最新の2020年度の食料自給率が発表されました。
残念なことに、カロリーベースの食料自給率は、2018年度と並んで過去最低の水準となりました。
過去10年間の食料自給率の推移や都道府県別の自給率ランキングも合わせてチェックしましょう!
2020年度の食料自給率が発表!
食料自給率の2つの指標
8月25日、農林水産省が2020年度の日本の食料自給率を発表しました。
食料自給率とは、国内で消費された食料のうち、国産品の占める割合のことです。
逆に考えると、どれくらいの食料を輸入に頼っているのかを知ることもできます。
カロリーベースとは、国民ひとりあたりの1日の摂取カロリーのうち国産品が占める割合のこと。
生産額ベースとは、国民に供給される食料の生産額に対する国内生産の割合を指します。
現在、日本では主にこの2つの指標が使用されています。
これについては、以前ロスゼロブログでもご紹介させていただきました。
(参考:『正しく理解しよう! 「食料自給率」と「エネルギー自給率」のお話)
気になる2020年度の食料自給率は?
さて、2020年度の食料自給率にお話を戻しましょう。
農林水産省によると、2020年度の食料自給率はカロリーベースで37%、
生産額ベースで67%となっています。
カロリーベース食料自給率は、前年度から1ポイント下がり、過去最低水準となりました。
下がった理由として、お米の国内需要が下がったことが挙げられています。
なお、お米の需要は長期的に減少の傾向にあるということです。
一方、生産額ベース食料自給率は前年度から1ポイント上がりました。
これは、豚肉や鶏肉、野菜、果物などの国内生産が増えたことと、魚介類や肉類の輸入が減ったことが理由とされています。
深掘りして「飼料自給率」にも注目!
ここで、食料自給率についてもう一歩だけ深掘りしてみましょう。
食料自給率とは別に、家畜や養殖魚などのエサの自給率である「飼料自給率」というものがあります。
この飼料自給率は、2019年度、2020年度ともに25%で横ばいとなっており、食料自給率より低いことがわかります。
つまり、国産の牛肉や豚肉、魚介類でも、そのエサの7割以上を輸入に頼っているのです。
本当の意味で食料自給率を向上させるには、この飼料自給率も上げていかなくてはならないのではないかと筆者は思っています。
家畜や養殖魚のエサとなる飼料については、SDGsの観点からもみなさんにお伝えしたいことがたくさんあります。
こちらについても、次回以降、ロスゼロブログにてご紹介したいと思います。
直近10年間の食料自給率の動き
農林水産省の発表をもとに、この10年間の食料自給率の推移をグラフにしました。
大きなアップダウンはありませんが、年によってわずかに増減していることがわかります。
(出典:農林水産省『令和2年度食料自給率・食料自給力指標について』より筆者作成)
今回発表された2020(令和2)年度のカロリーベース食料自給率は、2018(平成30)年度とならんで過去最低タイとなっています。
2018年度といえば、7月に西日本豪雨が発生し、甚大な被害をもたらした年です。
この年の「今年の漢字」に『災』という字が選ばれたことも記憶に新しいのではないでしょうか。
今年も豪雨が日本列島を襲い、農業や水産業に大きなダメージを与えています。
今年度分の食料自給率が発表されるのはもう少し先になりますが、大きな影響をもたらすことは想像に難くないでしょう。
都道府県別の食料自給率は?
農林水産省では、都道府県別の食料自給率も発表しています。
公表されているのは2019年度のデータです。
みなさんのお住まいの都道府県が、カロリーベース、生産額ベースでどれくらいの自給率なのか、ぜひチェックしてみてくださいね。
【カロリーベース】
【生産額ベース】
(出典:いずれも農林水産省『令和2年度食料自給率・食料自給力指標について』より筆者作成)
さあ、みなさんのお住まいの地域はどうでしたか?
ちなみに筆者の住んでいる福岡県は、カロリーベース・生産額ベースともに下の方でした。
もちろん都道府県によって特徴が異なり、農業が得意な地域もあれば、産業や観光で地域振興をしているエリアもあります。
そのため、単純に自給率が高いから良い、低いから悪いと評価できるものではありません。
ただ、私たちの暮らしを支える食料がどこからやってきているのかを知るのは大切だと思います。
生活に欠かせない食料について、どの都道府県にどれくらい頼っているのかを知るのに役立つデータではないでしょうか。
日本の食を支える北海道が緊急事態
カロリーベース食料自給率でトップの北海道ですが、実は今、厳しい状況に陥っています。
今年7~8月にかけて、雨が少なく、高温が続いたことから、北海道全体で農作物に被害が及んでいるというのです。
8月23日、北海道農民連盟が緊急要請を発出しました。
(参考:道農連『道農政部に高温・干ばつ及び資材価格高騰等に関する緊急要請と意見交換を実施』)
北海道の食料生産が減ってしまうと、国内の食料システムに大きな影響を与えると予想されます。
私たちの生活にも当然何らかのインパクトがあるでしょう。
食料自給率を考えるうえで、今、日本の食料生産を支える地域がどのような状況にあるのか、これからも注視していきたいと思います。
地球温暖化が農業にも影響を与える
農林水産省は、8月27日に地球温暖化が日本の農業に与える影響をまとめた「令和2年地球温暖化影響調査レポート」を発行しました。
平成19年から毎年まとめられているもので、最新の「令和2年地球温暖化影響調査レポート」によると、お米や野菜、果物だけでなく花や家畜にも温暖化による影響がみられたということです。
お米に関しては、粒の内部が均質にならず、一部だけ白くなってしまう白未熟粒の発生が33の都道府県で確認されています。
また、昨年は暖冬による虫害の影響も19の都道府県で発生しました。
(参考:農林水産省『令和2年地球温暖化影響調査レポート』)
このような温暖化の影響に対し、農林水産省や農家のみなさんは、暑さに強い新しい品種などを開発することで対処しています。
こうした努力があって、お米の食料自給率は100%に近い高い数値を維持できています。
先日、地球温暖化の現状について2回にわたってご紹介させていただきましたので、こちらも合わせてご覧ください。
(参考『改めて知っておきたい、地球温暖化の今 ~前編~』『改めて知っておきたい、地球温暖化の今 ~後編~』)
まとめ
日本の食料自給率が低い水準であるということは、ロスゼロブログの読者のみなさんはご存知だと思います。
もちろん、日本には米国やカナダのように広大な土地がないため、ある程度低い水準になってしまうのは仕方ないのかもしれません。
しかし、筆者は、私たち自身がこの低い自給率に慣れてしまうことが怖いと思っています。
「日本は国土が小さいから仕方ない」ではなく、よりよい循環を目指すことが大切だと思います。
日本の資源を大切に、無駄なく活用できているのか、適切なシステムが構築されているのかは、常にチェックし、改善していかなければならないでしょう。
そのために、筆者自身も含めて、もっともっとアンテナを張って生活していきたいと思います。