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食品ロス削減とLCAでつくる、豊かな食の未来

公開日: 更新日:2024.09.30
たくさんの料理

LCA(ライフサイクルアセスメント)」という言葉を聞いたことがありますか?
これは、私たちの食べ物がどうやって作られ、私たちの食卓に届き、そして最後はどのように処分されるのか、その一連の流れを詳しく調べて、環境への影響を数値で表す方法のことです。

地球温暖化や環境問題が深刻化する中、私たちが何をどのように食べるのかは、地球の未来を左右する大きな問題です。LCAは、私たちが普段何気なく食べているものが、実は地球環境に大きな影響を与えていることを教えてくれるのです。


LCAの基本

LCAイメージ

LCAの基礎知識

LCA(Life Cycle Assessment)とは、私たちが普段使っている製品やサービスが、地球環境にどのような影響を与えているのかを、その一生を通して評価する手法です。原材料の採掘から製品の製造、使用、最終的な廃棄までの全過程を対象とします。
例えば冷蔵庫にある牛乳では、牛の飼料作りから始まり、牛乳の生産、パックへの充填、お店への輸送、そして私たちが飲むまでの間、たくさんのエネルギーが使われ、飲み終わるとごみが発生しています。

LCAは、このような製品の一生を細かく追跡し、どの段階でどれだけのエネルギーや資源が消費され、どのような環境負荷が発生しているのかを明らかにすることができ、持続可能な生産活動を目指すうえで、非常に重要な役割を果たしています。
また消費者にとっては、このような環境への影響を数値で表すことで、より環境に優しい製品やサービスを選ぶためのヒントを与えてくれます。


LCAと環境負荷評価

LCAを用いることで、製品やサービスの環境負荷を具体的に評価することが可能です。
例えば、ある製品の製造過程でどれだけのCO2が排出されるか、またその製品を使い続けることでどれだけの水やエネルギーが消費されるか、廃棄物がどれくらい発生するかなどです。

LCAによって、具体的な数字をもとに分析を行い、どの段階でどの種類の環境負荷が大きく発生しているのかを特定することで、より効果的な改善策を講じることができます
これにより、企業はより環境に優しい製品開発を目指すための改善点を見つけることができ、消費者も環境負荷の低い製品を選択する手助けを受けることができます。


LCAのISO規格と導入

【ISO規格】
LCAは国際的な規格であるISO 14040シリーズの規格に基づいて実施されます。
ISO規格は、LCAの手順や評価方法を統一することで、世界中で同じ基準を使用して環境影響を測定し、製品間の環境負荷を客観的に比較できるようになります。
ISO規格に沿って実施されたLCA結果は、より信頼性が高く、ステークホルダーに開示しやすいというメリットがあります。企業はLCAの結果を基に、製品の環境負荷が大きいプロセスを特定し、改善策を検討することができます。これにより、企業は自社製品の環境パフォーマンスを向上させ、持続可能な事業活動へと舵を切ることができます。

【LCA導入のメリット】
企業がLCAを利用することには多くの利点があります。
まず、自社製品の環境負荷を定量的に把握し、具体的な改善目標を設定することができます。これにより、環境に配慮した製品開発を進めることが可能となり、消費者の購買意欲を高め、企業の競争力を向上させることができます。
また、法規制の変化や消費者の意識の変化に柔軟に対応することで、企業のリスクを低減することができます。
さらに、環境への積極的な取り組みを公表することによって、企業のブランドイメージを向上させることも可能です。


原料調達の食品ロスとLCA

実っているトマト

原料調達段階のCO2削減

私たちの食卓に並ぶ食材は、世界各地の農場や畑で生産され、長い道のりを経て私たちの元に届きます。この原料調達段階では、農作物の栽培や家畜の飼育、そして輸送など、多くの過程で温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)が排出されています。

原料調達段階でのCO2削減は、食品生産の環境負荷を軽減する上で非常に重要です

LCAでは、これらの過程で排出されるCO2量を数値化し、削減目標を設定することで、気候変動対策に貢献することができます。
たとえば、農業技術の改善により、肥料や水の使用量を減らすことができれば、それに伴いエネルギー消費も抑えられます。また、地元で調達できる原材料を使用することによって、輸送によるCO2排出を削減することも可能です。

