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意外と知らない「動物のくらし」と「SDGs」の関係性

公開日: 更新日:2023.12.22
意外と知らない「動物のくらし」と「SDGs」の関係性

 

はじめまして。大学生インターンの布川です。

関西の大学で法律を学びつつ、食品ロスの調査もしています。

これからロスゼロのブログで環境に関する様々なトピックのお話を書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

まず今日は動物福祉とSDGsについてお話させていただきます。

 

ところで皆さん、幼稚園や保育園、小学校などで、「いただきます」とみんなで手を合わせたことはありませんか?

この「いただきます」という言葉には、「大切な命をいただきます」という意味が含まれています。

きっとほとんどの人が、そのような「食育」を受けて育ってきたのではないでしょうか。

 

一方で、動物園や競馬場に行ったり、街中でも盲導犬やペットのワンちゃんなど、日ごろから「動物」を目にする機会は沢山あると思います。

今回は、そんな動物たちの暮らしと、私たち人間の暮らしがどう関わっているのか、SDGsの観点からお話していきたいと思います。

 

動物福祉って?

手をつなぐ人

私たち人間のくらしは、「社会福祉」という形で、憲法や法律、会社や地域によって保障されています。

例えば収入がなくなってしまっても、失業保険や奨学金、生活保護制度など、最低限生きていくための環境が整えられるような仕組みになっています。

 

同じように、動物たちも生きていくためには、それなりの環境が必要です。

例えば餌がほんの一口しかもらえなかったり、汚くて、病原菌がたくさんいるような悪質な小屋で暮らしていてはすぐに病気になってしまいます。

 

あるいは、例え毎日餌をたくさんもらえる立派な小屋に住んでいたとしても、後を振り向くことすらできないような窮屈な場所で生まれ一度も空を見ることもなく、人間の食用として命を失うような生き方は「福祉的」ではありません。

 

このように、動物の「健康に、清潔に、刺激的で本来の動物らしい生き方を保障すること」が「動物福祉」です。

国際獣疫事務局(OIE)では、動物福祉とは「精神・身体的に快い環境で生き、死ぬこと」と定義されています。

 

(World Organization for Animal Health 動物福祉とは?

 

動物って?

子豚が乳を飲んでいる

ところで、「動物福祉」といった時の「動物」とは、どこまでを含むのでしょうか。

結論から言いますと、ずばり「全部」です。

 

つまり、鶏や豚などの「家畜」から、私たちにも身近である「ペット」や盲導犬などの「介助動物」、人間の精神的ケアなどにつかわれる「動物介在治療用動物」、耕作や交通手段、狩猟や警察の捜査にも使われる「使役動物」に加え、化学薬品のテストや大学の研究で用いられる「実験動物」、競馬や犬ぞりといった「レース用動物」、さらには、カラスやイノシシなどの「野生動物」までありとあらゆる「動物」が福祉の対象になる、ということなのです。

 

SDGsとの関係

動物の骨標本

では、いったいその「動物福祉」が、どうして人間のくらしに関わってくるのでしょうか。

「動物を大切にしないとダメだ」「動物福祉は必要だ」といったことは、なんとなく誰でもわかっていることだと思います。

しかし、そうした道徳的理由からだけではなく人間がより良い環境に生きるためにも、動物福祉はとても大切な要素となってくるのです。

 

ここからは、人類がより良い世界のために掲げている「SDGs」の各項目を取り上げて、具体的にどのように関わっているのか、見ていきたいと思います。

スウェーデン農業科学大学で開催されたワークショップの議論結果を参考に、17の目標のうち、最も関連が深い2つのゴールを取り上げます。

(参照:frontiers in Veterinary Science Animal Welfare and SDGs)

 

「12:つくる責任・つかう責任」

牛のアップ顔

この項目は、動物福祉と最も関連がある目標の一つです。

例えば、牛一頭を育てるとしましょう。

 

この牛を飼育するために、たくさんの餌や人件費を使いました。

しかし、この牛は食用に加工されスーパーに並んだ後人気のある部位しか売れず、食用に加工された部分の6割しか消費されなかったとします。

この場合、残りの4割は捨てられることとなります。

 

この例のように、現にあまり一般的ではない部位は需要が少なく、食品ロスとなることが多くなっているそうです。

(参照:日本食肉消費総合センター国産食肉の低需要部位発生状況の報告書

 

