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母国語がなくなる?世界で言語が減少している理由

公開日: 更新日:2024.01.09
母国語がなくなる?世界で言語が減少している理由


言語は私たちが思考し、感じ、コミュニケーションを取る基盤ですが、現在、数多くの言語が絶滅の危機に瀕しています
これが何を意味するのか、なぜ気にかけるべきなのか―その答えは、単なる言葉以上のものにつながっています。

言語の消失が進む背景とその影響、そして私たちがどのように言語を守るかについて、様々な角度から探っていきます。


絶滅危機言語とその影響

いろんな言語


消滅危機言語の特徴

消滅危機言語とは、母語話者の数や使用機会が減少し、近い将来に消滅する恐れのある言語です
絶滅危機にある言語は、通常、話者数が非常に少ないという特徴があります。多くの場合、特定の高齢層だけがその言語を話すという現象も見られることが多いです。

言語学者と文化機関によると、世界には約7000の言語が存在し、そのうちの40%以上が消失の危機に瀕しています。こうした言語は多くの場合、地理的に隔離された場所や先住民族、マイノリティコミュニティによって話されています。
話者が1000人以下、あるいは数十人にまで減少している言語も少なくありません。
このような状態が続くと、一世代か二世代でその言語は確実に絶滅します。

絶滅の瀕した言語を保存しようとする努力もありますが、多くの場合、資源と注目が不足しています。


方言と絶滅危機

言語と方言の関係は複雑であり、一般的には方言は特定の地域やコミュニティで話される言語の一変種とされます

言語はより広い地理的・社会的範囲で使われ、公式な場や教育で採用されることが多いです。
一方で、方言は地域文化やアイデンティティと深く結びついており、しばしば口承文化や地元の伝統に使われ、それ自体が一種のアイデンティティを形成していますます。方言は、言語の多様性を示すものであり、大切に守っていくべきものです。

しかし、方言もまた、絶滅危機に瀕していることが多いです。教育制度で標準語が優先されること、都市化やグローバリゼーションによる地方からの人口流出などが主な原因です。

例えば、日本では過疎地域で方言が急速に失われています。また、中国のように、国家によって標準語の使用が強制される場合、多くの方言が失われる危機にあります。

このような状況は、言語だけでなく、地域の文化や歴史にも深刻な影響を及ぼしています。


アイデンティティと言語

言語は、人々が自分自身やそのコミュニティを理解し、表現する重要な手段です。そのため、言語が失われると、それによって形成される文化や伝統、アイデンティティもまた失われる危機に瀕します。

いくつかの研究では、言語の消失が精神的健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。特に先住民族やマイノリティコミュニティにおいては、自分たちの言語を失うことがコミュニティ全体の結束を弱め、各個人の精神的健康にも影響を与える可能性が高いです。

言語はコミュニケーションだけでなく、その地域やコミュニティ、個々の人が持つ豊かな歴史や文化、伝統、価値観を反映しています。そのため、言語の絶滅は多大な損失を意味し、その保存と継承は極めて重要です。


言語とSDGs

いろんな国民


言語と文化の連鎖

言語はそのコミュニティの文化、歴史、価値観を反映する重要な要素です

例えば、多くのアフリカの言語には自然環境や季節に関する独自の専門用語が存在します。これは、その地域の人々が長い歴史を通じて自然環境と密接な関係を持っていることを示しています。
逆に言えば、これらの言語が失われたときには、それに結びつく独自の知識や文化も失われてしまいます。

UNESCOによれば、無形文化遺産の約40%が言語に関連しているとされています。これはSDGsの目標11(持続可能な都市とコミュニティを作ろう)や目標16(平和と公正を全ての人々に)と直接的に関連しており、文化遺産の保護が持続可能な発展に不可欠であることを示しています。


言語継承の重要性

言語は文化、歴史、そしてアイデンティティの基盤となるものです。それは単にコミュニケーションの手段ではなく、祭りや食文化、工芸技術といった地域文化を継承するための重要なツールでもあります。
例えば、特定の祭りに使われる独特の言葉や表現は、その祭りの歴史や意義を理解する鍵となります。

言語の継承が途絶えた場合、それによって文化や伝統も失われる危険性があります

この点は、持続可能な開発目標(SDGs)の目標4、すなわち「質の高い教育をみんなに」と密接に関連しています。教育プログラムにおいて、地域言語での教材や授業を取り入れることは、子どもたちが自分自身の文化や歴史に誇りを持つための第一歩です。

