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【日本の伝統行事:ひな祭り】時を越える「おひなさま」の不思議

公開日: 更新日:2024.02.29
ひな祭り-ひな人形

桃の香りに春の訪れを感じる季節。鮮やかな衣装を纏ったおひなさまが、女の子の健やかな成長を願って、優しく微笑んでいます。

ひな祭りは、平安時代から続く日本の伝統行事。時代とともに変化しながらも、受け継がれてきた大切な文化です。

でも、なぜひな人形を飾るの?東西で飾り方が違うって本当?ひな祭りの風習って?
時を越えて愛される「おひなさま」の不思議を解き明かしましょう。


ひな祭りの歴史

ひな祭り-女の子

ひな祭りの由来と意味

ひな祭りは、春の訪れと女の子の成長を祝う日本の伝統行事で、その起源は古代中国の上巳の節句にまで遡ります。
上巳の節句は、3月3日の不吉とされる奇数が重なる日に、中国で水辺で身を清め厄払いをする行事として行われていました。

この風習が日本に伝わり、平安時代には「流し雛」として、人形に厄を移して川に流す儀式に発展しました。当時、貴族社会では人形を使った「ひいな遊び」が流行し、これがひな祭りの原型となりました。また、貴族たちは紙や木で作られた人形で歌や物語を題材にした遊びを楽しんでおり、これが徐々に女の子の健やかな成長と幸福を願う行事へと変化していきました。

古代の厄払いの儀式から始まったひな祭りは、時代を経るごとに家庭で雛人形を飾る現代の形式へと進化し、春の到来を祝いながら、女の子の幸せを願う豊かな文化として日本各地で引き継がれています。


平安時代からの変遷

平安時代には貴族の子どもたちが人形遊びを通して成人の礼を学ぶ「雛遊び」がありました。

江戸時代に入ると、庶民の間にもこの習慣が広まり、人形を飾ることで無病息災を願う風習が根付きました。この時代には、人形の制作技術が進歩し、より精巧な雛人形が作られるようになりました。
また、この時代に「内裏雛」や「三人官女」などの人形の配置が定められ、今日見られるひな壇の基本形が確立されたとされています。

明治時代になると、西洋文化の影響を受け、ひな祭りの風習も変化しました。従来の雛人形に加えて、西洋風の衣装を着た人形や、家具や調度品なども飾られるようになりました。
また、ひな祭りの時期も、3月3日以外にも3月4日や4月3日など、地域によってさまざまになりました。


現代のひな祭り:変化する風習と伝統の継承

現代では、核家族化やライフスタイルの変化の影響で、雛人形を飾らない家庭も増えていますが、ひな祭りは日本の伝統行事として、依然として多くの人に親しまれています。現代のひな祭りは、単に伝統を守る行事ではなく、家族の絆を深める大切な機会としても位置づけられています。

技術の進歩やライフスタイルの多様化に伴い、雛人形の種類や飾り方にも新たなトレンドが生まれています。
例えば、省スペースで飾れるコンパクトな飾りから、現代的なデザインを取り入れた人形まで、幅広い選択肢が提供されています。また、ひな祭りのイベントやワークショップなども開催されており、子供たちがひな祭りについて学ぶ機会も増えています。

しかし、その核心にあるのは、あくまで女の子の健康と幸福を願うという、変わらぬ思いです。このように、ひな祭りは伝統と現代性が融合し、新しい形で次世代へと受け継がれていく文化の一例と言えるでしょう。


内裏雛の並べ方、東西で違う!

ひな人形-関東

内裏雛の位置と役割

内裏雛は、ひな祭りの飾りつけにおいて中心的な人形で、男雛と女雛はそれぞれ重要な役割を担っています。これらの人形は、ひな壇の最上段に正面を向いて配置され、お祭りの主役として君臨します

男雛は、天皇の衣装である束帯を着て、笏を持っています。笏は、儀式で使う板状の道具で、天皇の権威の象徴です。女雛は、皇后的衣装である十二単を着て、扇を持っています。扇は、風を起こして厄を払うという意味があります。内裏雛の背後には、しばしば金屏風が設置され、その豪華な装飾が二人の高貴さを際立たせています。

内裏雛の周りには、三官女、五人囃子、随身などの人形が飾られます。三官女は、女雛の世話をする女官です。五人囃子は、笛や太鼓などの楽器を演奏する男の子たちです。随身は、男雛と女雛を守る武官です。

