ロスゼロブログ

カテゴリ一覧

家電の廃棄はどうなる?環境に被害を与えるレアメタルとは?

公開日: 更新日:2024.01.09
家電の廃棄はどうなる?環境に被害を与えるレアメタルとは?


家電の廃棄はどうなる?環境に被害を与えるレアメタルとは?

捨てるテレビ


家電の廃棄とリサイクルの仕組み

家電製品は、私たちの生活に欠かせないものですが、故障したり、新しいものに買い替えたりするときには、どうやって処分するのでしょうか?

家電製品には、レアメタルと呼ばれる希少な金属が多く含まれており、これらを適切にリサイクルしないと、環境に悪影響を及ぼすだけでなく、資源の無駄遣いにもなってしまいます。

日本では、家庭用エアコン、テレビ(ブラウン管式・液晶式・プラズマ式)、電気冷蔵庫・電気冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機の4品目については、家電リサイクル法という法律に基づいてリサイクルが義務付けられています。

この法律では、消費者は廃棄する際に収集運搬料金とリサイクル料金を支払い、小売業者は引き取りと製造業者等への引渡しを行い、製造業者等は再商品化(リサイクル)を行うという役割分担が定められています。

また、管理票(マニフェスト)制度が設けられており、廃家電が適切にリサイクルされているかどうかを消費者からも確認できるようになっています。


レアメタルとは何か?

レアメタルとは、「希少金属」という意味で、地殻中の存在量が少なかったり、採掘や精錬のコストが高かったりする非鉄金属のことです。

レアメタルは非鉄金属全体を指す場合もありますが、狭義では鉄や銅などのベースメタルや金や銀などの貴金属以外で、産業に利用される非鉄金属を指します。

レアメタルは日本独自の用語であり、英語圏ではマイナーメタルと呼ばれます。

レアメタルには以下のような元素が含まれます

  • リチウム [Li]
  • ベリリウム [Be]
  • ホウ素 [B]
  • 希土類 [La-Lu, Sc, Y]
  • チタン [Ti]
  • バナジウム [V]
  • クロム [Cr]
  • マンガン [Mn]
  • コバルト [Co]
  • ニッケル [Ni]
  • ガリウム [Ga]
  • ゲルマニウム [Ge]
  • セレン [Se]
  • ルビジウム [Rb]
  • ストロンチウム [Sr]
  • ジルコニウム [Zr]
  • ニオブ [Nb]
  • モリブデン [Mo]
  • パラジウム [Pd]
  • インジウム [In]
  • アンチモン [Sb]
  • テルル [Te]
  • セシウム [Cs]
  • バリウム [Ba]
  • ハフニウム [Hf]
  • タンタル [Ta]
  • タングステン [W]
  • レニウム [Re]
  • 白金 [Pt]
  • タリウム [Tl]
  • ビスマス [Bi]

レアメタルの用途と環境への影響

レアメタルは、様々な用途で使用されています。

主なものは以下の通りです。

  • 構造材への添加:鉄や銅などのベースメタルに添加して合金を作り、強度や耐食性を向上させる。例えば、ステンレス鋼、耐熱材、特殊鋼、ニッケル合金、銅合金、チタン合金、アルミ合金などに利用される。
  • 電子材料・磁性材料:半導体レーザー、発光ダイオード、一次電池、二次電池(ニッケル水素電池)、燃料電池、永久磁石(希土類磁石)、磁気記録素子、磁歪材料、磁気冷凍、超伝導材料などに利用される。
  • 機能性材料:光触媒、磁気光学媒体、EDレンズなどの光学ガラス、透明電極(ITO)や光通信用のフッ化ガラス、ガスセンサーや切削工具の刃先などのニューセラミックス、形状記憶合金、水素吸蔵合金などに利用される。また、CRTやプラズマディスプレイ、蛍光灯などの蛍光体にも使用される。

レアメタルはこれらの用途で現代社会に欠かせないものですが、一方で環境に被害を与える可能性もあります。

レアメタルの採掘や精錬は大量のエネルギー消費や有害な廃棄物を生じることが多く、地球温暖化や土壌・水質汚染などの問題を引き起こすことがあります。

また、レアメタルは産出地が限られており、安定供給が困難な場合もあります。

特に中国はレアメタルの産出量が世界の大半を占めており、その政策や経済情勢によって価格や供給量が変動することがあります。


レアメタルのリサイクルと将来展望

レアメタル


レアメタルは希少で貴重な資源であるため、リサイクルが重要です。

リサイクルによって新たな資源供給源を確保するとともに、採掘や精錬に伴う環境負荷を低減することができます。

また、「都市鉱山」と呼ばれる家電製品や自動車などからレアメタルを抽出する技術も開発されています。

しかし、

レアメタルのリサイクルは、多くの利点がありますが、同時に多くの難しさや課題もあります。

レアメタルのリサイクルには以下のような問題が挙げられます。


回収率の低さ

レアメタルは家電製品や自動車などに微量に含まれており、回収するためには高度な分離・精製技術が必要です。

また、回収対象となる製品の寿命や使用状況によっては、レアメタルが劣化したり、他の物質と混ざったりしている場合もあります。

これらの理由から、レアメタルの回収率は非常に低く、一部のレアメタルでは1%以下という報告もあります。


コストの高さ

レアメタルのリサイクルは、回収から分離・精製までに多くの工程とエネルギーを必要とします。

そのため、リサイクルコストは新規採掘コストを上回ることが多く、経済的に採算が取れない場合もあります。

また、リサイクルコストはレアメタルの市場価格に影響されるため、価格が下落するとリサイクル事業が成り立たなくなる可能性もあります。


法制度や社会的意識の不備

レアメタルのリサイクルを促進するためには、法制度や社会的意識が重要です。

しかし、日本では家電4品目以外のレアメタル含有製品に対するリサイクル法は存在しません。

また、消費者や事業者のレアメタルに対する認識や関心も低いと言われています。

これらの状況を改善するためには、政府や業界団体などが積極的に啓発活動や普及活動を行う必要があります。

 

以上のように、レアメタルのリサイクルは簡単ではありませんが、将来的には必要不可欠な取り組みです。

レアメタルは私たちの生活や産業に不可欠な資源であり、その供給安定性や環境保全性を高めるためには、リサイクルだけでなく、省資源化や代替素材開発なども含めた総合的な戦略が求められます。

私たちはレアメタルの価値や重要性を正しく理解し、その有効活用と保全に努める必要があります。

 


【参考文献】

ロスゼロブログ一覧へ

この記事を書いた人

村上

サステナブルライターとして、SDGsや生活の知恵を発信しています。育児をしながら、子どもと一緒に地球に優しい生活を目指し中。趣味は料理と美術館巡り。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。