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【リサイクルの裏側】アルミ缶とスチール缶の再生物語

公開日: 更新日:2024.01.16
【リサイクルの裏側】アルミ缶とスチール缶の再生物語

私たちが日常的に使用するアルミ缶とスチール缶、そのリサイクルの裏側にはどのような物語が隠されているのでしょうか?

アルミ缶とスチール缶のリサイクルには、驚くべき技術革新と、持続可能な未来への重要なステップが隠されています。

それでは、リサイクルの裏側を一緒に見ていきましょう。


アルミ缶vsスチール缶

アルミ缶スチール缶違い

アルミ缶とスチール缶の違い

アルミ缶とスチール缶は、どちらも飲料や食品の容器としてよく使われていますが、その素材性質には大きな違いがあります。

アルミ缶は、アルミニウムという金属で作られています。アルミは、非常に軽量で錆びにくく、熱伝導性が高いという特徴があります。そのため、炭酸飲料や果汁飲料などの缶詰によく使われます。

一方、スチール缶は、鉄で作られています。鉄は、アルミに比べて重量がありますが、強度が高く、耐久性があります。そのため、コーヒーやビールなどの缶詰によく使われます。

アルミ缶はスチール缶ほど強度的に強くなく、中味の圧力で容器の強度を保つ必要があり、当初は炭酸を含む飲料窒素充填された飲料にしか使うことができませんでしたが、現在は陽圧にするという技術の進歩によって、炭酸飲料でなくても使用できるようになりました。
また、お茶類コーヒーなどは中味を缶に充填してから高温・高圧で殺菌する製法のため、丈夫なスチール缶を使用していましたが、技術の発達により、アルミ缶でも製造できるようになりました。

このように、現在は容器の使い分けの制限が、徐々になくなってきています


高いリサイクル率

アルミ缶とスチール缶は、リサイクルの分野で非常に高いリサイクル率を誇っています。
日本における2022年度のアルミ缶のリサイクル率は93.9%、スチール缶のリサイクル率は92.7%です。これは、世界でもトップクラスのリサイクル率です。

アルミ缶のリサイクル率は世界的に95%以上に達しており、これはアルミニウムがリサイクル過程で品質を落とさずに何度も再利用できる性質に起因しています。
一方、スチール缶のリサイクル率も非常に高く、多くの国で90%以上が再利用されています。スチール缶は磁石で容易に他の材料から分離でき、溶鉱炉で効率的にリサイクルされます。


環境への貢献

これらの高いリサイクル率は、環境保護と資源の持続可能な利用の両面で大きな意義を持っています

アルミ缶のリサイクルは新たなアルミの生産時に比べて、CO2排出量を95%削減することができます。また、スチール缶のリサイクルは、鉄鉱石の採掘や輸送に関わる環境負荷を軽減し、持続可能な資源循環を支えています。

これらの取り組みは、地球温暖化対策や資源枯渇問題への効果的なアプローチとなっており、私たちの生活と直結した環境保全活動の一翼を担っています。


アルミ缶リサイクルの特徴

アルミ缶リサイクル

アルミ缶の再生過程

アルミ缶のリサイクルは、環境にやさしい再生過程を経ています。

回収と分別:消費者や自治体が中心となり、アルミ缶を分別排出し、主に自治体、集団回収、店舗回収などのルートで回収されます。
資源回収業者への売却:回収されたアルミ缶は資源回収業者に売却され、金属リサイクル業者に引き渡されます。
破砕工程:アルミ缶はシュレッダーで細かく破砕され、鉄・非鉄・その他の物質が除去されます。
焙焼処理:破砕されたアルミ缶を焙焼し、表面の塗料や有機物を取り除き、アルミペレットが製造されます。
精錬工程:アルミペレットが圧縮、成型され、溶解されて新しいアルミ缶の原料となります。

このプロセスは、アルミニウムの特性を活かしつつ、新たな資源を採掘することなく、既存の資源を有効活用しています。そのため、アルミの原料となるボーキサイトからアルミインゴットを作るよりも、約95%のエネルギーを削減することができます。

リサイクルされたアルミは、品質を損なうことなく何度も再利用することが可能です


アルミ缶は「缶から缶へ」

アルミ缶のリサイクルは「缶から缶へ」というサイクルで行われます。つまり、使用済みのアルミ缶が再びアルミ缶として生まれ変わる水平リサイクルです。

このサイクルは非常に効率的で、リサイクルされたアルミは60日ほどで新たなアルミ缶として店頭に並びます。
この迅速なリサイクルプロセスは、資源の有効活用に大きく貢献しており、持続可能な社会の構築に向けて重要な役割を果たしています。

