こんにちは、サステナブルライターの山下です。
京都を拠点に、乾燥野菜の販売を通して規格外野菜の“アップサイクル”という新たな解決策を実践しているOYAOYA代表の小島怜(こじまれい)さん。
乾燥野菜というと、昔ながらの切り干し大根をイメージしますが、OYAOYAの乾燥野菜は京野菜を中心に、トマトや水菜、キュウリなど、これまでの乾燥野菜の概念を覆すものばかりです。
「八百屋」に京都らしく
丁寧に「お」をつけたというブランド名のOYAOYAからは、野菜や農家の皆さんを大切に思う小島さんの愛情が伝わってきます。
今回は、そんな小島さんにOYAOYAというプロジェクトについて、また、農家の方々の悩みの種である規格外野菜の現実について、詳しくお話を伺いました。
インタビューの全容をぜひご覧ください!
(アイキャッチ画像:右がOYAOYA代表の小島さん。出典:OYAOYA)
ーーはじめに、OYAOYAの事業について教えてください。
(小島さん)
OYAOYAでは、京都府北部の8農家と提携し、乾燥野菜の製造・販売を行っています。
規格外などの理由で出荷できない野菜を適正な価格で買い取り、乾燥野菜として販売しています。
乾燥させて野菜の水分を飛ばすと、味がぐっと濃縮されて野菜本来の味わいや特徴がわかりやすくなるんです。
生のままでは味わえない食感に出会えるのもおもしろいところです。
OYAOYAでは、農家さんによって異なる野菜の特徴を活かすように心がけています。
契約している農家さんは、こだわりをもって野菜を作っていて、有機農業に取り組んだり、地域の資源を再利用して肥料にしたりといろいろな工夫をされています。
例えば、京丹波の名産品である「大黒本しめじ」というキノコがあるのですが、キノコ栽培の培地を、ラディッシュや加茂なすの肥料として利用している農家さんや、収穫したタマネギの皮を2年ほどかけて堆肥にして使っているタマネギ農家さんもいます。
こうして土づくりからこだわってできる野菜は個性豊かで、中にはメロンと同じくらい甘いタマネギを作っている農家さんもいるんですよ。
OYAOYAでは、こうした野菜の特徴をわかってもらえるように、野菜の個性を生かした乾燥野菜作りに取り組んでいます。
ーー規格外野菜を適正価格で買い取る理由を聞かせていただけますか。
(小島さん)
OYAOYAでは、形や大きさが不揃いなどの理由で売れない規格外野菜を農家さんにとってもOYAOYAにとってもWin-Winの価格で買い取っています。
実は、日本では今、生産された農作物の約3割が廃棄されているという現状があります。
廃棄されるのは、規格外野菜だけではありません。
豊作で収穫し過ぎても廃棄処分されますし、取引先との契約条件で、野菜の卸先が制限されて廃棄せざるをえない場合もあります。
最近は、規格外野菜についていろいろなところで発信されるようになり、多くの方が規格外野菜の存在を知って「なんとかしたい」と考えてもらえるようになったと感じています。
消費者の方が規格外野菜を選びたいというニーズが生まれたことで規格外野菜に関するサービスは増えましたが、一部には、規格外野菜をタダ同然で買い取って販売するものもあると聞いています。
これは一見、規格外野菜の解決になっているようで、実はそうではないと思っています。
規格外野菜は、形や大きさが揃っていなくても野菜の味は変わりませんし、何より、農家さんが育てたり収穫したりする手間も同じです。
収穫された野菜には、商品としての対価をきちんと支払うことが重要だと考えています。
そのため、OYAOYAでは規格外などの理由で、販売できないけれど味は変わらない野菜を適正な価格で買い取り、乾燥野菜に加工することで新たな価値を与えているのです。
ーー加工の方法として乾燥野菜を選んだことには、どのような理由があるのですか?
