初めまして。学生インターンの上野です。
関西の大学で、管理栄養士の資格をとるために栄養の勉強をしています!
突然ですが、新型コロナウイルスが流行した今年の春、「学校が休学になり、牛乳が行き場を失う。」こんなニュースが流れたのを皆さんもご存じなのではないでしょうか。
今回はそんな牛乳、乳製品のロスについて、牛乳が持つ栄養のお話と一緒にお届けしたいと思います!
これを知れば牛乳をあまらせるなんてとんでもない!
乳牛の一生について
実は私は恥ずかしながら、つい最近まで「乳牛は常にミルクがでる」そんな動物なんだと思っていました。
しかしそれは大きな間違い…。
牛も人間と同じ哺乳動物。子供を産まなければ乳は出ません。
牛のライフサイクルを簡単に図にしてみました。
お母さんから産まれた子牛は生後1年半で早くも1回目の人工授精を行います。
その後、280日前後で1回目の出産を行います。
そして約10か月間毎日搾乳を行います。
(出産後40日以上たつと次の人工授精を行います)
次の出産に備え2~3か月体を休めた後、2回目の出産を迎えます。
このサイクルを1頭につき3~4回繰り返します。
出産が厳しくなり、生乳を絞らなくなった牛は「廃用牛」といい、食肉などに使用されます。
参照:乳牛のライフサイクル | findNew 牛乳乳製品の知識 (j-milk.jp)
また、出産を終えた牛の乳は毎日毎日出続けます。
そのため今回の新型コロナウイルスの拡大のように、緊急事態が起きてもすぐに生産量を調節することは難しく、結果的にロスに繋がってしまうのです。
日本では約134万頭の牛が酪農家の方により飼育されていますが、やはり人間と同じように牛にとっても出産は負担が大きいもの。
人間の都合で何度も妊娠させていることを忘れてはいけません。
また、最後は雄の牛と同じように命をいただくことになります。
この事実をしっかりと心に留めた上で、少しでも牛乳や乳製品のロスをなくすために私たちにできることは何でしょうか。
プラスワンプロジェクトについて
そこで推奨されているのが、
農林水産省が提案するプラスワンプロジェクトです。
(詳しくはこちら)
(画像:農林水産省より引用)
春にピークを迎えるにも関わらず、新型コロナウイルスの影響で休校による給食のキャンセルや事業所の休業により、行き場のない牛乳がたくさん発生しました。
乳製品などに加工する工場をフル稼働させても、廃棄せざるをえない状態に…。
そんな危機を乗り越えるべくプラスワンプロジェクトが開始されました。
毎日牛乳をのもう(モウ~)
育ち盛りはもう(モ~)1パック
その結果、家庭での牛乳消費量は増加し、無事ピークを乗り切ることができました。
しかし、今度は加工された乳製品や脱脂粉乳のロスが問題に…。
そこでプラスワンプロジェクト・セカンドステージです。
乳製品をもう(モ~)1個!
アイスクリームを1日1個、チーズやヨーグルトををもう1つ、摂取することを推奨しています。
ではここで、乳製品を買いに行きたくなる!
牛乳の大切な栄養素についてご紹介します。
なぜカルシウムが大事なの?
牛乳と言えばカルシウム。
カルシウムといえば骨。
牛乳を飲むと背が伸びる、カルシウムが不足すると骨折しやすくなるといったようなイメージを皆さんもお持ちなのではないでしょうか。
その通りです!
牛乳や乳製品に豊富に含まれるカルシウムには骨を強くし成長させる働きがあります。
しかし、実は骨量が増加するのは男子で13歳前後、女子で11歳前後まで!
ということはこの時期を過ぎてしまうとカルシウムを摂取しても大きく背がのびるというようなこともありません。
骨量が最大になる思春期前半までになんとしてもカルシウムをたくさん摂取しておきたいというわけです。
(給食で、「絶対このご飯に牛乳はあわんやろ…」というような献立にも牛乳がでていたのはそのためです。)
そして、思春期を過ぎてからもカルシウムの摂取は必須です。
思春期までに蓄えた骨量を維持しなければ、どんどん骨量は減少していき結果的に骨がスカスカになってしまう骨粗しょう症に繋がってしまいます。
また、カルシウムが欠乏すると骨粗しょう症だけでなく、「高血圧」や「動脈硬化」になるリスクが高まってしまいます。
そしてもうひとつ!
新型コロナウイルスだけでなく、これからの季節インフルエンザや風邪にも気を付けなければなりません。
ヨーグルトやチーズにはシンバイオティクスという善玉菌が豊富に含まれています。
これは腸内環境を整える働きをしてくれているのですが、腸内環境を整えると免疫力が上がると言われています。
このはたらきを活用しないわけにはいきませんね。
(参照:南江堂 応用栄養学改訂第5版
第一出版 日本人の摂取基準2015年版)
私も今日はヨーグルトにバナナとくるみをのせて食べました。
自分にあう向き合い方
ここまで牛乳・乳製品のはたらきについてお話してきましたが、必ずしも乳製品を摂取しなければならない!というわけではありません。
乳糖不耐症について
牛乳やヨーグルトを摂取すると、「なんかお腹がグルグルする…。」「お腹が痛くなる…。」
こういった経験はありませんか?
乳糖を消化する酵素を持たない場合こういった症状がでることがあります。
そして乳糖不耐症の日本人は少なくありません。
ヴィーガン
次に、ヴィーガンという視点からみた牛乳についてです。
そもそも搾乳のために牛を飼育するということ自体、人間の傲慢な行いである。
また、全ての牛が整った環境で生活しているわけではなく、むしろ劣悪な環境での飼育を強いられている。
放牧というイメージがありますが、実際には縄で繋がれたまま1日中同じ窮屈な場所で生活しているという場合があることも事実です。
(乳牛の飼育環境についてはこちら。
酪農による環境被害についてはこちらのロスゼロブログ)
こういった意見があることも事実であり、行われていることもフィクションではありません。
決して目をそむけてはならない問題でもあると思います。
牛乳はとても手軽に、そしてたくさんカルシウムを摂取することができる素晴らしい食品です。
しかし、カルシウムは牛乳でしかとれないということではありません。
ここまで牛乳・乳製品についてお話してきましたが、大切なのは、牛乳の廃棄や製造方法、環境などの現状を知り、自分にあった牛乳との向き合い方を見つけ、食品を選択することだと思います。
この記事が、そのための材料の1つになれば幸いです。
たくさんの食品ロスが問題になっていますが、今回は牛乳をピックアップしてお話させていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!