観光公害の現状
オーバーツーリズムとは
コロナ禍が落ち着いた世界で、現在「オーバーツーリズム」という問題が発生しています。
「オーバーツーリズム」とは、観光客の急増によって、地域住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼし、観光地の魅力が損なわれる状況を指します。
観光客の増加は、地域経済にプラスの影響を与えます。
観光客は宿泊、飲食、土産物などの消費を通じて、地域経済を活性化させます。コロナ前の2019年には、訪日外国人旅行者の消費額は約4兆5000億円に達しました。現在、2023年10月に水際対策が大幅に緩和されたため、訪日客は増加傾向にあります。
観光地でのオーバーツーリズムの現状は、一見すると観光収入の増加というプラス面がありますが、実際にはさまざまな負の側面も存在しています。
混雑による住民生活への影響
オーバーツーリズムの負の側面はさまざまです。
例えば、観光客の急増により、歴史的な建物や自然環境へのダメージが懸念されます。また、地元の文化や伝統が観光化されることで、その本質が損なわれる可能性もあります。
中でも身近な問題が、混雑による住民生活への影響です。観光客の増加による混雑は、住民の生活に直接的な影響を及ぼしています。
京都では観光バスによる交通渋滞や、観光地周辺での騒音、ごみの増加が問題となっています。交通渋滞は、住民の通勤や日常生活に支障をきたすこともあります。
また、住宅街や路地裏などの生活道路での騒音やゴミ問題は深刻です。さらに、観光客向けの店舗が増えることで、住民向けの商店が減少するなどの問題も発生しています。
これらの影響は、住民の日常生活にストレスを与え、地域コミュニティにも影響を与える可能性があります。
鎌倉では、特に狭い道路が多いため、観光客による混雑が一層深刻化しており、地元住民の生活の質が低下しているとの声もあります。
2018年に京都市が実施した調査では、観光客による迷惑行為として「路上での飲食・喫煙」「騒音」「ゴミのポイ捨て」などが上位に挙がっています。 これらの問題は、観光地としての魅力と住民の生活のバランスをどのように保つかという重要な課題を提起しています。
世界と日本の現状
オーバーツーリズムは日本だけの問題ではなく、世界中の多くの観光地で見られる現象です。
例えば、イタリアのヴェネツィアやスペインのバルセロナなどでも、観光客の増加による負の影響が問題視されています。これらの都市では、住民の生活環境の悪化や文化遺産の保護が大きな課題となっており、様々な対策が講じられています。
日本においても、京都や鎌倉のように歴史的価値の高い地域でのオーバーツーリズム対策が求められており、持続可能な観光の推進が重要なテーマとなっています。これには地域住民との協力や観光の質の向上、インフラ整備など多角的なアプローチが必要です。
自然環境への影響
ゴミ増加と景観悪化が深刻化
京都や鎌倉のような都市観光地では、観光客の増加に伴い、ゴミの問題が顕著になっています。
特に、食べ歩きによる食品トレイやペットボトルの放置が、古都の美しい景観を損ねているのです。清水寺周辺や鎌倉の鶴岡八幡宮などの人気スポットでは、観光シーズンにはゴミ箱が溢れかえり、時には地面に散乱することもあります。
また、観光客による落書きやマナー違反も景観悪化に拍車をかけており、特に、世界遺産に登録されている寺社仏閣などの歴史的建造物周辺では、景観悪化が深刻な問題となっています。
地元住民にとっては、日常の生活空間が観光客によるゴミで汚れ、美しい町並みが損なわれます。また、ゴミの放置は衛生的な問題を引き起こし、地域の清潔さや快適さが低下します。
ゴミの増加により、地域ごとにゴミ処理の負担が増加し、自治体の財政にも影響を及ぼしています。
このようにオーバーツーリズムは、訪れた観光客だけでなく、地元住民の生活環境にも悪影響を及ぼしているのです。
観光客増加による動植物への影響
観光客の増加による影響は、自然環境に生息する動植物にも及んでいます。多くの観光客が訪れることで、これらの生物の生息地が脅かされているのです。
自然保護区域である屋久島では、観光客による過度な自然体験が、固有種の生態系に影響を与えている事例が報告されています。
