私たちの地球の肺とも称される森林が農業拡大や違法伐採、気候変動により世界規模で急速に失われています。
この森林破壊は、地球温暖化を加速させるとともに、日本を含む全世界に深刻な影響を及ぼしています。
私たちはこれらの事実を前に、我々は何を理解し、行動すべきなのでしょうか。
森林破壊の主な原因:何が森を失わせているのか?
大規模農地開発
世界人口の増加と食料需要の増加に対応するための大規模農地開発が、森林破壊の大きな原因となっています。
特に熱帯雨林地帯では、農地を広げるために森林が大規模に切り開かれています。
例えば、アマゾンでは、大豆や牛肉の生産のために広大な森林が毎年消失しています。FAOの報告によると、2000年から2010年の間にアマゾンの森林は毎年平均で約4.7万平方キロメートル失われているというデータがあります。
違法伐採
森林の適正な伐採は、持続可能な環境管理と生態系の保全というメリットがあります。
しかし、違法伐採は森林破壊の一因でしかありません。
一部の地域では、国際的に需要の高い木材や家具の材料となる樹種が違法に伐採されています。
世界銀行の推計によれば、毎年、違法伐採による木材取引は1000億ドル以上に上り、これが森林破壊を加速させているとされています。
焼畑農業
焼畑農業は、特に開発途上国で見られる森林破壊の一例です。焼畑農業は、一定の土地を使用した後に新たな森林地帯を切り開き、その地を農地とする方法です。しかし、この農法は森林の回復を阻害し、土壌の劣化を招くことがあります。
FAOによると、焼畑農業により年間約200万ヘクタールの森林が消失しているとされています。
森林破壊と地球温暖化
二酸化炭素の排出
森林は地球の「肺」とも呼ばれるように、大量の二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する役割を果たしています。。
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)によると、地球上の森林は毎年約120億トンの二酸化炭素を吸収しています。しかし、森林破壊によりこの吸収能力が低下すると、大量の二酸化炭素が排出され、これが地球温暖化の一因となっています。
森林は大気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する光合成の過程で地球温暖化の抑制に寄与します。伐採や焼畑により森林が消失すると、この機能が失われ、逆に大量の二酸化炭素が放出されます。
国連の報告によれば、森林破壊による二酸化炭素排出は、全世界の温室効果ガス排出の約10%を占めています。
森林が健全であれば、大気中の二酸化炭素を取り込んで酸素を放出し、地球の気候を安定させる助けとなります。
気候変動
一方、森林破壊により、気候の変化も引き起こされています。
森林が失われると、その地域の雨量が減少し、乾燥化が進行する場合があります。世界気象機関の報告では、熱帯雨林の減少は気候変動を一層悪化させていると指摘しています。
森林火災もまた、気候変動に対する重大な要因となります。
火災により木々が燃えると、大量の二酸化炭素が放出されます。さらに、火災後の土地では二酸化炭素を吸収する森林が存在しないため、その影響は長期にわたります。
カリフォルニア大学の研究によると、2015年のインドネシアの森林火災は、同年の全世界の二酸化炭素排出量のおよそ2%を占めていました。
平均気温の上昇
森林の減少は地球の平均気温の上昇を促進します。
森林は地球の表面を覆い、日射を遮る役割を果たすため、その減少により地表の照射面積が増加し、地表温度が上昇します。NASAの報告によると、森林破壊は地球の表面温度を0.25度上昇させる可能性があります。
これは、地球温暖化に対する重要な問題となっています。
森林破壊がもたらす生物多様性への影響
生息地の減少
生物学者によると、地球上の種のおよそ80%が森林に生息しており、森林破壊は生物種の生息地を奪い、絶滅の危機を引き起こす深刻な問題です。
植物が失われると、それに依存している動物や微生物も影響を受けます。食物連鎖が破壊され、生態系のバランスが崩れると、侵略的な種が繁茂する場合もあります。
森林が減少すると、動物たちは食料、水、避難所を見つけることが困難になります。これによって競争が激化し、弱い個体や種は淘汰されてしまう可能性が高いです。
また、生息地が分断されることで、遺伝的多様性が低下し、種全体の健康が危うくなる場合もあります。
世界自然保護基金(WWF)の報告によれば、過去40年間で森林生物種の平均的な個体数は約53%減少しました。
特に熱帯雨林は地球上で最も生物多様性が豊かな地域であり、多くの種がその生息地としています。しかし、森林破壊によりこれらの熱帯雨林が消失すれば、数え切れないほどの種が絶滅の危機に瀕することになります。
例えば、アマゾン熱帯雨林だけでも、約400億個体の樹木と1,600種以上の鳥類が生息しているとされています。
このような生物多様性が豊かな地域の保全は、地球全体の生態系保全にとって極めて重要です。
