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【令和時代の食料自給率】なぜ日本は米を失うのか?

公開日: 更新日:2024.09.04
稲穂

2024年夏、スーパーの米売り場から商品が消えた日、あなたはどんな気持ちでしたか?

日本の主食だったお米。今、私たちの食卓でその存在感が薄れています。
そして日本の食料自給率は依然として低迷したまま。

なぜ、こんなことになったのでしょうか?

その背景には、気候変動、食のグローバル化、そして私たちの食生活の変化など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。

食料自給率の低下は、単なる食の問題ではありません。それは、私たちの暮らし、そして未来を大きく揺るがす危機なのです。


令和5年度食料自給率

令和5年度食料自給率イメージ

令和5年度、食料自給率の現状は?

2024年8月に、令和5年度の食料自給率が発表されました。食料自給率とは、国内の食料全体の供給に対する国内生産の割合を示す指標です。 令和5年度の食料自給率は、カロリーベースで38%、生産額ベースで61%となっており、低い水準で横ばい状態です。

カロリーベース:国民が1年間で消費するカロリーのうち、国内で生産されたカロリーの割合を示します。いわば、国民の栄養摂取量を満たすために必要なカロリーを基準とした計算方法です。
生産額ベース:国内で生産された食料品の金額が、国内で消費される食料品の金額に占める割合を示します。これは、経済的な価値に着目した計算方法で、農業の経済的な側面を表します。

日本の食料自給率は、かつては70-80%でしたが、緩やかに減少し、2000年代に入ってからは低いままでの横ばい状態です。
自給率の低下は、国内での農産物の生産量減少や、消費パターンの変化に直結していると考えられます。特に、国内での米の消費が減少し、その結果、輸入食品に依存する割合が高まっています。


自給率低下、深刻な問題点

【問題点】
食料自給率が低いということは、国内で生産される食料だけでは国民の食生活を支えられないことを意味します。海外からの食料輸入に大きく頼っているため、国際的な食料価格の変動や、気候変動による生産量の減少などの影響を受けやすく、食料の安定供給が脅かされる可能性も高まります。

日本の食料自給率の低下は、すでに複数の深刻な問題を引き起こしています。
現実として、国際的な市場での食料価格の変動に対する脆弱性が増しているため、輸入食品の買い負けが起こっています。また、自然災害やパンデミックの際に食料供給が不安定になるリスクも高まっています。

原因】
日本の食料自給率が低下している原因の一つには、高齢化や後継者不足による農業人口の減少が挙げられます。特に、米の生産においては、農家の高齢化が進み、耕作放棄地が増加していることが問題となっています。また、食生活の欧米化が進み、肉や乳製品の消費が増加していることも、穀物や大豆などの輸入量増加の一因となっています。

さらに、農業を取り巻く環境も厳しさを増しています。気候変動による異常気象は、農業生産に大きな影響を与え、収量を不安定にする要因となっています。また、食料品の価格競争が激化し、農家の所得が減少していることも、農業の衰退を加速させています。


日本の食料事情、最新データ

令和5年度の最新データによると、日本の食料事情はいくつかの重要な動向を示しています。

品目別にみると、コメの自給率は高いものの、小麦や大豆などの穀物、肉類、乳製品の自給率は低い状況です。特に、大豆はほとんどを輸入に依存しており、家畜の飼料用としても重要な作物であることから、大豆の安定供給は日本の食料安全保障にとって不可欠です。

また、地域ごとの食料生産の差が顕著になり、特定の地域では農業が盛んになっているものの、全国的に見ると依然として課題は多いです。これらのデータから、地域産業を生かした食料自給率向上の取り組みが求められています。政府や地方自治体は、地域特有の農産物を支援する方策を拡充しています。


2024年、米不足の現状

炊飯器に入った炊き立てご飯

米不足、原因と影響

2024年夏、日本で令和の米不足が起こっており、一部で米が買えない状況が発生しています。

【大雨と高温による供給不足】
昨年2023年に各地で起きた大雨や高温被害により、お米の不作が発生しました。特に北・東日本では高温が続いたことで収穫量が減少し、供給量が減ってしまいました。

