最近、サステナブルな暮らしを目指す中で「リサイクル」がよく話題になりますね。
特に、私たちの身近な紙もその中心的な役割を担っています。
普段何気なく使って捨てる紙が、どのように再生されて再び私たちの元に戻ってくるのか、その舞台裏を深堀りしてみたいと思います。
古紙再生の基礎知識
古紙回収の歴史
古紙回収は、日本では1950年代から行われるようになりました。
1950年代の日本は、高度経済成長期を迎え、紙の使用量が急増していました。その一方で、森林資源の減少も懸念されていました。そこで、紙の使用量を削減し、森林資源を守るために、古紙回収が始まりました。
1960年代には、自治体による古紙回収が全国的に広まりました。また、民間企業による古紙回収も行われるようになりました。
1970年代には、環境問題への関心が高まり、古紙回収の取り組みがさらに進みました。1970年には日本製紙連合会が「古紙リサイクル推進綱領」を発表し、古紙回収の促進を呼びかけました。
1990年代には、古紙リサイクルの技術が進歩し、再生紙の品質が向上しました。これにより、古紙回収の普及が進みました。
2000年代以降は、電子化の進展により、紙の使用量は減少傾向にあります。しかし、古紙の需要は依然として高く、古紙回収は重要な取り組みとして継続されています。
古紙再生のフロー
古紙のリサイクルは、大きく分けて以下の4つの工程で行われます。
収集・運搬
家庭や事業所から集められた古紙は、自治体や民間業者によって収集されます。自治体では、家庭ごみとして収集していることが多いですが、一部の自治体では、資源ごみとして収集しているところもあります。また、民間業者では、回収ボックスや回収車などを設置して、古紙の回収を行っています。
選別
運搬された古紙は、選別工場において、鉄やプラスチックなどの異物や、汚れや破れなどの不良品を取り除く選別工程が行われます。異物や不良品を取り除くことで、リサイクルの品質を向上させることができます。
破砕・中間処理
選別された古紙は、破砕機によって細かく砕かれ、さらに水洗いや脱墨などの処理が行われます。破砕工程では、古紙を細かく砕くことで、リサイクルの効率を向上します。また、水洗い工程では、古紙に付着した汚れを洗い流し、脱墨工程では、古紙に付着したインクを除去することで、リサイクルの品質を向上させることができます。
造紙
処理された古紙は、新しい紙の原料として利用されます。古紙は、新しい紙の原料として約6割を占めており、重要な資源となっています。
古紙のリサイクルは、資源の有効活用や環境への負荷の低減につながります。また、古紙の回収やリサイクルによって、雇用や産業の創出にもつながっています。
古紙再生の基本ステップ
分別から収集までの道
古紙の再生を考えたとき、その第一歩は我々が使い終わった紙をきちんと分別することから始まります。
古紙は、新聞紙、雑誌、段ボール、書籍、包装紙など、種類によってリサイクルできるものとできないものがあります。また、異なる紙質のものが混ざってしまうと、後の再生工程での品質が低下する恐れがあります。
そのため、家庭や事業所では、種類ごとに分別して収集するのが基本です。
古紙の分別は、自治体ごとにルールが定められています。一般的なルールとしては、新聞紙、雑誌、段ボール、書籍、包装紙の5種類に分別するものが多いです。また、プラスチックや金属などの異物が混入していると、リサイクルできないので、注意が必要です
分別された古紙は、自治体や民間の業者によって収集されます。収集方法としては、戸別回収、持ち込み回収、集積所への持ち込みなどがあります。
日本における古紙の回収率は、2022年で66.3%。その大部分が家庭から出るものとなっています。この高い回収率を維持し、さらに向上させるためにも、私たち一人一人が正しい分別の知識をもつことが大切です。
脱墨と洗浄の重要性
紙を再生するには、古紙についているインクや汚れをきれいに取り除く工程が必要です。この工程を「脱墨」と言います。例えば、新聞や雑誌の文字部分は、この脱墨の際に取り除かれます。
この工程が不十分だと再生紙にインクの跡が残ったり、品質が低下したりします。だからこそ、脱墨は非常に重要なステップとなっています。
脱墨には、化学処理や機械処理などの方法があります。化学処理では、水と特殊な化学薬品を使って、インクや汚れを分離し、浮き上がらせることで紙から取り除くため、環境への負荷が懸念されます。
機械処理では、インクを機械的に除去しますが、脱墨率が化学処理よりも低くなります。
洗浄では、古紙に混入した汚れや不純物を除去します。洗浄には、水洗いや薬品洗浄などの方法があります。水洗いでは、古紙に付着した汚れを水で洗い流します。薬品洗浄では、汚れを溶かして除去します。
抄造と再生紙の製造
脱墨され、きれいになった古紙は「パルプ」という紙の原料に戻されます。