絶滅の危機
絶滅の危機に瀕している動物の数は正確には不明ですが、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストによれば、約28,000種が絶滅の危機に瀕しています。このうち、森林破壊が主な要因である種も少なくありません。
たとえば、オランウータンやサミットライノ、アマゾンのジャガーなど、特定の森林地帯に生息している種は、その生息地が失われると生存が難しくなります。世界自然保護基金(WWF)によると、現在絶滅危機に瀕している種の約半数が、生息地の喪失と破壊に直面しています。
生態系への影響
全ての生命体は相互依存的な生態系の一部であり、森林はその中心的な役割を果たしています。
森林の生物種の減少は、生態系全体の健全性に深刻な影響を及ぼします。
例えば、植物は昆虫による受粉に依存し、昆虫はその植物から餌を得ています。
森林の生物種が豊かであればあるほど、生態系は健全であり、自然災害や病気から回復する力を持ちます。しかし、森林破壊により生物種が減少すると、生態系のバランスが崩れ、その回復力が弱まり、絶滅の危機が増大する可能性があります。
人間の生活と森林破壊:私たちの選択が環境に与える影響
消費者の選択
私たち消費者の選択一つ一つが、商品の需要を生み出し、その結果として森林破壊が進行しているのです。
例えば、パーム油は製品の多くに使われていますが、その生産のために熱帯雨林が大規模に伐採されています。世界自然保護基金(WWF)によると、パーム油は世界の植物油生産の35%を占め、その大半が森林破壊を伴っています。
持続可能な生活を実現するためには、自分たちの消費行動を見直すことが必要です。
森林破壊を防ぐためには、例えば地元の持続可能な製品を選んだり、再利用可能な製品を選ぶなど、私たち一人一人の小さな選択が重要です。国連のSDGs(持続可能な開発目標)も、個人の消費行動の変革を強調しています。
認証マーク
認証マークは、製品が環境に配慮した方法で生産されたことを示す重要な手段です。
例えば、FSC(Forest Stewardship Council)のマークは、製品が持続可能な森林管理から得られた木材または紙を使用していることを示しています。
これらのマークを探すことで、消費者は自分の購買行動を通じて森林保全に貢献することができます。
世界各地で進行中の森林破壊:主な現場とその状況
アマゾン
アマゾンは地球上最大の熱帯雨林で、地球の生態系と気候にとって非常に重要な役割を果たしています。しかし、農地開発や違法伐採により急速に破壊が進行しています。
ワシントン大学の研究によると、2020年にブラジルのアマゾンでは約1,000万エーカーの森林が失われ、これは2008年以降の最高記録です。
東南アジア、アフリカ
東南アジアとアフリカでは森林破壊が急速に進んでいます。パーム油の生産や木材取引のための大規模伐採が主な原因で、これらの地域の生態系と生物多様性に深刻な影響を及ぼしています。
世界自然保護基金(WWF)によれば、1990年以降、インドネシアでは約31%、コンゴ盆地では約8%の森林が失われました。
オーストラリア
オーストラリアでは森林火災が頻繁に発生し、その都度大規模な森林破壊を引き起こしています。
特に2019-2020年の火災シーズンは、過去最悪の規模とされ、約1.85億エーカーの土地が焼失しました。
この火災は、森林の減少と気候変動の関連性を改めて浮き彫りにしました。
森林破壊を防ぐために私たちができること
植林
森林回復には植林が欠かせません。植林は二酸化炭素の吸収と酸素の生産を助け、地球温暖化の防止に貢献します。
世界各地の多くのボランティアや団体がこの活動に取り組んでいます。たとえば、慈善団体「One Tree Planted」は、1ドルで1本の木を植えるというプロジェクトを展開し、これまでに数百万本の木を植えています。
森林保全
持続可能な開発目標(SDGs)は、森林保全にも注目しています。
特に目標15「陸上の生態系を守ろう」は、森林の持続可能な管理や生物多様性の保護を推進しています。これらの目標を達成することは、地球全体の森林破壊を防ぐ一助となります。
森を守るためには、法律と適切な森林管理が不可欠です。
各国の法律により、違法伐採や森林破壊を防止することが可能になります。
例えば、ブラジルでは「森林法」が、インドネシアでは「森林犯罪法」が施行され、森林保全を促進しています。
これらの法律の遵守と効果的な適用が森林破壊防止の鍵となります。
地球を守るため、SDGsの目標を達成するためにも、森林破壊を食い止めることは重要かつは不可欠な課題です。
私たち一人ひとりが持続可能な消費を心がけ、政策への関心を高め、自然を尊重することで、美しい森林が未来の世代にも残ることを願います。未来は私たちの手にあります。
【参考資料】
国際連合食糧農業機関(FAO):グローバル森林資源アセスメント2020
世界自然保護基金(WWF):WWFジャパン
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