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【リサイクルの裏側】段ボールのリサイクルで、環境にどう貢献できるの?

公開日: 更新日:2024.01.31
【リサイクルの裏側】段ボールのリサイクルで、環境にどう貢献できるの?

段ボールってどうやって再生されるかご存知ですか?

段ボールは、私たちの生活に欠かせない包装材料です。商品を運ぶだけでなく、収納や保管にも役立ちます。

そんな段ボールは、実はリサイクルしやすい素材です。
しかし、そのプロセスや、どのようにして環境に優しい包装材料へと進化しているのかは、意外と知られていないのです。


段ボールのリサイクル

段ボールリサイクル

段ボールの構造

段ボールは、主に「フルート」と「ライナー」の二層構造から成り立っており、その構造により、丈夫さと軽さを両立しています。
フルートは、段ボールの内部に存在する波形の紙で、この部分が衝撃を吸収し、商品を保護します。一方、ライナーはフルートの上下に配置される平滑な紙で、外部からのダメージを防ぎます。

これらの構成要素は、それぞれ異なる種類の紙から作られており、それぞれが特有の機能を果たします。フルートの部分は、主にクッション性を提供し、ライナーは耐久性と印刷面を提供しています。

このような構造により、段ボールは梱包材として広く利用されています。


回収から原紙への工程

段ボールのリサイクルプロセスは、まず段ボールの回収から始まります。

日本では、使用済みの段ボールの回収率が非常に高く、これらは主に自治体や専門業者によって回収されます。

回収された段ボールは、まず分別され、テープやラベルなどの異物が取り除かれます。
特に注意が必要なのが、ロウ引きダンボールなどリサイクル不可能な材料です。これらが混入すると、リサイクル過程で問題を引き起こすため、正確な分別が重要になります。

分別の方法は、自治体によって異なりますが、一般的には、フルートとライナーを分離して、それぞれの種類ごとに分別します。
分別された古紙は、水と機械を用いて繊維状に戻す作業が行われ、不純物が取り除かれます。段ボールを繊維状にすることで、再度原紙として使用可能な状態になります。

この原紙は、新しい段ボールの製造に使われるだけでなく、新しい紙製品の原料として再利用され、資源の有効活用に寄与しています。


段ボールリサイクルの現状と課題

段ボールは、非常に高いリサイクル率を誇っており、持続可能なリサイクルシステムのモデルケースとして評価されています。日本における段ボールのリサイクル率は、約90%と高い水準にあります。

市場で利用された段ボールの大部分が回収され、再び原紙に加工されることで、新しい段ボールへと生まれ変わります。このプロセスは、古紙回収、製紙、段ボール加工の各業界が協力し合いながら行われています。

しかし、段ボール需要の増加に伴い、リサイクルシステムへの負荷も高まっています。特に、オンラインショッピングの普及により、段ボールの使用量が増加していることがこの負荷の一因です。
高いリサイクル率を維持するには、テープや金属、ブラスチックなどのリサイクル不可材料の排出や分別の徹底などの他、段ボールの設計からリサイクルプロセスに至るまで、より効率的かつ環境に配慮した方法の開発が求められています​。


段ボール再生のメリット

段ボール再生

資源循環の効果

段ボールのリサイクルは、環境保護と資源循環の観点から非常に重要な役割を果たしています。

段ボールは、主に木材パルプから作られています。段ボールをリサイクルすることで、新たな木材を伐採する必要がなくなり、森林資源の保護に貢献できます。

また、段ボールの製造には、大量のエネルギーや水資源が必要です。段ボールをリサイクルすることで、新たな段ボールを製造する際に必要なエネルギーや水資源を削減でき、環境負荷の低減にもつながります。

市場で利用された段ボールの約95%以上が回収され、そのほとんどが再び段ボールの原料として利用されます。回収された段ボールは新しい紙の原料になり、新しい段ボールに生まれ変わることで、資源の有効活用と廃棄物削減に寄与しています。