観光客の騒音や、許可なく自然エリアに立ち入る行為は生態系に悪影響を及ぼします。例えば、人の接近による野生動物のストレス増加や、トレッキングによる植生へのダメージが顕著です。
京都の嵐山では、人間に慣れた動物の増加や野生動物の自然な行動パターンの乱れが問題となっています。また、鎌倉の長谷寺では、希少植物の盗掘被害も発生しています。
これらの影響は、地域の生物多様性と自然の美しさの保全にとって重要な問題です。
自然保護の必要性
観光客の増加が自然環境に与える影響を受け、各地の観光地では自然保護の必要性が高まっています。
観光客の楽しみとと自然保護のバランスを保ちながら、持続可能な観光を推進するためには、観光客への啓発活動強化やゴミ問題への厳格な対策が重要です。
例えば、奈良公園では、シカへの餌やり規制を強化し、自然環境への配慮を訴える取り組みが行われています。
さらに、地元自治体や観光業界が連携し、観光地の自然環境と共存するための取り組みを進めることが求められています。
美しい自然を未来の世代にも残すため、観光客数の抑制や観光ルートの分散化などの対策が必要とされています。
自然環境と共存する観光地づくりが、これからの時代の要求なのです。
地域活性化と観光のバランス
地域文化の保護
観光地における文化は、地域住民にとってアイデンティティであり、観光客にとっても魅力の一つです。しかし、観光客の増加による文化の画一化や商業化は、地域文化の保護という点で大きな課題となっています。
観光客の増加により、伝統的な行事や祭りが観光化され、その本来の意味や価値が薄れてしまう恐れがあるのです。
地域の文化や伝統を守るためには、地元住民と観光客との間で理解を深める取り組みが必要です。
たとえば、伝統的な芸能や工芸の体験プログラムを提供することで、観光客に地域文化の価値を伝え、同時に地域経済にも貢献できます。
このような文化の継承と共有が、地域の魅力を長期にわたって保つ鍵となります。
観光と地域経済
観光は、地域経済にとって重要な産業です。観光客は、宿泊、飲食、土産物などの消費を通じて、地域経済を活性化させます。
しかし、観光に依存し過ぎることは、地域経済の健全な発展を妨げ、地域経済のバランスを崩す可能性もあります。
観光収入を地域の持続可能な発展につなげるためには、地域の特産品の販売促進や、新たな観光資源の開発が重要です。
観光客の滞在時間の延長や地域全体への分散が経済効果の最大化に寄与します。
地域固有の魅力を生かした観光開発が、経済の多様化と安定化に貢献します。
地域住民との協力
地域住民と観光客との良好な関係は、オーバーツーリズム問題の解決に不可欠です。
観光開発においては、住民の意見を尊重し、彼らが直面する問題に耳を傾けることが大切です。
また、地域住民は、観光客のマナー啓発やゴミの回収などの対策に協力するとともに、観光客と積極的に交流し、地域の魅力を発信していく必要があります。
例えば、地元の人々が観光ガイドとして活動することで、観光客に地域の魅力を伝えると同時に、住民との交流を深めることができます。地域コミュニティの一員として観光客を迎え入れることが、持続可能な観光地域づくりの鍵となります。
京都市では、地域住民と観光客が協働して取り組む「京都観光おもてなし協働推進事業」を実施しています。また、鎌倉市では、地域住民が観光客向けのガイドツアーを行う「鎌倉案内人制度」を実施しています。
観光地は、地域住民と観光客が共存しながら発展していく必要があります。地域住民と観光客が協力して、持続可能な観光を実現していくことが重要なのです。
規制強化と経済活動
観光客数制限
近年、オーバーツーリズム対策として、観光客数の制限が議論されています。
特定の人気観光地や時期において、一定数以上の観光客を受け入れない措置を導入することで、混雑を避け、地域の生活環境や文化を守ることが可能になります。
例えば、清水寺や金閣寺などの人気スポットでは、入場者数を制限することで、観光客の満足度を高めると同時に、地域の負担を軽減することが期待されます。これは、持続可能な観光のための重要な一歩となります。
