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ごみゼロで楽しむ! 観光地のゴミ問題と私たちができること

公開日: 更新日:2024.08.05
ごみゼロで楽しむ! 観光地のゴミ問題と私たちができること

観光地を訪れると、美しい景観や豊かな自然に心を癒される瞬間があります。
しかし、そんな観光地に溢れるゴミの存在が、私たちの体験を台無しにすることも少なくありません。ゴミの増加は環境だけでなく、地域住民の生活にも深刻な影響を及ぼしています。

そんな観光地のゴミ問題について、私たちが知っておくべきことと、実際にできることをご紹介します。
美しい観光地を守るために私たちができることを学び、ごみゼロの旅を実現しましょう!


観光とゴミ問題

観光とごみ

観光地の現状:増え続けるゴミ、深刻化する問題

近年、各地の観光地では、残念なことにゴミ問題が深刻化しています。美しい景色や豊かな自然を求めて訪れる観光客が増える一方、発生するゴミの量も増加しています。

環境省の調査によると、2019年には、全国の主要観光地で約130万トンのゴミが発生し、これは前年比約5%増加しています。特に、プラスチックごみやペットボトルなどの使い捨てプラスチックゴミの増加が著しく、美しい自然がその被害を受けています。
実際に、日本の海岸に漂着するごみのうち、プラスチックごみが約6割を占めており、その量は年々増加傾向にあり、この問題の深刻さを物語っています。

ゴミ問題の深刻化は、観光地にとって大きな課題です。ゴミの放置は、景観を損ない、観光客の満足度を低下させます。また、海洋汚染や土壌汚染などの環境問題を引き起こし、地域住民の生活にも悪影響を及ぼす可能性があります。


観光地のゴミ増加の要因

観光地のゴミの増加の一番の原因は、観光客の増加です。産業としては大変喜ばしいことですが、人が増えることにより、否応なくゴミも増えます。また、近年は観光客の滞在時間が長くなっており、宿泊施設や観光施設で発生するゴミの量も増加しています。

近年、日常生活の中でも、テイクアウトや使い捨て容器の利用が増加しており、プラスチックゴミや食品ロスの増加に繋がっています。さらに、観光地では「食べ歩き」が多く、テイクアウトフードや使い捨て食器の利用が盛んであり、ゴミ問題を深刻化させています。

また、ポイ捨てや分別不徹底などの観光客のマナーも、ゴミ増加の一因となっています。特に、海外からの観光客は、日本のゴミ処理システムに慣れていない場合も多く、ゴミの捨て方や分別方法を誤解している場合があります。

これらの要因が複合的に絡み合い、観光地のゴミ問題は深刻化しています。


観光地のゴミ箱

観光地ゴミ箱

ごみ箱設置のジレンマ

観光地のゴミ箱からあふれるゴミ。分別も何も関係なく、無造作に周囲に放置されるゴミ。そのような映像を見たことはありませんか。
観光地にゴミ箱を設置することは、利便性の向上と環境保護という相反する二つの側面を持っているのです。

【利便性の向上】
ゴミを捨てる場所が明確になり、景観を損なうポイ捨てを抑制できる。
観光客にとって快適な環境を提供できる。
特に、高齢者や子ども連れの家族にとって、ゴミ箱の存在は重要である。

【環境保護】
ゴミ箱を設置することで、ゴミの量が増加する可能性がある。
ゴミの収集・処理にはコストがかかり、環境負荷も発生する。
不適切な廃棄物処理による環境汚染が懸念される。

観光客のマナー向上も重要ですが、観光地におけるゴミ箱設置は、単純な善悪で判断できない複雑な問題です。利便性と環境保護のバランスをいかに取っていくかが、今後の課題と言えるでしょう。


観光地にゴミ箱を設置する方法

スマートごみ箱:ごみ量計測で最適な設置場所を特定

最近、観光地でのゴミ問題に対処するために、スマートごみ箱が導入されています。

スマートごみ箱は、センサーやカメラを搭載しており、ごみの量や混雑状況を計測することができます。これらのデータを分析することで、最適な設置場所や回収のタイミングを特定できます
例えば、都市部の観光地では、1日に数百キログラムのごみが出ることがあり、この技術を用いることで回収効率が大幅に向上しています。

 スマートごみ箱の導入により、ごみ箱の設置数を減らしながら、ごみがあふれにくい環境を実現することができます。また、ごみ収集の効率化にもつながり、コスト削減にも貢献できます。

