2025年4月、大阪・関西万博が開催されます。
持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献が求められる現代において、大規模イベントにおける環境負荷の低減は重要な課題です。特に、食品ロス削減は、資源の有効活用や環境負荷の低減に不可欠な取り組みです。
東京オリンピック2020では、多くの食品が廃棄され、大きな社会問題となりました。しかし、その経験を活かし、さまざまな対策が講じられたことも事実です。
このブログでは、東京オリンピック2020の食品ロス問題から学び、未来の大規模イベントにおける食品ロスゼロを目指した取り組みについて解説します。
イベント運営の工夫、ケータリングにおけるサステナビリティ、来場者もできる食品ロス削減など、多角的な視点から具体的な方法を提案します。
未来の大規模イベントが目指すべきゼロウェイストの実現について、考えていきましょう。
東京オリンピック2020の食品ロス問題

大規模イベントにおける食品ロス発生のメカニズム
大規模イベントでは、多くの人が集まり、大量の飲食物が消費されます。そして、大量の食品ロスが発生しやすい場でもあります。
食品ロスが発生するメカニズムは、主に以下の3つの要因が考えられます。
【需要予測の難しさ】
イベントの参加人数や食欲は、天候や時間帯、イベント内容などによって大きく変動します。
正確な需要予測が難しいため、食材の調達量や料理の提供量を適切にコントロールすることが難しく、余剰食品が発生しやすくなります。特に、大規模イベントでは、多様な食習慣や嗜好を持つ人々が集まるため、需要予測はさらに複雑になります。
【提供方法の課題】
大規模イベントでは、短時間で多くの人に食事を提供する必要があるため、ビュッフェ形式やパック詰めされた料理が提供されることが一般的です。これらの提供方法では、個々の参加者の食欲や好みに合わせた量の調整が難しく、食べ残しが発生しやすくなります。
また、提供側の都合で、大量の料理を事前に準備しておく必要があるため、食材のロスも発生しやすくなります。
【参加者の意識】
大規模イベントでは、非日常的な雰囲気や高揚感から、普段よりも多くの飲食物を摂取してしまう傾向があります。また、無料提供や食べ放題形式の場合、必要以上に多くの料理を取ってしまうこともあります。
参加者の食品ロスに対する意識が低いと、食べ残しが増加し、結果的に食品ロスにつながってしまいます。
これらの食品ロスを防ぐためには、事前の詳細な計画とフレキシブルな対応が求められます。
東京オリンピック2020の対策事例
東京オリンピック2020では、食品ロス削減に向けてさまざまな取り組みが行われました。
【需要予測の精度向上】
過去のデータや気象情報などを活用し、より正確な需要予測を行いました。
また、参加者へのアンケートや食事の提供状況をリアルタイムで把握することで、需要の変化に柔軟に対応できる体制を構築しました。
【提供方法の工夫】
個々の参加者の食欲や好みに合わせて、料理の量を調整できるような工夫を行いました。例えば、小盛りサイズやハーフサイズなどの選択肢を設けたり、アラカルトメニューを充実させたりしました。
また、ビュッフェ形式では、トングやスプーンのサイズを小さくすることで、一度に取る量を減らすように促しました。
【参加者の意識啓発】
食品ロス削減に関するポスターや動画を掲示したり、SNSで情報を発信したりすることで、参加者の意識向上を図りました。
また、食べ残しを減らすためのキャンペーンを実施したり、フードドライブの協力を呼びかけたりしました。
東京オリンピック2020の食品ロス結果に学ぶ
大会組織委員会の報告書によると、東京オリンピック2020では、大会期間中に約160万食の食事が提供されました。
そのうち、約30万食が食べ残しや期限切れなどにより廃棄され、食品ロス率は約19%となりました。特に、開会式では1万食のうち4000食、40%が無駄になりました。
また、選手村のメインダイニングホールでは、食材の処分率が14.5%に達しました。
しかしこの数字は、過去のオリンピック大会と比較して低い水準であり、東京オリンピック2020の食品ロス削減対策が一定の効果を上げたことを示しています。特にお弁当などに関しては、大会序盤には24%の非喫食率であったものが、大会終盤には8%にまで改善されました。
ただし、19%という数字は、まだ改善の余地があることを示しています。