焼き肉用の肉

このように、牛一頭から少ししか食べられないとすると、牛を食べたい人々の需要を満たすためにより多くの牛を育てなければならなくなります。

そのために、より効率のいい飼育が必要になり、牛の成育環境にはなるべくコストをかけずに、限られたスペースでできる限りたくさん飼おうとする生産者が現れます。

 

すると価格競争が起こり、他の生産者も負けじと低コストで牛を育てることになります。

また、たくさんの牛を育てることは牛の飼育にかかる餌の穀物や水もたくさん要するということなので、環境にも悪影響を与えます。

 

このように、人間のぜいたくな需要から発生した問題は動物の福祉と地球環境の両方に悪影響を与えます。

動物のためにも、環境のためにも、一度われわれの食生活を見直してみることが必要かもしれません。

 

「14:海の豊かさを守ろう」

たくさんの小さな魚

この項目も、動物福祉と深く関係します。

 

例えば、漁師さんたちが普段捨ててしまうような「獲れてしまったけれど売れない魚」たちですが、これらは時に、ただのゴミとなります。

アジやサバなど、市場で人気のある魚の方が売れやすく、そういったマイナーな魚を出荷しても利益にならないからです。

 

しかし、ここでも牛と同様に人々の「魚を食べたい」という需要量は変わりません。

よって漁師はより多くの「売れる魚」のみを狙うようになり、こうした漁は乱獲に繋がりかねません。

乱獲は、海の生態系に影響を及ぼす重大な問題です。

 

このように、「海の豊かさ」という観点からも、人々のぜいたくな需要が地球環境と動物福祉に害を及ぼしていることがわかります。

 

もし、人々がどんな種類の魚でも好き嫌いせずに食べるようになったなら、捨てられる魚は発生せず、乱獲も防止できます。

それはつまり、海の生物たちの環境が向上するということになります。

 

この魚の例や、前述の牛の例からも言えるように動物福祉と地球環境は「相関関係」にあり、いかに動物福祉とSDGsが深く関係するかがわかると思います。

 

ここでは2つのゴールとの関連しかご紹介できませんでしたが、スウェーデンの議論では17個全てについて動物福祉との関係が示されています。

興味のある方は参照してみてください。

(Animal Welfare and United Nations SDGs 動物福祉とSDGsの関連

 

また、SDGsの各項目についてより詳しく知りたい!

という方は、こちらの記事も参照してみてくださいね。

(ロスゼロブログ:SDGs関連ブログ

 

日本の現状

策の向こうの動物

ところで、皆さんは日本の動物福祉は世界的にどのくらいのレベルだと思いますか。

 

日常的に愛護団体やNPOのそういったCMも目にしますし、正直に言うと私は大学で講義を受けるまで「日本はけっこう良い方だろう」と思っていました。

しかし、ずばり日本のレベルは高くありません。

 

世界動物保護協議会(WAP)が発表する動物保護指数 API(Animal Protection Index)という指標があります。

これは主に、その国の動物福祉に関する法律や態度を総合してその国がどれだけ動物に優しいのか、を審査するものです。

 

全A~Gの評価のうち、日本はEです。

総合的にどの項目もよくないのですが、日本には畜産動物や、鑑賞、娯楽用動物の法的保護がないということが評価を下げている大きな原因の一つです。

 

ヨーロッパやアメリカなど、他の先進諸国のランクと比べて日本のE評価はかなり低いと言わざるを得ません。

 

WAPのサイトでは世界中の国を比較することができますので、

ぜひもっと見比べてみてください。

 

(WAP 世界の動物保護指数

 

これからの私たちに求められるもの

残された食事

現状遅れている日本ですが、私は少しずつ日本は前に進み始めていると感じます。

 

例えば小泉進次郎氏環境大臣は動物愛護法を具体化を進めており、来年にはペットの繁殖に規制がかけられることになります。

(日本経済新聞 ペット業者の飼育数制限へ 動物愛護、環境省基準案

 

また、グリーンコープといった環境志向の店舗の普及など、消費者の間でも徐々に意識が変わってきているのかもしれません。

グリーンコープ生活共同組合連合会

 

あとはいかに私たち個人が理解し、実行するかではないでしょうか。

私たちが、ほぼ毎日いただく大切な命だからこそ、個々人が責任をもって消費することで大きな成果を生み出せます。

今日の買い物や食事から、さっそく考えてみませんか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

 

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