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廃棄物で発電?サーマルリサイクルとは?

公開日: 更新日:2024.01.09
廃棄物で発電?サーマルリサイクルとは?


廃棄物――多くの人にとってこれは「捨てるべきもの」という印象が強いかもしれません。しかし、捨てるだけが廃棄物の未来ではありません。

実は、この「不要なもの」からエネルギーを取り出し、さまざまな形で私たちの生活に役立てる方法が存在します。それが「サーマルリサイクル」という技術です。

この驚きのテクノロジーが、どのように廃棄物問題とエネルギー問題、そして環境問題に一石を投じているのか、一緒に探究していきましょう。


サーマルリサイクルの基本解説

焼却

サーマルリサイクルの歴史

サーマルリサイクルの歴史は長く、特に第二次世界大戦後にその重要性が増してきました。戦後、急速な経済成長とともに廃棄物が増加し、処理が急募されました。この時代から、廃棄物をエネルギーとして有効利用する新しい視点が広まりました。
その後、1970年代のオイルショックで石油価格が急騰。これがサーマルリサイクルに新たな火をつけました。石油に依存しきったエネルギー供給体系の脆弱性が露呈し、代替エネルギーの重要性が再認識されました。
欧州では特にこの時期から、廃棄物処理政策と再生可能エネルギー政策が連動して推進されました。スウェーデンは廃棄物税を導入し、その収益をサーマルリサイクル技術の研究開発に振り向けています。
このような歴史的背景が、サーマルリサイクルが今日のエネルギー問題や環境問題においてなぜ重要なのかを理解する鍵となっています。そしてこの長い歴史と経験が、現代におけるサーマルリサイクルの進化と信頼性の土台を築いています。

基本用語と役割解説

サーマルリサイクルは、廃棄物処理とエネルギー回収を同時に実現する技術です。具体的には、高温で廃棄物を燃焼またはガス化し、その過程で発生する熱エネルギーを効率よく回収する方法です。この回収されたエネルギーは、電力供給や地域暖房、産業プロセスなどに使われます。このようなシステムの基本的な構成要素には、焼却炉、熱回収ボイラー、タービン、ジェノレーターなどがあります。
特に注目すべきは、そのエネルギー効率の良さです。例えば、1トンの一般廃棄物から500~700キロワット時の電力が生成されるとされています。これは、家庭用電器の使用や地域社会のエネルギー供給に十分に貢献できるレベルです。加えて、近年のテクノロジー進展によって、ダイオキシンや有害なガスの発生を抑制するフィルターや触媒技術も進化しています。
このように、サーマルリサイクルは二つの問題、すなわち廃棄物処理と持続可能なエネルギー供給、を同時に解決するポテンシャルを持っています。だからこそ、多くの先進国で積極的に導入と研究が進められているのです。

サーマルリサイクルのメリット

焼却炉

コスト削減の具体例

サーマルリサイクルの最大のメリットの一つがコスト削減です。地域によっては、埋め立て費用が高騰しているケースが多く、焼却処分によって体積を削減するだけでなく、その熱を活用することで費用対効果が高まります。
例えば、ドイツの一部地域では、サーマルリサイクルを導入することで、廃棄物処理のコストが年間で約20%削減されています。このような実績があることから、多くの地域で導入が進んでいます。

エネルギー源としてのメリット

サーマルリサイクルが注目されるもう一つの理由は、再生可能エネルギーとしての高いポテンシャルです。
風力や太陽光といった再生可能エネルギーは天候に依存するため、安定供給が難しい場面もあります。それに対し、サーマルリサイクルは比較的安定したエネルギー供給が可能です。特に、運転が安定している焼却炉であれば、年間を通して一定量のエネルギーを供給できます。

温水供給と蒸気利用

サーマルリサイクルでは、発生した熱を電力だけでなく、温水供給や蒸気利用としても活用することが可能です。これにより、一石二鳥、場合によっては一石三鳥の効果を狙うことができます。
例えば、北欧諸国ではこのようなシステムが広く採用され、廃棄物から生成された熱で温水プールやビルの暖房を行っています。このようにして、サーマルリサイクルは多角的に地域社会や環境に貢献しています。
それだけでなく、温水供給や蒸気利用によって、総合的なエネルギー効率が向上するため、CO2排出量も削減されるというメリットもあります。

環境への影響と対策

レンガ

ダイオキシンの課題と解決

ダイオキシンの発生は、サーマルリサイクルの大きな懸念点とされています。特に1990年代に、ダイオキシンが多量に排出される事例が報告されて以降、多くの人々がその健康影響を心配しています。
しかし、近年の技術進歲で、特定の温度と酸素レベルを保つことでダイオキシンの生成を大幅に削減できるようになりました。日本では、環境省のガイドラインに基づき、ダイオキシン排出量を年々低減させる努力が続いており、現在では2000年代初頭と比較して98%以上削減されています。

