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ペットボトル 水平リサイクルでより環境にやさしく

公開日: 更新日:2024.01.09
ペットボトル 水平リサイクルでより環境にやさしく


ペットボトルは便利で使いやすい一方で、適切にリサイクルや処分が行われないと環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

そんなペットボトルのリサイクルとして、より環境にやさしい「水平リサイクル」への取り組みが増えています。


ペットボトルリサイクルの基礎知識

ペットボトル回収


ペットボトルと環境の関係

ペットボトルは大変便利なので、日常生活で頻繁に使用されていますが、その製造と廃棄は環境に著しい影響を与えています

具体的には、1本のペットボトルを製造するために約0.25リットルの石油が必要です。石油は非再生可能な資源であり、ペットボトルの大量生産による採掘は、環境破壊を進行させる可能性があります。

また、未処理で捨てられたペットボトルは600年以上も自然界で分解されません。これにより海洋汚染や土壌汚染が進むこととなります。

さらに、ペットボトルが焼却処分された場合は、有害なダイオキシン類や二酸化炭素が発生し、これが地球温暖化や公害を進行させる一因となるため、環境に与える影響は決して小さくありません。


リサイクルと再利用の違い

リサイクル」と「再利用」はしばしば混同されがちですが、これらは異なるコンセプトです。

リサイクルとは、使用済みの製品や資源を回収し、加工して新しい製品に生まれ変わらせるプロセスです。ペットボトルの場合、回収後に洗浄、乾燥し、粉砕して新たなペットボトルやテキスタイルに再生するのがリサイクルです。

一方、再利用は、製品をそのまままたは最小限の手直しで再度使用することです。たとえば、ペットボトルを洗浄して、再度水やお茶を入れて使用するのが再利用です。

リサイクルは新しい製品が生まれる過程でエネルギーを多く使いますが、再利用はそれほどエネルギーを使いません。


資源としてのペットボトル

ペットボトルは多くの人にとって単なる使い捨て品かもしれませんが、ペットボトルは単なる一過性の使用品ではなく、実際には非常に貴重な資源でもあります。

ペットボトルはポリエチレンテレフタレート(PET)という樹脂から作られており、この樹脂は再生可能な資源です。

日本では、ペットボトルのリサイクル率が約86%(2022年時点)と非常に高く、これは世界的に見てもトップレベルです。
リサイクルされたペットボトルからは、新しいボトルだけでなく、フリース、成形品、さらには建築資材まで製造することができます。

ペットボトルの適切なリサイクルによって、非再生可能な石油資源の消費を減らし、CO2排出量も削減することが可能です。


ペットボトルの水平リサイクルとは

ペットボトル2本


水平リサイクルの製造プロセス

水平リサイクルは、使い捨てられた製品がそのまままた同じ種類の製品に生まれ変わる形態のリサイクルです。

ペットボトルの水平リサイクルの製造プロセスは非常に洗練されています。

まず、使い終わったペットボトルは分別され、特定の場所で回収されます。
次に、回収されたペットボトルは洗浄、乾燥され、粉砕されます。
この粉砕したペットボトルは次に溶解プロセスを経て、新しいペットボトルの原料となる樹脂ペレットに変換されます。
この樹脂ペレットが再びペットボトルとして成形、製造されるのです。

このようにして、一度使われたペットボトルが新しいペットボトルとして蘇るわけです。このプロセスによって、資源を無駄にすることなく、効率良くリサイクルが行われます。


水平リサイクルがもたらす循環型社会への貢献

水平リサイクルはその効率性と持続可能性から、日本政府も積極的に推進しています。特に、この手法は日本の循環型社会推進基本計画における核心的な要素と言えます。

水平リサイクルが普及すれば、新しい資源を探して掘り出す必要が減少します。これは、資源が限られている現代において極めて重要なポイントです。

水平リサイクルは廃棄物が新しい製品に生まれ変わる過程で、環境負荷を最小限に抑えられるため、環境維持と経済成長を両立する循環型社会にとっては大きな貢献です。
水平リサイクルは資源の効率的な使用を可能にし、環境負荷を低減しながら経済的な利点も享受できる方法として、日本だけでなく、世界中でその重要性が高まっています。

これからも、このようなリサイクル手法の更なる普及と技術的な進展によって、持続可能な循環型社会に一歩一歩近づいていくことが期待されます。


CO2削減と水平リサイクルの相乗効果

水平リサイクルがもたらすもう一つの大きなメリットは、CO2排出量の削減です。

新しいペットボトルを作る過程では石油の採掘、精製、輸送といった多くのステップが必要ですが、水平リサイクルによってこれらのプロセスを大幅に短縮、またはスキップすることができます。その結果、CO2排出量は約40%も削減されると言われています。

それだけではありません。例えば、水平リサイクルのプロセスで使用するエネルギーが再生可能エネルギーであれば、CO2削減の効果はより増大します。また、このようなリサイクルプロセスが地域社会で広がると、地域全体のCO2排出量にも影響を与え、大きな変化を促す可能性があります。

このように、水平リサイクルは単なる廃棄物処理の方法としてだけでなく、地球温暖化の抑制にも寄与する重要な手段となっています。


水平リサイクルと焼却の環境負荷比較

廃棄されるペットボトルに対しては、一般的にはリサイクルまたは焼却の二つの処分方法が考えられますが、これらは環境負荷の面で大きな違いがあります。

焼却の場合、水平リサイクルに比べて約3倍ともいわれる大量のCO2が排出されるだけでなく、ダイオキシンなどの有害物質が発生するリスクも伴います。
これに対して水平リサイクルは、CO2排出量が大幅に少なく、有害物質の発生もほぼゼロです。