 アルミ缶のリサイクルは、資源の節約だけでなく、エネルギー消費の削減にも繋がります。


リサイクルによりCO2削減に貢献

アルミ缶のリサイクルは、CO2排出量を削減する上で大きな役割を果たしています。

新しいアルミニウムを製造するプロセスは、大量のエネルギーを必要とし、大量のCO2を排出します。一方、リサイクルされたアルミ缶を使用することで、新しいアルミニウムを製造する際に比べて約95%のエネルギーを節約できるとされています。
具体的には、アルミ缶を1本リサイクルすると、約0.1kgのCO2削減につながります。これは、自動車を約1km走行したときと同等のCO2排出量に相当します。

また、アルミ缶のリサイクルは、新たな資源の採掘や輸送に伴うCO2排出も抑制することができます。
このことは、地球温暖化防止における重要な貢献であり、私たちの日常生活でのリサイクル活動が、環境保護への大きな一歩となります。


スチール缶のリサイクル効果

スチール缶リサイクル

スチール缶の再生過程

スチール缶のリサイクルは、持続可能な資源利用の優れた例です。

回収:使用済みのスチール缶は、消費者や自治体によって回収されます。
分別:回収されたスチール缶は磁石を使用して、他の材料から分離されます。
圧縮:分別されたスチール缶はプレスされて、運搬やリサイクルが容易な形に加工されます。
熔解:プレスされたスチール缶は、製鉄工場で高温で溶かされ、液状の鉄に変換されます。
精錬:液状の鉄は不純物を取り除くための精錬を経て、再利用可能な鋼に変換されます。
成型:精錬された鋼は、新しい製品の製造に使用されるための様々な形状に成型されます。

スチール缶のリサイクルは比較的単純で効率的なプロセスであり、高品質の鋼を再生することが可能です。
これにより、新たな鉄鉱石の採掘を減らし、資源の持続可能な利用を実現しています。


鉄スクラップの原料として再利用

スチール缶は、鉄スクラップの原料として再利用されます

熔解されたスチール缶は、鉄鋼メーカーで建築材料や自動車部品など、多様な製品に変わります。このプロセスは資源の循環を促進し、新しい鉄鉱石の採掘に依存することなく鋼の供給を保証します。

鉄スクラップは、鉄鉱石から鉄鋼を作るよりも、約75%のエネルギーを削減することができます。また、鉄鉱石の採掘や運搬に伴う環境負荷を抑えることにもつながります。

鉄スクラップの再利用は、資源の持続可能な管理において重要な役割を果たしており、無駄なく効率的な利用を可能にしています。
スチール缶のリサイクルは、資源ごみの有効活用と環境保護の観点からも大きな価値を持っています。


CO2削減への貢献

スチール缶のリサイクルは地球温暖化対策において非常に重要な役割を果たしています。

新しい鉄鋼の生産は大量のエネルギーを必要とし、その過程で多くのCO2が排出されます。しかし、リサイクルされたスチール缶を使用することで、エネルギー消費を大幅に削減できます。
実際に、リサイクルされた鋼を使用することで、新しい鋼の生産に比べて約60%のエネルギー削減が可能です。

また、スチール缶一本をリサイクルすることで約0.2kgのCO2が削減され、これは自動車が約2km走行する際に排出されるCO2量と同等です。
スチール缶のリサイクルによるCO2削減は、温室効果ガスの全体的な排出量を減らす上で重要です。また、このプロセスは、環境への負荷を低減するだけでなく、経済的にも効率的です。


分別の重要性

缶の分別

アルミ缶とスチール缶を正しく分別する

アルミ缶とスチール缶の正しい分別は、リサイクルプロセスの効率化に欠かせません
なぜなら、アルミ缶は溶かして再利用されるため、スチール缶と混ざると、溶解温度が下がり、品質の低下や生産効率の低下につながるからです。

アルミ缶とスチール缶の分別は、とても簡単です。缶の底にあるリサイクルマークを確認し、アルミ缶は「アルミ」マーク、スチール缶は「鉄」マークのついている容器に入れるだけです。

また、アルミ缶は磁石に引きつけられないのに対し、スチール缶は磁石にくっつく特性があるので、磁石を使えば、家庭やオフィスで缶を分別することができます。

缶の口や側面に汚れや異物が付いている場合は、取り除いてから分別するようにしましょう。

アルミ缶とスチール缶の正確な分別により、リサイクル施設での作業がスムーズになり、材料の無駄遣いを防ぐことができます
私たち一人ひとりがこの小さな行動を取ることで、リサイクルの効率が向上し、資源の持続可能な利用に貢献することができます。


分別収集の促進

分別収集の促進は、リサイクルプロセスの重要な一部です

自治体や地域コミュニティによる分別収集の取り組みは、リサイクルの質を高め、効率を向上させることに直結します。
例えば、特定の日にアルミ缶とスチール缶を別々に回収することで、リサイクル施設での分別作業が軽減され、リサイクルプロセスがスムーズになります。

また、意識向上のための教育キャンペーンや情報提供も分別収集の促進には不可欠です。

これらの取り組みにより、アルミ缶とスチール缶のリサイクル率をさらに向上させ、地球環境の保全に貢献することができます。
具体的な取り組みとして、以下のようなものが挙げられます。

