ロスゼロブログ

カテゴリ一覧

【迫りくる2024年問題】食品ロス削減の新たなる壁

公開日: 更新日:2024.03.10
物流危機によるフードロス

2024年4月、日本は新たな問題に直面することになります。それは、物流危機による食品ロスの増加です。

現在、日本ではトラックドライバーの不足が深刻化しています。その影響で、食品の輸送が遅延したり、中断したりする可能性があります。その結果、食品が腐敗し、食品ロスにつながります。

2024年問題は、物流問題だけではなく、私たち一人ひとりの生活に深く関わる環境や社会の課題にも通じています。


物流危機と食品業界

ドライバー不足


ドライバー不足の影響

近年、日本の物流業界は、ドライバー不足に悩まされています。国土交通省の調査によると、2022年4月時点で、トラックドライバーの不足数は36万人に達しています。これは、2017年の調査結果と比べて約2倍に増加しています。

特に、2024年問題が迫る中で、この問題は食品業界にも大きな影響を与えています。
運送業者の人手不足は、食品の配送遅延や配達不能などの問題を引き起こし、鮮度が命の食品にとっては、これが直接的なロスの増加に繋がります。例えば、新鮮な野菜や果物、日持ちのしない食品は、時間通りに届かなければ品質が落ち、結果として廃棄されることが増えてしまいます。

また、ドライバー不足によって、輸送コストが上昇し、食品の価格に転嫁される可能性もあります。


食品輸送の時間問題

物流危機の中で、特に食品輸送における時間の問題は深刻です。
食品の輸送には、時間がかかります。例えば、北海道産の野菜を関東へ輸送する場合、通常、1日以上かかります。

食品は、生産から消費者の手元に届くまでの時間が長引くほど、品質が低下し、廃棄されるリスクが高まります。遠方からの輸送では、長時間の移動が必要となり、これが食品の鮮度低下を招いてしまうのです。

食品の賞味期限は、短いもので数日しかありません。特に、生鮮食品の場合、一秒でも早く消費者に届けることが重要であり、輸送時間の短縮が求められます。輸送時間が長いと、食品ロスの増加につながります

また、輸送時間が長いほど、輸送コストも高くなります。

ドライバー不足や交通渋滞などにより、この課題はより複雑なものになっています。


物流停滞と食品ロス

物流の停滞は、食品ロスの増加に直結しています
ドライバー不足や交通問題などにより、食品が定められた時間内に目的地に届かないことが増えており、これがロスの一因となっています。

特に、腐りやすい食品や賞味期限の短い商品では、配達の遅れが致命的です。運送の遅れにより、スーパーマーケットやレストランなどの小売店での販売機会を逃し、結果として大量の食品が廃棄されてしまうのです。

このように、物流の効率化は、食品ロス削減の鍵を握っていると言えるでしょう。


食品廃棄の新たな課題

食品廃棄の現状


日本の食品破棄現状

日本における食品廃棄の現状は、深刻な問題として注目されています。

日本の食品ロスは、年間約642万トンと推計されています。これは、国民1人あたりに換算すると、年間約45kgに相当します。

食品ロスは、事業系(生産・流通・小売・外食)と家庭系に分けられます。事業系の食品ロスは約377万トン、家庭系の食品ロスは約265万トンとなっています。
事業系の食品ロスの原因としては、生産過程での過剰生産や、流通過程での賞味期限切れや規格外品などが挙げられます。家庭系の食品ロスの原因としては、買いすぎや、食べ残しなどが挙げられます。

これは日本の食料自給率が低い状況とも重なり、無駄にされる食品の量が一層問題視されています。賞味期限切れや見た目の問題で廃棄される食品が多く、これには消費者の意識改革も求められています。


野菜のロスと対策

野菜は食品ロスの約3割を占め、主要な食品ロスの原因となっています。野菜のロスの原因としては、規格外品の発生や食べ残しなどが挙げられます。

野菜は収穫後の鮮度が落ちやすく、輸送や陳列の過程で多くが廃棄されます。また、形や大きさ、色などの基準に満たない規格外野菜は市場に出されず、廃棄されることが多いです。

対策として、地産地消の促進や見た目ではなく品質を重視する消費行動が提案されています。近年では、農家と消費者を直接結ぶ取り組みも増えており、新鮮な野菜を無駄なく消費する流れが生まれつつあります。


食料需給の予測課題

食料の需給予測は、食品ロス削減において非常に重要な要素です。特に、人口動態の変化や消費傾向の予測が難しい中、どの程度の食品が必要かを正確に把握することは一層困難になっています。

AIやビッグデータの活用による需給予測の精度向上が期待されていますが、まだ完全ではありません。小売業者やレストランでは、過剰な在庫を抱えないような注文システムの導入や、売れ行きの予測に基づいた在庫管理が求められています。これにより、食品廃棄の削減に繋がると期待されています。

