みなさんは、あの有名なカップラーメンに入っている“謎肉”をご存知ですか?
実は、あの“謎肉”は、大豆などからできているんです。
見た目も味もお肉のようですが、植物性の材料からできているなんて驚きですよね。
“謎肉”に限らず、大豆や植物からできた「代替肉」が最近注目されています。
そもそも「代替肉」とは何か、なぜ注目を集めているのかについて学んでいきましょう。
「代替肉」とは?
「代替肉」とは、見た目や味が肉にそっくりの、植物性タンパク質でつくられた食品です。
その名の通り、動物性の肉の代用品とされています。
肉や魚を食べないベジタリアンやビーガンの人々が増える中、日本でもポピュラーになりつつあります。
一方で、動物の細胞から食肉を培養する「培養肉」というものもあります。
培養肉の成分は動物性のタンパク質であり、通常の食肉と変わらないものです。
ただ、牛や豚などの家畜を犠牲にしないという点では、代替肉も培養肉も同じです。
今、世界ではこうした代替肉や培養肉が注目され、多くのスタートアップ企業がこれらの商品化を行っています。
日本のスーパーでも、代替肉でできたハンバーグやハムなどをちらほらと目にするようになりました。
冒頭でご紹介した、有名なカップラーメンの”謎肉”も材料に大豆が含まれています。
食味も外観も、本物のお肉と間違えてしまうようなおいしい代替肉もたくさん登場しています。
読者のみなさんの中には、もう召し上がったという方もいらっしゃるかもしれませんね。
なぜ今「代替肉」が注目されているの?
では、なぜ今、代替肉が世界的に注目されているのでしょうか?
代替肉の需要が増えている理由は、ダイエットや美容のためだけではありません。
同様に、ベジタリアンやビーガンの方々が増えているのも、健康上の理由だけではないのです。
大きな理由のひとつが、肉を食べることによる環境へのダメージを減らしたいからというものです。
実は、食肉を生産する畜産は、地球環境に大きな影響を与えるとされています。
畜産ではさまざまな動物を育てますが、ここでは一例として牛の畜産を考えてみましょう。
まず、牛を放牧するための広大な土地が必要ですね。
牛のエサとなる飼料もたくさん必要になります。
さて、ここでみなさんに考えてほしいのは、1kgの牛肉をつくるのにどれくらいの飼料が必要になるのかということです。
答えは、牛肉1kgに必要な飼料は20kgといわれています。
これに対し、豚肉1kgには7.3kg、鶏肉1kgには4.5kgの飼料が必要となります。
家畜の飼料となるのは、主に大豆です。
日本では、大豆は豆腐や納豆などに加工され、私たちは毎日のように口にしていますよね。
一方で、世界の多くの国々では、大豆は家畜の飼料とされることがほとんどです。
大豆の生産国は、アメリカとブラジルが二大巨頭です。
下図は、2016年に農林水産省が掲載した、世界の大豆の生産量と消費量を示したグラフです。
円グラフの濃いグリーンが生産量、薄いグリーンが消費量を表しています。
生産量はアメリカ、ブラジル、アルゼンチンの順に多く、消費量では中国が突出しています。
(画像出典:農林水産省『生産と消費量で見る世界の大豆事情』)
大豆生産の盛んなブラジルでは、アマゾンの熱帯雨林を焼き払ったり伐採したりして大豆畑に変えています。
熱帯雨林が破壊されてしまうと、生態系にも大きな損失を及ぼしてしまいます。
二酸化炭素を吸収する熱帯雨林の破壊は、気候変動にも悪影響を与えるでしょう。
ほとんど知られていませんが、ブラジルでの大豆生産を拡大させたのは、実は日本です。
1970年代、日本は大豆の輸入をアメリカに頼っていましたが、アメリカが輸出規制をしたことで日本国内が混乱してしまいます。
そこで、ブラジル内陸の「セラード」と呼ばれる広大な熱帯サバンナを大豆畑にし、安く大豆を生産、輸出するサポートを行ったのが日本だったのです。
話を元に戻すと、1kgの牛肉を生産するのに20kgもの大豆が必要になります。
ビーガンの人々はこれを非効率と考え、牛肉を食べる代わりに大豆などからタンパク質をとることで、環境への負担を軽くしようとしています。
こうした背景があり、環境への負荷を減らすために代替肉が世界的に注目されています。
単に、美容や流行ではない理由があるということをみなさんに知ってほしいと思います。
もちろん、畜産業や飼料生産そのものを否定するつもりはありません。
ただ、現在のシステムに何か問題があると判明しているのであれば、それを解決するアクションが必要ではないかと筆者は思います。
(参考:農林水産省『生産と消費量で見る世界の大豆事情』)
代替肉や卵を開発している注目のスタートアップ
今、世界では多くのスタートアップと呼ばれる新興企業が代替肉の開発に力を入れています。
食肉だけでなく、卵や乳製品を植物性の材料で代替しようとしている企業もあります。
ビヨンド・ミート
代替肉の草分け的な存在のアメリカのスタートアップです。
ハンバーガー用のパティやソーセージ、チキンナゲットなど多くの商品を販売しています。
アメリカやカナダ、ヨーロッパやアジアなど世界中の国々で販売しています。
オムニポーク
香港発のスタートアップで、アジアで多く食べられている豚肉の代替肉を開発しています。2020年から日本でも発売されました。
見た目や味が豚肉にそっくりなだけでなく、コレステロールやカロリーが少ないなど、健康にも配慮された商品です。
イート・ジャスト
アメリカを拠点とする代替肉スタートアップですが、卵製品に変わる植物性の商品を開発・販売しています。
豆類を主原料とする代替卵製品「ジャスト・エッグ」は、通常の養鶏による生産よりも水の使用量を98%削減できるほか、土地の利用や二酸化炭素の排出量を少ないとされています。
楽しく無理なくチャレンジしてみよう
代替肉は、これから日本でももっとポピュラーになっていくと思われます。
香港のオムニポークのように、牛肉だけでなくさまざまな代替肉が誕生するでしょう。
スーパーマーケットの店頭に並ぶようになると、気軽に日々の食卓にも取り入れやすいですね。
私たち消費者も「こんな新しい商品が出たんだ」と楽しみながら代替肉にチャレンジしてみてはどうでしょうか。