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【美味しいチーズの罪】チーズと環境問題

公開日: 更新日:2024.09.09
いろいろなチーズ

チーズは、その豊かな味わいと多様な種類で世界中の食卓を彩ります。
しかし、この美味しいチーズを作るためには、多くのエネルギーが必要となり、地球環境にもさまざまな影響を与えているのです。

私たちが大好きなチーズが、どのように作られ、環境にどのような影響を与えているのかを具体的に解説します。
そして、よりサステナブルなチーズの未来を築くために、私たち一人ひとりができることについても考えてみましょう。


チーズとエネルギー

搾乳中の牛

生乳のために必要なエネルギー

私たちが口にするチーズは、牧場での牛の飼育から始まります。牛たちは、私たちと同じように生きていくために、草を食べてエネルギーを得ています。しかし、私たちがスーパーで手軽に買える量の牛乳を生産するためには、多くの牛が必要になります。

牛を飼育するためには、広大な牧場が必要です。牧場を維持するためには、土地の管理や柵の修理、牛舎の維持など、多くのエネルギーが必要です。また、牛の健康管理のためにも、獣医さんによる診察や薬の投与など、さまざまなコストがかかります。
さらに、牛たちは冬場など、草が十分に育たない時期には、畑などで栽培された飼料を与えられることもあります。飼料を栽培するためには、種や肥料、農薬、そして水を必要とし、これら全てを生産するためにエネルギーが消費されます。また飼料を輸送するとCO2が発生します。
さらに乳搾り機器だけではなく、冷却装置、照明など、搾乳に関わる電気機器も電力を消費します。

このように牛乳の生産には多くのエネルギーが必要なのです。


チーズ作りに必要なエネルギー

生乳からチーズを作る過程では、多くのエネルギーが使われます

まず、生乳を発酵させます。この発酵の過程で、乳酸菌が働き、牛乳に含まれるタンパク質が凝固し、チーズの固まりができます。この発酵には、適切な温度を一定に保つためのエネルギーが必要です。

次に、できたチーズの水分を飛ばすための熟成工程に入ります。熟成期間は、チーズの種類によって異なりますが、数週間から数年かかるものもあります。この間、チーズは定期的にひっくり返されたり、塩を振られたりします。この工程では、適切な湿度と温度を保つための冷蔵設備が欠かせません。これらの設備、作業もエネルギーを必要とします。


家庭に届くまでに必要なエネルギー

出来上がったチーズが工場から私たちの食卓に届くまでにも、さらなるエネルギーが必要です。

トラックや船などの輸送手段はもちろん、チーズを冷えた状態で運ぶために冷蔵設備を備えた車両が使われますが、これが最もエネルギーを多く消費する部分です。
また保管に際しては、チーズを適切な温度で保つため冷蔵設備など、品質を保つためのさまざまな設備が必要です。輸送、保管のための包装材の製造や廃棄にもエネルギーが消費されます。
さらに陳列や販売にも、照明や冷房などのエネルギーが使われています。


このように、私たちが普段何気なく食べているチーズは、その誕生から私たちの食卓に届くまでの間に、多くのエネルギーを消費しているのです。


環境への負荷を減らすためには

牛の放牧

持続可能な飼育方法

美味しいチーズを作るためには、健康な牛が必要です。
しかし、牛の飼育は、地球環境に大きな影響を与えています。メタンガスは、二酸化炭素の25倍もの温室効果があると言われています。牛はげっぷをする際にメタンガスを排出するため、多くの牛を飼育することは、地球温暖化を加速させる要因の一つなのです。

そこで注目されているのが、環境への負荷を減らした持続可能な飼育方法です。

例えば、化学肥料や農薬を使わずに育てられた飼料を使用し、牧草地を多様化して放牧を行うことは、牛の健康を保ちつつ、土壌と生態系の保護になります。また、メタンガスを少なくする飼料を与えることも環境への負荷を減らす方法です。
さらに太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを活用することで、酪農場のエネルギー消費量を減らす取り組みも進んでいます。


チーズ工場のエネルギー効率の改善

チーズの製造過程では、牛乳の加熱やチーズの熟成など、多くの工程でエネルギーを消費しますが、省エネ技術の導入により、環境負荷を大幅に低減することができます。

近年では、チーズ工場において、省エネ型の機器の導入や、製造工程の最適化などが進められています。
例えば熱回収システムの導入により、製造過程で発生する熱を再利用し、他のプロセスで加熱に活用することが可能です。また、LED照明の導入や建物の断熱強化も電力消費を減らすためには効果的です。
さらに再生可能エネルギーの活用は、CO2排出量削減に大きく貢献します。

これらの取り組みは、地球温暖化対策に貢献すると同時に、製造コストの削減にも繋がっています。


地産地消のススメ

チーズは多くの場合、生産地から遠く離れた場所で消費されます。長距離の輸送には、大量のエネルギーが必要となり、環境への負荷が大きくなります。また、輸送中に品質が劣化してしまう可能性もあります。

