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みどりの食料システム戦略とは?サステナブルな農林水産業を目指して

公開日: 更新日:2024.01.05
みどりの食料システム戦略とは?サステナブルな農林水産業を目指して


近年、持続可能な社会の実現に向けた動きが世界中で加速しています。中でも、私たちの命を繋ぐ「食」に関連する取り組みは、特に注目されています。食料供給の安定や環境負荷の軽減、そして次世代への持続可能な農業の継承は、今後の大きな課題となっています。

日本も例外ではなく、その策として「みどりの食料システム戦略」が策定されました。これは、未来の食卓を守りながら環境にやさしい農業を推進するためのビジョンです。


『みどりの食料システム戦略』とは

畑の水やり

みどりの食料システム戦略の策定

我が国の食料・農林水産業は、自然災害や地球温暖化、生産者の減少、新型コロナの影響などの課題に直面しています。持続的な生産・消費や健康な食生活の需要増加、国際的な環境・健康戦略の動向を受け、SDGsや環境を重視する動きが加速する中、適切な対応と持続可能な食料システムの構築が必要となりました。
この状況を鑑み、農林水産省は2021年5月に『みどりの食料システム戦略』を策定しました。これは、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する戦略です。

8つの柱

この戦略では、以下の8つの柱を掲げています。

食料生産基盤の強化
生産力向上と生産コスト低減
農業経営の安定
農山漁村の活性化
食料の安定供給
食品ロスの削減
食料安全保障の強化
国際的な連携

これらの柱は、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を図るための具体的な施策です。みどりの食料システム戦略の実現に向けて、農林水産省は、関係省庁や民間企業と連携して取り組んでいます。

4つの目標

この戦略は、2050年までに、以下の目標を達成することを目指しています

農林水産業のCO2排出量を半減させる
化学肥料の使用量を30%削減する
耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%拡大する
食品ロスを半減させる

2050年までの目標達成は、持続可能な食料供給と環境の保全を両立させる我が国の決意を示しています。これらの施策は、次世代へと健全な食環境を継承するための重要なステップとなります。

サステナブル農業

植えている

サステナブル農業とは

サステナブル農業は、持続可能な農業手法のことを指す言葉です
これは、環境、経済、社会の三つの側面を考慮しながら食料を生産する方法を意味します。土壌の健康を維持するための自然な手法を用い、化学肥料や農薬の過剰使用を避け、生態系との調和を図るような農業活動を推奨します。
短期的な利益を求めるのではなく、長期的な視点で農地や環境を守りながら農業活動を行うことがサステナブル農業の核心です。

サステナブル農業の必要性

近年、地球温暖化や環境破壊が進行している中で、サステナブル農業の重要性は高まっています。
従来の農業方法では、土壌の健康や生態系が損なわれるリスクがある一方、サステナブル農業はそのリスクを軽減します。持続的な食料供給の確保、農家の所得の安定、そして地球環境の保護という三つの大きな目的を果たす手法として、現代社会において非常に重要な役割を果たしています。

社会との関わり

消費者の意識が変わる中で、サステナブル農業の重要性はさらに増しています。環境に優しい製品やサービスへの需要が高まりつつある現代において、化学物質を使わず、持続可能な方法で生産された食品への関心が急増しています。
サステナブル農業は、これらの消費者ニーズに応えるだけでなく、持続可能な農業モデルを提供し、農家や業界全体の未来を守るための鍵となっています。

『みどりの食料システム戦略』とサステナブル農業

消費者

『みどりの食料システム戦略』の実現手段としてのサステナブル農業

『みどりの食料システム戦略』の根底には、持続可能な食料生産と供給の確保があります。
サステナブル農業はこの戦略を実現するための主要な手段の一つとして位置づけられています。サステナブル農業の取り組みを通じて、環境への負荷を低減しつつ、高品質な食品の安定供給を目指すことができます。

新しい技術と知識の統合

『みどりの食料システム戦略』は、最新の技術や知識の導入を強調しています。これに対応する形で、サステナブル農業も持続可能な生産技術や環境を考慮した栽培方法の研究、導入を進めています。
これにより、変動する気候や生態系に柔軟に対応し、持続可能な生産体制を築くことが期待されます。

