持続可能な開発のための解決策ネットワークであるSDSN(Sustainable Development Solutions Network)は、6月、「持続可能な開発レポート(Sustainable Development Report)/ SDGs達成度」の2024年版を発表しました。
SDGs達成度
SDGsとは
SDGsとは、持続可能な開発目標の略で、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットからなる国際目標です。
貧困や飢餓、不平等、気候変動など、世界が抱える様々な問題を解決し、より良い未来を築くために設定されました。
SDGsは、経済、社会、環境の3つの側面からバランスを取りながら、誰一人取り残さないことを目指しており、企業や自治体、そして私たち一人ひとりが、この目標達成のために貢献することが求められています。
SDSNとは
SDSN(Sustainable Development Solutions Network)とは、持続可能な開発のための解決策ネットワークのことです。
2012年に国連によって設立され、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を支援するために、学術機関、政府、企業、市民社会の専門家たちを結びつけています。
SDSNの主な目的は、科学と技術に基づいた実行可能な解決策を提供し、持続可能な開発の課題に取り組むことです。
SDGs達成度とは
SDGs達成度とは、持続可能な開発目標(SDGs)の各国や地域における達成状況を評価する指標です。
SDGs達成度は、これらの目標に向けた進捗状況を測定し、評価するためのもので、各国や地域がどの程度目標に近づいているかを示します。
○グローバルランキング:各国のSDGs達成度をランキング形式で示し、どの国がどの程度目標に近づいているかを視覚的に表示します。
○進捗評価:各目標に対する進捗状況を評価し、具体的なデータや指標を用いて進捗の度合いを測定します。
○成功事例と課題:各国や地域の成功事例を紹介し、どのような取り組みが効果を上げているかを示します。また、達成に向けた主な課題も明らかにします。
○政策提言:持続可能な開発を促進するための政策提言を行い、政府や関係機関に対する具体的なアクションプランを提供します。
○データと分析:SDGsの達成度を測定するための詳細なデータと分析を含み、各国のパフォーマンスを理解するための根拠を提供します。
このレポートは、政策立案者、学術研究者、NGO、企業など、多くの関係者にとって重要な情報源です。持続可能な開発を進めるための共通理解を深めるための基礎となります。
また、レポートの結果は、各国が政策を見直したり改善したりするのに役立ち、SDGsの達成に向けた国際的な協力と連携を促進します。
SDGs達成度2024
世界の現状
2024年現在、世界各国のSDGs達成度はまだまだ十分とは言えません。世界的な新型コロナウイルスの流行による影響もありますが、平均すると、2030年までに世界的に達成できる見込みのSDGターゲットはわずか16%で、残りの84%は進捗が限定的、または進捗が後退しています。全体として2030年の目標達成は難しい状態です。
特に遅れている項目
【気候変動対策(目標13)】
世界的に見て、気候変動に対する具体的な対策が不十分です。特に、温室効果ガスの排出削減が進んでおらず、多くの国で気候変動に対応するための政策が実行に移されていません。
【海の豊かさを守ろう(目標14)】
海洋プラスチックごみや乱獲、気候変動による海洋環境の悪化など、大きな課題が残っています。多くの国で海洋汚染対策や持続可能な漁業管理が進められていますが、進捗は遅れています。
【健康と福祉(目標3)】
新型コロナウイルスの影響で、世界中の多くの国々で健康と福祉に関する進捗が停滞または後退しています。医療サービスのアクセスが制限されたり、感染症の拡大が他の健康問題への対応を難しくしています。
【ジェンダー平等(目標5)】
女性に対する差別や暴力、経済的な機会の不平等など、ジェンダーギャップは依然として存在します。また、多くの国で女性の政治参加や経済参加の進捗が遅れています。特に、女性議員の割合が低く、男女間の賃金格差が大きな課題となっています 。
【質の高い教育(目標4)】
教育へのアクセスが不十分な地域が多く、新型コロナウイルスの影響で教育機会が減少した国もあります。特にオンライン教育の普及が進んでいない地域で、教育格差が拡大しています。
ポジティブな項目
【産業と技術革新の基盤を作ろう(目標9)】
産業と技術の基盤が強化されており、特に自然災害に強いインフラの整備が進んでいます。日本などの先進国では、レジリエントなインフラが整備され、技術革新が進んでいます 。
【持続可能な都市とコミュニティ(目標11)】