また、言語はコミュニティに所属する感じを高めると同時に、地域社会の一体感をもたらします。これは、社会全体としてのレジリエンスや持続可能性に寄与する重要な要素であり、教育制度が果たすべき重要な役割とも言えるでしょう。


言語と文化遺産の保護

言語の保護は文化遺産の保全に直結しています。
アフリカや日本の方言など、地域独特の言語や方言はその地域の文化や歴史に密接に関わっています。

ニュージーランドのマオリ語のように、言語の保護と振興が行われている地域では、それが文化や歴史の保全に繋がっています。これはSDGsの目標15(陸の豊かさも守ろう)や目標17(パートナーシップで目標を達成しよう)とも連携しており、国際協力を通じて地域の文化と言語を保護する試みがなされています。

各要点はSDGsとも深く関連しており、言語と文化遺産の保護は持続可能な未来を築く上で不可欠な活動と言えるでしょう。


グローバリゼーションとデジタル時代の言語進化

都会とテクノロジー


グローバリゼーションと言語多様性

グローバリゼーションの進展は、言語環境にも多様な影響を与えています。

英語がビジネスや科学、政治など多くの分野で国際的に優勢になる一方で、少数言語の維持という問題も増加しています。多文化主義政策が採用される国も増え、少数言語の使用と保存が奨励されている場合もあります。

しかし、これは首都や大都市でよく見られる現象で、地方では状況が大きく異なることが多いです。都市への人口集中と都市化が進むにつれ、地域独自の言語や方言が薄れ、消失の危機に瀕しています。
特に、若い世代が地元の言語に興味を持たない、あるいはそれを「古い」と感じる傾向がある場合、言語の消失リスクは一層高まります。


デジタル教育の二面性

デジタルテクノロジーの進化により、言語教育も大きく変貌を遂げています。

オンラインの教育プラットフォームやスマートフォンアプリが急速に普及している一方、それらの多くは主要な言語に焦点を当てています。
UNESCOによると、デジタル教育ツールの約80%は英語で提供されているという事実は、地域言語や少数言語が疎外されがちであることを物語っています。

このような状況は、デジタルデバイドを拡大させるだけでなく、言語の多様性にもマイナスの影響を与えています


テクノロジーと言語の保存

テクノロジー、特に人工知能(AI)や機械学習は、絶滅危機に瀕している言語の保存に役立つ可能性があります。
AIが自然言語処理を使って言語の構造を解析し、保存する取り組みも見られます。

しかし、多くの研究と資源が主要言語に集中しているため、少数言語や未研究の言語が見過ごされることも少なくありません。MITなどの研究機関が報告しているように、未研究の言語への研究資金は年々減少している状況です。

このような状況下で、地域コミュニティや非営利団体が独自に言語保存の取り組みを進めている例もありますが、資源が限られているため、効果的な保存活動が求められます。


言語、教育、地域活性化:多面的な取り組みで未来を繋ぐ

子どもの教育


教育と言語の繋がり:ポリシーから現場まで

教育は言語の維持や消失に直接影響を与え、教育政策の優先順位がキーとなる要素です。

多くの国、特に途上国では、教育制度が主要な国際言語に偏っています。
例えば、インドの公立学校では英語やヒンディー語が主に教えられる一方で、多くの地方言語は教育システムから排除されています。

UNESCOの報告によれば、子供の約40%が母国語でない言語で教育を受けるために学校に行けないとされています。その一方で、オーストラリアでは先住民の言語を取り入れる施策が一部の学校で行われています。

これらの傾向は、教育政策が言語消失に与える影響を如実に示しています。

地域活性化と言語多様性の相乗効果

地域のアイデンティティと経済の活性化は、しばしば地域言語や方言の保存と密接に関連しています。

日本の沖縄はその典型的な例。ウチナーグチ、沖縄独自の言語は観光業で積極的に使われ、観光客に沖縄の深い歴史と文化を体験させています。これにより、観光資源としての価値が高まっています。
しかし、ウチナーグチ話者は減少はしており、懸念される問題です。

言語は、観光だけでなく、教育や日常生活での使用促進が求められています
地域のアイデンティティを維持しながらの経済活性化は、地域言語の保存という視点からも重要性を増しています。

沖縄のような地域で、言語と文化の保存を通じた持続可能な活性化策の構築が今後の課題となるでしょう。


地域コミュニティでの持続可能性と言語継承

持続可能な地域社会を築くためには、地域住民が自らの言語と文化に価値を見い出し、それを継承することが重要です。

この点で、ニュージーランドのマオリ語政策は特筆すべき例です。
マオリ語は公用語として位置づけられ、多くの学校でも教えられています。その結果、マオリ文化に対する一般の認識と尊重が高まり、言語の継承が進んでいます。

