュラーエコノミーは、製品の設計段階から廃棄物を出さないことを目指すため、これらの環境負荷を根本から減らす解決策となります。資源の再利用は、CO₂排出量の削減にも大きく貢献します。

 

新たなビジネスチャンスの創出

従来の「環境対策」はコストと見られがちでしたが、サーキュラーエコノミーはビジネスチャンスとして位置づけられています。

製品を「所有」から「利用」へと転換する、PaaS(サービスとしての製品)やシェアリングサービスといったビジネスモデルが、新たな収益源となっています。さらに、製品の修理や再利用、リサイクルによって生まれる新しいビジネスでも、収益を得られるようになっています。

廃棄を減らすことでコスト削減+利益向上が期待できるのです。

 

競争力の向上

投資家や金融機関が、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGsに配慮する企業を評価するようになっています。EUでは「循環型経済行動計画(CEAP)」を法制度化し、日本も「循環経済ビジョン2020」を発表しました。

資源の安定的な確保やコスト削減、そして環境に配慮した企業としてのブランド価値向上は、企業の中長期的な競争力につながります。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が重要視される中、サーキュラーエコノミーへの取り組みは、投資家からの評価を高める重要な要素となっています。

 

サーキュラーエコノミーが今注目されるのは、「環境保護のため」だけではなく、資源制約・規制強化・投資家評価・消費者ニーズといった多方面の要因が重なり、経済の持続可能性を左右する必須の戦略になっているからと言えます。

 

サーキュラーエコノミーは、単一の取り組みではなく、社会全体の仕組みやビジネスモデルを根本から変革していく包括的な概念です

製品の「デザイン・設計」段階から、リサイクルや再利用、アップサイクルを前提にすることで廃棄物そのものをなくし、「シェアリング」や「PaaS」によって製品の利用効率を上げ、寿命を最大限に延ばします。そして、どうしても廃棄物になってしまうものについては、「3R」を通じて再循環させる、という一連の大きなシステムとして捉えることができます。

サーキュラーエコノミーは、環境負荷を減らすだけでなく、私たちの暮らしに新しい選択肢や価値をもたらします。身近な行動や企業の取り組みが積み重なって、未来の豊かさへとつながっていく――今こそ、私たち一人ひとりが、この循環の担い手となることで、未来は必ず変わります。




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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています♪

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。