この持続可能なリサイクルプロセスは、環境保護の観点からも重要であり、今後も段ボールのリサイクル効率のさらなる向上が求められています。​


環境への貢献

段ボールのリサイクルは、環境保護にも大きく貢献しています。特に気候変動に対する具体的な対策として、CO2排出量の削減につながります。

段ボールの製造には、石油などの化石燃料が使われます。段ボールをリサイクルすることで、新たな段ボールを製造する際に必要な化石燃料の使用量を削減でき、温室効果ガスの排出量を抑えることができます。
また、段ボールは、焼却するとダイオキシンなどの有害物質が発生する可能性があります。段ボールをリサイクルすることで、焼却量を削減でき、環境への負荷を軽減することができます。

段ボールはプラスチック系の包装容器と異なり、リサイクルでの回収や洗浄、破損などに伴うCO2排出が少ないため、トータルでのCO2排出量が少なく、持続可能な包装資材といえます。
また、段ボール自体は100%再生可能な天然素材であり、リサイクルされなかった場合でも自然に還るため、地球温暖化の問題にも積極的に取り組むことができます​​​​。


コスト削減への影響

段ボールは、リサイクルすることで、新たな原料の調達コストを削減することができます。

段ボールの製造には、主に木材パルプが使われます。木材パルプの価格は、原油価格や木材価格などの影響を受けます。原油価格や木材価格が高騰すると、段ボールの製造コストも高騰します。
段ボールをリサイクルすることで、新たな木材パルプの使用量を削減でき、段ボールの製造コストを抑えることができます。

また、製造業やEC事業を営む企業では、物流コストの削減が喫緊の課題となっています。段ボールの梱包材のサイズや素材の見直しにより、輸送コストや保管コストを最適化し、経済的な効果をもたらします。

さらに、環境問題への配慮として、SDGsへの貢献も重要な要素となっており、段ボールの使用は環境に優しい梱包材として、企業の責任達成にも寄与しています


段ボール再利用のメリット

強化ダンボール

強化ダンボールの利点

段ボールは、そのままでも再利用することができますが、強化ダンボールとして加工することで、強度や耐久性を向上させることができます。

強化ダンボールは、フルートとライナーの間に、プラスチックや紙などの素材を挟んで加工することで作られます。また、バージンパルプを使用してつくられるため、繊維が長く絡み合っており、従来の段ボールよりも、強度や耐圧性、耐久性が向上し、重い荷物や衝撃に強い梱包材として使用することができます。

実際に、最大で1トンの重さを支えることができるほどの強度を持つ強化ダンボールもあります。

しかも紙なので、木材などに比べると軽量なため、輸送費の削減につながります。さらに、環境保護の観点からも、リサイクルが可能で、木材資源を節約する効果があります​​​​。


緩衝材としての活用

段ボールは空洞構造のため、衝撃を吸収する効果があり、緩衝材としても非常に有用です。衝撃吸収性に優れているため、輸送中の商品を保護するのに役立ちます。

また、段ボールはそのままでも緩衝材として使用できますが、段ボールの形を加工することで、より効果的な緩衝材として使用することができます。これにより、商品の特性に合わせて最適な保護が可能となり、商品の損傷リスクを低減できます​​。
例えば、段ボールを筒状に加工して、配送時の衝撃から商品を守るために使用したり、段ボールを折りたたんで、家具や家電製品の輸送時に使用したりすることができます。

さらに段ボール緩衝材は、様々な形にすることができるため、従来のプラスチックや発泡スチロールを使用した緩衝材と比べて、リサイクルが容易で環境に優しいです。


再利用時の注意

段ボールを再利用する際には、以下の点に注意が必要です。

◎水濡れや汚れなどのダメージがないか確認する
◎テープやシールなどの異物を取り除く
◎破損や汚れがひどい場合は、リサイクルに出す

段ボールを再利用する際に、水濡れや汚れなどのダメージがあると、強度や耐久性が低下する可能性があります。また、テープやシールなどの異物が残っていると、再利用の際に邪魔になる可能性があります。

再利用を考える際には、段ボールが清潔であることを確認し、必要に応じて適切な清掃や乾燥を行うことが重要です。
また、リサイクル不可能な特殊加工がされている段ボールは、再利用が適さないことも念頭に置くべきです​​。