このパルプを機械を使って再び紙の形にすることを「抄造」と言います。パルパーという機械で古紙を細かく砕いて、水に混ぜて攪拌します。攪拌によって、古紙の繊維がほぐれて、均一なパルプになります。
次に抄紙機という機械でパルプを均一に塗りつけて、紙を漉き取ります。漉き取られた紙は、乾燥機で乾燥させて、均一な厚みや強度を持った紙として仕上げられます。
抄造工程を経た後は、再生紙の製造に移ります。再生紙は、古紙を原料として製造された紙のことを指し、環境に優しいという特徴があります。
再生紙の製造工程では、抄造で得られた紙のシートをさらに加工し、用途に応じた品質や形状に仕上げていきます。
再生紙の品質や厚み、色などを調整するために、この抄造工程でさまざまな工夫がされています。例えば、オフィスでよく使われるA4のコピー用紙は、白さや書き心地が求められるため、抄造の際に特定の工程を加えることで、その要求に応えるように製造されています。
リサイクル紙の品質保持
品質維持のための加工
リサイクル紙と言っても、その品質はさまざまです。普段私たちが使っているノートやコピー用紙、そして高級なカードや包装紙まで、用途に応じて品質が異なります。
これは、再生工程での加工の違いによるものです。
たとえば、高級な紙を作るためには、古紙の中の短い繊維を取り除く工程が加えられることもあります。また、特定の用途に合わせて防水加工や光沢加工を施すことで、紙の特性を向上させることができます。
主な加工としては、以下のようなものがあります。
漂白:インクや汚れを除去する脱墨の工程で、完全に除去できなかったインクを漂白します。漂白によって、紙の白さが向上します。
添加剤の配合:紙の強度や白さを向上させるために、添加剤を配合します。添加剤には、パルプを接着する役割をするものや、紙の白さを向上させるものなどがあります。
抄造条件の調整:抄造機の条件を調整することで、紙の強度や白さを向上させることができます。
これらの加工によって、再生紙の品質は新紙に近づきます。
ブリーチングと紙の白さ
紙を見ると、その白さには違いがありますよね。この白さは、再生工程の「ブリーチング」という工程で調整されます。ブリーチングとは、文字通り紙を漂白することで、古紙の色味を取り除き、白さを回復させる工程です。
漂白には、化学処理と機械処理があります。
化学処理では、塩素やオゾンなどの化学薬品を使ってインクを漂白します。化学処理によって、紙の白さが向上しますが、環境への負荷が懸念されます。
機械処理では、光や熱を使ってインクを漂白します。機械処理によって、化学処理よりも環境への負荷が低減できますが、白さが化学処理ほどではありません。
日本では、環境への負荷を低減するために、機械処理による漂白が主流になっています。
特に、オフィスや学校で使用されるコピー用紙などは、清潔感が求められるため、このブリーチング工程が重要です。再生紙の白さは、ブリーチングの回数や方法によって微妙に異なり、それぞれの紙に最適な白さを追求しています。
利用率と品質の関係
再生紙の品質は、利用率によっても影響を受けます。利用率が高いほど、古紙の種類や品質が均一になり、再生紙の品質も向上します。
例えば、日本のオフィスで使用される再生コピー用紙の利用率は約80%と言われています。
この高い利用率を支えるのは、品質の良さです。品質が高いと、紙詰まりのリスクが減少し、印刷の品質も安定します。
そのため、多くの企業や学校が再生紙を選ぶ背景には、品質保持の取り組みが欠かせないのです。
このように、リサイクル紙の品質と利用率は密接な関係にあり、お互いに影響し合っています。
環境への影響とリサイクル効果
カーボンフットプリント削減
気候変動の問題が注目される中、私たちの生活スタイルがどれだけ地球に負荷をかけているのかを示す指標が「カーボンフットプリント」です。
新しい紙の製造には、木材を伐採し、製紙する過程で、多くのエネルギーと水が消費されます。また、製紙過程では、二酸化炭素などの温室効果ガスが排出されます。
古紙をリサイクルすることで、これらの環境負荷を削減することができます。
古紙をリサイクルすることで、木材の伐採を抑制し、森林の保全につながります。また、製紙に必要なエネルギーや水の消費量を削減し、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減することができます。
驚くべきことに、再生紙を使うことで、これらの排出量を20〜30%削減することができると言われています。つまり、再生紙を選ぶだけで、私たち一人一人が環境に与える影響を大きく減少させることが可能なのです。
資源循環と環境の未来
資源循環とは、資源を繰り返し利用し、廃棄物を減らすことです。
紙というのは、私たちの生活に欠かせない存在ですが、木材という限られた資源から作られています。リサイクルを行うことで、同じ紙を繰り返し使用することができ、新しい木材を伐採する必要が減少します。