この配置は、家内安全や子どもたちの健やかな成長を願う象徴的な意味を持っており、ひな祭りの飾りつけにおいて最も重要な要素の一つです。


関東と関西の配置違い

関東と関西では、内裏雛の配置に顕著な違いが見られます。

関東地方では、天皇を象徴する男雛が左側(向かって右)に、皇后を象徴する女雛が右側(向かって左)に配置されるのが一般的です。これに対して、関西地方ではこの配置が逆になり、男雛が右側、女雛が左側に置かれます。

この違いは、江戸時代における公家の座り方から由来していると考えられています。
江戸時代、公家は将軍の座る方向に合わせて座っていました。そのため、関東では将軍から見て右側に男雛、左側に女雛を飾るようになったのです。一方、関西では、公家自身が座る方向に合わせて座っていました。そのため、関西では自分から見て右側に男雛、左側に女雛を飾るようになったとされています。


向かって右?左?

近年では、関東でも関西でも、どちらの配置でも良いという考え方が広まっています。大切なのは、伝統的な意味を理解した上で、自分の好きなように飾ることです。

もし、どちらの配置にするか迷っている場合は、ご自身の家系や地域の習慣に合わせて決めるのも良いでしょう。また、雛人形を販売しているお店に尋ねてみると、それぞれの配置の意味や由来について詳しく教えてもらえるかもしれません。

内裏雛の並べ方には、関東と関西で違いがあります。しかし、大切なのは、伝統的な意味を理解した上で、自分の好きなように飾ることです。ひな祭りを通して、日本の伝統文化を楽しみましょう。


華やかさ対決! 関東と関西のひな壇飾り

雛段飾り

段飾りの豪華さ比較

関東と関西のひな壇飾りでは、その段数や装飾の豪華さに顕著な違いがあります。

関東地方では、一般的に5段から7段のひな壇が主流です。各段には内裏雛をはじめとする多種多様な人形や小物が丁寧に配置され、豪華絢爛な雰囲気を演出します。5段飾りは、7段飾りの主要な人形を飾り、コンパクトながらもしっかりとしたひな祭りを楽しめます。

これに対して、関西地方ではよりシンプルでコンパクトな3段飾りや2段飾りも多く見られます。重点を内裏雛や重要な仕丁人形に置く傾向があります。3段飾りでは内裏雛、三官女、五人囃子を飾り、シンプルながらも華やかな印象です。2段飾りは、内裏雛のみを飾る最小限のスタイルですが、場所を取らず気軽にひな祭りを楽しめます。

この違いは、地域ごとの文化や伝統の違いを反映しており、豪華さだけでなく、飾り方にもそれぞれの地域色が強く表れています。


京雛と江戸雛の特徴

京雛と江戸雛は、それぞれ京都と東京(旧江戸)を起源とする雛人形のスタイルです。

京雛の特徴

【繊細な造形と表情】
京雛は、その繊細な造形と落ち着いた色使い、穏やかで優美な表情が特徴です。職人の手仕事による細かい装飾や、衣装の緻密な染め分けが見られます。

伝統的な衣装】
衣装は伝統的な平安時代の貴族の装束を模しており、古典的な美しさを追求しています。特に、衣装の素材選びや色彩には、京都の伝統が色濃く反映されています。

【高い芸術性】
京雛はその製作過程や仕上がりの美しさから、単なる玩具ではなく、芸術品としての価値も高く評価されています。


江戸雛の特徴

【豪華で華やかな装飾】
江戸雛は、京雛よりも華やかで豪華な装飾が特徴です。色彩は鮮やかで、金彩や金箔を使用した装飾が多用されることもあります。

【大胆なデザイン】
江戸雛は、大胆なポーズや表情、デザインが特徴で、元気で活発な印象を与えます。このスタイルは、江戸(現在の東京)の庶民文化の影響を受けていると考えられています。

【庶民の文化】
江戸雛は、庶民にも広く愛された背景があり、身近な素材や技法で製作されることが多く、親しみやすさがあります。


これらの違いは、人形の制作技術や地域に根ざした美意識の違いから来ており、それぞれの雛人形には長い歴史と文化が反映されています。
京雛と江戸雛は、それぞれが持つ独特の特徴と魅力によって、ひな祭りの飾り付けに華を添え、日本の伝統文化としての深い魅力を伝えています。


