日本で使われている電気の7.7%は水力発電で賄われています。(日本のエネルギー 2020年度版)
水力発電がCO2を発生しない、エコな発電方法であることを知っていましたか?
脱炭素と再生可能エネルギーへの変換が叫ばれれている今、改めて水力発電と再生可能エネルギーでこれから目指す方向を見ていきましょう。
水力発電の原理
水力発電って聞いたことはあるけど、どんな仕組みかを説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。
水力発電の仕組み
水力発電は、水の位置エネルギーが運動エネルギーに変換されることで電気を生み出発電方法です。川やダムの水を通じて、水車やタービンを回転させることで、動力が発電機に伝わり、電気が生成されます。
水の量と流れの速さが発電量を左右するため、大規模なダムでは、巨大な水量が利用されて膨大なエネルギーが得ることができます。
発電所の構造と機能
水力発電所は、水車や発電機、制御装置など、多くの要素で構成されています。
発電所の核となるのは、水車と発電機ですが、それらを支えるダムや水路などの構造物も重含まれます。ダムは水を貯め、必要に応じて水車に水を供給します。発電所には水量や発電量を調節するための制御装置が備えられており、電力需要に応じた柔軟な運用が可能です。
エコなエネルギー源
水力発電は再生可能エネルギーの一形態として、そのクリーンな特性から環境に配慮した電力供給源として重要な役割を果たしています。
電力変換効率が高い
水力発電の最大の魅力はエネルギー変換効率の高さです。水の落差や流れの力を直接的に電気エネルギーに変換するため、一般的に、水力発電所は約90%の効率を持つとされています。
大規模な発電所では、大量の水を効率的に活用することで、巨大な電力を生成します。この効率性は、他の太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーと比較しても優れており、持続可能なエネルギー供給の重要な柱となっています。
CO2排出量が少ない/温室効果ガスの削減
水力発電は他のエネルギー源と比較してCO2やメタンガスなどの温室効果がスの排出量が極めて低い発電方法です。石炭火力発電では1キロワット時あたり約867グラムのCO2が排出されるのに対し、水力発電の場合、この数値はわずか数グラム。これは水力発電が燃料を必要とせず、自然の力のみで発電されるためです。
そのため水力発電は、温暖化対策の観点から見ても、他の多くの発電方法よりも優れた選択肢と言えます。
ランニングコストが安い
水力発電は初期投資は大きいものの、運用コストは比較的低く抑えられる傾向にあります。
太陽光発電や風力発電の寿命は20~30年であることと比較すると、水力発電の発電所の寿命は長く、50年以上に及ぶこともあります。また発電時に燃料が不要であるため、長期的に見て安価な電力供給が可能です。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の報告によると、水力発電の平均発電コストは他の再生可能エネルギー源と比較しても低い傾向にあります。
発電の継続性と安定性
安定した電力供給
水力発電は天候等に左右されにくいため、他の再生可能エネルギー源と比較して安定したエネルギー供給が可能です。
太陽光発電は日射量に、風力発電は風量に発電量が左右されますが、水力発電ではダムなどの水貯蔵施設を活用することで、長期間の乾燥期でも、蓄えられた水を使用して発電を継続することができるため、安定した電力供給源となっています。
需要に合わせて供給量が調整しやすい電力
水力発電はダムの水量を調整し発電量を自在に変更することが可能なため、日中や夜間、季節による電力需要の変動に合わせて、効率的な電力供給をすることができます。ピーク時にはダムのゲートを開き多くの水を流し、需要の低い時には流れを制限することができるので、無駄のないエネルギー源と言えます。
日本に向いてる?地形で考える水力発電
豊富な水資源
日本は降水量が多く、河川に恵まれるなど豊富な水資源を有しているため、水力発電に適しています。
河川は、水力発電に必要な水量を供給する自然の貯水池のような役割を果たしており、日本の総発電量の7.7%は水力発電によって賄われています。
日本の水力発電は、自然環境と技術の調和によって支えられています。
水力発電に優位な地形
