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【2025年最新】令和5年度食品ロスの発生量の推計値について

公開日: 更新日:2025.09.05
卵の殻の植木鉢

令和5年度食品ロス推計値の詳細

令和7年6月27日、環境省・農林水産省より「令和5年度食品ロスの発生量(推計値)」が発表されました。


我が国の食品ロスの発生量の推移

事業系食品ロスについては食品リサイクル法に基づく事業者からの報告等をもとに、家庭系食品ロスについては市町村に対する実態調査等をもとに、令和5年度の食品ロスの発生量は約464万トン(うち事業系約231万トン、家庭系約233万トン)と推計されました。



令和4年度の日本の食品ロス発生量は約472万トンとされており、令和5年度は令和4年度より約8万トン(事業系は約5万トン、家庭系は約3万トン)減少しました。

令和4年度は、家庭から出る食品ロスと事業者から出る食品ロスの量がほぼ同じでした。しかし令和5年度には、事業系の食品ロス量が家庭系よりも少なくなり、企業の取り組みが成果を上げていることがうかがえます。


発生要因の内訳

全体としては食品ロス量は減少していますが、事業系、家庭系それぞれの内訳を見ると発生量が増えている業種や項目があり、一層の削減努力が求められています。


食品ロスに関しては、「持続可能な開発目標」(SDGs:Sustainable Development Goals)のターゲットの1つとして、2030年までに世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させる(ターゲット12.3)ことが盛り込まれています。
国内では、食品ロス削減推進法に基づく「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」(令和7年3月25日閣議決定)において、家庭系食品ロスについては2000年度比で2030年度までに半減するとの目標が定められています。また、事業系食品ロスについては、令和4年度で(547万トン→273万トン)にするという目標が達成されたため、60%削減という新たな目標が定められました。


区分 2000年度の食品ロス量 2030年度の削減目標 削減率
事業系ロス 547万トン 約218.8万トン 60%削減
家庭系ロス 433万トン 約216.5万トン 50%削減

全体として、食品ロス量は2012年以降、減少傾向にあります。
令和5年度では、事業系ロスは目標にかなり近づいており、順調に進んでいることがわかります。家庭系ロスも目標に近づいていますが、さらなる削減努力が必要とされています。


事業系食品ロス量

会食中のテーブルの上

削減目標

初期目標(2030年度までに2000年度比50%削減)
食品リサイクル法に基づく基本方針で、事業系食品ロスを2000年度比で半減する目標が設定されました。
     ↓
新目標(60%削減)への更新
令和4年度(2022年度)時点で上記の50%目標を前倒しで達成したため、2030年度までに2000年度比で60%削減というより野心的な新目標が設定されました。


推移と現状

事業系食品ロス量の削減目標と推移

業種別の偏り

令和4年度の約60万トンに対し、令和5年度の外食産業の食品ロス量は約66万トンと微増です。

この背景には、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され、客足が回復したことが挙げられます。客数が増加したことで、食べ残しや仕込み過多といったロスが発生する機会が増加しました。
しかし、多くの事業者がITツールによる需要予測や、メニューのポーション調整、テイクアウトの推進といった対策を継続しており、大幅な増加には至らず、効果的にロスを抑制できていると考えられます。


食品ロス減少を加速させた要因

納品期限・販売期限ルールの見直しの定着

「三分の一ルール(製造から賞味期限の1/3以内に納品)」を見直す動きが、全国の流通・小売で本格的に定着しています。
多くの企業が納品期限を緩和し、最初の2分の1まで納品可能とするなどの取り組みを進めています。これにより「賞味期限切れ直前の返品」→「売り切る」への転換が進んでいます。

その効果として、賞味期限が近い食品が廃棄される量が減少したほか、流通・小売業者では在庫管理の負担軽減や物流コスト削減にもつながっています。
企業はフードバンクへの寄付なども含め、柔軟な対応が可能となり、サプライチェーン全体での食品ロス削減に貢献しています。