具体的な事例としては、京都市の清水寺周辺に設置されたスマートごみ箱があります。清水寺周辺は、観光客が多く、ごみ箱がすぐに満杯になってしまうという問題がありました。スマートごみ箱の導入により、ごみ箱の設置数を減らしながら、ごみがあふれにくい環境を実現することができました。


景観に調和したごみ箱デザイン:地域文化を取り入れたデザインで景観を向上

ごみ箱は、景観を左右する重要な要素の一つです。無機質なデザインのごみ箱は、せっかくの美しい景観を損ねてしまう可能性があります。

近年、観光地の景観を損ねないように、地域の文化や特色を反映したごみ箱のデザインが注目されています。
例えば、京都の歴史的な町並みに設置されたごみ箱は、伝統的な木材を使い、周囲の景観に溶け込むように工夫されています。

景観に調和したごみ箱デザインは、地域文化や自然環境を取り入れたデザインにすることで、景観に溶け込み、違和感なく設置することができます。
これにより、観光客は景観を損ねることなくごみを捨てることができ、地域住民からも好評を得ています。

ゴミ箱はデザインの工夫一つで、観光地の美観を保ちつつ機能性を確保することが可能なのです。


必要最低限の設置:ごみ発生量に基づいて設置数を調整

ごみ箱の設置数をどれだけにするかは、その地域のごみ発生量によって異なります。
ごみ箱は、設置すればするほど良いというわけではありません。設置場所によっては、景観を損なったり、ごみがあふれやすくなったりするという問題があります。

ごみ発生量は、観光客数や季節によって大きく変動します。ごみ発生量を分析することで、設置場所や設置数を調整することができます。 このような調整により、効率的なごみ管理が実現されます。例えば、観光オフシーズンには必要最低限のごみ箱だけを設置し、ピーク時には追加で設置するといった柔軟な対応が可能です。


罰則ではなく意識改革

ゴミ分別

幼い頃からごみ問題への意識を高める

ゴミ問題は、単に大人の問題ではなく、子供たちにとっても重要な課題です。幼い頃から環境教育を行い、ごみ問題への意識を高めることが重要です。

例えば、小学校の授業でリサイクルの重要性やプラスチックごみの影響について教えることで、子供たちが自然と環境を大切にする心を育てることができます。
スウェーデンでは、このような教育が幼稚園から始まり、子供たちは早いうちから環境保全のためにできることを学び、実践しています。これにより、意識の高い次世代が育ち、持続可能な社会への貢献が期待されます。

日本での環境教育としては、校外学習や環境問題に関する授業などが行われています。校外学習では、ごみ拾い活動やリサイクル施設見学などを通じて、実際に環境問題に触れることができます。環境問題に関する授業では、ごみの問題点や解決策について議論することができます。

幼い頃からごみ問題への意識を高めることで、将来、責任ある行動をとれる大人に育つことが期待されます。


ごみ拾いボランティア

ごみ拾いボランティアは、楽しみながら環境問題に取り組むことができる活動です。ごみ拾いボランティアは、地域住民や観光客など、誰でも参加することができます。

ビーチクリーンイベントや公園の清掃活動など、コミュニティが主催するこれらのイベントは、参加者に直接ごみ問題の現状を見せることで、より深い理解を促します。さらに美しい景観を守ることができるだけでなく、地域住民との交流や健康促進にも効果があります。

近年、ごみ拾いイベントが各地で開催されています。省庁主催の大きなものから、地域のコミュニティが開催する小さなものまであり、多くの人が参加しています。
ごみ拾いイベントへの参加者は増加傾向にあり、環境問題への関心が高まっているといえます。


ポイ捨て抑制の対策

ポイ捨ては、ゴミ問題の根本的な原因の一つであり、ポイ捨てを減らすためには、さまざまな対策が必要です。

観光地や公共の場所に多言語での注意書きを設置することや、ポイ捨てが多い場所には監視カメラを設置することで、抑制効果が見られます。また、シンガポールのように厳しい罰金制度を導入することも一つの方法ですが、日本では啓発活動や教育の強化に重点を置いています。自治体による啓発キャンペーンや、公共広告を通じてポイ捨ての社会的な受容不可を訴えることが効果的です。

近年、マスコットキャラクターやアニメなどを活用した啓蒙活動が効果的であるとして注目されています。マスコットキャラクターやアニメは、子供たちの関心を引くことができ、効果的にメッセージを伝えることができます。