【インバウンドによるお米需要の増加】
訪日外国人観光客(インバウンド)の増加により、和食消費が高まり、お米の需要が上昇しました。

政府は9月以降、新米の出回りによって供給が安定し、価格も落ち着くとの見方を示しており、備蓄米の放出には慎重な姿勢であり、引き続き米の需給状況を注視し、必要に応じて適切な対策を講じるとしています。

しかし、日本の米不足は、今年に限った問題ではありません。これからも発生する可能性があるのです。

実は1970年代をピークに、米の生産量は減少しているのです。1980年代から消費者の食生活が多様化し、米から他の食品へのシフトが進んだため、米の消費量は減少し、この消費減に対応する形で、1990年代に入ると政府は「減反政策」を本格的に導入しました。この政策により、確かに国内の米価は一定の安定を見せたものの、国内の生産者には収益性の低下をもたらす一因となりました。

現在、気候変動による異常気象が米の生産量に直接的に影響しており、特に台風や長雨が頻発することで収穫量が減少しています。加えて、農業従事者の高齢化と後継者不足が生産力の低下を招いています。

この米不足は、食料自給率の低下に直結し、国内の食料安全保障にも懸念を抱かせています。結果として、国内市場での米価格が上昇し、消費者にも影響を及ぼしています。


米価高騰、農家の苦境

米不足の影響は、米価の高騰という形で現れています。米価の高騰は、一見すると農家にとっては喜ばしいことのように思えますが、実際にはさまざまな要因が絡み合い、深刻な問題を引き起こす可能性があります。

【生産コストの上昇】
生産コストは増加傾向にあり、特に肥料や農薬の価格上昇が顕著です。また、人手不足による労働力の確保が困難であり、これがさらなるコスト増につながっています。
農家はこれらの経済的圧力の中で生産を続ける必要がありますが、採算が取れない場合、米作を止めざるを得ない状況にも追い込まれかねません。これにより、国内の米供給はさらに不安定化する可能性があります。

【米の消費量の減少】
日本人の食生活の多様化が進み、米からパンやパスタなど他の炭水化物へのシフトが進むみ、米の需要が減少しています。
日本では政府が米の生産量を意図的に制限する減反政策がとられており、市場に出回る米の量が限られるため、需要が減少しても価格が下がりにくく、場合によっては上昇することもあります。その結果、消費者は米を買う際に高い価格を払うことになり、購買力が落ち込むという状況になっています。


食卓から米が消える?

米不足が続けば、私たちの食卓から米が消えてしまうのでしょうか。
現時点では、そこまで悲観的な見通しは立てられていません。しかし、このまま対策を講じなければ、将来的に米不足が深刻化する可能性は否定できません。

米不足対策として、さまざまな取り組みが行われています。例えば、新規就農者の育成、スマート農業の導入、品種改良による高収量品種の開発などが挙げられます。

しかし、これらの取り組みだけでは、米不足問題を解決することは難しいでしょう。消費者の意識改革も重要です。国産米の消費を増やし、食料自給率の向上に貢献することが求められます。


日本の食卓、変化の兆し

米のない食卓

食の多様化、米の地位は?

私たちの食卓は、かつてとは大きく様変わりしています。昔は、一汁三菜が一般的でしたが、今では世界各国の料理が身近になり、食の選択肢が格段に増えました。スーパーマーケットには、多種多様な食材が並び、外食産業も多国籍化が進んでいます。

しかし食の多様化は、米の地位を揺るがす結果にもつながっています。かつては主食として欠かせなかった米ですが、パンやパスタ、麺類など、他の主食を選ぶ人が増えています。特に若い世代では、米を食べる機会が減っているという調査結果も出ています。

これにより、米の消費量は徐々に減少しており、特に都市部ではその傾向が顕著です。家庭での食事だけでなく、外食産業でも多様な食品が提供されており、消費者の選択肢が増えていることが米の地位をさらに揺るがしています。

