ロスゼロブログ

カテゴリ一覧

食品ロス削減!「近畿の未利用食品活用サポートネットワーク」が始動

公開日: 更新日:2025.07.06
食品ロス削減!「近畿の未利用食品活用サポートネットワーク」が始動


まだ食べられるのに捨てられてしまう食品」。そんな“もったいない”をなくすため、近畿で新たな仕組みが動きはじめました。

その名も「未利用食品活用サポートネットワーク」。

食品を無駄にせず、地域にも人にもやさしい未来を目指すこの取り組み、実は私たちの暮らしにも深く関わっているんです。

さて、どんな仕組みで、誰がどんな風に関わっているのか――ぜひご一緒にのぞいてみてください。


ネットワーク誕生の背景

円陣で手を重ねている人々


食品ロス削減の必要性

日本では、年間約523万トンもの「まだ食べられる食品」が捨てられています(農林水産省 令和4年度推計)。これは、国民一人ひとりが毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのと同じ量に相当します。思わず「もったいない」と感じてしまいますよね。

こうした食品ロスは、家庭での食べ残しだけでなく、売れ残りや規格外といった理由から、食品関連事業者によっても大量に発生しています。
食品を生産し、加工し、運ぶまでには、膨大なエネルギーや水が使われています。それらが使われたにもかかわらず、食品が廃棄されてしまえば、資源も労力も無駄になり、経済的損失につながります。さらに、焼却処分をすることで二酸化炭素が排出され、地球温暖化の一因にもなっているのです。

このように、食品ロスは私たちの暮らしや地球環境に深く関わる大きな課題です。一人ひとりの意識と行動も大切ですが、社会全体で取り組む仕組みづくりが、ますます求められる時代になってきています。


事業者と団体の声

食品ロスを減らしたいという思いは、私たち消費者だけでなく、食品を扱う事業者の方々も強く抱いています。
実際の現場では、形が少し不揃いというだけで店頭に並べられない野菜や、賞味期限が近いけれどまだ美味しく食べられるパンなど、日々の業務の中で「これを捨ててしまうのは本当にもったいない」と感じる場面が少なくないそうです。包装にわずかな傷がある商品や、販促期間を過ぎた季節限定品も、多くの場合は廃棄の対象になってしまいます。

一方で、地域で活動するフードバンクや子ども食堂などの団体では、食料の確保に日々苦労されています。「食材が足りない」「届けたい人に行き届かない」といった声も多く聞かれ、活動を続けたくても思うように支援が行き届かない状況があります。

こうした「提供したい」事業者と「受け取りたい」団体や個人をつなぐ仕組みがあれば、もっと多くの食品が無駄にならずに済むはず。
実際に、現場からは「もったいないをつなげる仕組みがほしい」という声が多く上がっており、このネットワークの誕生は、そうした現場の声から生まれた大きな一歩なのです。


地域連携の必要性

食品ロスの問題は、一つの企業や団体だけで解決できるものではありません。食品を作る人、加工する人、運ぶ人、そしてそれを消費する私たちを含め、行政やNPO法人、地域の物流業者や市民団体など、さまざまな立場の人たちが手を取り合ってこそ、大きな変化が生まれます。

近畿地方には、農産物や加工品を扱う中小企業が多く点在しており、その中には輸送や保管の面で課題を抱える事業者も少なくありません。

そうした事業者とフードバンク、福祉施設、学校などをつなぐ役割を果たすのが、地域に根ざした連携の力です。
例えば、運送ルートの共有や情報の一元化により、食品の提供から受け渡しまでの流れが格段にスムーズになります。市民団体が情報を発信し、物流業者が輸送を担うことで、地域全体で無駄なく食材を活かす仕組みが整ってきています。

「もったいない」を「ありがとう」に変える――そんな温かいつながりが、近畿の地域で今まさに動き始めているのです。人と人との協力が、サステナブルな食の未来を支えていく鍵になるのではないでしょうか。


実施の仕組みとは

未利用食品活用サポートネットワークの仕組みイメージ


未利用食品の活用の流れ

「まだ食べられるのに、捨てられてしまうなんてもったいない!」そう感じる食品は、私たちの身近にたくさんあります。例えば、形が少し不揃いなだけでお店に並べられない野菜や、パッケージにわずかな傷がついたお菓子、そして賞味期限が迫った加工食品など、さまざまな理由で市場に出回らない食品のことです。

このネットワークでは、そんな未利用食品を眠らせることなく、必要としている人たちに届けるための仕組みが整えられました
まず、食品関連事業者が「販売は難しいけれど品質には問題がない食品」を選別し、その情報をネットワーク事務局に連絡します。次に、事務局がその情報をもとに、食品を必要としているフードバンクや福祉施設、子ども食堂などとマッチングを行います。この際、食品の賞味期限や保存条件、数量などが細かく確認されるため、現場での確認作業は丁寧に行われています。その後、運送業者が安全に配送し、フードバンクや地域の支援団体に届けられます。

こうした流れが整うことで、廃棄されていたはずの食品が、誰かの「ありがとう」に変わる、そんな温かい“食の循環”が生まれています。食品ロスの削減だけでなく、必要とする人々の手元に食材が届く、まさに一石二鳥の仕組みなのです。