また、カナダのケベック州ではバイリンガル教育が推進され、英語とフランス語の共存が図られています。

このような取り組みは、地域社会に多様性と包摂性をもたらす重要なステップです。


言語保存への政策と戦略

大阪城


言語保護のための政策

言語の保護には多面的なアプローチが不可欠です。

具体例として、イスラエルのヘブライ語復活運動は非常に指摘されるケースです。
この運動は政府、学校、メディアが一体となって推進されました。特に、学校教育での言語使用が強調され、子供たちが自然にヘブライ語を用いる環境が作られました。さらに、国際的にもヘブライ語の資源を増やす努力が続けられています。

欧州連合(EU)では、言語多様性が文化遺産と見なされ、多くの少数言語が補助金や専門プログラムを通じて保護されています。
例えば、フランスではブルトン語が小学校で教えられていることもその一環です。

このような施策は、UNESCOの報告によれば少数言語の衰退を食い止め、多様性の維持に寄与しています。


観光と地域言語

観光業はしばしば、地域言語と文化の保存に重要な役割を果たします。

多くの観光地はその地域独自の文化や言語が魅力となっており、観光客がその「違い」を体験したいと考えるケースが多いです。
バスク地方やケルト地域などでは、地域言語と文化が観光資源として活用されています。観光客は地元の言語で歌われる伝統的な歌や、地元の言語で書かれた看板、メニューなどに触れることで、その土地の特色を直接体験します。

このような観光資源の有効活用が進むことで、地域言語の維持にも寄与しています。

地域住民や事業者が観光収益を上げるためには、言語や文化を維持し、それを市場に出す必要があります。観光業が繁盛すればするほど、言語を保存し、次世代に継承するインセンティブが高まります。

観光と地域言語の相互作用に関する研究も進んでいます。

2018年のWorld Travel & Tourism Councilの報告によれば、観光収益と地域言語の維持は明確な相関関係にあるとされています。これは観光地で特に重要で、観光が地域経済の主要な柱である場合、その言語と文化は貴重な資産とされ、経済的にも保護される傾向にあります。

これらを踏まえて、観光戦略の設計においては、単に短期的な収益を追求するだけでなく、地域言語の維持という長期的な観点も組み込む必要があります。
例えば、地域の言語でガイドブックを作成したり、観光プロモーションに地域言語を用いるなど、多角的なアプローチが求められます。


言語学と戦略設計

言語の保存や維持に対するアプローチは、科学的かつ体系的な計画が求められます。この点で、言語学—特に社会言語学や応用言語学—は極めて重要な役割を果たします。

言語学者は、新しい方言や語彙が形成される過程、または言語や方言が消失するメカニズムについて深い理解を持っています。

オーストラリアでのアボリジニ言語保存の事例は特に注目に値します。
多くのアボリジニ言語は絶滅の危機に瀕しており、その保存と再興が急務とされています。一部の言語学者は、フィールドワークに基づいた研究を行い、アボリジニコミュニティと密接に協力して独自の文字体系や教材を開発しています。
これにより、言語の文書化が進み、学校教育やコミュニティ内での使用が促進されるため、次世代への言語継承がより容易になります。

2019年の言語学会で発表された研究では、このような地道ながら科学的なアプローチが、言語保存において非常に有効であると結論づけられました。
このような研究は、政策メーカー、教育者、地域コミュニティが協力して効果的な戦略を設計するための貴重な知見を提供します。

要するに、言語学はただ単に言語の構造や使用について研究するだけでなく、言語が社会や文化、そして個々のアイデンティティにどのように影響を与えるかについても深い洞察を提供します。
このような多角的な視点は、言語保存の戦略設計において欠かせない要素であり、多様なステークホルダーが参加するプロジェクトにおいて、より包括的かつ効果的な戦略を練るのに不可欠です。



言語が単にコミュニケーションの手段でなく、文化やアイデンティティ、さらには社会の持続可能性にも深く関わっていることを考慮すると、言語の保存は非常に重要な課題です。

今、私たちは全てが繋がるグローバルな世界で生きていますが、その一方で地域性や多様性を尊重し、守る責任もあります。

各々がこの問題にどれだけ敏感であるか、そして具体的に何を行動に移せるかが、未来の多様な言語風景を形作る鍵となるのではないでしょうか。






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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に交換留学で訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。