エコと効率のバランス

リサイクルマーク

リサイクルマークの重要性

段ボールをリサイクルするためには、正しく分別することが大切です。

そのためには、段ボールにリサイクルマークが付いているかどうかを確認することが重要です。
このマークがあることで、消費者が段ボールを適切に分別しやすくなり、市町村の分別回収が促進されます。

リサイクルマークは、段ボールの種類や品質を表すものです。リサイクルマークには、以下の4種類があります。

◎白色段ボール
◎茶色段ボール
◎段ボール箱
◎クラフト

 白色段ボールは、食品や化粧品などの包装によく使用される段ボールです。茶色段ボールは、一般的な梱包によく使用される段ボールです。段ボール箱は、大型の荷物の梱包によく使用される段ボールです。クラフトは、紙袋や封筒などによく使用される段ボールです。

リサイクルマークには、数字が付いていることもあります。数字は、段ボールの強度を表します。数字が大きいほど、段ボールの強度が高いことになります。

ただし、段ボールリサイクルマークの表示義務はなく、無地の段ボールに関しては表示を省略することができます​​​​。

段ボールをリサイクルする際には、リサイクルマークを確認して、正しい分別を心がけましょう。


再生率の向上と効率化の両立

段ボールのリサイクルは、需要の増加と共に再生率の向上が重要な課題となっています。再生率の向上には、段ボールの分別の徹底や、新たなリサイクル技術の開発に加えて、原料の運搬や加工にかかるコスト削減を目指し、効率的なリサイクルプロセスの構築も重要です。

リサイクルの効率化を図るためには、段ボールリサイクル協議会が推進するリサイクルマークの印刷が有効です。
リサイクルマークを印刷することで、段ボールの分別が容易になり、リサイクルの効率化を図ることができます。また、リサイクルマークは、企業側が環境問題への取り組みをアピールする効果も期待できます。

段ボールリサイクルは、森林資源の保護や環境負荷の低減につながる、重要な取り組みです。
今後も、再生率の向上と効率化の両立を図り、持続可能な社会の実現に貢献していくことが求められています。


段ボールリサイクルの未来展望

リサイクル不可ダンボール

リサイクル不可材料の課題

段ボールは、基本的にはリサイクル可能ですが、一部の材料はリサイクルができません。段ボールリサイクルにおいて、リサイクル不可の材料は大きな課題です。

リサイクルできない材料としては、以下のようなものが挙げられます。

◎テープやシールなどの粘着剤
◎金属やプラスチックなどの異物
◎水濡れや汚れによる劣化
◎ワックス加工された段ボール
◎アルミ箔やポリ素材をラミネートした段ボール

これらの材料は、リサイクルの際に不良品として処理されてしまいます。さらに特殊素材は分離が困難であり、リサイクルプロセスにおいて問題を引き起こす可能性があります。

今後は、リサイクル可能な素材の選定や、リサイクル不可材料の代替案の開発が重要になります。


持続可能な包装材料へ

段ボールの原材料である木材は、適切に管理された森から調達されており、カーボンニュートラルな特性を持ちます。さらに、リサイクル可能であるため、使用後も土に還ることができ、環境にやさしい素材です。

しかし、段ボールの製造過程では、エネルギーや水資源の使用、廃棄物の排出が発生するため、さらなるリサイクル率の向上や製造工程の見直しなど、持続可能な包装材料としての取り組みが求められています。

◎段ボールの分別の徹底や、リサイクル技術の開発による再生率の向上
◎製造工程の見直しによるエネルギーや水資源の使用量の削減
◎再生原料の使用の拡大による廃棄物の削減

これらの取り組みにより、段ボールは環境にさらにやさしい包装材料として、持続可能な社会の実現に貢献することができるでしょう。



段ボールリサイクルは、私たちの日常と地球の未来の両方にとって重要な意味を持ちます。

段ボールは、私たちの生活に欠かせない素材です。
今後も、私たち一人ひとりがリサイクルに意識を向け、環境に配慮したライフスタイルを心がけましょう。







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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に交換留学で訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。