多くの都市で持続可能な都市計画が進められています。これには公共交通の改善や、環境に配慮した建築物の普及が含まれます。
ランキング
2024年版のSDGs達成度ランキングでは、フィンランドがトップを占め、続いてデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、オーストリア、ドイツと、北欧諸国およびヨーロッパの国々が上位を占めています。これらの国々は、教育の質、健康福祉、環境保護など多くの分野で高いスコアを記録しています。
一方、南スーダン、中央アフリカ共和国、チャド、ソマリア、スーダンといったアフリカ諸国は、紛争や貧困、政治的な不安定さなどが原因で、SDGsの達成に大きな課題を抱えています。
このように、SDGsの達成度には地域ごとの大きな差異が見られます。
持続可能な開発を実現するためには、先進国の支援や国際的な協力が不可欠です。特に、気候変動対策やジェンダー平等、海洋保護などの分野での取り組みを強化することが求められています。
国際社会全体が一丸となり、持続可能な未来を目指すための具体的な行動と投資を続けることが重要です。
日本の現状
ランキングとスコア
日本は、2024年のSDGs達成度ランキングで、世界167カ国中18位という結果でした。前年よりも3ランク上昇しましたが、過去最高の11位(2017年)には及ばない状況です。
持続可能な開発目標(SDGs)をどの程度達成しているかを示すSDG指数スコアは79.87。数値だけ見ると、世界的に見ても高い水準です。 これはSDGsの達成に向けて一定の成果を出していると言えるでしょう。しかし、すべての目標において、高いスコアが出ているわけではなく、課題が残っている分野も存在します。
スピルオーバースコアとは、ある国の経済活動が他の国に与える環境的・社会的影響を数値化した指標です。具体的には、自国の消費や生産活動が、他の国の環境汚染、資源の枯渇、社会問題にどの程度貢献しているかを示すものです。
スコアが高いほど他の国に与える負の影響が少なく、より持続可能な形で経済活動を行っていると言えるでしょう。
日本の数値は74.25であり、比較的高い水準です。これは日本が環境問題や社会問題に対して比較的高い関心を持ち、それらの問題を解決するための取り組みを積極的に行っていることを示唆しています。
17の目標に対する現状
17の目標に対する現状では、目標を達成しているのは目標9のみ。課題が残るのが五つ。重要な課題があるのが六つ。深刻な課題があるのが五つと、個々の目標に対する達成率は、決して高いものではありません。
【達成している分野】
○目標9(産業と技術革新の基盤を築く):日本はインフラの整備、革新的な技術開発、研究活動で高い評価を受けています。高度な技術力と研究開発投資が、持続可能な産業成長とインフラ整備を支えています。
【課題が残る分野】
○目標1(貧困をなくそう):社会保障システムは充実しているものの、相対的貧困率や子供の貧困が課題として残ります。
○目標3(すべての人に健康と福祉を):高齢化社会に伴い、健康寿命の延伸や医療費の増大が課題です。
○目標4(質の高い教育をみんなに):教育機会の不平等や学力の地域間格差が挑戦となっています。
○目標6(安全な水とトイレを世界中に):水資源の持続可能な管理と水質汚染の問題があります。
○目標16(平和と公正をすべての人に):社会的な包摂、アクセスの公正性、透明性の向上が求められます。
【重要な課題が残る分野】
○目標2(飢餓をゼロに): 食品廃棄物の削減と食の安全保障が中心課題です。
○目標7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに):再生可能エネルギーの普及とエネルギー効率の向上が課題としています。
○目標8(働きがいも経済成長も):非正規雇用の増加と働き方の多様性に対応する政策が必要です。
○目標10(人や国の不平等をなくそう):社会的、経済的不平等の解消が重要です。
○目標11(住み続けられるまちづくりを):過疎化と都市部の過密化のバランスが課題です。
○目標17(パートナーシップで目標を達成しよう):国際協力と持続可能な開発のための資源配分が重要です。
【深刻な課題がある分野】
○目標5(ジェンダー平等を実現しよう):性別に基づく賃金格差とリーダーシップの機会不足が顕著です。
○目標12(つくる責任つかう責任):消費と生産の持続可能性に対する認識の低さと実践の不足が問題となっています。
○目標13(気候変動に具体的な対策を):環境保護と経済活動のバランスが取りづらく、気候変動対策が遅れています。
○目標14(海の豊かさを守ろう):海洋保護と資源管理における具体的な進捗が不足しています。
○目標15(陸の豊かさも守ろう):生物多様性の保護と自然環境の維持が急務です。
エネルギーの効率的な利用や持続可能な生産パターンへの移行は進んでいますが、性別平等や生態系の保護、気候変動に関しては課題が残っています。