フードバンクとの連携

食品ロス削減において、フードバンクの存在はなくてはならない存在です。
フードバンクとは、企業や個人から寄付された食品を、生活に困っている方々や福祉施設、子ども食堂などへ無償で提供する団体のことで、全国には現在約250団体が活動しており、年間で約1万トンの食品が届けられているとされています。

「近畿の未利用食品活用サポートネットワーク」でも、このフードバンクが中心的な役割を担っています。
食品関連事業者から提供された未利用食品の受け入れ窓口となり、賞味期限や保存状態、数量などを確認し、適切に管理しています。そして、それぞれの団体が抱えるニーズや受け入れ体制に合わせて、必要な食品を必要な場所へと届ける調整を行っています。

これまでは個別のつながりに頼ることが多かった食品の提供も、ネットワークの構築により、よりスムーズで計画的な連携が可能になりました。現場の声に耳を傾けながら、無理なく、そして効果的に食品を活用できる体制が、少しずつ整っていくはずです。
フードバンクの活動が、このネットワークによってさらに活性化することが期待されています。


運送業者の支援体制

食品ロス削減の取り組みにおいて、意外と見落とされがちなのが物流の問題です。
未利用食品をフードバンクや支援先まで届けるには、輸送にかかるコストや手間、そして温度管理などの専門的な対応が必要となります。こうした課題が、食品関連事業者が「提供したいけれど運べない」と感じる大きな壁となってきました。

そこで、「近畿の未利用食品活用サポートネットワーク」では、ヤマト運輸をはじめとする運送業者が連携し、食品の配送支援を担っています。たとえば、賞味期限が迫る食品にはスピードを重視したルートを設定し、常温・冷蔵・冷凍の各温度帯にも対応できる配送体制が整えられています。また、定期集荷や急な依頼にも対応できる柔軟な仕組みを導入することで、食品が安全な状態で無駄なく届けられるようになっています。

運送業者の持つ専門知識やノウハウが、地域の食品ロス削減と支援活動に活かされることで、「もったいない」が「ありがとう」に変わる仕組みが形になりつつあるのです。物流の支えがあってこそ、ネットワーク全体が安心して機能しているのです。


それぞれのメリット

未利用食品活用のメリット


事業者の負担軽減

食品関連事業者にとって、売れ残りや賞味期限が近い商品、形が少し不揃いなだけで店頭に出せない野菜など、本来まだ食べられる食品を廃棄することは大きな負担となってきました。廃棄には処理費用や運搬コスト、人件費などさまざまな経費がかかります

しかし、このネットワークを活用することで、そうした未利用食品を必要とする団体へ無償提供する仕組みが整い、廃棄にかかるコストを削減できるようになりました。実際に、数十万円から数百万円単位のコスト削減効果が見込まれる事業者もあります。
さらに、食品ロス削減の取り組みは、環境への配慮や地域貢献といった企業の社会的責任(CSR)を果たすものとして、企業イメージの向上にもつながっています。

廃棄を減らして経費も削減でき、社会貢献としての価値も得られる――このネットワークは、まさにビジネスと社会的意義を両立できる、新しい可能性を提供してくれているのです。


支援団体の活動強化

子ども食堂や福祉施設、フードバンクなど、地域で食の支援を行う団体にとって、安定的な食材の確保は常に大きな課題です。これまでは企業や個人からの寄付に頼ることが多く、必要な時に必要な量を手に入れるのが難しいという現実がありました。特に近年は物価の高騰により、活動資金や調達の面でも大きな負担を感じる団体が増えています。

こうした中、このネットワークを通じて複数の事業者から未利用食品が計画的に提供されるようになったことで、安定した食材の確保が可能になります。定期的に食料が届くようになることで、団体はより多くの困窮世帯や子どもたちに支援を届けられるようになり、本来の活動に集中できるようになります。

さらに、食品提供をきっかけに地域のボランティアや協力者が増えるなど、支援基盤の強化にもつながっています。このネットワークは、支援団体の「支え手」を広げる力にもなっているのです。


消費者と地域の利益

このネットワークの恩恵は、食品を提供する側や支援団体だけでなく、私たち消費者や地域全体にも大きく広がっています。

まず、食品ロスが削減されることで、廃棄物の量が減り、焼却処分に伴うCO₂排出も抑えられるため、環境負荷の軽減につながります。食品ロスを少しでも減らすことは、地球温暖化対策としても大きな意味を持ちます。

また、未利用食品の有効活用により、経済的な理由で十分な食事をとれない人々に安全な食品が届けられることは、食のセーフティネットの強化にもつながります。さらに、地域の事業者、支援団体、そして住民が一体となって食品ロスに取り組むことで、地域内のつながりや信頼感が深まり、共助の精神も育まれていきます。

このように、ネットワークを通じた小さな循環が、暮らしの安心や地元への愛着、そして持続可能な社会の実現へとつながっていくのです。食べ物を大切にする心が地域に広がれば、未来はもっと明るく、豊かなものになるはずです。


