国内の家庭から捨てられる衣類の量は、年間約50万トンにのぼります。
それに加えて、衣類の需要と供給のミスマッチから多くの衣類が在庫として残り、結果的に廃棄されることも問題視されているのです。
今回は前回に引き続き、ファッションに焦点を当てまだ着ることができるのに捨てられてしまう「ファッションロス」をなくすための取り組みについてご紹介します。
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ファッションロスとその原因
ファッションロス(衣服ロス)とは、まだ着ることができるのにさまざまな理由で捨てられてしまう衣服のことを指します。
まだ食べられるのに捨てられる食品が「食品ロス」と呼ばれるのと同様ですね。
ファッションロスの中には、新品の衣類も含まれるとされています。
ファッションロスが生まれる原因には、ファッション業界の商習慣も深く関連していると考えられます。
その商習慣とは、トレンドの移り変わりの激しいファッション業界ならではのもの。
新しく作られた衣類はまず、定価で販売され、次に、バーゲンシーズンが到来すると値下げされます。
しかし、バーゲンで売れ残ってしまった衣類は、そのほとんどが処分されてしまうというのです。
なぜなら、売れ残った衣服をさらに値下げして販売すると、ファッションブランドの価値そのものが下がってしまうと考えられているからです。
英国の高級ブランドが売れ残り商品を大量に焼却処分したことで消費者から大きな反発を受け、その後、焼却処分するのを止めたことは
有名なエピソードの一つです。
こうした商習慣などが大量のファッションロスを生み、環境に悪影響を及ぼすことなどが問題視されています。
衣類のリサイクル率はアルミ缶より低い
この記事を読んでいる方なら、「売れ残った衣類を処分するのではなく、リサイクルしたらいいのでは?」と考えるかもしれません。
しかし、衣類のリサイクル率はまだまだ低く、2020年現在で15.6%に止まっています。
その中でも衣類から衣類にリサイクルされるのはわずか1%とのこと。
これに対して、例えばアルミ缶のリサイクル率は94.0%(2020年度)です。
しかも、そのうち71%は再びアルミ缶へと再利用されているのです。
ここではアルミ缶を引き合いに出しましたが、このように衣類のリサイクル率は依然として低く、その多くが廃棄処分されていることがわかります。
(参考:環境省『令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務』2020年3月 株式会社日本総合研究所、アルミ缶リサイクル協会『リサイクル率』)
不要になった衣類の回収・リサイクルに取り組む企業3選
ファッション業界の中には、着ることがなくなった衣類を店頭で回収、リサイクルする自主的な取り組みを始めている企業もあります。
ここでは3社の取り組みをご紹介します。
①アダストリア
アダストリアは、GLOBAL WORKやniko and…など多くのファッションブランドを展開しているアパレル大手アダストリアでは「Play Cycle!」という取り組みを行っています。
「Play Cycle!」では、商業施設と連携して回収イベントを実施したり店頭に衣類回収ボックスを設置したりして、不要になった衣類の回収、リサイクルを促進しています。
回収した衣類はパートナー企業などが再資源化しているとのことです。
(参考:株式会社アダストリア/サステナビリティ/ファッションロスのない世界)
②ユニクロ
ユニクロも全国のユニクロ・ジーユー・プラステの店舗に「RE.UNIQLO回収ボックス」を設置し、同社で販売した衣類の回収を行っています。
回収された衣類は、リユースされるものとリサイクルされるのに仕分けれられ、世界各地の難民や避難民などに届けられるほか、ダウンやフェザーの材料、代替燃料などにリサイクルされているとのことです。
(参考:RE.UNIQLO:あなたのユニクロ、次に生かそう。 | 服のチカラを)
③良品計画
無印良品を運営する良品計画も、衣料品のリサイクルに取り組んでいます。
良品計画では2010年から、衣服やタオル、カバー類などの回収、リサイクルに取り組んでいます。
回収された衣料品で再利用が可能なものは、染め直しやプレスなどの加工を施し「ReMUJI」というブランドで再販しています。
ほかにも、古物販売の取り組みとして「おゆずり良品・千葉」「無印良品 東京有明」などの店舗では衣料品だけでなく不要になったモノを回収し、必要な人に販売する取り組みも始めています。
衣類をアップサイクルする取り組み
アップサイクルとは、本来廃棄されるはずのものに手を加え、以前より価値を高めることです。
アップサイクルに取り組んでいる企業としては、ビームスが挙げられます。
ビームスでは、在庫品を中心に手仕事によるリメイクを施し、衣服に新たな価値を与える「BEAMS COUTURE」というブランドを展開しています。
手仕事でリメイクすることで、世界に一つだけのユニークな一着が仕上がります。
こうした付加価値が与えられることで、デッドストック品であっても安値で販売されることはありません。
「BEAMS COUTURE」では、さまざまなブランドやキャラクターなどとのコラボレーションなどを通じて、アップサイクルの認知度の向上に努めています。
(参考:BEAMS COUTURE(ビームス クチュール))
AIを活用したファッションロス対策
近年は、AIなどのデジタル技術を活用して需要を予測し、過剰生産を防ぐといった取り組みも行われています。
また、こうした技術によって各地の倉庫や店舗の在庫を適切に配分し、過剰生産・過剰在庫を抑制する取り組みも始まっています。
AIなどのテクノロジーを活用する事例で興味深いのは、3Dスキャンなどによってぴったりのサイズの衣服をつくる、S・M・Lなどのサイズにとらわれない服づくりが検討されているということです。
こうした技術が広がれば、売れ残りやすいサイズの衣服の生産を最適化することも可能になるかもしれません。
(参考:経済産業省『ファッションの未来に関する報告書』2022年3月)
よりよいアイディアを受け止める柔軟さを
ファッションロスが生まれる背景に、ファッション業界の商慣習が深く関わっているという事実は、食品ロスにも通じるものがあります。
これまで当たり前のように行われてきた慣習や仕組みがもつ課題が明らかになり、新しいルールやシステムが生まれるというサイクルは業界を問わず起こりうることなのかもしれません。
新たなアイディアやテクノロジーによって、環境に過度な負担をかけないファッションのあり方が追求されていくことを期待したいと思います。
同時に、私たちもこれまでの習慣や仕組みにこだわりすぎず、よりよいサービスやアイディアを受け止める柔軟さを常に持っていたいものですね。
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