こんにちは、サステナブルライターの山下です。
以前のブログ記事では、世界初の「ゼロ・ウェイスト宣言」をした徳島県上勝町のご紹介をしました。
全国には、ほかにもゴミの減量やリサイクルにしっかりと取り組んでいる市町村があります。
今回は、市町村別のリサイクル率ランキングから、第1位の鹿児島県大崎町のさまざまな取り組みについてご紹介します。
2019年度の市町村別リサイクル率ランキング
4月20日、2019年度の市町村別のリサイクル率ランキングが発表されました。
環境省が毎年発表しているレポート
「日本の廃棄物処理」に掲載されたものです。
「日本の廃棄物処理」は、20年以上にわたって毎年発表されています。
ゴミの排出状況や地域別のデータなど、日本のゴミの現状がリアルに映し出されています。
このレポートには、市町村別のリサイクル率ランキングが掲載されています。
「人口10万人未満」
「人口10万人以上50万人未満」
「人口50万人以上」という区分で順位付けされた、2019年度の市町村別リサイクル率ランキングは、以下の通りです。
(出典:『日本の廃棄物処理』)
全国平均のリサイクル率が20%前後であることを考えると、上位の市町村がいかに高いかがわかります。
以前ご紹介した徳島県上勝町は80.8%と惜しくも2位ですが、素晴らしい数値ですね。
1位に輝いた鹿児島県大崎町は、平成18~29年の12年連続でリサイクル率トップを誇っています。
平成30年は北海道豊浦町に首位を明け渡したものの、令和元年(2019年)には再びトップに返り咲きました。
大崎町のリサイクルの取り組みは、海を越えたインドネシアにも伝わっています。
一体、どのような取り組みでリサイクル率82.6%を実現しているのでしょうか?
処分場に頼らない「大崎システム」の誕生
鹿児島県大崎町は県の南東部に位置し、志布志湾に面しています。
山や海、田園に囲まれ、ブランド牛「大崎牛」やウナギの生産でも知られる
人口1万2000人あまりの町です。
もともと大崎町は、隣の志布志市と共同の処分場でゴミの埋立を行っていました。
しかし、処分場の残量があと数年で満杯になってしまうことがわかり、平成10年から缶やビン、ペットボトルの分別をスタート。
それと同時に分別用ゴミ袋も導入し、ゴミの減量に取り組み始めました。
大崎町が目指すのは
「焼却に頼らない低コストな廃棄物処理システム」です。
住民と行政、そしてゴミを回収・リサイクルする企業の
3者が共に力を合わせることで、高いリサイクル率を維持しています。
平成29年には、最終的にゴミ処分場の埋め立てられるゴミの量を、平成10年の84%も削減することに成功しました。
(出典:大崎町『ごみ分別の手引き』)
バケツ回収の生ゴミは有機たい肥に生まれ変わる
平成13年からは、家庭の生ゴミの分別収集もスタートしました。
はじめは市街地だけの取り組みでしたが、徐々にエリアを拡大し、今では大崎町全域で分別収集を行っています。
収集できる生ゴミは、食べ残しや料理くず、野菜や果物はもちろん、魚のアラや貝殻など多岐にわたります。
ビニールなどを取り除いた生ごみは、バケツで回収されます。
回収された生ゴミは、草木の剪定くずなどと混ぜ合わせ、約4ヶ月半かけて有機肥料に生まれ変わります。
生まれ変わった肥料は「おかえり環ちゃん」という商品名で一般に販売されています。
まさに、町で発生したゴミを商品に作り替える循環型のシステムが実現されているのです。
廃食油も車の燃料や石けんに
ほかにも、家庭から出た天ぷら油などを回収して、ゴミ収集車の燃料としたり環境にやさしい石けんとしたりしています。
ゴミを「いらないもの」として処分するのではなく、有効な資源として活用する前向きな姿勢が伝わってきますね。
27種類の分別マナーを守るのは「排出者の義務」
生ゴミ以外のゴミは、大崎町では27種類に分別されています。
