2022年11月6日から20日、エジプトのシャルム・エル・シェイクというリゾート地でCOP27が開催され、世界各国の代表が地球温暖化対策について議論しました。
こういったニュースを見聞きした人も多いことでしょう。
でも、今回のCOP27でどのような成果が上がったのか、今後、世界の地球温暖化対策がどうなっていくのか、ちゃんと理解しているという人は少ないのではないでしょうか。
そこでこの記事では、COP27で何が決まったのか、それによって、この先どのような影響が予想されるのかについてわかりやすく解説します。
そもそもCOPとは?
はじめに、改めてCOPとは何かをおさらいしましょう。
COPとは「締約国会議」を意味する“Conference of the Parties”を略したもの。
日本語では正式には「国連気候変動枠組み条約締結国会議」といいます。
国連に加盟する190あまりの国と地域の代表者が集まり、地球温暖化対策について話し合う場合です。
第1回目のCOPであるCOP1は1995年、ドイツのベルリンで開催されました。
それから今日に至るまで、COPは毎年のように開催されてきました。
これまでのCOPの中で特に大きな成果があったものとしては、1997年に京都で開かれたCOP3や、2015年にパリで行われたCOP21があります。
こうした過去のCOPの実績については、こちらの記事で詳しく説明しています。
ぜひ合わせてご覧ください。
(参考:COP26の結果は? そもそもCOPとは? わかりやすく解説! - ロスゼロ)
COPでの議論は私たちの暮らしにどう影響する?
COPが世界の地球温暖化対策を議論する場だと聞くと、「地球規模の問題だから自分とは関係ないや」と思う人もいるかもしれません。
では、本当にCOPで議論されたことは私たちの暮らしとは無関係なのでしょうか?
過去のCOPの成果から紐解いていきたいと思います。
例えば、2015年にパリで開催されたCOP21。
COP21では、産業革命以降の世界の平均気温の上昇を1.5℃までに抑える努力を求める「パリ協定」が採択されました。
それをきっかけに、パリ協定で決まったことが世界各国の政策に反映されていきます。
2020年には、日本も2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル宣言」を行いました。
こうした国の決定は、徐々に地方自治体にも浸透していきます。
「ゼロカーボンシティ」を目指すと表明する自治体が次々と増え、2022年11月末には804自治体になりました。
これらの自治体の人口を合計すると約1億1,933万人で、日本の人口のほとんどをカバーしています。
(参考:環境省 2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体)
自治体の決定は補助制度などの政策に反映されます。
その結果、東京都や川崎市などでは、住宅を含む中小規模建築物を新築する際、太陽光発電設備の設置を大手住宅会社に義務付けるという新たな施策が検討されています。
同様の施策はこの先、全国の多くの自治体にも導入されていくでしょう。
あるいは、義務付けには至らなくても補助金やポイントバックなど、さまざまな施策に取り組む自治体も増えてくると予想されます。
もしかしたら、お住まいの自治体でもこうした施策が始まるかもしれません。
自治体がこのような施策を始めると、それに合わせて民間企業もキャンペーンや販売促進プランを練るでしょう。
ある日、ポストに住宅会社の「太陽光発電をつけませんか」というチラシが入っていたとしたら、その背景には、もとをたどればCOPでの議論があるかもしれないのです。
このように、国際会議での決定は時間をかけて私たちの身近なところに反映されていくため、私たちと無関係ということはないのです。
(CO2の部門別排出量(2020年度確報値)。CO2排出量の合計は10億4,400万トン。出典:環境省『2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要』)
少し視点を変えて、私たち家庭部門からの温室効果ガス排出量を見てみましょう。
2020年度の確報値によると、家庭部門の温室効果ガス排出量(CO2換算)は全体の約16%です。
私たちは、生活の中で知らず知らずのうちに温室効果ガスを出していて、それが積もり積もってこうした結果を生んでいるのです。
温室効果ガスは目に見えず、日本にいると地球温暖化の影響を感じにくい部分があるかもしれません。
しかし時には、自分自身の暮らしがどれほどインパクトをもっているのか、マクロな視点で考えることも大切ではないでしょうか。
COP27の成果は?
さて、前置きが長くなりましたが、2022年11月のCOP27ではどのような成果があったのでしょうか?
COP27はエジプトで開催され、エジプトが議長国を務めました。
COPでは、開催国が議長国として議題を提案することになっています。
発展途上国であるエジプトが提案したのは、地球温暖化の影響を受けやすい途上国に対する支援を強化してほしいということでした。
実は、このテーマは過去のCOPでも議論を呼んだ大きな問題。
温暖化の原因であるCO2などの温室効果ガスを多く排出するのは先進国です。
それに対して、温暖化の影響を色濃く受けるのは発展途上国だという現状があります。
例えば、温暖化による海面上昇によって国土面積が狭まり、移住の必要に迫られているツバルも発展途上国です。
このように、国境を越えた問題である温暖化には複雑な構図があります。
今回、議長国のエジプトはこの難しい問題に対して、解決に向けたアクションを強く求めました。
その結果、激しい議論を経て「ロス&ダメージ基金(仮称)」を設置し、温暖化の悪影響による損失と損害に対する支援を行うことが決定したのです。
2023年のCOP28に向けて、運用のためにさまざまなことを検討する委員会を設置することも決まりました。
この新たな基金の使い道や運用方法はこれから議論されますが、温暖化による自然災害などで被害を受けた途上国の人々を支援するものになると予想されます。
また、高温の環境でも収穫できる農作物の品種改良などのためにも使われるかもしれません。
途上国の中には、私たちの暮らしを支える食料を多く生産している国もあります。
例えば、さまざまな食品の原料として使われる大豆や、毎日のブレイクに欠かせないコーヒー、チョコレートなども主に途上国で生産されています。
世界全体がグローバル化した今、途上国を支援することは間接的とはいえ私たちの暮らしとも無関係ではないのです。
(参考:国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27) 結果概要|外務省)
温暖化を身近なものとして捉え直してみよう
地球温暖化というと、単に気温が上がるだけと思われることも多いようです。
しかし実際には、気温の上昇によって現在の社会システムでは対応しきれない事態が増えることが懸念されています。
例えば、これまで育ててきた農作物でも品種改良しなければ十分な収穫が得られなくなったり、魚などの海産物を採れるエリアが変わって、遠くまで漁に出なくてはならなくなったりといったことが考えられます。
ほかにも、温暖な地域の動植物が北上することで感染症が媒介されたり、桜の開花時期や紅葉の時期が遅れたり、短くなったりすることも予想されています。
もし、こうした影響が顕著になってくると農林水産業に従事する人々だけでなく、観光業やエッセンシャルワーカーの人々にもさまざまな変化が求められるかもしれません。
残念なことに、温暖化の影響は日本でもすでに確認されてきています。
温暖化の原因である温室効果ガスの排出を抑えることに加え、温暖化がもたらす変化に柔軟に対応してくことが、より強く求められているのです。
私たちにできるアクションの第一歩として、温暖化を自分とは無関係な問題だと思わないことが大切だと筆者は考えます。
そうすれば、次の一歩もすぐに踏み出せるのではないでしょうか。