これらの取り組みは、LCAを通じてその効果を数値化し、具体的な改善策を検討する基盤となります。


食品ロスの事例と対策

食品産業におけるロスの事例は数多くありますが、特に原料の段階で発生するロスは大きな問題です。例えば、天候不順による作物の収穫量減少、規格外の農産物の廃棄、そして消費者の需要と供給のミスマッチなどが挙げられます。
これらの食品ロスは、食料の無駄だけでなく、生産過程で消費されたエネルギーや水資源の無駄も意味します。

LCAでは、食品ロスの発生原因を特定し、削減するための効果的な対策を検討することができます。例えば、規格外の野菜を使った加工食品の開発や、余剰野菜をフードバンクに寄付するといった取り組みは、食品ロス削減に貢献するだけでなく、地域の食料問題の解決にもつながります。
またLCAを活用することで、これらの取り組みが環境に与えるプラスの影響を具体的に評価し、より効果的な対策を立てることもできます。


資源効率の推進とLCA

食品の生産には、大量の水や肥料、そして農薬が必要となります。これらの資源の過剰な使用は、水質汚染や生態系の破壊を引き起こす可能性があります。そのため、資源の効率的な使用は、持続可能な食品生産システムを構築する上で欠かせません

LCAを用いることで、原料の採取から製品が消費者に届くまでの全過程で消費される資源の量を詳細に分析することができます。この分析結果を基に、無駄な資源使用を省くための改善策を導入することが可能です。
例えば、滴下灌漑などの省水技術の導入や、有機肥料の利用は、水資源の消費を削減し、環境負荷を軽減する効果が期待できます。また、廃棄物を減らすためのリサイクルやコンポストの活用も、資源の循環型社会の実現に貢献します。


製造プロセスの食品ロスとLCA

食品の選別作業

製造時の排出量算定

私たちの口に入る食品は、工場でさまざまな加工を経て作られます。この製造過程では、エネルギーの消費や廃水の排出など、さまざまな環境負荷が生じます。例えば、製パン工程でのエネルギー消費や冷却工程でのフロンガス使用量などが該当します。

製造過程における排出量の算定は、食品業界での環境負荷削減において重要なステップです

LCAを用いることで、どの工程でどの程度の環境負荷が発生しているのかを明確に把握し、削済の目標設定が可能になります
LCAによって、これらの環境負荷を具体的に把握することで、より環境負荷の少ない製造プロセスへと改善することができます。
さらに、これらのデータを基に、エネルギー効率の良い機械への投資や再生可能エネルギーの導入といった対策を検討することができます。


LCAによる工場廃棄物分析

食品工場では、製造過程でさまざまな種類の廃棄物が発生します。食品ロスはもちろんのこと、包装資材や製造過程で出た切れ端なども廃棄物として扱われます。これらの廃棄物は、そのまま埋め立てられると、メタンガスを発生させ、地球温暖化の原因となります。

工場で発生する廃棄物の種類と量を正確に把握することは、効果的なリサイクルや廃棄物処理策を立てるために不可欠です

LCAを活用することで、製造過程で発生する固形廃棄物や廃水の量を定量的に評価し、それに基づいて廃棄物を減らすための改善策を導出することが可能です。
例えば、食品ロスを減らすための製造工程の見直しや、リサイクル可能な包装材の導入、食品加工の副産物を動物飼料や肥料として再利用することなどで、廃棄物の量を削減することが可能であり、それにより環境への影響も軽減されます。


ゼロエミッションの取り組み

ゼロエミッションとは、製品のライフサイクル全体で、温室効果ガスや有害物質の排出をゼロにすることを目指す概念です。食品製造業においても、ゼロエミッションの実現は重要な目標の一つとなっています。

ゼロエミッションを目指す取り組みは、製造業の持続可能性を大きく向上させることができます。具体的には、製造過程でのエネルギーを100%再生可能エネルギーに切り替える、またはエネルギー使用効率を高める技術を導入することで、CO2排出を抑制します。

LCAを活用することで、企業は自社の製造プロセスにおける環境負荷を可視化し、ゼロエミッションに向けた具体的な行動計画を立てることができます。例えば、再生可能エネルギーの導入、省エネ型の機器への置き換え、そして製品のライフサイクル全体を考慮した設計などが挙げられます。

企業はLCAを活用した評価により、持続可能な生産活動への転換を図ることが重要です。このようなアプローチは、企業の環境保護への取り組みを強化し、消費者からの信頼を得るためにも効果的です。