東京オリンピック2020の食品ロス結果を踏まえ、今後の大規模イベントでは、より効果的な食品ロス削減対策を実施する必要があります。
例えば、需要予測の精度をさらに向上させたり、提供方法をより柔軟にしたり、参加者の意識をより高く保ったりすることが重要です。
また、食品ロス削減だけでなく、余剰食品の有効活用も推進する必要があります。例えば、フードバンクへの寄付やアップサイクルによる利用などです。さらに、飼料化、堆肥化、バイオガス化などの再生利用を積極的に行うことで、資源の循環を促進し、環境負荷を低減することができます。
東京オリンピック2020の経験を活かし、持続可能な社会の実現に向けて、大規模イベントにおける食品ロス削減の取り組みをさらに進めていく必要があります。
食品ロスを減らすイベント運営の工夫

削減目標の設定と実施
大規模イベントにおける食品ロス削減の第一歩は、明確な目標を設定することです。
この目標を基に、食品の発注量調整や参加者啓発キャンペーンなどが計画され、全体の効率が向上します。目標設定は、現状の把握、課題の明確化、対策の立案、そして効果測定へとつながる道筋を示してくれます。
目標設定の際には、具体的な数値目標を設定することが重要です。「食品ロスを〇%削減する」といった具体的な数値を掲げることで、運営チーム全体に明確な指標を提供し、各部署が協力して目標達成に向けた具体的な行動を促すことができます。
目標達成のためには、PDCAサイクルを回すことが重要です。
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返すことで、組織や個人はプロセスの効率を向上させ、課題を早期に発見し、改善策を講じることができます。
目標設定とPDCAサイクルを通じて、食品ロス削減に向けた取り組みを継続的に改善していくことが重要です。
需要予測に基づいた食材調達と在庫管理
大規模イベントでは、参加人数や食欲を正確に予測することは難しいものです。
しかし、イベントでの食品ロスを減らすためには、需要予測に基づいた食材の調達と在庫管理が鍵を握っているのです。需要予測に基づいた食材調達と在庫管理を行うことで、食品ロスの発生を大幅に減らすことができます。
需要予測の正確化には、アンケートや事前登録情報、類似イベントの実績データなどを利用し、天候や季節の要因も考慮に入れることが一般的です。また、リアルタイムでのデータ更新を行い、変動に対応できる柔軟性も重要です。
大規模イベントにおける食材の調達に際して、正確な需要予測により、必要な時に必要な量の食材を手配することが可能となり、これが食品の無駄を減らし、経済的効率を高めるための鍵となります。参加者の数や好み、過去の消費データを事前に分析し、これに基づいて食材の必要量を計算します。
このアプローチにより、食品ロスの削減に大きく貢献することができます。また、必要な食材を適切なタイミングで調達することで、新鮮さを保ちつつ、コストの無駄遣いも防ぐことができます。
在庫管理においては、需要予測により必要な食材量を正確に計算し、予想外の気候変動にも柔軟に対応できるよう在庫を調整する方法があります。これにより、無駄な発注を避け、食品ロスを抑制することが可能となります。
また、適切な保管方法や賞味期限管理を徹底することも重要です。また、First In, First Out(FIFO)の原則に基づき、古い食材から優先的に使用することで、在庫の鮮度を保ち、ロスを減らすことができます。
食べ残しを減らすための工夫
食べ残しは、食品ロスの中でも大きな割合を占めています。
イベントでの食べ残しを減らすためには、来場者が自分の食べる量を正確に選べるような工夫が必要です。
具体的には、ポーションサイズの選択肢を増やすなどの選択肢を設けることで、個々の参加者の食欲に合わせた量を提供することができます。ビュッフェ形式の場合、トングやスプーンのサイズを小さくすることで、一度に取る量を減らすように促すことができます。また、アラカルトメニューを充実させることで、参加者が自分の好みに合わせて自由に料理を選べるようにすることも有効です。
食事の事前予約システムの導入、または食べ放題ではなく個別に料理を提供する方式を採用するなども食品ロスを削減する方法の一つです。
さらに、食べ残しを削減するための啓発活動も効果的です。例えば、ポスターや動画などを活用し、食品の価値やロスの社会的、環境的影響についての情報提供を行い、消費者の意識改革を促します。
ケータリングとサステナビリティ

サステナブルな料理の選定
