月刊AMJ(Agricultural Marketing Jornal)7月号コラムを寄稿しました。
多くの食べ物が行き場を失う中、善意の輪も。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回、コロナウィルス第2波に警戒しつつも日本各地で経済活動が戻った時期に寄稿させていただいています。
第2波が少しでも遅く、影響が小さいことを願いながら。
食品ロスは、在庫余剰となった食品が販路を失い、そのうち賞味期限が近付いて最終的に廃棄することになるケースが多く見られます。
発生原因は前回述べた1/3ルールや需給予測ミスなどがありますが、すぐに売り先さえうまく見つかれば、賞味期限前に食べてもらえるわけです。
しかし新型コロナウイルスの急速な感染拡大は、その売り先を探す時間もないまま日本各地で多くの食べ物が行き場を失いました。
今回は食品ロスが出始めた1月後半にさかのぼり、5月に緊急事態宣言が解除されるまでの経緯を、ロスゼロにご相談があったケースを中心にたどりたいと思います。
ネガティブなケースが続きますが、食品ロスの実態として捉えていただければと思います。
【1月後半~2月】
中国からのインバウンド観光客が激減したことにより、春節に向け事前に用意した観光地のお土産が余り始めました。
特に大阪を中心とした関西地方や、関東の浅草、空港内免税店など、インバウンド客に支えられていた場所でその傾向が顕著でした。
【2月~】
国内感染者の逓増に伴い、国内の観光スポット各地のお土産用食品、新幹線の駅や空港の地方特産品が販売不振に陥りました。
また百貨店など集客力の高かった商業施設の客足が減少し、バレンタイン商戦では在庫が大量に発生。
さらには北海道物産展などの全国物産展が軒並み中止となり、イベントのために用意していた地方特産品の行き先がなくなりました。
さらに2月末には小学校の全国一斉休校によって給食の食材が余り、納品していた農家の野菜も行き先を失い売上が激減。
給食についてはニュースをご覧になった方も多いのではないでしょうか。
【3月~】
百貨店など商業施設の集客力がさらに落ち、ホワイトデー商戦も振るわず。
バレンタインと合わせてチョコレートロスが大量に発生。
この頃から飲食店の売上不振、食材余剰が顕著となっていきます。
また航空便が次々と減便となり、機内食や空港販売されていた特産品の余剰が増えました。
3月後半からは、海外客にも人気だったお花見関連の食品や桜スイーツの売上が振るわず、さらに今年は桜の開花が早かったために旬の売り時が短くなってしまいました。
さらに国内でお花見自粛が推奨されたことで、ダブルパンチとなりました。
また、卒業式・入学式・結婚式・披露宴の中止・延期によるお祝い用・引き出物用食品の需要が激減しました。
【4月~】
7都道府県に緊急事態宣言発令。
製造・卸・小売店・飲食店などあらゆる食品関連企業が休業に追い込まれ、さらに映画館・博物館等の休業も相次ぎました。
レストランやカフェに食材を納入していた農家や、輸入代理店なども売上の影響を受けました。
いったん輸入した食材は海外に返品することも出来ず国内で売り先を探すしかありませんでしたが、国民の外出自粛により、食品の需要が激減しました。
幸いだったのは、国民が自宅で過ごす時間が増え、多くの食品関連事業者が経済的な打撃を受けている一方で、
「買うことで経済を支えたい」
「もったいないものを出来る限り減らし、消費したい」
と思う人が増え、善意の輪が全国に大きく広がったことです。
また、リモートワーク推進によりオフィス向け菓子や飲み物に余剰が発生しましたが、これらも自宅時間が増えた人々の休憩に消費されることが多くなりました。
国の動きとしては、農林水産省は2月末以降「未利用食品の活用推進」に関する発信を強化し、フードバンクへの寄贈を薦めるほか、未利用食品の削減をビジネスとしている企業(ロスゼロ含む)に関する情報をHPに掲載し、プレスリリースも行っています。
実際のところ、フードバンクやこども食堂は、感染拡大の恐れやボランティアメンバーの子供たちがステイホームとなっていたためイベント中止が相次ぎましたが、経済活動の再開に伴い運営再開するところも増えています。
5月の緊急事態宣言解除以降、食品ロスの発生は一旦減ったとはいえ実はまだまだ発生しています。
営業を再開しても消費の回復に相当時間がかかると思われるからです。
経済活動が再開すれば売れるはずと思っていた商品や食材がなかなか売れないまま最終的に賞味期限が近づいてきます。
6月になって引き続きロスゼロへの相談が相次いでいます。
今回のコロナ禍で大きな希望となったのは「応援したい、買い支えたい」という善意の輪が日本国内で広がったことです。
また国民の間でも「食品ロス」という言葉がさらに浸透し「もったいないものを減らす」意識が高まりました。
今後サスティナブル(持続可能な)社会の実現に向け、この傾向はさらに進むでしょう。
生産者と食べ手をつなぐスタートアップも続々生まれています。
こんな状況下だからこそあえて笑顔でポジティブに食品を消費してもらえるよう、ロスゼロとしても作り手と食べ手をつなぐ役割でありたいと決意を新たにしています。