大阪は日本有数の食の都として知られていますが、その背景には大阪人の「もったいない精神」があります。
大阪人は何事も無駄にしないことを重んじ、食べ物に関しても工夫を凝らして美味しく食べる方法を考えてきました。
今回は、そんな大阪の「もったいない精神」から生まれた料理を紹介します。
大阪の「もったいない精神」を生かした料理
紅しょうがの天ぷら
紅しょうがの天ぷらは、お好み焼きや焼きそばに乗せる紅しょうがをそのまま揚げたものです。
紅しょうがは、梅干しを作るときに使った赤しその梅酢に漬け込んだもので、梅酢を捨てずに再利用するという「もったいない精神」の産物です。
紅しょうがの天ぷらは、サクサクの衣と辛すっぱい紅しょうがの味が絶妙にマッチしており、ビールのおつまみやうどんのトッピングとして人気です。
大阪では、天ぷら屋や居酒屋、総菜コーナーなどで広く販売されています。
かすうどん
かすうどんは、豚の内臓(かす)を炒めて醤油ベースのタレで味付けし、うどんに乗せたものです。
かすは、豚肉の中でも安価で栄養価が高く、スタミナ源として重宝されてきました。
かすうどんは、かすを無駄にしないで美味しく食べる方法として考案されたと言われています。
かすうどんは、大阪では昔から食べられている郷土料理であり、大阪市内や堺市などで多く見られます。
あめ玉
大阪のおばちゃんが常に持ち歩き、いろんな人に配ることで有名なあめ玉は、砂糖や水飴を煮詰めて固めた飴です。
あめ玉は、砂糖や水飴など余った甘味料を使って作ることができるため、「もったいない精神」から生まれたと言われています。
船場汁
大阪の船場汁とは、塩鯖や大根などを煮込んだ潮汁のことです。
船場とは、明治から大正にかけて大阪の商業の中心地として栄えた問屋街で、そこで働く人々の日常食として親しまれてきた料理です。
鯖のあらを使ってだしを取り、塩で味を調えるのが本来の作り方ですが、近年では酢や醤油などを加えることもあります。
薬味としてネギや生姜を添えることもあります。
魚のあらまで余さず利用する、大阪らしい“始末の料理”であると言えます。
船場汁は、現在も家庭や飲食店で作られており、秋や冬に温かい汁物が恋しくなる時に食べられています。
昆布じゃがと昆布の佃煮
昆布の一部である「切り落とし昆布」は、通常は捨てられることが多いのですが、大阪ではこれを「昆布じゃが」や「昆布の佃煮」などの料理に活用します。
また、魚のアラや頭も捨てることなく、出汁を取ったり、アラ煮や魚の頭の唐揚げといった料理に活用します。
昆布じゃがは、じゃがいも、人参、砂糖、醤油などと一緒に煮込む料理で、切り落とし昆布の風味が全体に広がり、非常に美味しい一品になります。
一方、昆布の佃煮は、砂糖と醤油で煮詰めることで、おつまみやごはんのお供に最適な料理です。
実は大阪の名物料理は「もったいない精神」から生まれた?
実は、大阪名物の「お好み焼き」も、もったいない精神から生まれたとされています。
お好み焼きは、小麦粉や卵などで作った生地にキャベツや肉、海老などを入れて焼いた料理です。
お好み焼きの歴史は、小麦粉を水で溶いて平らに焼いた煎餅(センビン)から始まり、明治時代に東京で流行したもんじゃ焼きやどんどん焼きが原型となりました。
戦後の食糧難の時代に、余り物や安価な食材を使って満足感を得るために、野菜、海鮮、肉など手元にあるものを混ぜ込んで作られます。
その他もったいない精神から生まれた料理
ところてん
ところてんは、海藻から作られる寒天を細く切って食べる料理です。
寒天は昔から冬に作られていましたが、夏になると溶けてしまうため、もったいないと思った人々が冷水に入れて固めて食べるようにしたのが始まりと言われています。
ずんだ餅
ずんだ餅は、枝豆をすりつぶして甘く煮詰めたものを餅に乗せて食べる料理です。
枝豆は収穫後にすぐに食べないと色が悪くなってしまうため、もったいないと思った人々が保存方法として考案したのが始まりと言われています。
枝豆の風味と餅のもちもち感が絶妙です。
その他にも、鍋料理の残りの出汁を煮込み料理やうどんのスープに再利用する「出汁取り」、冷蔵庫に残った野菜や肉を全て使い切る「炊き込みごはん」なども、もったいないを最大限に活かす調理方法だと言えます。
大阪のSDGsを促進する独自の文化や風習
環境への配慮:「もったいない精神」の大阪の活動
大阪の「もったいない精神」は、食文化だけでなく、環境保全の取り組みにも繋がっています。
都市としてのリサイクル推進はもちろん、一般家庭でも食品ロスの削減やゴミの分別などのエコ活動が広く行われています。
実際、大阪市では、2020年に発表された「環境モデル都市大阪2030ビジョン」のもと、家庭ごみの減量化を図るなど、一人一人が環境に配慮した生活を実践することを目指しています。
大阪の「もったいない」の風習とSDGsの推進
「もったいない精神」は、大阪の地域文化や風習に根差していますが、同時に持続可能な開発目標(SDGs)の推進にも直結しています。
例えば、12番目の目標「つくる責任 つかう責任」では、食品ロスの削減やリサイクルの促進といった具体的なアクションが求められており、これらは「もったいない精神」が生み出した独自の文化や料理に見ることができます。
大阪のこの風習は、地域の伝統を守りつつ、持続可能な未来を創造する一助となっています。
「もったいない」精神を活かした大阪のSDGs推進活動
大阪では、「もったいない」精神を生かした様々なSDGs推進活動が行われています。
たとえば、市民が主体となって行うコミュニティベースのリサイクル活動、学校での環境教育の充実、食品ロス削減に向けた企業との連携など、多面的なアプローチが見られます。
以上、大阪の「もったいない精神」から生まれた料理を紹介しました。
2021年の統計によれば、日本全国で1年間に廃棄される食品の量は約523万トンであり、このうち33%が家庭から出されるものとされています。
大阪人は、「もったいない」という言葉に込められた工夫や感謝の気持ちを大切にしています。
その気持ちが、美味しくて楽しい料理に反映されています。
大阪に行った際には、ぜひこれらの料理を味わってみてください。