「使い捨て」という言葉が、私たちの生活に深く根付いてしまっている現代。特にイベント会場では、大量のごみが発生し、地球環境への影響が懸念されています。
しかし、大阪・関西万博では、「脱使い捨て」をキーワードに、リユースや堆肥化できる食器の導入が進んでいます。
イベントに限らず、コンビニやスーパーのお惣菜など、日常の食事でも当たり前に使われてきた使い捨て容器。その見直しが、いま大規模イベントを舞台に本格的に始まろうとしています。
未来の食器は、どこへ向かうのでしょうか。
万博で進む脱プラ施策

会場内の使い捨て削減
2025年の大阪・関西万博では、環境への配慮が大きなテーマの一つとなっており、会場内での使い捨て容器の使用を可能な限り削減する方針が打ち出されています。特に、来場者が利用する飲食スペースでの使い捨てプラスチックの削減は喫緊の課題です。
一般的な大規模イベントでは、食事のたびに大量の使い捨て容器やカトラリーが発生し、その多くが焼却処分されることで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出してしまいます。万博では、この問題を深刻に受け止め、会場内で使用される食器類をできる限り使い捨てではないものや、再利用可能なものへと切り替えることで、廃棄物の発生を大幅に抑えることを目指しています。
環境省の「プラスチック資源循環戦略」では、日本ではプラスチックごみの約6割が容器包装類で占められているとされており、イベント開催時にはごみの発生量が増加することも一般的に認識されています。
こうした状況を踏まえ、万博では「脱使い捨て」を掲げ、来場者のごみ意識を変える仕掛けとしても重要な意味を持たせています。
使い捨てを前提としない設計は、未来のライフスタイルのヒントとなる可能性を秘めており、参加者一人ひとりが環境に優しい選択を体験することで、持続可能な社会への意識を高めるきっかけとなるのではないでしょうか。
プラスチック容器の代替案
万博会場では、「脱使い捨て」を掲げた取り組みの一環として、プラスチック容器に代わるさまざまな素材の導入が進められています。リユース可能な食器の導入の他、例えば、トウモロコシやサトウキビ由来の生分解性プラスチック製のカトラリー、間伐材や竹を活用した紙製容器などが検討・導入されています。
これらの代替素材は、自然界で分解されやすいだけでなく、焼却時のCO2排出を抑えるといった環境面でのメリットもあり、資源の循環を体感できる試みとして注目されています。ただし、見た目や使い勝手だけでなく、ライフサイクル全体を通じた環境負荷の評価も欠かせません。たとえば、紙製容器でも防水加工にプラスチックが使われることがあり、生分解性プラスチックも適切な分解環境がなければ十分に機能しない場合があります。
環境省によれば、日本国内のプラスチック廃棄物のうち再資源化されているのは約25%にとどまり、大量生産・大量廃棄の構造そのものを見直す必要があります。
万博は、こうした素材の実用性や循環性を実証・検証する場としても機能しています。万博での素材選びは単なる代替品導入ではなく、「資源の循環」を体感できる新たな試みとして注目されており、未来の社会における容器のあり方を来場者とともに考える貴重な機会となっています。
食品廃棄と堆肥化の実践
農林水産省の調査によれば、日本では年間約523万トン(2021年度)の食品ロスが発生しており、特にイベント時には食品廃棄の管理が難しいとされています。加えて、食品廃棄物は焼却時に二酸化炭素、埋め立て時には強力な温室効果ガスであるメタンガスを発生させるなど、環境への影響も大きいため、資源としての再活用が求められます。
万博のような大規模イベントでは、飲食に伴う食品廃棄物も大量に発生します。そのため、万博では、飲食に伴う食品廃棄物の削減とともに、それを循環的に活用する取り組みが進められています。
会場内の飲食ブースなどから発生する生ごみや野菜くずは適切に分別・回収され、一部は専用の処理機で堆肥化される計画です。こうして生成された堆肥は、会場内の緑地整備や地域の農業プロジェクトに活用され、廃棄物を資源として循環させるモデルの一環となります。
大阪・関西万博のような大規模イベントだからこそ、食べ残しを「ごみ」ではなく「資源」として扱い、循環型社会の具体的な実践例として提示することにより、来場者に持続可能な未来のライフスタイルを提案する機会となっています。
なぜ、リユース食器なのか