(小島さん)
農家さんの間では、以前から、売れなかった野菜を自分たちで乾燥させて保存するということが当たり前に行われてきました。
例えば、大根やサツマイモなどを切り干し大根や干し芋に加工するようなイメージです。
また、規格外野菜をそのまま流通させるとなると、野菜は生モノですから時間との勝負になります。
だからと言って、ジャムやジュースに加工しようとすると、原料としての野菜を定期的にまとまった量仕入れる必要があり、規格外野菜ではなかなか難しいでしょう。
そのため、農家さんの乾燥機というリソースと規格外野菜の解決というニーズをマッチングさせ、乾燥野菜という方法を選びました。
この方法であれば、野菜本来の味や香り、色もしっかりと残すことができます。
OYAOYAの乾燥野菜は、収穫したものを洗ってカットして、乾燥機で2日ほど乾燥させて完成します。
野菜がもつ味や色、見た目の個性をそのまま楽しんでいただけることこそが、乾燥野菜の強みだと思っています。
ーーOYAOYAの取り組みで、どれくらいの規格外野菜を廃棄から防ぐことができたのでしょうか?
(小島さん)
創業2年目の今年は、昨年より多くの規格外野菜を買い取ることができました。
カボチャ3品種を育てる農家さんだと、そのうち1品種はほぼOYAOYAで買い取ることができました。
重量で言うと、カボチャ80玉・100キログラムくらいでしょうか。
そのほかにもいろいろな野菜を買い取っており、今後も量を増やしていきたいと考えています。
そのためには、やはり自分一人ではなく、地域のパートナーと協力していくことが何より重要です。
現在も、一部の野菜のカットや加工を福祉施設にお願いしたり、農家さんのところから福祉施設へ野菜を運ぶのを地域のパートナーの方にしていただいたりしています。
こうしたネットワークを広げて、OYAOYAの活動を拡大する中で、地域の雇用の創出などにもつなげていきたいと考えています。
ーー規格外野菜の問題に取り組む中で見えてきた課題や、今後の展望についてお聞かせください。
(小島さん)
規格外野菜というものが注目され始めた当初、「規格外野菜はもったいないからなんとかしなくては」という声が多くありました。
だからと言って、規格外野菜を農家さんから安値で買い叩いたり、タダ同然で引き取ったりすることは、本当の解決策ではないと思います。
というのも、規格外野菜を安く買い取って、その野菜が市場にたくさん流通してしまうと、野菜の価値そのものが下がってしまうからです。
例えば、今回の台風で規格外のネギが余ったから100円で買い取ろう、となると、本体のネギの価値が100円だということになってしまうのです。
これは商品の価値が下がってしまうことに他ならず、それでは農家の経営も成り立ちません。
そもそも、本来は農業もビジネスの一つですが、あまりそのようなイメージが浸透していないように感じます。
そのため、どこかに「規格外野菜ならタダ同然で買い取ってもよい」というような意識があるのではないでしょうか。
こうした意識を改め、農業をビジネスと捉え、商品としての野菜の価値も正しく評価されるようにならなければならないと思います。
幸いなことに、最近はこうした動きもみられるようになってきました。
それと同時に、農家の側も、規格外野菜をなるべく出さないような農業経営に努めるとよいと思います。
厳しいようですが、規格外野菜が出てしまうのは、言ってしまえば経営ミスです。
そうならないように、ビジネスとしての農業を営むことが必要だと思います。
そのためには、農業を大規模化、効率化するのも一つの手段ではないでしょうか。
食を支えるという意味でも、大規模化して効率を追求することは、これからの農業のあり方として合理的だと思います。
ビジネスとしての農業が大きく育ち、雇用を生むようになれば、地域を支える産業になるだろうと期待しています。
編集後記
実は、ロスゼロブログの記事を読んだということでご連絡くださった小島さん。インタビューのお願いを快くお引き受けいただきました。
実際に規格外野菜が発生する現場で解決策に取り組んでおられるからこそ見える課題があるということを、インタビューを通して知ることができました。
筆者もOYAOYAの乾燥野菜をいただいたのですが、確かに味が濃くて野菜の個性をはっきり感じることができます。
それでいて、さまざまなお料理に応用できる幅の広さも兼ね備えています。
特に、乾燥の伏見唐辛子は思いのほか辛くなく、優しい香りがお料理のいいアクセントになりました!
小島さんによると、野菜は育った場所や風の当たり方ひとつで味が大きく変わるそうです。
そんな個性を大切にしたOYAOYAの乾燥野菜。
ぜひ、みなさんも一度味わってみてください。
※画像出典:OYAOYA WEBサイト
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