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【食品ロスのその後】 家庭の食品リサイクル率は1割未満

公開日: 更新日:2023.12.22
【食品ロスのその後】 家庭の食品リサイクル率は1割未満

 

国内の食品ロスが年間約612万トンにのぼることは、ロスゼロブログの読者のみなさんならご存知でしょう。

では「発生してしまった食品ロスがどのように処理されているか」についてはいかがですか?

今回は、食品ロスの処理方法や家庭でできる食品リサイクルをご紹介します。

 

食品ロスの「その後」を考えよう

考える男の子

 食品ロスを含む食品廃棄物は、リサイクルして再生利用されなければゴミとして処理される悲しい運命にあります。

 

みなさんは、食品廃棄物がリサイクルされる量とゴミとして処理される量はどちらが多いと思いますか?

その答えは、食品廃棄物がどこで生まれたかという発生ルートによって異なります

 

環境省の「食品ロスポータルサイト」に掲載されている下図をもとにご説明します。

食品廃棄物楼の利用状況の概念図

(出所:環境省『消費者向け情報 | 食品ロスポータルサイト』)

 

事業系食品ロスの廃棄率

事業系の食品ロスは約8割がリサイクルされており、約2割がゴミとして処理されています。

 

図の黄緑色の点線で囲われているところをご覧ください。

「事業系廃棄物+有価物 1,767万トン」となっています。

 

食品メーカーなどから発生するものの中には、大豆ミールやふすまなどの「有価物」も含まれています。

「有価物」とは「商品になるもの」という意味です。

 

大豆ミールやふすまなどは、人間の食べ物にはなりませんが、家畜のエサや作物の肥料などに再生して販売することができます。

そのため、これらは飼料や肥料へリサイクルされ、ゴミとして処理されることはありません

 

ほかにも、食品メーカーやレストランなどからの生ゴミを使って発電するという再利用方法もあります。

この発電方法は「バイオマス発電」と呼ばれます。

 

以前のロスゼロブログでもご紹介させて頂いたため、覚えている方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

このように、事業系で発生する食品廃棄物は家畜のエサや作物の肥料、あるいはバイオマス発電などに再利用されています。

その結果、ゴミとして燃やされたり埋め立てられたりされる量は最終的に329万トンとなります。

 

事業系廃棄物+有価物の合計1,767万トンのうち

329万トンが焼却・埋立されますので、約19%がゴミになっていると考えられます。

 

リユーズのかばん

家庭からの食品ロスの廃棄率は?

では、私たちの家庭からはどうでしょうか?

 

図中の2つの黄色い丸のうち、下の丸をご覧ください。

「家庭系廃棄物 783万トン」となっていますね。

 

右下に伸びるグレーの矢印の先には

「再生利用:57万トン」「焼却・埋立:726万トン」

と書かれています。

 

これは、783万トンのうち726万トンがゴミとして処理されている

ことを意味します。

 

パーセンテージに換算すると92%。

家庭からの食品廃棄物のほとんどが再利用されずゴミになっているというのが現状です。

 

「食品リサイクル法」の効果

事業系と比べ、家庭からの食品廃棄物がゴミとして処理される割合が大幅に高くなっています。

 

この理由は、「食品リサイクル法」という法律にあります。

 

製造業や外食産業といった食品関連事業者には

「食品リサイクル法」によって、食品廃棄物を減らすことが定められているのです。

 

以前もご紹介した通り、食品製造業や食品卸売業といった業種ごとにリサイクル率が決められています。

 

このため、家庭と比べると事業系のリサイクルが進み、最終的にゴミとして廃棄される割合が低く抑えられているのです。

 

(参考:ロスゼロブログ『地域内循環で解決する、新しい「食品リサイクル」のお話』)

 

パプリカを切っている

 一方、私たちの家庭には食品のリサイクルは義務付けられていません

もちろん、家庭でも生ゴミをたい肥にしたり、使用済みの天ぷら油を回収したりといった取り組みは進められています。

しかし、いずれも自主的な取り組みであるため、リサイクルが進みにくい状況だといえます。

 

