こんにちは! 山下です。
2021年9月23日から24日にかけて、世界で初めての「国連食料システムサミット」が開催されました。
130を超える国や地域の代表者がオンラインで集まり、世界の食料システムをよりよく変えるにはどうすればよいかを話し合いました。
今回は、この「国連食料システムサミット」について解説します。
(画像出典:https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kanren_sesaku/FAO/fss.html)
そもそも「食料システム」とは?
みなさんは「食料システム」という言葉を聞いたことありますか?
初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。
食料システムとは、食料の生産から加工、輸送、そして消費にいたるまでのすべての活動を指します。
食料をつくる・食べるといった考え方ではなく、より幅広く捉えようとする考え方です。
例えば、農業や漁業では田んぼや畑、海や川のような自然環境や生態系を利用します。
食料が足りずに貧困や飢餓が起こると、さまざまないさかいや争いに発展することもあります。
また、日本の和食に象徴されるように、食は文化のひとつでもあり、私たちの体と心の健康とも深いつながりをもっています。
このように、食料は私たちが生きるうえで、環境・平和・経済・文化といったあらゆることと深く関係しているのです。
つくる・食べるといった観点だけでは、このように大切な事実を見落としてしまう可能性があります。
そのため食料システムという広い意味で捉えなおし、食とかかわりのあるあらゆることをよりよくするために「国連食料システムサミット」が初めて開催されたのです。
「国連食料システムサミット」のテーマは?
9月23~24日にアメリカ・ニューヨークで開催されました。
世界中の130を超える国や地域の代表者がオンラインで集い、日本からは野上農林水産大臣らが参加しました。
サミットでは、世界中の人々が食料をつくったり食べたりする方法を変革するために協力しなければならないという事実を再確認しました。
同時に、私たちの誰もが行動を起こす必要があることを多くの人に知らせる目的もあります。
SDGsの一環でもある国連食料システムサミット
また、今回のサミットは持続可能な開発目標(SDGs)の一環でもあります。
2030年までに、経済・社会・環境を調和させながら「誰ひとり取り残さない」世界を実現するSDGsにおいて、食料はとても重要なテーマです。
「あらゆる形態とあらゆる面の貧困をなくすことは、持続可能な開発の必須要件」とされています。
食料システムが偏ることなく全ての人にいきわたり、貧困や飢餓がなくなることはSDGsの達成に欠かせない要素だといえるのです。
世界の食料システムの問題点
食料システムサミットを開催しようと提案したのは、国連のアントニオ・グテーレス事務総長です。
サミットの開催前の7月、グテーレス事務総長は声明を発表しました。
その声明によると、飢餓に苦しむ人は2020年で8億1100万人とされています。
2019年では7億2000万人とされていたため、1年で1億6100万人も増えたことになります。
日本の総人口よりも多い人数が、新たに飢餓に陥ってしまったのです。
新型コロナのパンデミック前から飢餓は増えていて、パンデミックによってさらに事態が悪化したとされています。
現在の食料システムの問題点は、飢餓の発生だけではありません。
地球温暖化を引き起こす二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスは、食料システムからの排出量が全体の3分の1を占めています。
また、森林開発や乱獲などによる生物多様性の損失は、最大で80%が食料システムに起因しているとされます。
いま、私たちが毎日食べたり飲んだりしている背景では、飢餓や気候変動が起こり、生態系が失われているといっても過言ではないのです。
多くの人々が努力して築き上げた現在の食料システムですが、こうしたマイナスの面を含むため、よりよいシステムに変えていくために行動の変化が求められています。
サミットで掲げられた7つの「エンゲージメントの原則」
サミットでは、食品ロスの削減や食料安全保障の強化、環境と農業の調和などについて話し合われました。
中でも、初めての開催ということもあり各国の政府や企業といった関係者が守るべき「エンゲージメントの原則」が設定されました。
原則には、より公正で持続可能な世界を実現するために、食料システムが中心的な役割を果たすというビジョンが込められています。
7つの「エンゲージメントの原則」は次の通りです。
1 緊急に行動する:
2030年のSDGs達成に向け、あらゆるアクションの必要性を認識する
2 サミットへの約束:
今回のサミットのビジョンや目的を多くの人と共有する
3 互いに尊重する:
世界にはさまざまな状況に国や地域があるが、
お互いに尊重し、食料の生産や消費のプロセスを改善する
4 食料システムの複雑さを認識する:
食料システムは土地、水、気候、生物多様性、経済や社会と
密接につながっているため、体系的なアプローチが必要
5 さまざまなステークホルダーの利害関係を包括する
6 ほかの国際的な管理プロセスなどと整合する
7 透明性と責任
この原則は、食料サミットに特有の項目もありますが、早急なアクションの必要性や、周りの人々とのビジョンの共有、立場の異なるさまざまな状況を尊重するといった点は私たちにも当てはまるのではないでしょうか。
⑤「#SUSTAINABLESUNDAYS」キャンペーン
(出典:https://www.un.org/en/food-systems-summit/take-action)
食料システムサミットに合わせて行われたSNSでのキャンペーンに
「#SUSTAINABLE SUNDAYS」というものがあります。
これは、のんびり過ごす日曜日にサステナブルな食品を買い、ファーマーズマーケットを訪れようというアクションです。
アメリカでは小規模な家族経営などの農家がつくった野菜や果物を直売するファーマーズマーケットが日曜日に開かれます。
日本でいえば農産物直売所といったところでしょうか。
このキャンペーンが意図するのは、忙しい平日は無理でも時間のある日曜日はこうしたマーケットを訪れ、地産地消しようということ。
無理なくサステナブルなアクションを始めるという意味では、ぜひ真似したいキャンペーンだと思います。
食料に関する問題は、サミットでも言及されているようにとても複雑で難解です。
私たちにできることは、ありきたりかもしれませんが、持続可能な方法でつくられた食品を選んだり、地産地消を心がけたりすることです。
こうした取り組みを無理なく地道に続けることが、派手さはありませんが大切なことだと改めて思います。
食料システムという大きな仕組みを変えるには、私たち消費者のアクションも大切な一票であることを忘れずにいたいですね。