賞味期限表示の「年月表示」への変更拡大

「年月日 → 年月」表示への切り替えが、加工食品メーカーなどで加速し、「あと◯日で賞味期限切れ」として捨てられる食品が削減されました。

また、日付管理が不要になることで、納品期限間近の食品が流通から外されることが減り、フードロスが大幅に削減されました。

さらに、日付ごとの細かな在庫管理が不要になり、物流・小売業者の作業負担を軽減し、物流コストの削減にもつながっています。
消費者の過度な鮮度志向を緩和し、食品の状態を見て判断する意識を促す効果も期待されています。

農林水産省の調査では、「年月」表示の食品割合が令和5年度にかけて大幅に増加しています。

※公益財団法人流通経済研究所の調査報告書


需要予測の高度化(DX導入の進展)

需要予測の高度化は、AIやビッグデータを活用したDX導入によって進展し、食品ロスの大幅な削減に貢献しています。

従来は人間の勘や経験に頼っていた発注業務が、AIが過去の販売実績、天候、曜日などのデータを分析することで、より高精度な予測が可能になりました。これにより、過剰発注や在庫切れが減少し、製造・流通・小売の各段階で発生していた食品廃棄が抑制されています。

また、発注の自動化により店舗や工場の作業負担も軽減され、物流コストの削減といった経済効果も生み出しています。


フードバンク・寄付スキームの拡大

フードバンク・寄付スキームの拡大は、「売れない=廃棄」という従来の商習慣を「余る=シェア」へと転換させ、食品ロス削減の重要な柱となっています。

これまで廃棄されていた規格外品や印字ミス商品、賞味期限間近の食品などを、NPO法人などを通じて生活困窮者施設や子ども食堂へ寄付する仕組みが全国に広がっています。

この取り組みは、SDGsの目標達成に貢献するだけでなく、企業の社会的責任(CSR)活動としても評価されています。さらに、寄付に対する税制優遇措置の拡大も後押しとなり、フードバンクと企業・個人との連携が深まり、食品の有効活用が加速しています。


企業によるSDGs目標との統合的取り組み

SDGs(持続可能な開発目標)との統合は、企業が食品ロス削減を単なるコスト削減ではなく、経営戦略の柱として位置づける大きな推進力となっています。

具体的には、目標12「つくる責任、つかう責任」目標13「気候変動に具体的な対策を」などとの関連から、食品ロス削減がサプライチェーン全体の効率化やブランドイメージ向上、投資家からの評価に直結するようになりました。
これにより、企業は積極的な技術投資(需要予測の高度化)や、フードバンクへの寄付といった社会貢献活動を強化しています。

この統合的な取り組みにより、多くの企業で食品ロス削減が加速し、事業活動と社会貢献の両立が実現しています。


家庭系食品ロス量

野菜を切る手元とカラフルな野菜

削減目標

2030年度までに、2000年度比で50%削減が家庭系の目標として据え置かれています。

2022年度時点では、削減率は約46.1%となっており、現時点では目標「あと20万トン」が残る状況です。
事業系食品ロスが昨年度目標を達成したため、家庭系食品ロス量も2030年度を待たずに早期達成を目指しています


現状の概要

令和4年度→令和5年度にかけて、家庭系食品ロス量は 236万トン → 233万トン と、わずかではありますが減少しています。

家庭系食品ロス量の削減目標と推移

過剰除去が増えた理由

家庭系食品ロスにおける過剰除去が増加した背景には、高齢世帯の割合増加による影響が考えられます。

高齢者は衛生面への配慮から野菜の皮を厚く剥いたり、食べられる分を切りすぎたりして、可食部が捨てられやすい傾向があります。
また、過剰除去を対象とした啓発や指導が他のロス要因に比べて不足しており、高齢世帯向けに適切な情報提供や調理ガイドが普及する必要があります。


減少の主な要因

「もったいない」から「つかう」へ:家庭の意識改革

家庭系食品ロスが減少している背景には、消費者の意識と行動の大きな変化があります。

単なる「もったいない」という感覚だけでなく、食品ロスを「家計の無駄」や「環境問題」と捉える人が増えました。SNSやメディアでの情報発信により、この問題への関心が高まり、「買い物前の在庫チェック」や「計画的な調理」といった具体的な行動が定着しつつあります。