大規模イベントにおけるケータリングは、参加者に食事を提供するだけでなく、イベントの印象を左右する重要な要素でもあります。
近年、環境意識の高まりとともに、サステナブルなケータリングが注目されています。
サステナブルな料理とは、環境負荷を低減し、社会に配慮した食材や調理法を用いた料理のことです。
例えば、地元の食材や旬の食材を使用したり、ベジタリアンメニューやヴィーガンメニューを取り入れたりすることが挙げられます。肉料理の代わりに植物性のメニューを増やすことで、温室効果ガスの排出量を削減する効果も期待できます。
また、調理方法もサステナビリティに影響します。例えば、フードロスを減らすために、食材を余すことなく使い切る調理法を採用したり、エネルギー効率の良い調理器具を使用したりすることが重要です。
地産地消食材の活用と環境負荷の低減
大規模イベントでは、多くの食材が必要となるため、地産地消の取り組みは特に重要です。地元の食材を積極的に活用することで、フードマイレージを減らし、環境負荷を低減することができます。
また、地元の食材を使用することは、食文化の継承にもつながります。地元の伝統的な料理や食材をイベントで提供することで、参加者に地域の食文化に触れる機会を提供するとともに、より記憶に残るものとなります。
これらの取り組みは、参加者に対しても環境に対する意識を高める機会となり、サステナビリティへの理解を深めることにつながります。
容器の工夫と廃棄物削減に向けた取り組み
大規模イベントでは、大量の廃棄物が発生します。その中でも、容器や包装は大きな割合を占めています。容器や包装もサステナビリを考慮する上で重要な要素です。
容器の工夫としては、使い捨て容器ではなく、可能な限り再利用可能な、または生分解性の高い材料から作られた容器を使用することが推奨されます。
例えば、竹や木製のカトラリー、紙やトウモロコシ由来のプラスチックを使った皿などがあります。これらの容器は、使用後の環境への影響が小さく、イベント後のクリーンアップが容易になるというメリットもあります。
また、容器の軽量化や包装の簡素化も廃棄物削減に貢献します。
さらに、リサイクルを促進するための取り組みも重要です。分別を徹底したり、リサイクルボックスを設置したりすることで、資源の有効活用を図ることができます。
また、コンポストの設置も有効です。生ごみをコンポストで堆肥化することで、廃棄物量を減らすだけでなく、資源の循環を促進することができます。
これらの取り組みを組み合わせることで、容器由来の廃棄物を大幅に削減し、環境負荷を低減することができ、イベントの持続可能性を高めることができます。
来場者もできる!食品ロス削減

食べ残さない!
イベントにおいて、食べ残しは大きな食品ロスの原因の一つです。
大規模イベントでの食事は、非日常的な雰囲気も手伝って、ついつい食べ過ぎてしまうことがあります。しかし、食べ残しは貴重な資源の無駄遣いであり、環境にも負荷をかけてしまいます。
そこで、来場者一人ひとりが「食べ残さない」という意識を持つことが大切です。
食事を取る際には、まず自分の食べられる量を把握し、食べきれる量を選ぶことが重要です。小分けにされたメニューや、自分で量を選べるスタイルの提供が効果的です。
また、ビュッフェ形式の場合、少しずつ料理を取り、何度もおかわりをするようにすると、食べ残しを減らすことができます。好き嫌いがある場合は、無理に取る必要はありません。
さらに、食事を楽しむ時間を確保することも大切です。
時間に余裕を持って食事をすることで、ゆっくりと味わって食べることができ、食べ過ぎを防ぐことができます。急いで食べることなく、目の前の料理を味わうよう心がけると良いでしょう。
このような小さな行動が集まることで、食品ロスの大幅な削減につながります。
主催者からの呼びかけに協力する
大規模イベントでは、主催者が食品ロス削減に向けたさまざまな取り組みを行っています。
それらの成功は来場者の理解と協力に大きく依存しています。来場者は、これらの取り組みに積極的に協力することで、食品ロス削減に貢献することができます。
たとえば、事前に食事の予約を求める、特定の時間に食事を取るよう呼びかけるなどの行動に積極的に応じることで、食品の過剰な準備を防ぐことができます。また、フードドライブに協力したり、食べ残しを減らすためのキャンペーンに参加したりすることも大切です。
また、主催者が設置した分別ボックスを利用し、ごみをきちんと分別することも重要です。これによりリサイクル率の向上などが期待できます。