そこで、地元で生産されたチーズを地元で消費する「地産地消」が注目されています。地産地消は、輸送によるエネルギー消費を減らすだけでなく、新鮮なチーズを味わうことができ、地域の経済活性化にもつながります。

さらにチーズの生産においても、地元の牧場から直接乳を仕入れることで、CO2排出量を大幅に削減できます。
これにより、地域経済が活性化し、新鮮で質の高い食材を消費者に提供できるというメリットもあります。


ホエイの活用

チーズを作る際には、牛乳からカゼインというタンパク質を取り出すため、ホエイと呼ばれる液体状の副産物が大量に発生します。従来は、このホエイは廃棄されるか、飼料として利用されることがほとんどでしたが、実は多くの利用価値があります。

ホエイには、乳糖やタンパク質、ビタミン、ミネラルなど、多くの栄養素が含まれおり、栄養価が高く、スポーツドリンクやプロテインサプリメントの原料として再利用されています。
近年では、このホエイを有効活用するための研究が進められており、ホエイから乳酸菌飲料を作ったり、パンやお菓子の材料にしたり、さらには化粧品や医薬品に利用するといった試みも進んでいます。

また、ホエイからメタンを生成するバイオガスプラントも欧州で広がりを見せており、エネルギー生産への貢献も期待されています。

このようにホエイを有効活用することで、環境への負担を減らし、経済的な利益も生み出すことが可能です。


環境と調和するチーズの未来

チーズのパッケージ確認中

パッケージングの削減と再利用

チーズは、鮮度を保つために包装が不可欠です。しかし、過剰な包装は、プラスチックごみの増加につながり、環境問題を引き起こします。
パッケージングの削減と再利用は、廃棄物を減らし資源を有効活用するための重要な手段です。

そこで近年では、リサイクル可能な素材の利用が進められています。
例えば、プラスチック包装の厚みを薄くしたり、紙製の包装材に切り替えることで、プラスチックごみの量を減らすことができます。
また、再生紙や植物由来のプラスチックを使用したバイオマスプラスチックなど、環境負荷の少ない素材の開発も進んでおり、将来的には、毎年数千トンのプラスチック廃棄物の削減が期待されています。

さらに、消費者が包装材を分別して捨てることができるよう、わかりやすい表示を付けることも重要です。


消費者への教育と啓発

将来も美味しいチーズを食べ続けられるためには、生産者だけでなく、消費者も意識を変えていく必要があります。

例えば、地元産のチーズを選ぶことで、輸送によるエネルギー消費を減らすことができます。また、チーズの賞味期限を確認し、無駄な廃棄を避けることも大切です。さらに、チーズの製造過程や環境への影響について学ぶことで、より意識の高い消費行動へとつながります。

また企業も、消費者に対して、自社の製品の製造過程や環境への取り組みについて積極的に情報発信していくことが求められます
たとえば、製品のパッケージに環境への影響度を示すラベルを表示することが考えられます。これにより、消費者は製品の持続可能性を容易に判断でき、より環境に優しい選択をすることが促されます。


認証制度の活用

近年、有機認証やフェアトレード認証など環境に配慮した製品に与えられる認証制度が注目されています。
認証制度を取り入れることで、持続可能なチーズ生産を積極的に推進し、消費者が製品を選ぶ際にその品質や生産背景についての透明性を得る手助けとなります。

【オーガニック認証】
農薬や化学肥料を使わずに育てられた牛の乳から作られたチーズに与えられる。オーガニック認証を受けたチーズは、厳しい基準をクリアしており、自然環境への影響が少ないと認められています。

【地理的表示 (GI) 認証】
特定の地域で伝統的な方法により製造されたチーズに与えられる。この認証は、その地域固有の風土や製法がチーズにどのように影響を与えるかを保護します。

【フェアトレード認証】
生産者が公正な取引を通じて適正な報酬を得ていることを示す認証です。これにより、小規模な農家や労働者が持続可能な方法で製品を市場に提供できるよう支援されます。

【動物福祉認証】
牛乳の生産において動物が適切な環境下で飼育されていることを示す認証。動物の健康と福祉に配慮した方法でチーズが生産されていることを消費者に保証します。



チーズは、私たちの食卓を笑顔にするだけでなく、地球の未来を左右する力を持っています

美味しいチーズを楽しみながら、地球にも優しい選択をしてみませんか?
私たち消費者の意識と行動が、より持続可能な未来を創ります。






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この記事を書いた人

中山

地球を愛する料理研究家であり、SDGsと食品ロスに情熱を傾けるライターです。食品ロス削減を通じて、環境保護と健康的な食生活の両立を促進し、持続可能な社会の実現を目指しています。趣味は家庭菜園。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。