若者の食習慣、米離れ進む

若者の食生活は、私たちの食卓の変化を象徴的に表しています。
忙しい生活スタイルや単身世帯の増加により、調理時間を短縮できる食品やコンビニ弁当やファストフードをよく食べる、外食が多いなど、手軽に食べられる食事を好む傾向が強まっています

このような食生活の変化は、米離れを加速させています。若い世代は、米を炊くのが面倒だったり、飽きてしまったりして、米を食べる機会が少ないようです。また、健康志向の高まりから、低カロリーな食事を好む傾向もあり、米よりもパンやサラダを選ぶ人が増えています。
また、カフェやファストフード店の増加も若者の食習慣に影響を与えており、これが日本の伝統的な食文化の変容を促しています。

米離れは、日本の食文化の多様化という側面もある一方で、将来的な食料自給率の低下につながる可能性も懸念されています


食生活のカロリーベース

食生活の変化は、私たちの体の栄養バランスにも影響を与え、日本人の食生活におけるカロリー摂取源は大きく変化しています
かつては、米を主食とすることで、炭水化物を十分に摂取できていましたが、食の多様化によって、炭水化物の摂取量が減り、代わりにたんぱく質や脂質の摂取量が増加している傾向にあります。

厚生労働省の国民健康栄養調査によると、日本人のカロリー摂取量は、近年横ばいとなっています。しかし、米からのカロリー摂取割合は年々減少し、代わりに肉や乳製品、外国の食品からのカロリーが増えています。

この傾向は、国民の健康にも影響を与えており、飽和脂肪酸の摂取増加や糖質の質の変化が見られます。これらの変化は、生活習慣病のリスクを高める可能性があり、将来の食品政策や栄養指導において重要な考慮事項となっています。


食品ロス削減と自給率向上

店先に並ぶ包装されていない作物

食品ロス、深刻な社会問題

日本の食品ロス量は、年間約600万トンと推定されています。これは、国民一人あたり、毎日茶碗一杯のご飯を捨てている計算になります。

食品ロスは、食料の無駄遣いだけでなく、環境への負担、経済的損失も大きな問題となっています。

家庭から出る食品ロスの量は年間で数百万トンにも上ります。これには賞味期限の誤解や過剰な食品購入が影響しており、多くの食材が消費されずに廃棄されています。この問題に対処するためには、消費者の意識改革とともに、食品業界における包装や販売戦略の見直しが必要です。


消費と生産の関連性

食料自給率を高めるためには、消費者の食習慣や食品の消費パターンが生産戦略にどのように影響を与えるかを理解することが非常に重要です。

日本では、地産地消の取り組みが食料自給率向上の鍵となっています。地産地消とは、その地域で生産された農産物や食品を同じ地域で消費することを指します。この取り組みにより、長距離輸送に伴う燃料コストやCO2排出を削減し、食品の鮮度も保たれます。
地産地消の推進は、地域農業の活性化に直結します。地元の生産者が生産した食材が地元で消費されることで、生産者は安定した収入を得ることができ、地域経済も潤います。さらに、消費者は新鮮で質の高い食材を手に入れることができ、食品の安全性に対する信頼も高まります。

このように、消費と生産の密接な関連性を理解し、適切な政策や市場の機構を整えることが、持続可能な食料自給率の向上には不可欠です。地産地消を中心とした食料自給率の向上策は、環境保護と経済の両方に利益をもたらし、将来的には食料安全保障の強化にも寄与することでしょう。


食料ロス削減、自給率向上へ

食料ロスを削減することは、自給率を向上させる上で重要なステップです。

日本は、食料の多くを輸入に依存しているため、食料自給率の向上は喫緊の課題です。食品ロスを減らすことで、国内で生産された食料を無駄なく消費することができ、また、循環するシステムを確立することで、食料の有効利用が可能となり、結果的に食料自給率の向上に貢献することができます