国土の約7割が山である日本。急峻な地形が水の落差を生み出し、発電におけるエネルギー源となっています。落差が大きいほど、発電効率は高くなります。
日本の多くの水力発電所は、このような地形的利点を活かして設計されています。
地域ごとに異なる水力発電
日本における水力発電は地域によって特徴が異なります。
例えば、北海道や東北地方では豊富な降水量と広い流域を持つ河川が多く、大規模な水力発電が行われています。一方、関東や関西地方では、限られた水資源を効率的に活用する小規模な水力発電が一般的です。
これらの地域ごとの特性を理解し、最適な発電方法を選択することが、水力発電の効率と持続可能性を高める鍵となっています。
地域の自然条件と技術的アプローチの組み合わせにより、日本全国でその土地に合わせた水力発電が活用されています。
水力発電の種類
水力発電にはさまざまな方式があり、それぞれ利点と欠点があります。発電の方法は、発電地の自然環境や電力需要に応じて適切に選択されます。
ダム式
ダム式は巨大なダムを建設し、貯められた水の落差を利用して発電します。
この方式は大量の電力を安定して供給できる反面、大規模な建設と環境への影響が課題です。
水路式
水路式は自然の河川の流れを利用して発電します。
ダム式よりも環境への影響が少なく、建設コストも低いですが、発電量は限られます。
その他の発電方式
ダム式、水路式の他に、揚水式や潮汐式など、特定の条件下で利用される方式もあります。
揚水式は、電力需要が低い時に水を貯め、需要が高い時に放流して発電します。これにより、電力供給のピーク時に対応できる特徴があります。
潮汐式は海の潮の流れを利用する方法で、潮の満ち引きによる水位の変化を利用します。
これらの多様な発電方式は、それぞれの地理的、環境的条件に合わせた持続可能な電力供給の選択肢を提供しています。
水力発電の環境影響と解決方法
生態系への影響評価
発電所の建設と運用は、周囲の生態系に影響を及ぼす可能性があります。
水力発電のダムの建設は河川の流れを変え、水生生物の生息環境に変化をもたらします。例えば、サケなどの魚類の遡上が困難になることがあり、それによって生態系のバランスが崩れる恐れがあります。
このため、水力発電所を計画する際には、環境影響評価が不可欠です。これには、生物多様性の保全や生態系の保護を目指した詳細な調査と分析が含まれます。
環境保護と水力発電の両立
近年は水力発電と環境保護を両立させる方法が模索されています。
小水力発電
小水力発電は、小規模な河川や人工水路を利用して行われる水力発電方法で、下記のような特徴があります。
・地域密着型
・自然環境の影響が少ない
・設置コストが低い
出力が1メガワット以下のものが一般的で、再生可能エネルギーの地域分散型モデルとして山間部や離島など電力インフラが未発達な地域での電力供給源として注目されています。
岐阜県郡上市の石徹白(いとしろ)という集落は小水力発電によって地域のエネルギー自給率は200%を超えており、余った電力は売ることで収益を得ています。
魚道の設置
ダムの設置によって生態系や河川の流量への影響を最小限に抑えるための取り組みとして、魚道の設置や流れの自然な模倣により、生物の移動を妨げない工夫が進んでいます。
水力発電の環境課題
水力発電が環境に与える影響は多岐にわたり、これらの課題に対処することは持続可能なエネルギー供給にとって重要です。
例えば、大規模なダム建設は、生態系の変化だけでなく、水質の問題や土地利用の変更など、幅広い環境への影響を及ぼす可能性があります。
これらの影響を最小限に抑えるためには、環境への影響を徹底的に評価し、適切な環境保護措置を講じることが求められます。また、既存の水力発電所の環境への影響を定期的に監視し、必要に応じて改善策を施すことも重要です。
再生可能エネルギーの未来
大規模な電力プラントでの発電ではどうしても送電線での電力を消費してしまいます。
より効率的に生産した電気を使用するには地域での発電と消費を考えていく必要があります。
どのエネルギー源にもその土地ごとに向き・不向きがあるため、適切に地域ごとに選んで運用し、エネルギーの地産地消を検討し、エネルギーの大量生産・大量消費の脱却も考えながら使って再生可能エネルギー100%を目指していきたいですね。
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