ひな壇を彩る道具

ひな壇を彩る道具や小物も、それぞれ特有の意味や由来を持っています。

【緋毛氈】
ひな壇の赤い敷物を「緋毛氈(ひもうせん)」といいます。赤色には魔よけの効果があるとされており、緋毛氈はこどもが健康的に育つようにという願いが込められています。

【桜・橘】
桜と橘は一対の飾りです。「左近の桜(さこんのさくら)・右近の橘(うこんのたちばな)」と呼ばれています。
桜は魔よけや邪気払いの効果があると考えられています。橘は冬に花が咲くことから、不老長寿の木としてあがめられていました。
こどもが健康に育つように願いを込めて飾られています。

【菱餅】
菱餅は三色で表現されるのが基本で、ピンクは桃の花の色、緑は雪の下から芽吹く新緑の色、白は雪の色をあらわしています。さらに赤は魔除け、緑は健康、白は清浄をあらわし、こどもの魔を払い、健康で清らかに育つようにとの願いが込められています。

これらの小物には、子どもの成長や幸福を願う意味が込められており、飾りつけ一つひとつに家族の願いが込められていまるのです。


地域別ひな祭り

地域のひな祭り

京都のひな祭り風習

京都は、ひな祭りの発祥地とされる場所です。そのため京都でのひな祭りは、古都の風情を色濃く反映した独特の風習で知られています。

【古都の雛めぐり】
京都の古い町家や寺社で開催される雛展示: 京都では、春になると古い町家や寺社、旅館などで特別に雛人形が展示されます。これらの展示では、時代を超えて受け継がれてきた貴重な古雛(こびな)や京雛が公開され、訪れる人々に古都の春の風情を楽しませています。

【雛流し】
下鴨神社では子どもの身代わりとして、小さな雛人形を桟俵(さんだわら)に乗せて、境内のみたらし川に流し、子どもたちの無病息災を願います。また、上賀茂神社境内の「ならの小川」では近くの園児たちによる「流し雛」も行われています。

【京都御所の桃の節句行事】
京都御所での桃の節句行事: 京都御所では毎年、桃の節句にちなんだ行事が行われます。この行事では、皇室に伝わる伝統的な雛人形が飾られ、公開されることがあります。これは、皇室の文化と京都の伝統が融合した貴重な機会とされています。

【地域ごとの特色ある行事】
地域によって異なるひな祭りのお祝い: 京都内の各地域では、それぞれ独自のひな祭りのお祝いが行われます。例えば、特定の地域では独自の雛飾りやお祝いの料理を用意するなど、地域の伝統や文化を反映したひな祭りが楽しまれています。

京都でのひな祭りは、単に人形を飾るだけでなく、歴史や文化、厄払いの儀式としての意味合いも強く持っており、訪れる人々に古都ならではの春の風情を提供しています。


多彩な風習

日本全国では、地域ごとに異なるひな祭りの風習や行事が見られます。

【雛のつるし飾り(静岡県:伊豆稲取)】
雛のつるし飾り」とは雛祭りの時雛段の両脇に人形を飾る風習です。江戸時代から伝わる習わしで、子どもの幸せを祈り、親から子へ代々受け継がれてきました。伊豆の稲取が発祥の地です。福岡県柳川市の「さげもん」、山形県の「傘福」とあわせ「全国三大吊るし飾り」と呼ばれています。

【流し雛(雛流し)】
雛流しはひな祭りの元になったといわれる行事で、木の葉などを人の形「形代(かたしろ)」にして川に流し、無病息災を願いました。現在では和紙などで作った雛人形を藁で丸く編んだ「桟俵」と呼ばれる台に乗せて川に流し、子供たちの健やかな成長を願う行事として親しまれています。
下鴨神社の他、鳥取県の「もちがせ流しびな」、東京・隅田川の「江戸流しびな」などが有名です。
また和歌山県の淡島神社の「雛流し」は、奉納された雛人形を海に流す神事です。