京都市では、2019年に、特定の観光スポットにおける観光客数の制限を検討する「京都市観光まちづくり条例」を制定しました。また、鎌倉市では、観光客数の把握や分析を進めるための「鎌倉市観光客数調査」を実施しています。
観光客数の抑制は、オーバーツーリズム対策として最も効果的な方法の一つです。
しかし、観光客数制限は、観光業への影響や地域経済への影響などの課題があります。
民泊規制
民泊は観光客向けの宿泊施設として人気があり、近年急速に普及しています。しかし、民泊の増加は、住宅不足や騒音問題を引き起こしています。
いくつかの自治体では、民泊規制を通じて地域住民の生活の質を守る試みが行われています。これには、宿泊施設の数や立地、営業時間の制限などが含まれます。
京都市では2018年に「京都市住宅宿泊事業条例」を制定し、鎌倉市でも「鎌倉市住宅宿泊事業の適正化に関するガイドライン」を策定しています。また、大阪市では2022年に「住宅宿泊事業に関する条例」が改正され、実施制限区域に義務教育機関が追加されました。
国土交通省でも「住宅宿泊事業の適正な運営に関するガイドライン」を制定しています。さらに民泊制度のポータルサイトを開設し、自治体、地域住民、観光客にとって民泊の適正な運営と安全な利用を促進することを目指しています。
これらの規制により、地域の生活環境を守りつつ、観光客にも質の高い宿泊体験を提供することが可能になります。
未来の観光を考える
サステナブルツーリズム
サステナブルツーリズム、つまり持続可能な観光は、環境への影響を最小限に抑えながら、地域文化や経済に貢献する観光の形態です。
環境への配慮:自然環境や文化遺産などの保護
地域社会への配慮:地域住民の生活や文化への尊重
経済的利益の追求:地域経済の発展
歴史的な都市では、観光客による自然環境や文化遺産への負荷を考慮し、責任ある旅行を促進する必要があります。これには、地元の伝統や文化を尊重し、地域コミュニティとの協力による観光活動が含まれます。また、環境に配慮した交通手段の利用や、地域の資源を活用した観光プログラムの開発も重要です。
例えば、日本の小豆島ではオリーブ園や伝統的な醤油製造を見学することで、地域特有の文化や産業を体験できます。
サステナブルツーリズムを実現するためには、観光客のマナー向上や観光客数の抑制などの対策に加え、地域住民や観光客、行政が一体となって取り組んでいくことが重要です。
世界的な取り組みと日本
世界各国では、オーバーツーリズムへの対策としてさまざまな取り組みが進められています。
バリ島では地域の自然保護区域を設定し、観光客の入域を制限しています。また、ヨーロッパでは、バルセロナやベネチアなどの都市で、観光客に対する規制強化や観光税の導入などの対策が講じられています。
国連世界観光機関(UNWTO)は、2017年を「開発のための持続可能な観光の国際年」と定め、GSTCが旅行と観光における持続可能性のための国際基準を定め、持続可能な観光の世界的な取り組みを推進しています。
日本でも、京都や鎌倉を含む多くの観光地で、これらの海外の事例を参考にし、観光客のマナー啓発や観光客数の分散化などの対策が講じられています。
また、2018年には、政府が「観光立国推進基本法」を改正し、サステナブルツーリズムの推進を明記しました。
日本独自の文化や環境を守りながら、国際的な観光トレンドにも対応することが、今後の観光政策の方向性を定める上で重要です。
未来への展望
未来の観光は、ただ単に観光客を増やすことではなく、質の高い体験を提供することが求められます。観光は地域経済の発展や文化交流に貢献し、未来の世代に美しい自然と文化遺産を残すためにも、持続可能な形で行うべきです。
技術の進展により、より効率的で環境に優しい観光が可能になるでしょう。地域住民と観光客が共存し、互いに理解を深めることで、新たな観光の形が生まれる可能性があります。
これには地元住民との協力、環境に配慮した施策の導入、そして観光客自身の意識改革が不可欠です。
このような変化は、観光業界に新たな機会をもたらすと同時に、環境保全にも貢献するでしょう。
これからの観光が地域にとっても、訪れる人々にとっても価値あるものになることを期待しています。
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