食品ロス削減の世界の目標
国連は食品ロス削減を世界の重要な課題と位置づけています。
具体的には、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12.3では、2030年までに世界の食品ロスを半分に減らすという明確な目標を設定しています。
国連環境計画(UNEP)によると、世界全体で約13億トン、食品供給量の3分の1に相当する食品が毎年ロスしています。
食品ロスは食糧供給だけでなく、飢餓問題や地球温暖化やとも深く結びついています。
FAOによれば、食品ロスと廃棄物による温室効果ガス排出量は全体の8%を占め、これは個別の国としてはアメリカ、中国、インドに次ぐ排出量です。
今回は各国の食品ロス対策について解説していきます。
アメリカにおける食品ロス対策とは?
アメリカのスーパーやレストランにおける食品ロス問題
アメリカでは、年間約6,350万トンの食品が廃棄されているとされています。その大半がスーパーやレストランからのものです。
このロスの一因としては、消費者が完璧な見た目の食品を求めるため、規格外の商品が廃棄される傾向にあることが挙げられます。
また、レストランでは大量の食事が提供され、残されることが一般的で、これが大きな食品ロスを生む原因となっています。
アメリカのフードバンクの役割
アメリカでは、食品ロス削減の一環としてフードバンクが大きな役割を果たしています。フードバンクは、スーパーやレストラン、食品製造業者から余剰食品を収集し、必要とする人々に提供します。
これにより、食品が無駄になることを防ぎ、同時に食料不足に苦しむ人々への援助を行っています。2019年の統計では、全国で約2億トンの食品がフードバンクを通じて再利用されました。
アメリカでのフードロスアプリの活用
テクノロジーを活用した食品ロス削減の取り組みとして、アメリカではフードロスアプリが人気を博しています。これらのアプリは、飲食店やスーパーが売れ残った食品を割引価格で消費者に提供することを可能にします。
これにより、食品が廃棄されるのを防ぎつつ、消費者はお得に食品を手に入れることができます。また、これらのアプリは消費者の食品ロスに対する意識を高める役割も果たしています。
オーストラリアの食品ロス削減へのアプローチ
オーストラリアの企業による食品ロス削減活動
オーストラリアの企業もまた、食品ロスの削減に向けた取り組みを積極的に行っています。大手スーパーマーケットの「Woolworths」は、賞味期限が迫った商品の価格を下げる「食品救済プログラム」を実施しています。
また、2017年に設立された非営利の食品救済スーパーマーケット「オズ・ハーベストマーケット」は、パッケージ変更や注文超過などで販売されなかったが使用期限内の食品が寄付され、無償で提供されます。ホテル、レストラン、カフェからも、賞味期限の近いものや売れ残った商品が提供されます。
オーストラリアでのリサイクルと食品ロス
オーストラリアでは、食品ロスのリサイクルも積極的に推進されています。オーストラリアの食品廃棄物の約半分は埋立地に送られてしまいますが、この問題に対処するために、自治体や企業はコンポスト化やバイオガス生産などのリサイクル方法を採用しています。
特に、メルボルン市では2016年から食品廃棄物リサイクルプログラムを実施し、その結果、廃棄物の約25%がリサイクルされています。
ヨーロッパの食品ロス削減策とその効果
EU全体での食品ロスは年間約8800万トンと推定されており、この大きな課題に取り組むため、各国が一丸となって食品ロス削減策を進めています。
(参照:European Commission: "Food Waste")
フランスの廃棄食品販売規制とその影響
フランスでは、2016年に大規模スーパーに対し、廃棄を予定している未使用の食品をフードバンクや慈善団体に寄付することを法律で義務づけました。
これにより年間で数千トンもの食品が無駄になることなく再利用されるようになりました。
この施策は、食品ロス削減だけでなく、食料不足に悩む人々に対する援助の形となっています。
(参照:Loi relative à la lutte contre le gaspillage alimentaire)
北欧の成功事例:食品ロス削減の取り組み
北欧国家の食品ロス削減法律
北欧国家は、法律で食品ロスの削減を奨励しています。デンマークでは、超市に対して廃棄される予定の食品をフードバンクに寄付することを法律で義務付けています。
また、デンマークのスーパーマーケット「WeFood」では、賞味期限が切れかけの商品やパッケージに少し問題がある商品を割引価格で販売する取り組みがあります。
フィンランドとスウェーデンでは、税制の優遇措置を用いて食品ロスを抑制しようとしています。
北欧の飲食店のロス対策
製造業や飲食店でも、ロスを削減する努力が行われています。
スウェーデンの企業「Karma」は、売れ残った食品を割引価格で提供するアプリを開発し、これにより各店舗の食品ロスが平均で30%減少したと報告しています。
アジア諸国における食品ロス問題の取り組み
東南アジア諸国の食品ロス課題
アジアの途上国では、食品ロスは大きな問題となっています。その理由としては、適切な食品保存や輸送技術の不足、農産物の収穫後の取り扱いの問題などが挙げられます。
FAO(国連食糧農業機関)によれば、これらの国では収穫後の食品の損失が約30%にも達するとされています。このことは食糧安全保障、経済的損失、環境への影響といった観点から、大きな課題となっています。
中国の食品ロス削減への取り組み
中国では、食べ残しを減らそうという取り組みが進められています。
例えば、レストランで食べきれなかった料理を持ち帰ることを奨励する「光盘行动」(皿をきれいにする行動)や、食べ残しの量に応じて罰金を課す「浪费者罰則」(浪費者罰則)などが挙げられます。
アフリカの食品ロス対策と持続可能性
アフリカでの食料不足と食品ロスの関係
アフリカにおける食品ロスは、飢餓問題と密接な関連があります。国連によれば、サブサハラアフリカ地域で毎年発生する食品ロスは、約2200億ドルに達し、これは地域全体のGDPの2.6%に相当します。
同時にこの地域では2億人以上が飢餓に直面しています。適切な保存技術や物流網が未発展であることが大量の食品ロスを引き起こしており、これが食糧供給の問題を深刻化させています。
アフリカにおける収穫後のロスの問題
アフリカの多くの国では、収穫後の食品ロスが深刻な問題となっています。収穫後の不適切な取り扱いや保存により、多くの農産物が食用に供される前に腐敗し、廃棄されてしまいます。
FAOの報告によれば、アフリカ諸国では収穫後のロスが全体の食品ロスの約40%を占めています。これは農民の収入を直接的に減少させ、地域の経済発展を阻害する一因となっています。
SDGsとアフリカの食品ロス削減
アフリカでの食品ロス削減は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた重要なステップです。特に目標2(飢餓をゼロに)と目標12(持続可能な消費と生産パターンを確保)が食品ロス削減と直接関連しています。
現在、国際連合や非政府組織は、アフリカの食品ロス問題に対処するための技術や知識の伝達、農民教育プログラムの開発などを行っています。これらの取り組みは、食品ロスを減らし、地域全体の食糧安全保障を向上させることを目指しています。
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