期待される効果と課題

虫メガネに「NEW TREND」の文字 新しいシステムのイメージ


廃棄削減と環境保全

食品の廃棄は、「もったいない」だけでは済まされない深刻な問題です。食品は、育てる・加工する・運ぶという過程で、多くの資源やエネルギーを消費しています。これらを十分に活用されないまま捨ててしまうことは、資源の無駄遣いであると同時に、環境への大きな負担にもなっています。特に、焼却処分される際に排出されるCO₂は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの一つであり、見逃せない影響を与えています。

このネットワークが広がり、未利用食品を有効活用できる仕組みが整えば、廃棄量は確実に減り、焼却に伴う排出ガスや輸送エネルギーの最適化にもつながります。近畿全体でこうした動きが加速すれば、地域から全国へ、そして地球規模へと波及していくでしょう。私たちの身近な「食」の行動が、未来の環境を守る力になるのです。


地域経済への貢献

未利用食品を地域内で循環させる仕組みは、単なる食品ロス対策にとどまらず、地域経済にも大きな恩恵をもたらします。
たとえば、食品関連事業者はこれまで処分費や運搬費などに年間数百万円規模のコストをかけてきましたが、ネットワークの活用によりこれらの費用を削減できます。その分の資金を新商品開発や設備投資、従業員の待遇改善に振り向けることができれば、企業の経営安定や成長にもつながります。

さらに、物流やパッケージ業など食品関連の周辺産業にも新たな仕事が生まれ、地域内の雇用創出にも寄与します。また、フードバンクや子ども食堂といった支援団体が活動しやすくなることで、困窮世帯への食料支援が強化され、地域のセーフティネットもより確かなものになります。

近畿地方には多様な業種が集まっており、このネットワークが地域内の調和や連携を後押しすることで、持続可能な「地域の食の循環」と「経済の好循環」が育まれていくのです。食を無駄にしないという行動が、地域の豊かさへとつながっていく。まさに、一挙両得の取り組みといえるでしょう。


組織間の連携強化

このネットワークの大きな特徴は、食品関連事業者、支援団体、運送業者、行政といった異なる立場の組織が「連携」を前提に活動している点です
食品の提供から輸送、受け取り、配布までを円滑に進めるには、情報共有やスケジュール調整といった日々の連携が欠かせません。こうしたつながりを通じて、これまで個別に動いていた組織同士の関係性が可視化され、協力体制が徐々に整ってきています。
異なる専門性を持った組織がそれぞれの知見や経験を活かすことで、より効果的な食品ロス削減や支援活動が可能になっています。

ネットワークは単なる食品流通の手段ではなく、地域を支える“協働の場”としての役割も果たすことでしょう。人と人、組織と組織がつながることで生まれる信頼と力が、地域全体を強く、温かく支えていくのです。


災害への備え

「近畿の未利用食品活用サポートネットワーク」は、平時の食品ロス削減だけでなく、災害時の備え=防災面においても大きな可能性を秘めています。
たとえば、ネットワークを通じて地域内に食品が循環する仕組みができていれば、非常時にも迅速に食料を届けられる体制づくりが可能になります。特に、子ども食堂や福祉施設などの拠点が、平時からネットワーク内で食料を受け取っていることで、災害発生時には「地域の受け皿」として機能しやすくなるのです。

また、運送業者との連携があるため、道路状況が制限された中でも柔軟な輸送ルートの再構築が可能になります。こうした民間物流の知見を取り込むことは、行政主導の防災体制の補完にもつながります。
さらに、未利用食品の活用によってローリングストックの推進(定期的に入れ替えながら備蓄する方法)にも寄与でき、食品廃棄の抑制と災害時の備えという二つの目的を同時に果たすことができます。

一方で、課題もあります。防災活用を見据えた場合、賞味期限や保存状態の把握、配送の安定性、在庫の管理体制など、通常以上に高いレベルでの調整と連携が必要です。また、ネットワーク参加者それぞれの「防災意識の温度差」も乗り越えるべきポイントです。

今後は、平時の支援活動の延長線上に「防災」を組み込み、食の支援と命を守る備えを一体化させる仕組みづくりが重要になります。このネットワークは、まさに地域のレジリエンス(回復力)を高める新しいモデルのひとつとして、期待が高まっています。



「近畿の未利用食品活用サポートネットワーク」は、まだ産声を上げたばかりの事業です。しかし、このネットワークは食品ロス削減という大きな目標に向け、事業者、支援団体、そして地域社会が一体となって取り組むための強力なプラットフォームとなり得るでしょう。

この取り組みを通して、私たちは食品ロスの削減だけでなく、地域経済の活性化や、いざという時の助け合いにも貢献できると期待しています。
今後の展開に、ぜひご注目ください。



近畿農政局:近畿の未利用食品活用サポートネットワーク





同じカテゴリの他の記事はこちら

ロスゼロブログ一覧へ

この記事を書いた人

菱本

京都府出身。食べることが趣味で、とにかくもったいないものをほっとけない性格。笑顔が大好き。世界中に一人でも多く笑顔になる人が増えてほしい!と願い、まずは自分自身が明るく元気に頑張っています!

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。