こんにちは、サステナブルライターの山下です。
家庭で食品ロスとして捨てられてしまう食材のうち、もっとも多くを占めるのは野菜だといわれています。
しかし、野菜は、家庭に届く前のプロセスでも、多くの食品ロスを生んでしまっていることが指摘されています。
その原因の1つが、野菜や果物それぞれに定められた「農産物規格」。
あらかじめ決められた規格を満たさない「規格外野菜」は、生産や流通の工程で廃棄されてしまうことが多いといわれているのです。
食品ロスの一因とされる野菜の規格ですが、そもそも、なぜ農産物には規格が定められているのでしょうか?
そして、誰が農産物規格を定めているのか。
今回は、規格外野菜について、農産物規格の長所と短所の両面を詳しくご紹介していきます。
農産物規格とは何かや、その役割を押さえた上で、食品ロス削減のためにどのようなアクションができるのかを考えたいと思います。
「農産物規格」とは
農産物規格とは、野菜や果物などの農産物の形や大きさなどに関して定められる規格のことを指します。
野菜や果物は、主に、形状や色、病虫害の影響がないかどうかといった品位規準と、重さや大きさなどの大小規準という2つの規準によって、それぞれ「秀・優・良」「L・M・S」などに格付けされます。
ほかにも、外観、肉質、重量などから「上・中・並」と評価されることもあります。
これらの規準は、国などが一元的に定めるものではなく、都道府県や産地が自主的に決めていることが多いようです。
では、なぜ、農産物に対して、このように細かな規準が定められているのでしょうか。
その理由として、大きく2点が考えられます。
野菜や果物は自然の産物。
品種だけでなく、個体間においても形や大きさがバラバラであることが多いのです。
そのため、商品としての質を均一にするためや、出荷時に梱包しやすくするためといった理由が考えられます。
実際、私たち消費者も、大きさの不揃いな野菜ときれいに揃った野菜が同じ価格で並んでいたら、きれいに揃った野菜の方を手にとってしまうことが多いのではないでしょうか。
これが、規格が細分化してしまう理由の1点目です。
次に、農産物においては、特に産地間の競争が激しいといった背景から、産地ごとに細かい規格を定めることで差別化を図っています。
そうすることで、品質を一定に保ち、産地の価値を向上させることができます。
つまり、産地によるブランディングを行う観点から、農産物の規格が細分化されることがあるのです。
これが2点目の理由として挙げられます。
このように、農産物規格には、商品としての農産物の質を保つという大切な役割があることがわかります。
また、産地などによるブランディングにも役立ち、農産物の付加価値を上げることにも貢献しているのではないでしょうか。
「規格外野菜」の課題
しかし、こうした役割がある反面、農産物規格にはデメリットがあることも指摘されています。
その1つが「規格外野菜」が食品ロスにつながっているという課題です。
規格が細かければ細かいほど、その規準に満たない規格外野菜も発生してしまいます。
こうして出てしまう規格外野菜は、そのままでは商品として売ることができません。
お惣菜に加工するなど、一手間加えなければ売ることが難しいのです。
しかし、加工するにはコストや時間もかかります。
そのため、規格外野菜の多くは、加工されずに処分されることがほとんどであるという問題点が指摘されているのです。
一方で、細かすぎる規格が農家の方々への大きな負担となっていることもわかっています。
農産物を出荷するにあたっては、収穫や調整に加え、袋詰めや在庫・出荷管理、販路や輸送手段の確保など、たくさんの作業が必要です。
規格があまりにも細かいと、こうした作業に多くの労働力が求められます。
しかし、今、農業においては、高齢化や労働力不足などの問題が深刻化しています。
こうした出荷関連の多くの作業が、労働力不足の一因だと考えられているのです。
また、規格が過度に細分化されていると、農作物の選別などを行う共同選果施設にも、たくさんの設備が必要となります。
細かすぎる農産物規格には、共同選果施設の運営・維持コストがふくらむ可能性もあり、農業経営を圧迫するリスクが懸念されているのです。
農産物規格や出荷関連作業に見直しの動き
そこで、農林水産省では、こうした農産物規格や出荷関連作業を見直し、農家の方々の負担を減らし、食品ロスの削減につなげようとする動きを始めています。
まず「出荷規格の簡素化」。
(出荷規格簡素化のイメージ。出典:農林水産省)
細分化されていた出荷規格を減らすことによって、農家の負担を軽減する取り組みです。
例えば、ある県では、イチゴの規格を6段階から3段階に簡素化。
これによって、選別のための時間をイチゴの栽培に充てることができるようになり、1戸あたりの販売金額も増加したということです。
また別の県では、キュウリの選別を手動で行っており、しかもその規格は11段階という厳しいものでした。
これを7段階に減らし、選別を自動で行うことができる機械を導入。
(【B県】(きゅうり)11規格・手選別と7規格・機械選別の比較。出典:農林水産省)
これによって、選別作業の時間を28分の1に削減することに成功しました。
これは、従来の細かな選別作業が、いかに農家の方々の負担になっていたかを知ることができる好事例ではないでしょうか。
出荷規格の簡素化のほかにも、野菜や果物を1つずつ袋詰めするのではなく、コンテナなどに詰んだまま出荷する「簡素な形態で出荷できる直接取引の拡大」や「出荷関連作業のアウトソーシング(外注)」などにも取り組んでいるとされています。
(参考:農林水産省『青果物の出荷規格や出荷関連作業を 見直してみませんか?』)
私たち消費者ができること
こうした規格外野菜による食品ロスの発生を防ぐために、私たち消費者には、何ができるのでしょうか。
まず、考えられるのは、規格外野菜を販売するサービスを利用すること。
最近は、ネット販売などで簡単に規格外野菜を買うことができるようになってきました。
また、規格外野菜は、通常よりも安く販売されていることもあり、おトクに購入できる場合もあるかもしれません。
次に、私たちが野菜や果物を選ぶ際の判断基準として、形や大きさにこだわりすぎないということも大切ではないでしょうか。
野菜や果物が、多少曲がっていたり形が歪だったりしても、味には変わりないことがほとんどです。
筆者自身も、田舎の親戚から送られてくる鼻の生えたナスや二股のダイコンなどを美味しくいただいた経験があります。
「自然が生み出した野菜や果物に、個性があるのは当たり前」
これからスーパーマーケットなどでお買い物をするときは、そんなおおらかな気持ちで野菜や果物を選んでみてはいかがでしょうか。
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