食料需給の課題を解決するためには、食料生産の効率化や、食料ロスの削減など、さまざまな対策が必要です。
食料生産の効率化としては、農業技術の開発や、農地の集約化などが進められています。食料ロスの削減としては、事業者や消費者の取り組みに加えて、政府の支援なども重要です。


生産者の対策

地産地消


生産過程の最適化

2024年問題に伴うトラックドライバー不足に直面し、農家や工場は生産過程の見直しを迫られています。ドライバー不足による輸送の遅延は、特に鮮度を要する農産物にとって大きな問題です。

このため、生産者は、収穫から出荷までの時間を短縮することに注力しています。

輸送ルートの見直しや、集荷・配送の自動化などにより、輸送効率を向上させる。
地域の農家や工場と連携し、共同輸送や、共同加工などを行う。

例えば、地域内での短距離配送を増やすことで、運送の効率化を図り、食品ロスを削減しています。また、地元の消費者に直接販売する直売所の活用など、新たな販路開拓にも力を入れており、これにより、余剰生産を防ぎつつ、地域経済にも貢献しています。

こうした取り組みは、食品ロスの削減だけでなく、持続可能な地域社会の形成にも寄与しているのです。


地産地消の推進

トラックドライバーの不足は、食品の長距離輸送に大きな影響を与えていますが、地産地消により、この問題をある程度緩和することができます。

地元で生産された食品をその地域内で消費することで、輸送に必要なドライバーの数や距離を減らし、結果として食品の鮮度を保つことができます。
これは、食品ロスの削減だけでなく、輸送コストの削減にもつながります。

また、地元の農産物を利用することで、地域経済を支え、地域の農家を助けることにもなります。

地産地消は、単に食品ロスの問題を解決するだけでなく、地域のつながりを深め、地域全体の豊かさを高める効果を持っています。


AIを活用した生産量の予測

ドライバー不足による輸送の遅れは、特に農産物の鮮度や供給に影響を与えるため、生産量を正確に予測し、過剰生産を防ぐことが重要です。AIを利用することで、消費者の購買傾向、気象データ、季節変動など様々な要因を分析し、より精密な生産計画を立てることが可能になります。

これにより、市場に出すべき適切な量を生産し、余剰分が発生するリスクを最小限に抑えることができます。特に、農産物の輸送が遅れることによる品質低下や廃棄の問題を軽減するためには、このような技術の活用が効果的です。

AIによる生産量の予測は、食品ロス削減だけでなく、持続可能な農業経営にも寄与する画期的な取り組みとして期待されています。


食品業界・消費者の対応

最小限必要なものを買う


小売・外食業界の取り組み

小売・外食業界は、物流危機に対応するためにさまざまな策を講じています。
物流の効率化:配送ルートの見直しや、集荷・配送の自動化など
在庫管理の強化:需要予測の精度向上や、余剰在庫の削減など
フードバンクへの寄付:賞味期限が近づいた食品の寄付など

ドライバー不足や輸送コストの上昇に直面し、地域密着型の配送網の構築や、効率的なルート計画の導入が進められています。例えば、配送の最適化を図ることで、食品の鮮度を保ちながらコストを抑えることが可能です。
また、近隣の店舗間での共同配送など、コラボレーションを活用した取り組みも増えており、物流危機への対応として有効です。

消費者にできること

トラックドライバー不足は、食品の配送遅延を招き、特に鮮度を要する商品の賞味期限を短縮させることに繋がります。

この問題に対処するために、消費者は賞味期限が近い商品を積極的に購入し、それらを優先的に消費することが求められます。
賞味期限が近い商品の購入は、食品ロスの削減に直接貢献し、同時に、小売業者の在庫管理を助けることにもなります。また、地産地消の促進にも関わり、地元で生産された食品を選ぶことで、長距離輸送に伴う食品ロスのリスクを減らすことができます。



2024年問題に直面し、トラックドライバーの不足が顕著になる中、持続可能な消費社会を実現するためには、経営と消費のバランス及び地域社会との連携が鍵となります

物流の遅延が引き起こす商品の供給不安は、消費者の過剰購入や食品ロスを増加させる要因です。

これに対し、事業者は環境に配慮した生産体制の確立、過剰な在庫や廃棄の削減を目指す必要があります。消費者側では、必要量のみの購入や地元産食品の選択が求められます。

また、地域単位での短距離配送や地産地消の促進は、食品ロス削減と地域経済の活性化に貢献します。
経営者と消費者、そして地域社会が一丸となって持続可能な消費行動を実践することが、2024年問題への対応策として不可欠です。









同じカテゴリの他の記事はこちら

ロスゼロブログ一覧へ

この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に交換留学で訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。