政府だけでなく、民間企業や一般市民の間でもSDGsに対する意識が高まっており、これが達成度をさらに押し上げる可能性を秘めています。今後もこの流れを維持し、さらに各目標に対して具体的なアクションを加速させることが求められています。
SDGs目標12と食品ロス削減
SDGs目標12とは
SDGsの目標12は「つくる責任、つかう責任」です。持続可能な消費と生産のパターンを確保するという重要な目標です。
この目標は、地球の資源を守りつつ、経済活動を持続可能なものに変えていくことを目指しています。具体的には、食品ロスの削減や資源の効率的な使用、持続可能な製品への投資増加などが含まれます。
この目標の達成は、地球環境を保護し、将来の世代に豊かな地球を残すために不可欠です。
世界の達成度
2024年の時点で、世界各国はSDGs目標12の達成に向けて様々な取り組みを進めていますが、全体的にはまだ課題が多い状況です。
特に先進国では、高い消費レベルと大量の廃棄物が主な問題点です。対策として、持続可能な製品の設計、リサイクル率の向上、消費者意識の啓発などが進められていますが、進展は限定的であり、より集中的な取り組みが求められています。
一方、途上国での目標達成に関する課題は多岐にわたります。主な問題点としては、資源効率の低さ、適切な廃棄物管理システムの不足、環境に優しい技術へのアクセスの限られていることなどが挙げられます。これらの課題に対処するためには、技術移転、持続可能なインフラの構築、教育および意識向上プログラムが必要です。
食品ロスに関しては、先進国では、過剰消費と廃棄物の処理の問題が主な課題であり、途上国では、保存技術の不足や流通インフラの未発達が食品ロスを増加させる要因となっています。
どちらの国も、政策の強化、意識向上の取り組み、技術革新が必要とされています。
全体的には、グローバルな規模での協力と取り組みが、食品ロス削減には不可欠です。
日本の達成度
2024の報告書によると、日本での目標12の達成には、大きな課題が残っています。
日本はプラスチックや金属などのリサイクル率は世界トップクラスです。また高効率な家電製品の普及により、エネルギー消費量の削減に貢献しています。さらに大企業を中心に、サプライチェーン全体の環境負荷低減や社会貢献活動が活発化しており、進展がみられます。
一方で、 家庭や外食産業での食品ロスが依然として問題となっています。また、海洋プラスチックごみの問題が深刻化しており、プラスチックの使用削減が求められています。さらに多くの資源を海外から輸入しているため、資源の安定供給と環境負荷低減の両立が課題です。持続可能な消費に関する意識が十分に浸透していない層もあり、消費者意識の向上が課題となっています。
食品ロスと関係の深い「リサイクルされていない都市固形廃棄物」に関しては、SDGsを達成しており、維持中とされています。これは国内での総合的な廃棄物管理とリサイクル政策の効果によるものです。
具体的には、日本では資源の有効利用と循環型社会の形成を目指して、廃棄物のリデュース、リユース、リサイクルが進められています。これには、企業や市民が廃棄物問題に対する意識を高め、廃棄物の分別収集や再生利用が広く行われていることが挙げられます。
さらに、日本は高度な廃棄物処理技術を有しており、特に大都市地域での廃棄物管理システムが整備されています。これにより、非リサイクル可能な都市固形廃棄物の量が減少し、SDGs達成に向けた評価が高まっています。
しかし、今、達成しているからといって、対策をやめてしまっては、元の木阿弥です。
日本では食品ロス削減目標の設定やプラスチック資源循環促進法の改正、再生可能エネルギーの導入促進、循環経済への移行などの取り組みがおこなわれており、今後ともこれらの取り組みをさらに強化していく必要があります。
2024年の報告書は、課題を示すと同時に、多くの国がSDGs達成に向けて力強く歩んでいることを教えてくれました。
食品ロス削減は、私たちが直面する最も重要な課題の一つです。しかし、同時により良い未来を築くための大きなチャンスでもあります。
今、私たちにできることを見つけ、行動に移すことが、未来を変える鍵です。
合わせて読みたい
- SDGsとは何か?~SDGsの成り立ちと歴史を探る~
- SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された、2030年までに、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。そこで、SDGsが採択されるまでの歴史をご紹介します。
ロスゼロとは?
- フードロス削減、楽しい挑戦にしよう!
- 通販サイト「ロスゼロ」では、様々な理由で行先を失くした「フードロス予備軍」を、その背景やつくり手の想いと共に、たのしく届けています。