特に、日本のような限られた土地資源を持つ国においては、焼却による廃棄物の増加は新たな埋立地の確保という問題も生じます。その点、水平リサイクルは廃棄物量そのものを減らす効果もあり、多方面にわたる環境負荷の軽減が期待できるのです。

これらを総合すると、水平リサイクルはペットボトルをはじめとした製品の持続可能な利用に大いに貢献しており、その推進がより良い環境へとつながる重要な鍵であると言えるでしょう。


水平リサイクルと縦型リサイクル:環境負荷の低減と現状の課題

ペットボトルリサイクル


石油の使用と温室効果ガス排出の削減

水平リサイクルと縦型リサイクルはともにリサイクルの一形態でありながら、その環境への影響には大きな違いがあります。

縦型リサイクルでは、例えばペットボトルは他のプラスチック製品や繊維へとリサイクルされますが、新たなペットボトルを作る際には石油の新規採掘が必要になります。
対照的に水平リサイクルでは、ペットボトルが新しいペットボトルに再生されるため、新規の石油採掘は必要ありません。一定量のペットボトルを水平リサイクルすることで、石油使用量が約20%削減されるとされています。

また、縦型リサイクルに比べ、水平リサイクルはCO2排出量を約40%削減できるとも報告されています。このような要素が、資源が有限である現代社会においては、非常に大きな意味を持っています。


企業の取り組みと持続可能なビジネスモデル

企業、特に飲料メーカーは、水平リサイクルの重要性を理解して積極的に取り組みを展開しています。

一部の企業では、全製品に水平リサイクルされたペットボトルを使用するという目標を掲げ、その結果、企業自体の温室効果ガス排出量も大幅に削減しています。この取り組みは、企業の社会的責任(CSR)としても高く評価され、持続可能なビジネスモデルの構築に寄与しています。

加えて、企業は消費者に対しても、水平リサイクル製品の選択が環境に与えるポジティブな影響について啓発しています。このような企業活動は、消費者行動にも影響を与え、環境への貢献をさらに拡大させる可能性があります。


リサイクル率の向上と今後の課題

水平リサイクルの取り組みは進展しているものの、全体としてのリサイクル率は依然として改善の余地があります。

日本では2022年時点でペットボトルのリサイクル率が約86%とされていますが、これには焼却や埋め立てが含まれておらず、実質的な数値はもっと低い可能性があります。

リサイクル率を向上させるためには、消費者の分別意識の啓発リサイクル施設の拡充、そして技術開発が必要です。特に地方においてはリサイクル施設が不足している場合が多く、これが総合的なリサイクル率の低下につながっています。

加えて、水平リサイクルには独自の技術的課題もあります。例えば、繊維強度が落ちる場合があり、その結果として新しい材料を混合する必要が出てくることがあります。
また、水平リサイクルに適したペットボトルの設計や加工には、現状では高いコストがかかっています。

これらの課題に対して、政府、企業、消費者が一体となって取り組むことが、今後の持続可能な社会においては不可欠です。


ペットボトルリサイクルの全体戦略

ペットボトルがリサイクルボックスに入っている


企業と自治体による分別と回収システムの強化

企業と自治体は、効率的な分別と回収システムを整える責任があります。この点での取り組みが不十分だと、リサイクル全体の流れがスムーズでなくなってしまいます

自治体においては、まず、適切な指導と教育が求められます。例えば、分別の方法を広く知らせるポスターやビデオ、地域内のリサイクルイベントなどを活用して、住民に正確な情報を提供することが重要です。
また、リサイクルボックスを公共の場所やスーパーマーケットに設置することで、住民がペットボトルを手軽にリサイクルできる環境を整えるべきです。

一方で、企業もまた重要な役割を担っています。製品設計段階からリサイクルを考慮することで、後の分別や処理が容易なペットボトルを市場に提供することができます。
例えば、ラベルは簡単に取り外せる設計にする、または、非接着性のインクで情報を印刷するなどの方法があります。

さらに、企業と自治体が協力して、リサイクルプラントや分別施設の近代化に投資することも一つの手段です。これにより、回収されたペットボトルをより効率的に、かつ高品質なリサイクル素材に変換することが可能となります。

このように、企業と自治体が連携して分別と回収のシステムを強化することで、リサイクル率の向上が期待できます。


家庭でできる簡易的なリサイクルと減量活動

家庭でできる取り組みとしては、まず基本的なペットボトルの洗浄と乾燥があります。これにより、リサイクルプロセスでの障害やエネルギー損失を防ぐことができます。
ただし洗浄が不十分だと、残留食品や飲料がリサイクル過程で資源の汚染を引き起こし、その後の品質に影響を与える可能性があります。食器用洗剤を数滴加え、しっかりと振ってから流水で洗い流し、内側までしっかり乾燥させましょう。

また、量の多いペットボトルを購入して小分けにする、或いは同じペットボトルを何度も使用するなど、ペットボトル使用量そのものを減らす工夫も有効です。

このような家庭での小さな工夫が、全体として大きなリサイクル率の向上に寄与するでしょう。



ペットボトルのリサイクルは単なる環境への配慮以上に、持続可能な社会の構築に貢献する大きなテーマです。特に水平リサイクルの取り組みは、CO2削減や資源の有効活用に繋がります。

しかし、その成功は企業、自治体、そして私たち一人一人の行動にかかっています。ペットボトルリサイクルの背後にある深刻かつ希望に満ちたテーマについて、改めて考える機会を得られたなら幸いです。




PETボトルリサイクル推進協議会:ボトル to ボトル

環境省:プラスチック・スマート




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この記事を書いた人

中山

地球を愛する料理研究家であり、SDGsと食品ロスに情熱を傾けるライターです。食品ロス削減を通じて、環境保護と健康的な食生活の両立を促進し、持続可能な社会の実現を目指しています。趣味は家庭菜園。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。