分別収集のルールや方法をわかりやすく説明するチラシやパンフレットを作成・配布する。
学校や地域センターなどで、分別の講習会やワークショップを開催する。
分別収集の模範となるようなモデル地区やモデル企業を創出する。

また、近年では、インターネットやSNSを活用した情報発信も効果的です。例えば、自治体や企業が、分別収集に関する情報をSNSで発信することで、より多くの人に情報を届けることができます。

これらの取り組みを組み合わせることで、より効果的な分別収集の促進を図ることができます。


リサイクルの進展

リサイクルの進化

技術革新と再生

リサイクル技術の進展は、特にアルミ缶とスチール缶の再生分野で目覚ましい進歩を遂げています。

最新の技術革新により、アルミ缶のリサイクルプロセスではエネルギー消費の大幅な削減が実現されており、これによってより高純度のアルミニウムの再生が可能になっています。具体的には、溶解温度を下げる技術や、缶の表面の汚れや異物を効率的に除去する方法が開発されています。

一方、スチール缶リサイクルにおいても、技術進歩が顕著です。溶融炉のエネルギー効率を高める技術や、鉄以外の不純物をより効果的に除去する方法などが導入され、リサイクルプロセスの効率化と品質向上が進んでいます。これらの技術は、リサイクルされた鋼から高品質な製品を製造することを可能にしています。

これらの技術革新は、リサイクル業界において重要な役割を果たしています
環境負荷の低減と資源の有効活用という二つの重要な目標を達成するために、今後もさらなる技術革新が期待されています。


リサイクル法の推進

政府や自治体はリサイクルに関する法規を整備し、企業や一般市民にリサイクルの重要性を認識させ、実践を促しています。これには、リサイクルを義務化する法律やリサイクル活動をサポートする補助金制度の導入が含まれます。

これらの法的枠組みはリサイクル業界の発展を促し、特にアルミ缶やスチール缶のような日常的なアイテムの効率的なリサイクルを推進する役割を果たしています。

リサイクルを推進するための法律の代表的な例として、容器包装リサイクル法が挙げられます。この法律は、容器包装の分別収集と再商品化を義務付けており、リサイクルプロセスの効率化を目指しています。

また、政府や自治体ではリサイクルに関する啓発活動や、リサイクルコストの削減を目的とした支援策を実施しています。

例えば、環境省ではリサイクル事業者に対する補助金制度を実施しています。この制度により、リサイクル設備の導入や、リサイクル品の仕分け・加工の効率化などにかかるコストの一部を支援しています。

このように、リサイクル法の推進は、環境への影響を考慮した社会の構築に向けた重要なステップであり、リサイクル活動の質と範囲を広げるために不可欠です。


サステナビリティの実現

リサイクル技術の進展は、持続可能な社会、すなわちサステナビリティの実現に大きく寄与しています。

アルミ缶とスチール缶のリサイクルを進めることで、資源の有効活用はもちろん、エネルギー消費の削減やCO2排出量の減少に繋がります。廃棄物の減少により、環境への負荷も軽減されるため、これはサステナビリティを実現する上で重要な要素です。

しかし、リサイクル率を100%に向上させるためには、まだ解決すべき課題が存在します。
リサイクル技術のさらなる効率化と品質向上、コスト削減の実現が重要です。これに加えて、リサイクルの普及と啓発活動の推進も必要です。リサイクルだけでなく、資源の有効活用や循環型社会の実現への取り組みも、サステナビリティの目標達成には欠かせません。

今後のリサイクル技術の進歩とリサイクル法の推進は、地球環境の保全だけでなく、経済的な持続可能性にも貢献することでしょう


これからの缶リサイクル

これからのリサイクル

これからの缶リサイクルは、さらなる技術革新と持続可能な社会への貢献が中心になるでしょう。
特に、より効率的で環境に優しいリサイクル方法の開発が進むことが期待されます。自動分別システムや高度なリサイクルプロセスの導入により、アルミ缶とスチール缶のリサイクルは、より迅速かつエネルギー効率の良いものになる可能性があります。

また、インターネットオブシングス(IoT)や人工知能(AI)の進展により、リサイクルプロセスの最適化が可能になり、より少ないエネルギーで高品質なリサイクル材を生産できるようになるかもしれません。このような技術は、リサイクル業界全体の効率を向上させ、持続可能な資源の利用を促進します。

さらに、消費者意識の高まりとともに、リサイクルへの参加やサステナブルな製品の選択が一般化することで、リサイクルの需要と重要性が増していくでしょう。
缶リサイクルの未来は、技術革新だけでなく、社会全体の意識変化によっても形作られるため、持続可能な社会の実現に向けた積極的な行動が求められます。



【参考】

アルミ缶リサイクル協会

スチール缶リサイクル協会







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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に交換留学で訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。