家庭の生ゴミ減量で注目の「たい肥化」

スコップでバケツに土を入れている

 

こうした背景から、家庭での生ゴミを減らすために「たい肥化」の取り組みに力を入れている自治体がほとんどです。

「たい肥化」とは、微生物などの力によって生ゴミを分解し、肥料に生まれ変わらせること

 

生ゴミでつくった肥料は、お庭やベランダの家庭菜園、花壇などに活用できます。

こうして育てた野菜や果物がおいしく実れば、循環システムの完成です。

 

多くの自治体が、生ゴミのたい肥化のため家庭でのコンポストの利用を推進しています。

中には、コンポストのレンタルサービスや購入費用の一部を助成する自治体もあるようです。

 

気軽に取り組める「段ボールコンポスト」とは?

段ボールに入っている野菜

 

お金をかけずにたい肥化に取り組みたいという方におすすめなのが

「段ボールコンポスト

 

「段ボールコンポスト」とは、その名の通り、段ボールを利用したコンポストです。

スペースもとらず、においも少ないため、マンションのベランダなどでも取り組むことができます。

野菜や果物のくずはもちろん、魚の骨や 内臓、卵の殻までたい肥にできるため、生ゴミのほとんどを捨てずに済むようになります。

 

段ボールコンポストのつくり方は簡単です。

段ボールに基材となる土壌改良剤と生ゴミを入れ、風通しのよい場所で発酵させるだけ。

虫よけのためのキャップや生ゴミをまぜるスコップも用意しておくとよいでしょう。

 

みなさんがお住まいの自治体のホームページでも、段ボールコンポストの作り方を公開しているかもしれません。

ぜひ検索してみてくださいね。

 

生ゴミは「ぎゅっとしぼる」だけで減量になる

リサイクルマークの付いた入れ物

 

段ボールコンポストに取り組むのが難しい方でも簡単に生ゴミを減量できる秘策をお教えしましょう。

 

その秘策とは「ぎゅっとしぼる」だけ。

 

生ゴミの80%は水分だといわれています。

ぎゅっとしぼって捨てるだけで、生ゴミの重量やかさを減らすことができます。

自治体のゴミ処理場で燃やされるときにも、水分量の少ないゴミの方が燃えやすいというメリットもあります。

 

生ごみのコンポストを義務化している地域

土付きのキャロット

https://youtu.be/rcET_YC4FLE

(出所:Eat What You Buy. Compost the Scraps.: Home

 

アメリカのバーモント州では、生ゴミのたい肥化がすでに義務化されています。

これはアメリカでは初めての法律です。

 

バーモント州は、生ゴミをゴミ処理の対象ではなく、リサイクルすべき資源としています。

そのため、家庭で出た生ゴミは自宅のコンポストに入れるか回収業者に回収してもらい、たい肥化しなければなりません。

あるいは、ニワトリやブタなどの家畜のエサとすることも認められています。

 州では、ワークショップなどを通して生ゴミを本気で減らす取り組みに力を入れています。

 

家庭にとっては負担が大きく感じるかもしれませんが、生ゴミは私たちの生活の結果、発生するものです。

責任をもって処理しなければなりませんし、その処理の方法が環境に悪影響を与えるものであってはいけないと思います。

 

普段何気なく捨ててしまっている生ゴミ、これを機に向かい合ってみてはいかがでしょうか?

 

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この記事を書いた人

サステナブルライター 山下

電力会社やベンチャー企業でエネルギー関連のビジネスに従事したのち、2019年にサステナブルライターとして独立しました。「家庭の省エネエキスパート」資格を持ち、自治体において気候変動や地球温暖化に関するセミナーを実施した経験もあります。環境問題をもっともっと身近に感じてもらえるよう、わかりやすい記事を心がけています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。