焼却炉と温室効果ガス

焼却炉を運転する際には、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが排出されることも確かです。しかし、進化した焼却炉テクノロジーと熱回収システムを組み合わせることで、その影響は最小限に抑えられています
実際、石炭火力発電と比較してCO2排出量は約半分とされています。また、発電によって得られる電力は再生可能エネルギーとして活用され、その結果、他の発電手段に比べて総合的なCO2排出量を削減する効果があります。
しかし、一方でサーマルリサイクルは太陽光や風力といった他のクリーンエネルギー源と比べて、CO2排出量が高いという課題もあります。具体的には、サーマルリサイクルで1キロワット時を生成する際に排出されるCO2は約900グラムです。これは太陽光発電の50グラムと比べると高いものの、廃棄物を有効に利用するというメリットを考慮すれば、このデメリットも一定の許容範囲内に収まると考えられます。

埋め立て問題の活用方法

埋め立ては、一般的に環境に悪影響を及ぼす方法とされています。しかし、サーマルリサイクルによって、この問題も緩和する道が開かれています。特に、焼却後の灰をセメントや煉瓦の原料として活用する技術が進化しています。
このような取り組みによって、埋め立てによる土地使用や温室効果ガスの排出が削減される一方で、新たなリサイクル産業も生まれています。デンマークなど一部の国では、これらの方法によって埋め立て量を70%以上削減しています。

コストと効率の真相

ガス化技術

建設と運転効率

サーマルリサイクル施設には、高度な専門性と初期投資が必要です。
最新のデータによれば、新規施設の建設には約40億円から60億円の資金が必要で、この中にはダイオキシンの発生を抑制するような最先端の環境対策技術も含まれています。
運転面においても専門的な人材と技術が要求されますが、長期的に見れば、運転コストは徐々に低減します。事実、一般的な廃棄物焼却処理に比べて、サーマルリサイクルの運転コストは20%~30%程度安くなることが多いです。
このように、初期コストは高いものの、運転効率とコストパフォーマンスを考慮すると、サーマルリサイクルは非常に有望な選択肢と言えるでしょう。

廃棄物発電の解決策

廃棄物発電が直面する主な問題は、エネルギーの効率的な回収と環境への影響です。
これに対する解決策として、最新のガス化技術を導入する方法があります。この技術によって、ダイオキシンの排出を減らしながら、更に高いエネルギー回収率を実現することが可能です。例えば、特定のガス化施設では、エネルギー回収率が従来の60%から80%に向上しています。さらに、一部の先進施設では廃棄物1トンあたり0.9MWhのエネルギーを回収できると報告されており、これによりエネルギー効率の面でも非常に高い性能を発揮しています。

実例から見るコスト削減

実際のサーマルリサイクルプロジェクトでよく見られるコスト削減の具体例を挙げてみましょう。
ある自治体では、焼却処分による廃棄物処理からサーマルリサイクルに切り替えることで、年間約2億円のコスト削減が見込まれています。また、エネルギーの回収も進むため、自治体自体が発電したエネルギーを活用することで、さらなるコスト削減が期待できます。
海外の事例として、オランダのアムステルダムにある施設では、年間で約25万トンの廃棄物を処理し、そのエネルギーで近隣地域の約8万世帯分の電力を供給しています。このように、大規模な施設でも高い効率で運転が可能で、地域社会に対する貢献度も高いと言えます。この事例から、サーマルリサイクルが持つポテンシャルの大きさが伺えます。

サーマルリサイクルの今後の展望

リサイクル

今後の活用見通し

サーマルリサイクルは、これからますます注目されるエネルギー回収手法です。特に、2030年までに再生可能エネルギーのシェアを20%以上に引き上げるという政府の目標に、このテクノロジーは大いに貢献できるでしょう。
今後の市場規模は、現在の約3000億円から10年以内には倍増するとの予測もあります。そのため、新しい施設の建設だけでなく、既存施設の改修やアップグレードが進むと考えられます。

将来への重要な役割

サーマルリサイクルが将来において果たすべき役割は大きいです。特に、急速に増えている電力需要と温室効果ガス排出量の削減には、このテクノロジーが不可欠です。
一例として、スウェーデンでは既に廃棄物をエネルギー源として活用し、CO2排出量を年間約20万トン削減しています。このような事例が今後、世界中で展開されることで、サステナビリティの確保に大いに貢献できるでしょう。

循環型社会への寄与

循環型社会の形成においても、サーマルリサイクルは極めて重要な役割を果たします。例えば、日本国内では、循環型社会形成のための基本法が制定されていますが、サーマルリサイクルはその具体的な手段として期待されています。
資源の有効活用、廃棄物の削減、エネルギーの効率的な利用といった面で、この技術は多角的に貢献する力があります。従って、政府や地方自治体、産業界が一体となって推進すべき課題であり、今後さらなる政策的支援と社会的な理解が広がることが期待されます。


サーマルリサイクルが私たちの未来に与える影響は計り知れません。廃棄物問題と環境保全、エネルギー供給の効率化が一体となり、持続可能な社会づくりに向けた新しい道が開かれています。

もちろん、課題や懸念事項はまだ残っていますが、それは解決すべき挑戦であり、希望の種です。多くの研究者や企業、地域社会が手を組んでこのテクノロジーを進化させ、より多くの人々がその恩恵を受けられる日も遠くはありません。

それぞれの人がこの問題にどれだけ興味を持つか、行動を起こすかが、未来を大きく変える鍵となることでしょう。




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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に交換留学で訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。