流通・消費の食品ロスとLCA

スーパーに並ぶ個包装された野菜

輸送プロセスのCO2影響

食品の輸送過程は、CO2排出量の大きな要因の一つです
私たちの食卓に並ぶ食材は、産地から消費者の手に渡るまで、さまざまな輸送手段によって運ばれます。トラック、船、飛行機など、輸送手段によってCO2排出量は大きく異なります。特に、長距離輸送や空輸は、CO2排出量が多い傾向にあります。

LCAを用いて各輸送手段のCO2排出量を算出し、それに基づいてより環境に優しい輸送手段やルートを選択することが可能です。
例えば、近隣の産地から調達する「地産地消」は、輸送距離を短縮することでCO2排出量を削減できる有効な手段の一つです。また、鉄道や船舶といったCO2排出量の少ない輸送手段の活用、再生可能エネルギーを使用した輸送手段への切り替えも注目されています。


小売段階の食品ロス

スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、小売店では、売れ残りや賞味期限切れなどによって多くの食品が廃棄されています。これらの食品ロスは、生産者や消費者の努力が無駄になるだけでなく、環境にも大きな負担をかけます。

LCAを活用して、これらのロスの原因となる要素を明確にし、効果的な管理システムを導入することが推奨されます

例えば、需要予測の精度を高めるためのITツールの導入や、消費者に食品ロスに関する情報を提供する取り組みなどが挙げられます。また、在庫管理技術の向上や、賞味期限が近い商品を優先的に販売する動的価格設定なども有効です。
これにより、小売店の食品廃棄量を減らすことができ、環境への負荷も同時に低減されます。


消費者行動と環境負荷

私たちの食生活は、地球環境に大きな影響を与えています。食品の選択や調理方法、そして食べ残しなど、私たちの日常的な行動は、CO2排出量や食品ロスに直接つながっています。

LCAでは、消費者の行動が環境に与える影響を評価し、よりサステナブルな食生活を送るためのヒントを得ることができます。またLCAの評価により、それを基に啓発活動や教育プログラムを展開することも重要です。

例えば、旬の食材を選ぶ、残さず食べる、そして食品ロス削減に取り組む企業の商品を選ぶことは、環境負荷を低減するための具体的な行動の一つです。また食品の適切な保存方法や賞味期限を過ぎても安全に消費できる食品の情報提供は、消費者が食品を無駄にしないための意識改革に繋がります。持続可能な消費パターンを促すキャンペーンも効果的です。


廃棄の食品ロスとLCA

処理場の煙突から登る煙

廃棄段階での環境対策の重要性とLCAの活用

食品廃棄は、単に食べ物を捨てるという行為だけでなく、地球温暖化をはじめとする環境問題に深く関わっています。
食品廃棄物が埋め立てられると、メタンガスが発生し、温室効果ガスとして地球温暖化を加速させます。また、焼却処分では二酸化炭素やダイオキシンなどの有害物質が排出されるなど、環境への負荷は多岐にわたります。

このような状況下で、LCAは、食品廃棄の環境負荷を定量的に評価し、より環境負荷の少ない廃棄方法を選択するための重要なツールとなっています。LCAでは、食品の生産から消費、そして廃棄に至るまでの全過程において、温室効果ガス排出量、水資源の消費量、エネルギー消費量、土地利用、化学物質の排出量などを評価します。


LCAによる食品廃棄の評価と対策

LCAを用いることで、食品廃棄物のさまざまな処理方法(埋め立て、焼却、リサイクルなど)の環境負荷を数値化し、比較することが可能になります。どの廃棄方法が最も環境に優しいか、またはどのプロセスの改善が必要かが明らかになります。

例えば、食品廃棄物を堆肥化する場合、堆肥化の過程で発生する温室効果ガスや、堆肥の品質など、さまざまな環境側面を評価することができます。
また、食品廃棄物を燃料として利用する場合には、輸送や燃焼過程における環境負荷も考慮する必要があります。
さらに廃棄物を焼却する際の排出物の種類や量、リサイクル材料の再利用時のエネルギー消費など、各段階での環境負荷を具体的に算出し、それに基づいて最適な廃棄処理方法を選択します。

LCAによる評価結果を基に、次のような対策が考えられます。

【食品ロス削減】
食品の生産から消費までの過程で発生するロスを減らすことで、廃棄量を減らし、ひいては環境負荷を低減することができます。

【最適な処理方法の選択】
LCAの結果に基づき、最も環境負荷の少ない廃棄方法を選択することができます。例えば、食品廃棄物をバイオガスに転換してエネルギーとして利用するなど、廃棄物から新たな価値を生み出す取り組みが注目されています。