リユース食器導入の背景と理由
近年、地球規模でプラスチックごみ問題が深刻化しています。特に、使い捨てプラスチックは海洋汚染や生態系への影響が懸念され、国際社会全体でその削減が求められています。
このような背景から、大阪・関西万博では、未来社会の実験場として、使い捨て文化からの脱却を具体的に示す必要に迫られています。リユース食器の導入は、この大きな課題に対する具体的な解決策の一つです。
日本では年間約850億個もの使い捨て容器が消費されており、その多くが一度の使用で廃棄されています(プラスチック資源循環促進法に関連するデータより)。万博のように一日に数十万人が来場する大規模イベントでは、ごみの発生量も膨大になり、従来の「使い捨て」では環境負荷が避けられません。
こうした状況の中、洗って繰り返し使えるリユース食器の導入は、単なるエコ対策にとどまらず、未来の社会インフラの実証としての側面も担っています。地球規模で深刻化するプラスチックごみ問題や海洋汚染、生態系への影響が国際的な課題となる今、使い捨て文化からの脱却は急務です。
リユース食器は、何度も使用することでプラスチックごみの発生を抑制し、資源の消費を大幅に削減できると期待されています。実際に、全ての使い捨て食器をリユースに切り替えることで、数百万点から数千万点もの廃棄を削減できるとの試算もあり、その効果は大きいとされています。
大阪・関西万博は、リユースの仕組みを通じて「使い捨てないこと」を来場者自身が体験し、持続可能な社会に向けた行動変容を促すサステナビリティ教育の場としても重要な役割を果たしています。
食器洗浄と衛生管理体制
リユース食器の導入において最も重要視されるのが【衛生面】ではないでしょうか。
万博では来場者が安心して利用できるよう、徹底した洗浄と衛生管理体制が整えられています。
使用されたリユース食器は回収され、専門業者のリユース食器専用の洗浄ステーションで、高温(80〜90℃以上)・高圧の業務用食洗機を用いて、細菌やウイルスの除去に有効な洗浄・消毒が実施されています。加えて、食器の回収から再配布までの導線には厳格な衛生管理基準が設けられており、食器が地面に触れないよう専用ケースでの運搬・保管が行われるなど、細やかな配慮がなされています。
これまでの大規模イベントでも、専門業者による回収・洗浄・殺菌体制が確立されており、食器は洗浄後に清潔な環境下で厳重に保管されるなど、安全性の確保に万全が期されています。定期的な検査や基準の順守も徹底されており、単なるエコではなく、こうした安心できる衛生管理体制があってこそ、リユース食器の価値が真に社会に浸透し、持続可能な選択として根付いていくのではないでしょうか。
ごみ削減に向けた取り組み

リユース食器の導入は、万博が掲げるごみ削減の目標達成において極めて重要な取り組みであり、会場内で日々消費される膨大な使い捨て食器を繰り返し使用可能なものに切り替えることで、廃棄物の大幅な削減が期待されています。
万博では「捨てる」から「返す」行動への転換を促すことで、ごみ箱自体を減らす構想が進められています。これは単に容器を再利用するだけでなく、「ごみを出さない」ことを前提とした設計であり、来場者が無意識のうちに資源循環に参加できる環境づくりを目指しています。そのためには、返却ポストの配置や分かりやすいサイン、時にはデポジット制の導入など、回収率を高めるための工夫も不可欠です。
多様な文化背景を持つ来場者が集まる万博では、誰もが気軽にリユースに参加できるようなインクルーシブなシステム設計が求められており、こうした多角的な取り組みが、万博会場からの廃棄物削減と持続可能な資源循環モデルの構築へとつながっていくのです。
堆肥化できる食器の可能性

土に還る仕組みを体験
万博の会場では、食べ終わったあとの食器が「ごみ」で終わらない新しい選択肢として、堆肥化できる食器が導入されています。
これらはトウモロコシやサトウキビといった植物を原料とした生分解性プラスチックや、間伐材や竹などの自然素材から作られたもので、使用後に回収・処理することで、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解され、最終的には豊かな堆肥へと生まれ変わります。
従来のプラスチックのように何百年も分解されずに残り続ける心配がなく、焼却時のCO₂排出量も抑えられるため、地球への負荷を大幅に軽減できるのが大きなメリットです。
つまり、食器が土へと戻り、やがて植物を育てる栄養源になるという、資源が循環する仕組みを体感できる仕掛けです。
万博では、このような食器を実際に手に取り、使うことで、「使い捨て」の概念を超えた資源循環の仕組みを肌で感じることができます。こうした試みは、「使ったら捨てる」が当たり前だった日常に、「どう還すか」を考えるきっかけを与えてくれます。 私たちが普段、何気なく捨てている「ゴミ」が、実は地球を豊かにする「資源」へと姿を変える。そんな未来へのヒントを、万博での食事体験から見つけられるはずです。
万博での回収と処理
万博会場では、堆肥化できる食器が、使用後に適切に回収・処理される体制が整えられています。
リユース食器の使用が難しい場所などで使われるこれらの食器は、食品残渣と一緒に分別回収され、その後、専門の施設へと運ばれます。そこで、温度や湿度などを管理された堆肥化施設で、微生物の力を借りてゆっくりと分解が進められます。このプロセスを通じて、食器は有機質の堆肥へと変化し、最終的には農地の土壌改良材などとして活用される予定です。
これは単にゴミを減らすだけでなく、廃棄物を新たな資源として活用するという、まさに「もったいない」精神を具現化した取り組みと言えるでしょう。
ただし、家庭の可燃ごみとは異なり、こうした食器は通常の紙ごみとして捨てるのではなく、指定されたルートで回収されることが重要です。万博ではそのための表示や導線設計も工夫されており、来場者が自然と正しい行動を選べるようになっています。また、堆肥としての安全性や品質を確認するため、事前に試験も行われ、処理先での再資源化がきちんと計画されている点も特徴です。廃棄物を単なるごみにせず、次の命につなげる視点が、ここにはあります。
万博は、この一連の回収・処理プロセスを来場者にも分かりやすく示すことで、持続可能な社会における廃棄物管理のあり方を提案し、未来の循環型社会に向けた具体的なステップを実証する場となっているのです。
万博が描く家庭外食器の未来