例えば、ビンだけでも
リターナブルビン
茶色のビン
透明のビン
その他のビンと4種類に分けられます。
大崎町では「ごみは、きちんと仕分けて出し方のマナーを守る」ことが排出者の義務とされています。
そのため、ゴミの指定袋には名前を書くことなどが定められているのです。
ゴミの分別ができていない袋には、違反シールが貼られます。
これは、家庭だけでなく企業にも同じく求められるルールです。
こうしたルールは、大崎町のホームページでわかりやすく説明されています。
ゴミの仕分け方法は、日本語に加え、英語とベトナム語でも説明パンフレットが作成されています。
(出典:大崎町『家庭ごみの正しい分け方と正しい出し方(英語ポスター)』)
リサイクルが財政面にも好影響もたらす
大崎町の埋立に頼らない資源循環システムは、財政面でもプラスの影響を及ぼしています。
住民のみなさんや企業の協力のもとで分別されたゴミのうち、資源ゴミは有料で売却されています。
売却された額は、平成12年からの累積で約1億3800万円にものぼります。
大崎町では、この売却益の一部を活用して奨学金制度を開始しています。
平成30年11月から始まった「リサイクル未来創生奨学ローン」は、大崎町で育った若者を応援する新しい取り組みです。
また、住民ひとりあたりのゴミ処理の経費削減効果も表れています。
ゴミを収集したり処分したりする経費は、平成29年の全国平均で、ひとりあたり1万5500円です。
一方、大崎町では7,700円と、全国平均の約半分に抑えられています。
分別やリサイクルによって節約された経費は、教育や福祉のなど他の分野に割り当てられています。
(出典:大崎町『ごみ分別の手引き』)
さて、ロスゼロブログ読者のみなさんの住む自治体では、ひとりあたりのゴミ処理経費はどれくらいでしょうか?
ぜひこれを機に確認してみてはいかがでしょうか。
ゴミを分別し、リサイクルすることでゴミ処理の経費も削減でき、別の分野への資金になるとしたら、より一層リサイクルする大切さが実感できますね。
「大崎システム」はインドネシアのゴミ減量にも貢献
こうした大崎町のリサイクルのシステムは「大崎システム」と名付けられ、国際協力の場でも活躍しています。
平成24年からの5年間では、インドネシアのデポック市において、ゴミの減量による処分場の延命化を目的にノウハウを伝えました。
インドネシアの西ジャワ州にあるデポック市は、人口約200万人の大都市です。
そのデポック市の生ゴミをたい肥化する技術を伝えたことで、ゴミの削減に大きく役立ちました。
デポック市での実績から、平成27年にはバリ州からも要請があり、生ゴミのたい肥化技術を共有しています。
バリ州では、たい肥を有機農業に活用することで、資源循環型システムの構築に役立っています。
さらに、首都のジャカルタでもリサイクルセンターを稼働する支援を行っています。
(出典:大崎町『ごみ分別の手引き』)
「混ぜればゴミ、分ければ資源」の意味
リサイクル率全国1位の鹿児島県大崎町の取り組みは、ゴミの分別や減量、リサイクルの効果を私たちに教えてくれます。
「混ぜればゴミ、分ければ資源」という言葉の意味がよくわかりますね。
私たちが便利な暮らしを送る一方で、増えてしまったゴミ。
それらを適切に処理し、可能な限りリサイクルするのは、現代人の責任といえるかもしれません。
「ゴミの分別は面倒だからしたくない。でも自宅の近くに埋め立て場はつくってほしくない」という考え方では、持続可能な社会は成り立たないでしょう。
これからの社会をよりよくするカギは、意外にも私たちの身近なところにあふれています。
毎日の暮しから出るゴミについて、もう一度向き合ってみませんか。
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