消費者との連携強化

近年、消費者の間でサステナブルな商品や生活への関心が高まっています。このトレンドを背景に、『みどりの食料システム戦略』は消費者との連携を強化する取り組みを進めています。
サステナブル農業の取り組みを通じて生産された商品は、消費者にとって魅力的な選択肢となり、持続可能な食料システムの構築に寄与するとともに、生産者と消費者との新しい結びつきを生むことが期待されます。

『みどりの食料システム戦略』を実現するための消費者の役割

消費者が選ぶ

消費者の選択の影響力

消費者の購買行動は、食料産業の方向性を大きく左右します
『みどりの食料システム戦略』が推進するサステナブルな生産方法や価値観を実現するためには、消費者がその価値を理解し、サステナブルな商品やサービスを優先的に選択することが不可欠です。市場でのサステナブル商品の需要増加は、生産者や事業者にも環境に配慮した方法での生産や提供を奨励し、戦略の成功へとつながります。
したがって、消費者自身が持つ選択の影響力を意識し、その責任を持つことが求められます。

意識変革の促進と教育

『みどりの食料システム戦略』の成功は、消費者の意識や価値観が持続可能性に傾倒することに大きく依存しています。
これを実現するためには、教育や啓発活動が欠かせません。学校や地域、メディアを通じて、サステナブルな食料システムの重要性や取り組み内容を広めることで、消費者の行動や選択を変える動機を育成することができます。
特に次世代の消費者への教育は、長期的な戦略の成功にとって必要不可欠です。

コミュニティの力を活用する

『みどりの食料システム戦略』は個人だけでなく、コミュニティ全体の協力と支援が必要です。消費者が地域コミュニティやグループを通じて情報交換や意見交換を行うことで、サステナブルな取り組みの普及や認知度の向上を促進することができます。
また、コミュニティ内での共同購入や農産物の直売所設置など、具体的なアクションを起こすことで、サステナブルな食料供給の仕組みを地域レベルで構築し、戦略の具体的な実現に貢献することが期待されます。

『みどりの食料システム戦略』における食品ロス削減

技術の進歩

業界連携と技術導入

食品ロス削減の実現のため、農業者、流通業者、消費者との連携は不可欠です。この戦略では、業界全体でのベストプラクティスの共有や、先進技術の導入を進めることで、食品ロスの予防と削減の実現を図っています。
例えば、賞味期限や消費期限の表示基準の見直し、スマートパッケージの導入、効率的な物流システムの構築など、多岐にわたる取り組みが検討されています。

教育と啓発活動

食品ロス削減のための取り組みは、技術や制度の導入だけでは十分ではありません。消費者の意識や行動の変革が必要です。
『みどりの食料システム戦略』においては、啓発活動や教育プログラムを通じて、食品ロスの問題点やその影響、そして日常でできる簡単な削減方法などを伝えることで、持続可能な食料消費の文化を築くことを目指しています。これにより、SDGsの達成やサステナブルな社会の実現に向けた一歩を踏み出すのです。

デジタル技術を活用した食品ロス追跡と最適化

近年のデジタル技術の進化は、食品ロス削減の取り組みに新たな可能性をもたらしています。『みどりの食料システム戦略』は、IoTやAI技術を活用した食品の追跡と最適化に注力しています。
例えば、スマートセンサーを使用して食品の鮮度や保存状態をリアルタイムで監視し、必要に応じて消費者や事業者に通知することで、食品の消費を促進させる仕組みが考えられています。また、AIを使用して、供給チェーンの中で発生する食品ロスのパターンを分析し、予測し、これを基に最適化策を提案することも可能となってきています。
デジタル技術の導入により、食品ロスを具体的に可視化し、それに基づく対策を迅速に実施することが可能となり、サステナブルな食料供給の実現に大きく寄与することが期待されています。


我々が日々の食卓に並べる食材の背後には、環境との調和を模索する農家の努力や国の戦略があります。『みどりの食料システム戦略』は、その先端を行く一つの策として我々の未来を形作る鍵となるものです。

サステナブルな農林水産業は、単なる流行やトレンドを超え、次世代への大切な遺産となり得るのです。しかし、この戦略が真に意味を持つためには、私たち消費者の理解と協力が不可欠です。日常の選択一つ一つが、未来の環境や食の安全を左右するのです



農林水産省:みどりの食料システム戦略

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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に交換留学で訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。