このように主催者と来場者が一体となって取り組むことで、イベント全体の食品ロスを減らすことが可能です。
廃棄フードの正しい処理
食べ残しや期限切れの食品など、廃棄されるフードは、適切に処理する必要があります。イベント終了後の食品の適切な処理は、食品ロス削減のために欠かせない要素です。
使用されなかった食材や食べ残しは、適切に分類され、可能であればフードバンクや地域のシェルターへ寄付されるべきです。また、食品の再利用が難しい場合は、コンポスト化するなどして、環境に配慮した廃棄方法を選ぶことが望まれます。
大規模イベントでは、主催者が廃棄フードの正しい処理方法について案内している場合がありますので、それに従うようにしましょう。来場者としては、これらのプロセスを理解し、積極的に分別投棄に協力することが求められます。
正しい知識と行動が、持続可能なイベントへの一歩となります。
未来のイベントへ!食品ロスゼロを目指して

食品ロスゼロに向けた目標設定と達成状況の可視化
大規模イベントにおける食品ロス削減の取り組みを推進するためには、明確な目標設定と達成状況の可視化が不可欠です。
具体的な削減目標を立て、それを数値化し公表することで、関係者全体の意識を高め、達成に向けた具体的な行動を促すことができます。
目標達成のためには、定期的な進捗状況の確認と改善策の実施が不可欠です。そのため、食品ロス量の計測やデータ分析を徹底し、進捗状況を可視化することが重要です。
またグラフやダッシュボードなどを活用し、食品ロス量の推移や削減効果を分かりやすく示すことで、関係者のモチベーションを維持し、さらなる改善に向けた取り組みを促進することができます。
そしてこれらにより、具体的な改善点が明らかになり、次のイベントでのさらなる食品ロス削減のためのアクションが計画しやすくなります。
イベント関係者への研修と意識啓発の重要性
大規模イベントにおける食品ロス削減を成功させるためには、関係者全員の意識改革が必要です。
そのためには、関係者向けの研修やワークショップを定期的に実施し、食品ロス問題の現状や原因、食品ロスの影響や削減に向けた具体的な対策を学ぶ機会を提供することが効果的です。
例えば研修では、食品ロスの環境への影響や経済的な損失、社会的責任に焦点を当て、具体的な対策方法を教育するなどです。これにより、イベントの各段階で意識的な選択が行えるようになります。
また、食品ロス削減に関する情報発信や啓発活動を積極的に行うことで、イベント関係者の意識を高めることも重要です。
さらに、優れた取り組み事例を表彰したり、成功事例を共有したりすることで、関係者のモチベーションを高め、さらなる取り組みを促進することができます。
食品ロス削減に貢献する技術やサービスの活用
近年、食品ロス削減に貢献するさまざまな技術やサービスが開発されています。食品ロス削減には、最新の技術やサービスを活用することが効果的です。
例えば、AIを活用した需要予測システムや、IoTを活用した在庫管理システムなどにより、食材の需要予測をより正確に行ったり、未消費食材を管理し、必要な場所に迅速に配送するロジスティクス技術を導入するなどが挙げられます。
また、余剰食材を地域のフードバンクへ自動的にリダイレクトするシステムなども有効です。
さらに、再生可能エネルギーを活用した調理設備や、環境に配慮した容器など、持続可能なイベント運営に貢献する技術やサービスも開発されています。
これらの技術を組み合わせることで、食品ロスの削減だけでなく、資源の有効活用が進み、持続可能なイベント運営が実現するのです。
大規模イベントにおける食品ロス問題は、決して他人事ではありません。
イベントに参加する際は、「もったいない」の気持ちを持って、食べ残しをしない、ごみの分別に協力するなど、できることから始めましょう。
イベント主催者も、ゼロウェイストに向けた取り組みを積極的に進める必要があります。来場者への啓発活動や、サステナブルな食材調達、容器の工夫など、さまざまな側面からのアプローチが求められます。
2025年大阪・関西万博を契機に、日本全体で食品ロス削減への意識を高め、持続可能な社会の実現に向けて共に歩んでいきましょう。
未来のイベントが、地球にも人にも優しいものとなるよう、私たち一人ひとりができることを考え、行動することが大切です。
ロスゼロとは?
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