ゴミ問題解決の事例

リサイクルステーション

世界各地で観光地のゴミ問題に対処するために独自のアプローチが採用されています。

資源循環型社会を目指すごみ処理

【フィンランド】
フィンランドのヘルシンキでは、観光シーズン中にも街が非常に清潔に保たれているのは、市が設置した多数のリサイクルステーションと市民への教育の賜物です。こうした施設では、ゴミを種類別に分けることが奨励され、観光客にも簡単に利用できるように工夫されています。これにより、リサイクル率が大幅に向上し、街の美観が維持されています。

【オーストラリア】
日本の観光地では、ゴミ問題への対応として、ごみ箱の数を減らすことで自己責任によるゴミ持ち帰りを促していますが、これが外国人観光客には理解しづらい面もあります。一方、オーストラリアのシドニーでは、公共の場所に多くのごみ箱が設置されており、さらに観光地を巡る案内人がゴミのポイントとリサイクルの重要性を説明することで、観光客の協力を得やすくしています。


海洋プラスチック汚染対策

【セーシェル】
セーシェルは、2017年から観光客一人当たり10ドルの環境税を導入しました。この税金は、環境保護活動やゴミ処理の費用に充てられています。また、セーシェル政府は、観光事業者に対して、環境に配慮した運営を求めるガイドラインを策定しています。これらの取り組みの効果により、セーシェルの観光地は、より清潔で美しい場所へと保たれています。

【ケニア】
ケニアでは、使い捨てプラスチック製品の全国的な禁止、民間団体によるビーチ清掃活動により、ビーチと国立公園の状態が大幅に改善されました。また、観光客に対して、ゴミ問題に関する啓蒙活動が行われています。これらの活動を通じて、観光客がゴミを適切に処理するよう促し、環境保護に貢献することが期待されています。


持続可能な観光

エコバッグ

地域特産品エコバッグ

観光地を訪れる際には、お土産として地域特産品を購入することが楽しみの一つです。しかし、お土産を入れる紙袋やプラスチック袋は、使い捨てされてしまうことが多く、ゴミ問題の原因となっています。

近年、観光地における持続可能な取り組みの一環として、地域特産品をデザインしたエコバッグの普及が進んでいます。これらのバッグは、地元の職人によって手作りされることが多く、地域の文化や伝統を反映したアイテムとして観光客に人気です。

エコバッグの導入により、プラスチック袋の使用が減少し、ゴミの削減に直結しています。また、これらのバッグを使用することで、観光客は地域支援にも貢献することができ、お土産としても喜ばれています。


地域住民の生活を守る

観光は、地域経済にとって重要な役割を果たします。観光客による消費は、地域住民の生活を支え、地域活性化に貢献します。
観光収入は、地域コミュニティの生活基盤を支える重要な要素です。観光地では、訪れる人々からの収益を地域のインフラ整備や教育プログラム、環境保護活動に再投資することが多いです。

しかしオーバーツーリズムなどにより、ごみ問題、交通問題、環境問題など、さまざまな問題が発生し、観光と経済、生活の間に不協和音が生じてしまっています。

持続可能な観光を実現するためには、地域住民の生活を守ることも重要です。
上高地では、観光客によるゴミの持ち帰りを徹底し、地域住民の生活環境を守っています。また白川郷では駐車場や観光バスの乗降場を設置し、観光客の数を制限しています。さらに地元住民と観光客の共存を図るため、住民によるガイドツアーや文化体験プログラムを提供しています。


観光客としての心構え

ゴミ問題は、地球環境にとって深刻な問題です。美しい地球を守るためには、一人一人が行動することが重要です。

○ゴミの分別方法や公共交通機関の利用方法など、基本的な情報を把握しておきましょう
○ゴミはできるだけ持ち帰り、指定された場所で処理しましょう
○リサイクル可能なものは積極的にリサイクルしましょう

また、ごみ問題以外にも観光客として心掛けることはたくさんあります。

○騒音、振動、私有地への立ち入りなど、地域住民へ配慮しましょう
○自然環境を保護する行動、資源を大切にする行動を心掛けましょう
○地域経済の活性化に貢献しましょう

そして何より、ルールを守ることが大切です。
観光地を訪れる際には、自分が単なる「観光客」ではなく、その場所の「一員」であることを意識しましょう



観光とゴミ問題は切っても切れない関係です。しかし、私たち一人ひとりが意識を変えることで、ごみゼロの旅を実現することは可能です。

美しい景色を未来に繋ぎ、次の世代に誇れる地球を残すために、私たち一人ひとりができることから始めていきましょう。

ごみゼロの旅は、美しい地球への最高のプレゼントです







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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています♪

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。