また、食材を使い切るためのレシピ共有サイトの利用や、冷凍保存術の普及も消費者の行動を後押ししています。

こうした消費者一人ひとりの積極的な行動が、家庭系食品ロス削減の主要な推進力となっています。


賢い家電が支える「食べきり」習慣

家庭系食品ロス量の減少には、スマート家電やICTの活用が大きく貢献しています。

IoT冷蔵庫は、庫内の食材をスマホから確認できるため、買い物中の重複購入や買いすぎを防ぎます。また、食材ごとの消費・賞味期限を管理し、使い忘れによる廃棄を防ぐリマインダー機能も備えています。
レシピアプリと連携すれば、冷蔵庫にある食材で簡単に作れる料理を提案してくれるため、食材を余らせることなく使い切れます。

こうしたテクノロジーの導入は、個人の意識や努力だけでなく、「うっかりロス」を未然に防ぐための具体的なサポートを提供し、無理なく食品ロス削減を継続できる環境を整えています。


世代や生活スタイルに応じた啓発の進展

立命館大学などのチームによる研究では、70代以上では調理時の過剰除去が多く、若年層では食べ残しが多い傾向が見られるとされており、家庭系食品ロス減少の背景には、世代や生活スタイルに合わせた啓発活動の進展があります。

若い世代向けには、SNSやインフルエンサーを通じたレシピ動画や保存術の共有が効果的です。特に、見た目も楽しいコンテンツは「映え」と結びつき、「食材を使い切る」という行動を自然に促します。
一方で、高齢者層には、地域での料理教室やイベントを通じた対面での啓発が中心です。少量パックの活用方法や、冷蔵庫の整理術など、具体的なアドバイスが役立っています。

このように、対象に合わせた情報提供と行動喚起により、食品ロス削減が「自分ごと」として捉えられるようになり、家庭における持続的な行動変容につながっています。


フードドライブがつなぐ「もったいない」の輪

家庭系食品ロス量の減少には、フードドライブや地域コミュニティを通じた食品寄付活動の拡大が大きく貢献しています。
フードドライブは、各家庭で余っている食品を持ち寄り、それをまとめてフードバンクやNPOを通じて福祉施設などに寄付する活動です。

フードドライブは自治体やスーパー、企業などが主体となって定期的に開催されており、「捨てるのはもったいないけれど、自分で寄付するのは大変」と感じる人々の参加を促しています。

この取り組みは、家庭の余剰食品を有効活用するだけでなく、食品の「廃棄」ではなく「分かち合い」という新たな選択肢を提供し、市民参加型の食品ロス削減を加速させています。



私たち一人ひとりの小さな選択と、社会全体の大きな動きが結びつくことで、食品ロスは確実に減っています。企業も家庭も、それぞれの場所で工夫を凝らしています。

「もったいない」という気持ちを大切に、今日からできることを一つ見つけてみませんか?例えば、冷蔵庫の中身をもう一度確認してみる、買いすぎないよう心がける、食べきれる量だけ調理するなど、身近な行動が未来の食卓と地球を守る大きな一歩につながります。

制度や技術の進展とともに、私たち一人ひとりの行動も変化が求められています。日々の小さな気づきを、持続可能な社会への一歩として積み重ねていけたらと思います。



※※参考情報※※

農林水産省:「ろすのんによる」食品ロスの説明

政府広報オンライン:食品ロスを減らそう!今日からできる家庭での取組

環境省:食品ロスに関する情報を集約した「食品ロスポータルサイト」





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この記事を書いた人

前川

ウエブ担当の前川です。
子供の野球観戦のため、年中日焼けと戦っています。昔から大好きだった書道を最近また始めました。今は「相田みつを」さんのように、絵のような素敵な文字をプレゼントできるようになりたいと、修行中です。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。