こんにちは。サスティナブルライターの山下です。
10月末から約2週間にかけて開催された国際会議、COP26。
日本が2回連続で「化石賞」を受賞したことでも話題になりました。
ニュースなどで目にしたという方もおられるかもしれませんね。
世界全体の地球温暖化対策について話し合うCOPですが、今年の成果はどういったものだったのでしょうか?
これまでに開催されたCOPのポイントを交えながら、わかりやすく解説します。
(画像出典:外務省 岸田総理大臣によるCOP26出席)
COPとは何か
ニュースでCOPという言葉を聞いたことがある方も、あらためてCOPとは何かをおさらいしましょう。
COPの読み方は? 何の略称?
COPは、日本語で「国連気候変動枠組み条約締結国会議」といいます。
「締約国会議」という意味の“Conference of the Parties”を略して「COP(コップ)」です。
「国連気候変動枠組み条約」に同意している国が参加し、190ヶ国あまりが一堂に会します。
26は開催数で、今年は26回目の開催なのでCOP26です。
ややこしい名前の「国連気候変動枠組み条約」とは、簡単にいうと地球温暖化を防ぐことを目指す枠組みです。
つまり、COPとは、地球温暖化防止のために世界各国が集まって、その方法を話し合う場といえます。
(参考:全国地球温暖化防止活動推進センター『気候変動枠組条約』)
COPでは何を話し合うの?
COPで議論されるテーマは、世界全体の地球温暖化対策です。
地球温暖化は国境を越えた問題です。
以前の記事でもご紹介したように、地球温暖化の原因は大気中の二酸化炭素の増加です。
(参考:ロスゼロブログ『改めて知っておきたい、地球温暖化の今 ~前編~』)
例えば、あるひとつの国が二酸化炭素を出さなくなっても、ほかの多くの国が二酸化炭素を出し続けていたらどうなるでしょう。
大気の中の二酸化炭素は増えてしまいますよね。
そうなると地球温暖化は進み、二酸化炭素を減らした国の努力がムダになってしまいます。
つまり、地球温暖化対策は世界全体で足並みをそろえることが大切なのです。
そのため、COPでは二酸化炭素の削減に向けた目標を立てたり、国際的なルールを決めたりしています。
これまでのCOPのポイントは?
COPは世界各国のトップが集まる国際会議。
ですが、実は、成果があったときもあればなかったときもあります。
それぞれの国の主張がぶつかり、議論が早朝から深夜にまで及ぶこともあります。
現地では、連日激論を交わしたスタッフが、会場の外で横になって休んでいることもあるんだとか。
国際会議とはいえ、やはり人間同士の話し合いだと感じられますね。
さて、これまでのCOPで特に重要なポイントを抜粋してご紹介します。
①京都議定書(1997年、COP3)
COPは1995年から始まっていますが、まずは、1997年のCOP3が重要です。
COP3は京都で開催されました。
京都といえば、そう、あの有名な京都議定書が採択されたのがCOP3でした。
京都議定書は、地球温暖化の対策について、世界各国が取り交わした初めての約束です。
世界全体で地球温暖化を食い止めようとする方向性を一致させたことが重要なポイントとされています。
京都議定書では、日本やアメリカ、ヨーロッパ(EU)などの主要国が、二酸化炭素などの温室効果ガスを減らす目標を立てました。
その目標とは、2008~2012年までに温室効果ガスを1990年と比べて約5%削減するというものです。
このとき、日本はマイナス6%を目指すと宣言しました。
しかし、京都議定書では、先進国にはこうした目標を定めた一方で、途上国には目標を課しませんでした。
(参考:WWF『京都議定書とは?合意内容とその後について』)
②パリ協定(2015年、COP21)
2015年のCOP21は、世界の温暖化対策のターニングポイントといわれます。
パリで開かれたCOP21では、2020年以降の温暖化対策について話し合われました。
COP21で合意されたパリ協定は、2つの理由で画期的だとされています。
1つ目は、先進国だけでなく途上国にも温室効果ガスを減らす努力を求めたこと。
もう1つは「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標を掲げた点です。
現在、パリ協定は温暖化対策の基礎となり、世界各国は、パリ協定に沿った温室効果ガスの削減目標を立てるよう求められています。
(参考:資源エネルギー庁『今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~』)
11月に閉幕したCOP26の結果は?
2021年10月31日から11月13日に、イギリス・グラスゴーでCOP26が開催されました。
新型コロナの影響で昨年は中止となったため、2年ぶりの開催となったOP26。
日本からは、岸田総理や山口環境大臣が参加しました。
ここからは、COP26の成果である「グラスゴー気候合意」の中身についてみていきましょう。
①石炭火力発電を「段階的に」減らすことで合意
最近、よく耳にするようになった石炭火力発電は、他の発電の方法より二酸化炭素を多く排出します。
中でも、古くから動いている発電所は、新しい発電所よりもたくさんの二酸化炭素を出す傾向にあります。
温暖化対策のため、今、こうした古い石炭火力発電所を減らすことが求められています。
今回のCOP26では、190の国や企業が、二酸化炭素を多く排出する石炭火力発電をだんだんと減らすことで合意しました。
主要国では、2030年代のうちに石炭火力発電を段階的に廃止し、国内外での石炭火力発電への新しい投資も行わないことになりました。
(参考:Global Coal to Clean Power Transition Statement - UN Climate Change Conference)
②パリ協定の運用ルールが決定
地球温暖化の原因となる二酸化炭素は、世界全体で減らすことが求められています。
しかし、一口に世界全体といっても、人口や国土、経済の規模など状況はさまざまです。
二酸化炭素を簡単に減らせる国もあれば、なかなか減らすのが難しい国もあります。
そこで、パリ協定では、二酸化炭素をたくさん減らした国から、減少分を買い取ることができる仕組みを考えました。
例えば、途上国で排出削減が進んだ分を先進国が買い取るといった具合です。
しかし、これまではこの取引についての細かいルールが定まっていませんでした。
今回のCOP26で、排出削減量を売ると、売った国が二酸化炭素を減らしたと
カウントするのではなく、買い取った国のカウントになることが決まりました。
これで、パリ協定ルールブックの第6条が決定し、いよいよ二酸化炭素の排出量を国と国とが取引するステージが整ったことになります。
③2030年までの排出削減目標を来年までに強化
昨年、日本は2030年までの二酸化炭素の排出量を2013年度と比べて46%減らすと宣言しました。
同じように世界各国も2030年までの目標を掲げていますが、これを来年までにさらに強化することが決まりました。
パリ協定で定めた1.5℃という気温上昇を守るには、よりいっそうの努力が必要だとされています。
(参考:COP26 keeps 1.5C alive and finalises Paris Agreement - UN Climate Change Conference)
温暖化対策はまだ道半ば
COP26では以上のような進展もみられましたが、地球温暖化はすでに始まっていて、対策が十分だとはいえない状況です。
また、世界各国の足並みもそろっているとはいえません。
もちろん、日本への風当たりも厳しい状況が続きます。
私たちひとりひとりもCOP26のような温暖化対策の世界的な会合に関心をもち、しっかりと状況を注視していきたいですね。