「ワンヘルス」という言葉をご存じですか。
ニュースや行政の取り組み、SDGs関連の話題の中で見かけたことがあるかもしれません。
でも、「難しそう」「専門家の話でしょ?」と感じていませんか?
実はワンヘルスは、とてもシンプルな考え方です。
――人の健康、動物の健康、そして地球環境の健康は、すべてつながっている――というもの。
では、「食品ロスもその一部では?」と考えてみてください。
食べ物を無駄にすることは、環境にも、動物にも、そして私たち自身にも影響を与えているのです。
ワンヘルスは、決して遠い世界の話ではありません。
私たちの“食卓”から始まる考え方なのです。
ワンヘルスとは何か

人・動物・環境はひとつの健康
「ワンヘルス」とは、人間・動物・環境の健康を、ひとつながり(=一蓮托生)と捉える考え方です。
私たちはつい、「人間の健康」だけを切り離して考えがちです。
しかし実際には、健康な土壌があるから安全な野菜が育ち、豊かな海があるから魚がとれ、安定した気候があるから農業が成り立っています。
また、動物の健康も無関係ではありません。
家畜や野生動物の生息環境が壊れると、感染症が広がりやすくなることもあります。
食・環境・生態系・暮らしはつながっています。
私たちが健康でいるためには、動物も、地球も、健やかでなければなりません。
それがワンヘルスの基本です。
なぜ世界で注目されているのか
世界でワンヘルスが注目されている背景には、三つの大きな問題があります。
【気候変動】
猛暑や豪雨、干ばつが増え、農作物の不作や水不足が深刻化しています。
【生態系の破壊】
森林伐採や海洋汚染により、多くの動植物が住む場所を失い、食料供給にも影響が出ています。
【食料問題】
世界では飢餓がある一方で、大量の食品が廃棄されています。
「足りない地域」と「余らせている地域」が同時に存在しているのです。
これらは別々の問題のようで、実は深く結びついています。
だからこそ、分断せずに捉えるワンヘルスの視点が求められているのです。
食品ロス削減がワンヘルスにつながる理由

私たちの“食べ残し”も、ワンヘルスと無関係ではありません。
食べ物は、畑の土、水、太陽の光。家畜のえさ、漁場の環境、運ぶためのエネルギーや人の手間など、多くの命と資源を経て食卓に届きます。
それを捨てるということは、目の前の食品だけでなく、その背景にある資源や労力まで失うことでもあります。
環境への負荷(Environment)
食べ物を捨てることは、目に見えない膨大な資源を無駄にすることです。
生産に使われた水や農地、肥料、輸送に使われた燃料。そのすべてが、廃棄とともに「余分な負荷」へと変わります。
さらに、廃棄された食品の焼却時には温室効果ガスが排出されます。
それは地球の気温上昇を招き、異常気象を引き起こし、巡り巡って私たちの暮らしや健康に影響を与えます。
食品ロスは、静かに地球の体温を上げているのです。
動物へのリスペクト(Animal)
肉や魚、卵、乳製品。私たちは多くの動物の命をいただいて生きています。
もしその食べ物が無駄に捨てられたら、その命は十分に活かされたと言えるでしょうか。
食品ロスを減らすことは、過剰生産や過度な乱獲を抑え、動物に必要以上の負担をかけない循環をつくることにもつながります。
それはアニマルウェルフェア(動物たちの福祉)の視点を守ることでもあり、野生動物と人間の適切な距離を保つことにもつながります。
「もったいない」は、単なる節約ではなく、命への敬意でもあるのです。
私たちの健康(Human)
「健全な環境」がなければ、「安全な食べ物」は育ちません。
環境が弱れば、栄養価の低下や食品安全への影響、感染症リスクの増加など、私たちの健康にも影響が及びます。
自然が揺らげば、私たちの暮らしも揺らぐ。
だからこそ、食品ロスを減らすことは、自分自身を守る行動でもあるのです。
食品ロス削減はワンヘルスの実践

食品ロスは「もったいない」で終わる問題ではありません。
環境、動物、そして私たちの健康に直結するテーマです。
食品ロスを減らすことは、ワンヘルスを“知る”ことではなく、“実践する”こと。
キッチンや買い物での「捨てない選択」が、その第一歩になります。
捨てない選択が未来を守る
「規格外の野菜」や「賞味期限が近い商品」を選ぶことは、単にお得な買い物をする以上の意味があります。
それは、その食材を作るために注がれた資源や生産者さんの努力を「循環させる」という行動です。
「最後までおいしく食べる」と決めるだけで、地球への負荷は確実に減り、環境の健全性が守られます。
一人の力は小さくても、その積み重ねが社会の流れを変えていきます。
未来は、「今日の一食」から始まります。
アップサイクルという新しい循環
これまで価値が低いとされてきた食材に、新しい価値を与える。
アップサイクルは、限られた資源を活かし切る知恵です。
新たな資源を奪うのではなく、今あるものを大切に使う。
その姿勢が、人と動物、環境が共に生きる循環を支えます。
企業と消費者が一緒にできること
ワンヘルスは、誰か一人の努力では実現しません。
企業は無駄を減らす仕組みを整え、生産者は持続可能な方法を選び、消費者は賢く選ぶ。
それぞれの立場での行動が重なり合うことで、大きな流れが生まれます。
「もったいない」という日本の精神は、「ワンヘルス」を実現するための、大きな力になり得るのです。
今日からできるワンヘルスアクション

「地球と動物のために何か大きなことをしなければ」と身構える必要はありません。私たちの毎日の買い物や食卓でのちょっとした選択が、循環を少しずつ変えていきます。
「食べ切れる量」だけを買う
循環を乱さないための第一歩は、入り口を整えることです。
特売だから、まとめ買いだから、とつい多めに手に取っていませんか?
冷蔵庫の中を確認してから買い物に行く。一週間の献立をゆるく決めておく。使い切れる分だけを手に取る。
それだけで、生産・流通・廃棄にかかる無駄なエネルギーを減らせます。
ストーリーのある食材を選ぶ
誰が、どこで、どんな思いで作ったのか。
作り手の想いや背景を知ることで、「命をいただく」という実感が生まれます。
安さや見た目だけでなく、ストーリーで選ぶ。
それは、作り手への敬意であり、命への感謝でもあります。
ロス削減商品を試してみる
不揃いな「規格外品」、期限が迫った「レスキュー食材」、そして「アップサイクル商品」。これらを手に取ることは、単なる節約ではありません。
それは「もったいない」を新しい価値へと書き換える、意志ある選択です。地球の健やかさを守り、未来の生態系へとつなぐ「賢い投資」とも言えるでしょう。
あなたのその選択が、失われるはずだった資源を救い、命の循環を力強くつなぎます。
ワンヘルスという言葉の本質は「すべてがつながっている」という、シンプルで優しく力強い視点です。
食品ロスを減らすことは、地球を守り、動物を守り、そして私たち自身を守ることにつながります。
今日の一食を、最後まで大切に食べること。
そこから、ワンヘルスは始まります。
未来は、私たちの“もったいない”の先にあるのです。
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