【サプライチェーン全体の最適化】
食品の生産から消費、廃棄までのサプライチェーン全体を対象にLCAを実施することで、環境負荷の大きいプロセスを特定し、改善することができます。


リサイクルの促進

食品廃棄物のリサイクルを促進することは、食品ロスを減らし環境負荷を低減するために非常に重要です。

食品廃棄物の中には、まだ利用できる栄養分が含まれているものも多くあります。これらの食品廃棄物を肥料や飼料として再利用することで、資源の有効活用を図ることができます。また、食品包装材をリサイクルすることで、最終的に捨てるゴミの量も減らすことができます。

LCAでは、リサイクルの過程で消費されるエネルギーや、リサイクルされた製品の品質など、さまざまな側面を評価することで、より効率的なリサイクルシステムを構築することができます。例えば、生ごみを堆肥化して農地に還元する取り組みや、ペットボトルをリサイクルして新たな製品を作る取り組みなどが挙げられます。

LCAを活用して、リサイクルの各段階でのエネルギー使用量や排出物を評価し、効率的で環境に優しいリサイクル方法を開発することが望まれます


未来の食とLCA

食の未来を抽象的に表現したイメージ図

持続可能な食システム

地球上の食料は有限であり、人口増加や気候変動の影響により、食料危機が深刻化しています。
このような状況下で、持続可能な食システムの構築が求められています。持続可能な食システムとは、環境への負荷を最小限に抑えながら、安定的に食料を供給できるシステムのことであり、持続可能な食システムの構築は地球環境を守る上で非常に重要です。

このシステムでは、生産から消費、廃棄に至るまでの全過程で環境負荷を最小限に抑えることが求められます。

LCAは、食品の生産から消費までの全過程における環境負荷を評価し、より持続可能な方法を導入するためのデータを提供します。
例えば、農業での水利用効率の改善や地域循環型農業の推進、再生可能エネルギーの利用拡大、食品廃棄物のリサイクルシステムの構築などがそれに該当します。
これにより、食品生産の持続可能性が大きく向上します。


イノベーションと環境保全

食料システムの持続可能性を高めるためには、新たな技術やアイデアを取り入れたイノベーションが不可欠です。例えば、遺伝子組み換え技術や人工肉などの開発は、食料生産の効率化や環境負荷の低減に貢献する可能性を秘めています。

食品産業におけるイノベーションは、環境保全に大きく貢献することができます。
新しい技術やアプローチを導入することで、食品の生産や加工、輸送の過程で発生する環境負荷を大幅に削減することが可能です。例えば、廃棄物を減らすためのスマートパッケージング技術や、エネルギー消費を抑える高効率の製造プロセスなどです。

しかし、これらの技術には、安全性や倫理的な問題も伴います。
LCAは、これらの新しい技術が環境に与える影響を評価し、そのメリットとデメリットを比較検討するための重要なツールとなります。また、消費者も、これらの新しい技術に関する情報を正しく理解し、より良い選択をすることが求められます。


LCAと食の未来

未来の食において、LCAはより重要な役割を果たすことになります。気候変動の進行を抑え、資源を持続可能に利用するためには、食品のライフサイクル全体の環境影響を理解し、改善することが不可欠です。

【食品の炭素フットプリントの表示】
LCAを用いて、食品の生産から消費までの過程で排出される温室効果ガスの量を数値化し、消費者に分かりやすく表示することで、消費者の選択をサポートします。

【環境に配慮した製品開発】
企業は、LCAの結果を基に、環境負荷の少ない原材料や製造プロセスを採用し、よりサステナブルな製品を開発することができます。

【サプライチェーン全体の環境マネジメント】
サプライヤーとの連携を強化し、サプライチェーン全体の環境パフォーマンスを向上させることができます。

【政策立案への貢献】
政府は、LCAの結果を基に、食料生産や消費に関する政策を策定し、環境目標達成に向けた取り組みを推進することができます。

このように、LCAは私たちの小さな選択から大きな産業活動に至るまで、持続可能な未来を築くための指針となるでしょう。



LCAは、私たちの食生活と環境の関係を科学的に明らかにするツールです。

LCAを活用することで、私たちは、より環境に配慮した食生活を送ることができます。そして、その積み重ねが、地球全体の環境改善につながっていくのです。





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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています♪

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。