地域ごとのひな祭りは、その土地の歴史や文化、地域コミュニティの結びつきを強く反映したものであり、多様な日本の文化を垣間見ることができます。


華やか雛まつりイベント

ひな祭りは、3月3日に女の子の健やかな成長を祝う行事として最も知られていますが、近年では華やかなイベントがたくさん行わるようになりました。

【阿波勝浦 元祖ビッグひな祭り】 
もともとは家庭で飾られなくなった雛人形たちが全国から集められ、供養されたのちに展示されています。
1988(昭和63)年に始まったビッグひな祭りは、その名の通りビッグな「百段のひな壇」が見どころです。高さはなんと約8m。会場には約3万体の雛人形が飾られており、華やかで雅な空間を楽しめます。

【開成町瀬戸屋敷ひなまつり】
古民家の趣ある雰囲気とともに雛人形を愛でる催しです。会場となる瀬戸屋敷は江戸時代の古民家で、築300年ほど。同じころに作られた「享保雛(きょうほうびな)」も飾られ、江戸時代の風情がいっぱいです。

【天領日田おひなまつり】 
市内の10数か所の旧家や資料館にて、往時の文化を物語る全国的にも珍しい雛人形から、庶民の間で親しまれた紙と布で作る「おきあげ雛」と呼ばれる人形まで、沢山の雛人形やひな道具が一斉に展示・公開されます。



雛飾りの基本

な祭りは家族の絆を深める

雛人形はいつ出す?

一般的には、ひな祭りの約1ヶ月前、つまり2月の初旬から中旬にかけて、立春頃から雛人形を飾り始める家庭が多いです。しかし、雛人形を飾る時期は家庭によって異なり、早い家庭では前年のクリスマスが終わった後に飾る場合もあります。

早すぎると、「一人前早い」といって女の子が早く家を出て行ってしまうという言い伝えがあるため、避ける家庭もあります。

雛人形は、家族が集まりやすい場所に、南向きまたは東向きに飾ると良いとされています。

雛人形はいつ片付ける?

雛人形は、一般的に 立春から3月3日の雛祭りまで飾ります。ひな祭りが終わった直後、つまり3月4日以降に速やかに片付けるのが一般的です。ただし、地域によっては、旧暦の3月3日(4月上旬)まで飾る場合もあります。

これは迷信かもしれませんが、片付けが遅れると、「婚期が遅れる」という言い伝えがあるため、3月中には片付けるようにする家庭が多いです。

実際には、雛人形を飾る期間や片付ける時期は家庭や地域によって異なり、特に固定されたルールがあるわけではありません。大切なのは、人形を丁寧に扱い、次の年も美しく飾れるように保管することです。


雛飾りの正しい片づけ方

雛飾りを片づける際には、人形や小物が破損しないように注意が必要です。手袋をして雛人形や小物を丁寧に拭き、ホコリや汚れを取り除きます

雛人形が入っていた箱や包みに、再び丁寧に収めます。部品を紛失しないように注意し、各アイテムを元の位置に戻すことが重要です。人形の種類によっては、特定の順序で箱に収める必要があるものもあるため、飾る際の順序を覚えておくと良いでしょう。

雛人形を収納する際には、湿気を避けるために人形用の乾燥剤を同梱しましょう。


雛飾りの保管方法

ひな人形の保管には、温度変化や湿度が少なく、直射日光が当たらない場所を選びます。押入れの中などが一般的ですが、防虫剤や乾燥剤を利用して、雛人形が損傷しないように配慮します。

大きな雛人形セットは、分解して小さな箱に収納することで、保管スペースを有効に使えます。

箱の上部に重たいものは置かないようにしましょう。

定期的に箱から出して、風通しを良くすることも大切です。箱から出すのが大変な場合は、箱ごと風通しの良い場所に出したり、保管場所の空気の入れ換えをしたり、湿気がこもらなようにしてください。

これらの手順を守ることで、長年にわたり雛人形を美しい状態で保つことができます。



ひな祭りは、女の子の成長を願うだけでなく、家族の絆を深め、日本の伝統を未来へ繋げていく大切な機会です

おひなさまの微笑みに見守られながら、今年も家族の幸せを願い、未来に向けて大切な価値を伝えていきましょう。






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この記事を書いた人

中山

地球を愛する料理研究家であり、SDGsと食品ロスに情熱を傾けるライターです。食品ロス削減を通じて、環境保護と健康的な食生活の両立を促進し、持続可能な社会の実現を目指しています。趣味は家庭菜園。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。