古紙のリサイクルは、資源循環の重要な取り組みなのです。
国民生活センターによると、再生紙の使用量が1トン増えると、木材の伐採量が約2.5トン減るとされています。
このような取り組みを通じて、持続可能な資源循環型社会を実現し、美しい緑の未来を次世代に残すことができるのです。
エネルギー消費とリサイクル
新しい紙を一から製造する過程は、エネルギーを大量に必要とします。特に、木材からパルプを得る工程では、高温や高圧の条件下で蒸解処理を行うため、多くの電力が消費されるのです。
具体的に、新しい紙1トンを生産する際には、おおよそ4,000kWhのエネルギーが必要とされています。これは、一般家庭で1ヶ月以上使用する電力量に相当します。
一方、古紙を再生して紙を作る際は、木材からパルプを得る過程が省かれるため、そのエネルギー消費は大幅に削減されます。
具体的には、再生紙の製造では新しい紙の製造に比べておおよそ半分のエネルギー、すなわち2,000kWh程度で済むと言われています。
このようなエネルギーの違いは、地球の環境にも大きな影響を及ぼします。
エネルギーの消費を抑えることで、CO2の排出量を削減することができ、地球温暖化の防止に繋がります。また、エネルギーの節約は資源の有効活用にも繋がります。
これらの点から、再生紙の使用は、エネルギーの効率的な利用や環境保全の観点からも非常に意義深い選択と言えるでしょう。
古紙リサイクルの課題と未来
現行のリサイクルの課題点
再生紙は環境への優しさを誇りますが、課題もないわけではありません。
分別の徹底:古紙は、種類や品質によってリサイクルできるものとできないものがあります。そのため、家庭や事業所では、種類ごとに分別して収集することが重要です。しかし、古紙の種類や品質の違いによる分別は、地域によって指導や啓発の差があり、正確な分別が難しいことが問題とされています。
品質向上:古紙を再生した紙は、新紙に比べて強度や白さが劣ります。そのため、品質を向上させるための技術開発が進められています。近年、ナノ技術やバイオ技術を駆使した研究が行われ、新紙に近い品質を目指す動きも見られます。
回収率の向上:日本における古紙の回収率は、2022年で66.3%です。回収率をさらに向上させるためには、啓発活動や収集方法の改善、地域コミュニティや学校教育でのリサイクル意識の向上が不可欠です。
リサイクルの徹底を目指す上で、全てのステークホルダーの協力と理解が求められる時代となっています。
電子化と紙資源のトレンド
電子化の波は新聞や雑誌だけでなく、オフィス文書や公的な書類にも影響を及ぼしています。紙の持つ温かみや質感は電子デバイスでは再現しにくいものの、環境への影響や情報の取り扱いの利便性を考慮すると、電子化のメリットは多いと言えます。
一方で、オンラインショッピングの普及に伴い、商品の包装や配送用の段ボールの消費が増加しています。これらの包装材は短期間で捨てられることが多く、リサイクルが非常に重要となってきています。
また、高級品の包装やギフト用の包装紙に関しても、デザインや質感が求められるため、紙資源の適切な利用とリサイクルがより一層必要とされています。
このように、紙の消費動向は変わりつつあるものの、その価値と重要性は今後も続くでしょう。
持続可能性とリサイクルの方向
近年の持続可能性への取り組みは、リサイクル業界に新たな風をもたらしています。特に古紙リサイクルは、持続可能な社会を形成する上で中心的な役割を果たしています。
技術の進化により、再生紙も何度もリサイクルしても品質が維持されるような革新的な製品が開発されています。これは、資源が有限である現代において、私たちの生活品質を維持しつつ環境負荷を減少させるための鍵となります。
今後のリサイクル業界の大きな課題として、更なる資源循環の徹底が挙げられます。これには、紙の消費量自体の削減や古紙の再利用率の向上が不可欠です。さらに、古紙の品質を高める技術や、新たなリサイクル方法の開発も続々と行われています。
これらの取り組みを通じて、限られた資源を最大限に活用し、多くの人々が持続可能な環境の中で生活できる未来を築いていくことが目指されています。
私たちの日常に欠かせない紙。その一枚一枚には、多くの手間と努力、そして環境への配慮が込められています。
リサイクルされる過程を知ることで、紙の価値やその背後にある環境への取り組みが見えてきますね。
日々の生活の中で紙を使用する際、再生の大切さを思い出し、より持続可能な選択をする手助けとなることを願っています。
ロスゼロとは?
- フードロス削減、楽しい挑戦にしよう!
- 通販サイト「ロスゼロ」では、様々な理由で行先を失くした「フードロス予備軍」を、その背景やつくり手の想いと共に、たのしく届けています。