資源再生への挑戦
大阪・関西万博は、「未来社会の実験場」として、資源をいかに循環させていくかに真正面から取り組んでいます。家庭外で使用される食器や容器は、従来は使い終わったらそのまま廃棄される「リニア型(直線型)」の消費が当たり前でした。しかし万博では、そうした常識に挑戦し、使い終えた食器をもう一度資源として活かす仕組みが整えられています。
例えば、リユースに適さないほど劣化したり破損したりした食器は、単に廃棄するのではなく、破砕してプラスチック原料に再生する「マテリアルリサイクル」や、エネルギーとして活用する「サーマルリサイクル」にまわされます。また、万博会場で発生するプラスチックごみや食品廃棄物も、単なるごみとして処理するのではなく、可能な限り燃料化や堆肥化といった形で資源として再生する取り組みが図られています。
これらの挑戦は、使い捨てが当たり前だった社会から、資源を循環させる持続可能な社会への転換を加速させる重要な一歩となるはずです。
未来への実証実験
万博は、新たな技術やシステムが実際に社会で機能するかを試す「未来社会の実験場」としての役割を担っています。
リターナブル食器や代替容器の導入もその一つであり、大規模イベントという特殊な環境で、その効果や課題を数値で評価する貴重な機会となります。どれほどの来場者が返却に協力し、どのような課題が生まれるのか。回収率や洗浄回転率、CO₂排出量の推移など、多角的なデータが現場で収集され、万博終了後も他の大規模イベントや商業施設でのリユースシステム導入の際の具体的なモデルケースとして、また、今後の都市イベントやフェス、さらには自治体での常設運用にまで波及していくことが期待されています。
2025年万博では、こうした実験的要素を単なる試みではなく、「再現可能なモデル」として、世界に向けたサステナブルな標準を示し、社会全体で「使い捨て」からの脱却を加速させるための重要な知見となることが期待されています。
万博での取り組みを一過性のものに終わらせないためには、こうした実践を日常へどう広げていくかが鍵になります。外食やテイクアウト、学食、オフィスランチなど、私たちの身の回りにはまだまだ使い捨て容器があふれています。リユースの仕組みを根づかせるには、利便性と環境意識をどう両立させるかが問われます。回収拠点の整備や洗浄インフラの共有、利用者へのインセンティブ設計など、課題は少なくありません。
一方、堆肥化できる食器という選択肢も、資源循環の幅を広げる手段として期待されています。食べ終わったあとも「ごみ」ではなく「資源」として土に還る仕組みは、環境に優しいだけでなく、私たちの暮らしに新しい価値観をもたらします。 万博でのこうした挑戦は、私たち一人ひとりが「使う」その先を考えるきっかけになるはずです。
食器が語る未来のかたち。そのヒントは、意外と身近なところにあるのかもしれません。
合わせて読みたい
- 食器を変えるだけで、世界が変わる・・・かも?
- 「使い捨て食器は便利だけど、やっぱり環境に悪いよね…」そう感じている方も多いのではないでしょうか。このブログでは、使い捨て食器が環境に及ぼす影響、再利用や堆肥化が可能な製品、さらには食べられる食器まで、日常からイベント、さらに災害時の食器選びに至るまで、その選択がいかに重要かを掘り下げていきます。あなたの食器選びが未来を変える第一歩になるかもしれません。
ロスゼロとは?
- フードロス削減、楽しい挑戦にしよう!
- 通販サイト「ロスゼロ」では、様々な理由で行先を失くした「フードロス予備軍」を、その背景やつくり手の想いと共に、たのしく届けています。