具体的には、食品の賞味期限管理の改善や、過剰在庫を減らすための需給調整が求められます。また、食品ロス削減目標の設定、食品ロス削減に関する啓発活動、食品バンクの設立などが挙げられます。

食品ロス削減の取り組みは、消費者だけでなく、生産者、流通業者にも責任があります。より効果的な取り組みを進めるためには、政府、企業、市民社会が一体となって取り組むことが必要です。


食料危機、私たちの未来

ロボットによる未来の農業イメージ

食料危機、世界的な課題

世界的に見て、食料危機はますます深刻な問題となっています。

近年、世界各地で頻発する自然災害や気候変動、戦争、経済不安が食料生産に悪影響を及ぼし、多くの国で食料不足が顕在化しています。また人口増加に伴う食料需要の増大も、この問題をさらに複雑にしています。

食料危機は、単に食料が不足するだけでなく、社会不安や紛争を引き起こす可能性も孕んでいます
歴史を振り返ると、食料不足は革命や戦争の引き金となった例が数多くあります。また、食料価格の高騰は、貧困層への影響が大きく、社会格差を拡大させる要因ともなります。

国連の報告によると、今後数十年で世界の人口が増加し続ける中で、十分な食料供給が求められる一方で、既存の農業技術や資源では対応が難しい状況になると予測されています。これに対処するためには、持続可能な農業技術の開発と国際的な協力が急務です。


日本の食料安全保障の危うさ

日本は食料自給率が低く、多くの食料を海外からの輸入に頼っており、世界的な食料危機の影響を受けやすい状況にあります。この状況は、国際市場での食料価格の変動や輸出国の政治的・経済的な不安定さによって、日本の食料安全保障を脆弱にしています
特に、異常気象や紛争などによる主要な穀物生産国の生産量の減少は、日本の食料供給に大きな打撃を与える可能性があります。

さらに、日本の農業は、高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加など、さまざまな問題を抱えています。これらの問題が解決されない限り、日本の食料自給率はますます低下し、食料安全保障が脅かされる可能性が高まります。

特に最近のグローバルな供給網の混乱は、日本における食料の安定供給に警鐘を鳴らしています。国内での生産力強化と食料備蓄の増加、消費パターンの見直しが、これからの食料安全保障を支える鍵となります。


全国の農業持続可能性

日本の農業は、持続可能性を目指して多くの課題に直面しています。特に農業人口の減少と高齢化は、生産効率の低下を招いており、これが食料自給率にも影響を及ぼしています。

しかし近年、日本の農業では持続可能な農業を実践する農家が増えています。有機農業や多品目栽培など、環境に配慮した農業手法を取り入れることで、土壌の肥沃度を高め、生物多様性を保全しようとする取り組みが全国各地で行われています。
また、地域住民と協力して、地産地消を推進する取り組みも活発化しています。地域の特産品を活かした加工品開発や、農産物の直売所開設など、地域経済の活性化にもつながる取り組みが注目されています。
これらの取り組みは、食料自給率の向上だけでなく、地域の活性化や環境保全にも貢献しています。

一方、政府は若者の農業参入を促す補助金制度や、スマート農業の導入を推進していますが、地域によってはこれらの施策が十分に機能していない場所もあります。地域ごとの特性を生かした持続可能な農業モデルの構築が求められており、これが国内食料供給の安定に直結します。



食料自給率の低下は、単に食料が不足する問題にとどまりません。それは、私たちの健康、環境、そして社会構造にも大きな影響を与えます。
地域で生産されたものを消費する地産地消や、農業技術の革新など、問題の解決策はたくさんあります。

あなたの食の選択が、日本の食の未来を左右するかもしれません







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この記事を書いた人

中山

地球を愛する料理研究家であり、SDGsと食品ロスに情熱を傾けるライターです。食品ロス削減を通じて、環境保護と健康的な食生活の両立を促進し、持続可能な社会の実現を目指しています。趣味は家庭菜園。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。